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用明天皇の御時代、難波の宿館に 土師(はじ)の連(むらじ) と言う人 がおりました。 この人、声の良い歌の上手な人でありました。 ある夜 家で歌っていましたら、屋根の上で声を添えて歌うものがいるの です。 土師の連が変だと思い歌うのを止めると その声も止まるのです。 また土師の連が歌いだすと 声を添えて歌いはじめるので 驚いて外に 出てみれば 逃げていくものがいます。 追って行くと 住吉社のあたりの海岸まで来て水中に飛び込んで消えて しまいました。 これは、宙より降りた火星が 歌を愛し 人に姿を変えて現れたのだと 聖徳太子の伝えるところにもあることです。 今様の始まりは・・・ |
・土師(はじ) 土器を作り祭礼や陵墓などを管理した氏族の名です。 ・連(むらじ) ‘姓‘の一つです。 ・住吉社 和歌の神様としても有名なのだそうです。 (源氏絵に描かれている住吉社なのでしょうか?) ・なんで突然火星が出てくるかと言うと、「聖徳太子伝暦」という書に 「此星降下シテ人ト為リ、童子ノ間ニ遊ブ。好ンデ謡歌ヲ作シ、未然ノ 事ヲ歌ウ」 (火星は宙から降りてきて人になり、子供たちと遊んでおります。 歌が好きで、よく歌うのです。) とある事に由来しています。 ・最後の‘今様の始まりは・・・‘の所は原本が「今様と申す事の起り」以下が なくなってしまっていて わからないのです。 きっとこの後が、はじめのたとえ話から引いて 今様はこう始まったのだよ と続くのでしょうが・・・。 「巻一」は以上です。 この後、残りの「巻一」から「巻九」に今様の歌い方の口伝が書かれて いたと思われているようです。 次からの「巻十」は全文が残っていて、全体の付録の様なものらしいの ですが 今様大好き後白河院の自叙伝として けっこうおもしろいかと思 います。 |