2010年07月04日          もくじへ戻る トップページへ戻る
    新橋演舞場 昼の部   3階A上手よりの席


  *名月八幡祭
    三幕四場

  *六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり) 文屋
    清元連中

  *祇園祭礼信仰記 金閣寺(ぎおんさいれいしんこうき  きんかくじ)
    一幕





名月八幡祭

縮屋新助:三津五郎
美代吉:福助
船頭三次:歌昇
松本女房おつた:歌江
幇間寿鶴:寿猿
魚惣女房お竹:右之助
藤岡慶十郎:歌六
魚惣:段四朗



序幕
第一場 深川八幡二軒茶屋松本
舞台は深川、松本 藤岡慶十郎の座敷に出ている芸者・美代吉のもとへ情夫の三次が金の無心にやってきます。
美代吉は深川八幡の大祭の準備をするため、三次に渡す金の工面ができません。
三次は藤岡慶十郎に金を借りるよう言いますが 美代吉はこれを断り、自分の簪を渡すと、金に換えるように言います。
三次が去ると、奥の座敷から藤岡慶十郎が現れ 美代吉に金を渡し、三次と深い付き合いはしない方がいいと意見してこの場を後にします。
藤岡慶十郎の意見はもっともだと思いながらも、三次との縁を切ることのできない美代吉は、貰った金で三次と飲みに出かけます。



第二場 浜魚惣裏座敷
舞台は深川、魚惣の裏座敷 魚惣が女房・お竹を相手に酒を飲んでいるところへ出入りの縮屋・新助が帰郷のため挨拶にやって来ます。
しかし、魚惣とお竹が深川八幡の大祭を見てから帰るように勧めるので、新助は祭りを見てから帰ることにします。
するとここへ猪牙船に乗って鉄砲洲へ向かう美代吉が通りかかります。
美代吉を見送った魚惣は、新助に美代吉には金を貸さないように忠告しますが 美代吉に想いを寄せる新助は、既に金を貸しているのでした。




二幕目
仲町美代吉の家
舞台は美代吉の家 深川の大祭に美代吉が着る衣装の代金を呉服屋が催促に来ていますが、美代吉は代金が払えず困っています。
美代吉の母・およしがなんとか呉服屋を帰らせ、新助から金を借りたらどうかと言います。
折しもここへ新助が訪ねて来たので、美代吉が酒を勧めてもてなしていると、三次が金の無心に来ます。
金の工面ができず困っているところへ無心に来たので、怒った美代吉は三次に愛想尽かしをするのですが 三次は美代吉と新助の仲を疑い、恨み事を言ってこの場を去ります。


二人の様子に戸惑う新助でしたが 美代吉はこれまでの事情を話し、借金ばかりの今の暮らしは嫌になったので新助と一緒に田舎に行きたいと言います。
話しを聞いた新助は、美代吉のために百両の金を用意するので、美代吉の家に置いて欲しいと言い残しこの場を去ります。


新助がこの場を去った後 幇間の寿鶴が訪ねて来て、美代吉が金に困っている事を察した藤岡慶十郎からの手切れ金、百両を渡します。
金の工面がつき、美代吉が喜んでいるところへ、愛想尽かしされて怒った三次が短刀を手に押し入って来ます。
金が手に入り機嫌を良くした美代吉は、三次に金の工面がついた事を話し 二人は仲直りして酒を飲み始めます。


折しもここへ 先刻、金の工面に出かけた新助が百両を持って戻って来ます。
しかし既に金が手に入った美代吉は、もう金は要らないと言うのでした。
新助は美代吉と三次の仲の良い様子を見て騙されたと怒りますが 美代吉も三次も適当に受け流してしまいます。
するとここへ新助を案じた魚惣がやって来ます。
魚惣は新助を連れて帰ろうとしますが 新助は美代吉と暮らせると信じて、金を作るために故郷の家や田畑を売ってしまったので帰るところが無いと言います。
魚惣は望みを無くした新助を慰め、自分の家に連れて帰ります。




大詰
深川仲町裏河岸
舞台は深川八幡の大祭の日、祭りで賑わう深川界隈 手古舞姿の美代吉は大勢の芸者衆と共に祭りの踊りに出かけます。
一方、全てを無くして正気を失った新助が居なくなってしまったので、魚惣の若い者が行方を捜しています。
このような中、人出の多さに永代橋が落ち大騒ぎになり 新助を捜していた魚惣や若い者達も永代橋へ向かいます。


皆が永代橋に向かい、人気がなくなったところへほろ酔い加減の美代吉がやって来ます。
するとここへ、折から降り出した雨の中、正気を失った新助が現れます。
田舎侍から奪った刀を手にした新助は、逃げようとする美代吉に恨みの一太刀を浴びせるのでした。
新助が美代吉に斬りかかったことに気付いた若衆たちが、新助を取り押さえ担ぎ上げるとこの場から連れ去ります。












六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり) 文屋

文屋康秀:富十郎


  あらすじはこちらでどうぞ











祇園祭礼信仰記 金閣寺

此下東吉 実は 真柴久吉:吉右衛門
松永大膳:團十郎
雪姫:福助
松永鬼藤太:権十郎
十河軍平 実は 佐藤虎之助正清:歌六
慶寿院尼:東蔵
狩野之介直信:芝翫


  あらすじはこちらでどうぞ








7月の演舞場、大歌舞伎は4月歌舞伎座以来の実質の伴う大歌舞伎で(^_^;) 見る前からかなり期待しておりました。
っと、申しましか・・・5月は花形、6月に至ってはガッツリと見る事のできる歌舞伎に巡り会えず 7月は待ちに待った舞台でした。
が・・・昼の部に関しては期待が大き過ぎたのか、まだ初日近かったこともありイマヒトツという感じでした。





☆「名月八幡祭」は池田大伍作(劇作家。代表作「西郷と豚姫」「名月八幡祭」など)、1918年(T7)初演の新作歌舞伎です。
黙阿弥作、1860年初演の「八幡祭小望月賑(はちまんまつりよみやのにぎわい)」(四幕の世話物で通称「縮屋新助」「美代吉殺し」、「与話情浮名横櫛」の後段)をもとにしていますが 人の情を描くというところでは幕が閉まった後の感覚はかなり違います。
「籠釣瓶花街酔醒」も「八幡祭小望月賑」を応用して書かれたそうですが やむにやまれぬ事情で愛想尽かしという展開では「籠釣瓶花街酔醒」の方が「名月八幡祭」よりももとの「八幡祭小望月賑」に近いかもしれません。
「名月八幡祭」と「八幡祭小望月賑」 似ておりますが、美代吉の心情的な設定がかなり違う感じがいたします。
バックグラウンドの‘江戸‘を浮かび上がらせる「名月八幡祭」、やむにやまれぬ人の情を見せる「八幡祭小望月賑」 そういう事では今回の舞台は的を得ていたと思います。



「辰巳八景」の下座で幕開き 舞台は茶屋、松本 仲居のお一人を守若丈がお勤めです。
筋書きを購入しておりませんのでもうお一方がどなたなのか?なのですが、幕開きからの世話の雰囲気が台詞から感じられ良かったです。

福助丈・美代吉は上手の一間からの出になります。
とてもすっきりとして艶っぽくて、福助丈はこういうお役は上手いですね〜。(^^ゞ
藤岡慶十郎や松本女房・おつたに対する時の福助丈・美代吉は可愛気があってとても良いです。
なんとなく拗ねたような可愛さが良いです。(ただ・・・辰巳芸者というのが、このような雰囲気であったのかは?です)
歌六丈・藤岡慶十郎は落着いて太っ腹な雰囲気ですが 遊びなれた粋、艶が欲しいです。
歌昇丈の船頭三次、真面目そうでどうしてもヒモに見えませんでした〜。
間夫というより仲の良い夫婦の感じです。
まあ・・・これからの展開を思えば 悪気があって何かしているという感じではなく‘こういう人‘に見えるのはいいと思いました。
歌江丈・松本女房おつた 足が辛そうでしたが、大きな茶屋の女房なのだと思わせる品があって、やはり舞台が大きくなります。



川音の下座で幕開き、舞台は魚惣 まだ初日からそれほど経っておりませんので段四朗丈・魚惣と右之助丈・お竹の台詞が入っていませんでした。
お二人とも世話の雰囲気はあるのですが、プロンプが付いていて流れに妙な間があいてしまいます。
もう少し後に台詞も入って流れが良くなってくると、雰囲気の良い分、人情味のある場面になりそうです。
まだ流れがイマヒトツだった観劇日でも魚惣とお竹の‘長年連れ添った夫婦‘の雰囲気とか‘情の温かさ‘とかが伝わりました。
ただ、間がイマヒトツなので田舎者の新助と江戸で暮らす魚惣の生活感の違いはクッキリとしていません。
ですが・・・初日近くの台詞の入らないグダグダな舞台は久し振りで、なんとなく嬉しかったです。(笑)

三津五郎丈・新助は、この場では‘普通に真面目な人‘に見えました。
‘田舎から江戸に出てきたスローな人‘っという雰囲気がイマヒトツなのです。
これは対する段四朗丈・魚惣にまだ台詞が入っていなくて、江戸のチャキチャキ感が少ない事にも原因があると思います。
段四朗丈・魚惣と右之助丈・お竹の間合いを見ながら舞台を進めているのでスローになりきれないのかもしれません。
この場で‘江戸の人‘と‘田舎の人‘のリズムの違いがもっとしっかり見えてくると、この後の美代吉と新助の気持ちのすれ違いが分かりやすくなると思いました。
後半になって流れが良くなると ‘江戸の人の要領の良さ‘と‘田舎の人の真面目さ‘という対比として三津五郎丈・新助の真面目さがもっと活きてくるのでしょう。
それと、この場で鉄砲洲の美代吉と三次を想うところの陰湿感がイマヒトツです。
「八幡祭小望月賑」とは異なり妖刀によって狂気に陥るわけではございませんので この場では、単に‘真面目で純朴な田舎の人‘だけではなく 真面目と思い込みの表裏一体として陰湿感とか嫉妬心がもっと強く見えてくるといいような気がいたしました。



幕開き舞台は美代吉の家 この場の福助丈・美代吉と歌昇丈・三次はノリが良くて、仲が良いから喧嘩している雰囲気が出ています。
悪気があるわけではなく、単に軽いノリでドライなつきあい方をする美代吉を福助丈は上手く見せています。
単純で人の良い新助に社交辞令的な感覚で適当につきあう美代吉のしたたかさが良いです。
ただズルイというのではなくて一本筋が通っていて、それで軽いノリの福助丈・美代吉 ワタクシ的にはケッコウ好きだったりいたします。

美代吉と三次の仲が良いゆえの夫婦喧嘩を真に受けた真面目な新助の成り行きがおもしろいです。(笑えるという事ではなくて)
ここの三津五郎丈・新助も普通の人です。
なんと申しましょうか・・・思い込みの強い人ではなくて、普通の真面目な人 それが、成り行きで転がってしまった感じです。
狂気に通じるような思い込みは感じらず 愚かで哀れな男に見えました。
ですが、まだ分別があるように見えてしまいまして ‘引き返せるのでは?‘っと、思えます。
身近にありそうな今っぽいリアリティーを感じます。

美代吉の母親、芝喜松丈 世話の生活感があるのに品があり、良いと思います。



祭囃子で幕開き 舞台は裏河岸 ここはとりあえず本水の舞台を楽しんでしまいました。(^^ゞ
あ〜夏芝居だな〜 っと、いう感じです。
わりと運びはサラッと進み、決まりはスキット綺麗です。
ドロドロな感じではないです。
芝居として見る事ができて見やすいです。
幕切れ、花道の三津五郎丈・新助 ワタクシ的には、もっと狂気が見えてもよかったと思いました。











☆「六歌仙容彩」は「化粧六歌仙(よそおいろっかせん)」をもとにした1831年初演の五変化舞踊で、「文屋」は文屋康秀を踊った舞台で清元の舞踊です。
「化粧六歌仙」のようなストーリー性はなく 独立した舞踊が並び、「文屋」は江戸の風俗を盛り込んだ面白味のある踊りです。
「化粧六歌仙」のあらすじはこちらの感想欄をご参考くださいませ。


音楽の下座で幕開き 舞台正面に清元四挺三枚。
「>烏帽子きた、鷹の羽おどし」オキで下手から富十郎丈・文屋、上手から官女の出になります。
「>寄るを突きのけ」から仕抜き。
「>根深の香るあだつきは」、頭上で合わせた手から腕の線の綺麗なこと。
百夜通いになぞらえて「>傘をかたげて丸木橋や」、傘を担いで丸木橋を渡る風情が柔らかでどことなく艶っぽい さすがに上手いです。
烏帽子、狩衣を脱いで「>田町は昔」で新内がかり 柔らかで流れるような所作がしっとりとしてすごく良いです。
「逢う恋、待つ恋、忍ぶ恋」恋尽くしの問答 ちゃめっけ、可愛気のある文屋です。
大人な舞台のおもしろさです。(^^ゞ
「>衛士の焚く火は沢辺の蛍」、富十郎丈の指先の綺麗な事 品が良いです。
「>花に嵐の」でチラシになります。

富十郎丈の文屋は、柔らかで艶があり可愛気があります。
品良く文屋の茶目っ気を見せています。
久しぶりに歌舞伎の踊りを見た っと、思いました。(^^ゞ











☆「祇園祭礼信仰記」は1757年初演 中邑阿契(なかむらあけい)、豊竹応律(とよたけおうりつ)、黒蔵主(こくぞうす)、浅田一鳥(あさだいっちょう)、三津飲子(みついんし)らの合作による全五段の時代浄瑠璃で 「金閣寺」は四段目切りにあたります。
「祇園祭礼信仰記」の大まかな流れがこちらの感想欄にございますので、よろしければご参考くださいませ。



「心づくしの秋風に」琴歌で幕開き 舞台は金閣寺 上手に竹本の出語り オキから御簾が上がって團十郎丈・大膳と権十郎丈・鬼藤太の出になります。
團十郎丈・大膳 大きさはございますが、悪っぽく見えません。(^_^;)
人の良い大膳です。
台詞は聞きやすいですが この顔合わせでしたら、吉右衛門丈が大膳の方が良かったのでは? っと、思ってしまいました。
碁を打つ大膳と東吉 ノリの台詞がガッツリとしていますが、團十郎丈の大膳が良い人過ぎて、碁に負けるのがお気の毒に思えてしまいます。(笑)

福助丈・雪姫は上手の一間からの出になります。
可愛い雪姫ですが、赤姫の純な雰囲気はイマヒトツで 出のところから‘何かしそう‘に見えました。
まあ・・・雪姫は夫がおりますし、自力で状況を変えようとする姫ですので ‘何かしそう‘に見えてもいいのかもしれません。
何も知らない、何もできない、そういう感じではありませんでした。

竹本のオキで歌六丈・軍平と吉右衛門丈・東吉が花道から出ます。
歌六丈・軍平は骨太です。
吉右衛門丈・東吉は、花道七三はいつものように3階からはよく見えませんので(^_^;) 舞台に上がってからになります。
舞台に上がって刀を差してからの吉右衛門丈・東吉の台詞、手をつく姿、コッテリと大きくて時代物の大きさ抜群です。
で、これが、團十郎丈・大膳とゼンゼン合いません。(^_^;)
良いとか悪いとかではなくて、雰囲気がまるで別の芝居のようです。
舞台で碁盤を挟んで座る大膳と東吉ですが 向かい合うと、やはり吉右衛門丈の方が大膳っぽいです。
‘色気‘ですかねぇ。
碁盤に向かう吉右衛門丈、少し足が辛そうに見えました。
「東吉お相手つかまつらん」っと言う吉右衛門丈・東吉はカッコイイです。
碁盤の見得まで、小気味良くて、愛嬌と時代物の大きさのある東吉です。
久しぶりに、見ていてニヤッとするカッコよさです。

芝翫丈・直信、大きくて艶があって、雪姫の夫に見えます。

直信が花道から引っ込むと竹本が連弾きになり、ここから‘爪先鼠‘です。
前半に‘何かしそう‘に見えた雪姫ですが その雰囲気がここでは活きています。
ちょっとツンっとした感じが、この場の気丈な雪姫の雰囲気でいいです。
桜の中の福助丈・雪姫、綺麗でした。
引っ込みは花道七三で刀に姿を映すやり方です。

竹本が御簾内に代わり、東吉(実は久吉)と四天の立ち回りになり、久吉は桜の木を登って楼閣へ 東蔵丈・慶寿院は品格十分です。
幕切れ間近 吉右衛門丈、團十郎丈、歌六丈、お三人が舞台に揃ったところはやはり大歌舞伎の華がございます。


今回、この舞台はケッコウ期待しておりましたが 期待が大き過ぎたのかイマヒトツな印象が残りました。
後半になって練れてくると違ってくるのかもしれませんが とにかく、吉右衛門丈と團十郎丈の雰囲気が合っていないような気がいたしまして まとまりのない舞台に感じられました。
團十郎丈の大膳は大きさは十分なのですが、真っすぐ過ぎて不敵で怪しげな艶が感じられません。
役者さんの顔ぶれはいいのですが 舞台を見終わった時の充実感は少なかったです。
で・・・改めて、「金閣寺」は大膳が要なのだな〜 っと、思いました。(^_^;)






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