08 清経(きよつね)と目井のこと      もくじへ戻る トップページへ戻る

 乙前が 清経と目井のことを話してくれました。
 「清経様は目井を愛しく思って ともに連れ添い長い間 暮らしておりまし
た。
 長年のことですので 目井の歌いのすばらしさに すでに目井を愛しいと
思う気持ちは なくなっておりましたけれど、それでも ともに暮らし続けて
おりました。
 かたわらにいても 興ざめする思いであったけれど、目井の歌いのすばら
しさに 縁を切らずにいたのです。
 ともに寝ても あんまり わずらわしいので 寝たふりをして目井に後ろを
向けて寝ておりました。
 その後を向けた背に 目井のまばたきする睫毛が当たるのも こわい気
がするほどになっておりましたのに、それをこらえて 目井が故郷の青墓へ
行く時はすぐに連れて行ってやり また迎えに行って連れて帰るなどして
おりました。
 後に 目井が年老いてからは 生活の面倒を見て 尼として亡くなるまで
世話をしておりました。
 このごろの人は 愛しいと思わなくなれば 京であっても 連れて行くだの
迎えに行くだの そんな事はいたしますまい。」






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