2009年09月13日           もくじへ戻る トップページへ戻る 
    歌舞伎座 昼の部   三階B中央の席


  *竜馬がゆく 最後の一日
    一幕

  *時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)
    饗応の場
    本能寺馬盥の場
    愛宕山連歌の場
    二幕

  *名残惜木挽の賑 お祭り
    清元連中

  *天衣紛上野初花 河内山
    松江邸広間より玄関先まで
    一幕




竜馬がゆく 最後の一日

坂本竜馬:染五郎
近江屋女房・すみ:高麗蔵
桃助:男女蔵
近江屋新助:猿弥
伊東甲子太郎:錦吾
淡海槐堂:竹三郎
後藤象二郎:門之助
中岡慎太郎:松緑


第一場 七つ刻。 竜馬、母屋へ移る。
舞台は京の醤油商、近江屋 大政奉還の仕掛け人として命を狙われている竜馬は、近江屋の土蔵に匿われているのですが 底冷えする寒さに辛抱できず、母屋の二階に移ってしまいます。

店の裏手では近江屋の奉公人・桃助を訪ねて来た兄・梅蔵が、坂本竜馬という浪人が近江屋に居ないかと聞いています。
梅蔵は桃助に竜馬は大悪党で討ち取る手引きをすれば侍に取り立てられるかもしれないと言うのでした。


竜馬が移ってきた母屋の二階では、訪ねて来た薬屋・淡海槐堂(おうみかいどう)が床の間に自筆の軸を掛け 外国では誕生日に贈り物をする習慣があると話しています。
これを聞いて竜馬は今日が自分の誕生日だと気付きます。
ここへ外から‘ええじゃないか‘の騒ぎが聞こえてきます。
これを聞いた竜馬は、徳川の世を変えるだけでなく 世の人々の目を醒まさせてやりたいと思うのでした。




第二場 六つ下がり。同門の客と奉公人たち。
店に竜馬を訪ねて御陵衛士の伊東甲子太郎と藤堂平助がやって来ます。
二人は、新撰組が竜馬を狙っているので土佐藩邸に移るよう言うのですが 逆に竜馬は伊東たちこそ新撰組に気をつけろと言います。
忠告を聞かない竜馬に、伊東甲子太郎と藤堂平助は紀州藩も竜馬を狙っていると言い捨ててこの場を去ります。
竜馬の率いる海援隊の船と紀州藩の船が事故を起こし、海援隊の船が沈められたことから、賠償金をめぐり竜馬は紀州藩に狙われる事になったのでした。


この様子を陰から聞いていた桃助は、仕事場の土蔵に戻ると 下女・とめに、竜馬は大悪党で、捕らえる手引きをすれば侍に取り立てられると話すのでした。



第三場 五つ。土佐人たちの恩讐。
舞台は近江屋 土佐藩重役・後藤象二郎が藩吏・岡本建三郎と共に訪ねて来て竜馬と話しているところへ竜馬の同志・中岡慎太郎がやって来ます。
竜馬が書いた新政府人事案を見た後藤象二郎は、これに竜馬の名が無いことを訝しく思うのですが 竜馬は役人は嫌なので世界を相手に海援隊をやると言い さらに徳川慶喜をめぐって対立する中岡慎太郎と後藤象二郎の言い争いを制します。


後藤象二郎らがこの場を去ると、倒幕を支持する中岡慎太郎と内乱を避けたい竜馬は対峙して掴み合いになってしまいます。
しかし具合の悪い竜馬が咳き込んでしまい 中岡慎太郎は慌てて竜馬を介抱します。
竜馬は中岡慎太郎には本心を判って欲しいと言うのでした。


折りしもここへ酒を持って来た下女・とめに 竜馬は、この国もいつかは身分も位も無くなる時がくると話します。



第四場 五つ半。凶刃。
近江屋の二階座敷で竜馬と中岡慎太郎が新政府の事やアメリカの事などを話しているところへ 幕府の京都見廻組の武士数人が駆け上がって来て二人に斬りかかります。
不意を突かれた竜馬と中岡慎太郎は暗殺者の凶刃にたおれてしまいます。












時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)

武智光秀:吉右衛門
四王天但馬守:幸四郎
安田作兵衛:歌六
桔梗:芝雀
山口玄蕃:歌昇
森蘭丸:錦之助
連歌師・丈巴:家橘
矢代條介:友右衛門
皐月:魁春
小田春永:富十郎


序幕 饗応の場
舞台は御殿の仮屋 小田春永は太政大臣に任命される事となり、任命の勅使・世尊寺中納言を饗応するための準備が武智光秀の指揮で進められています。
光秀の妹・桔梗も手伝いに来ていますが、桔梗に横恋慕する山口玄蕃に言い寄られ 逃げる際に誤って春永へ献上された蘇鉄の枝を折ってしまいます。
桔梗は玄蕃に叱責され自害しようとしますが 全てを見ていた光秀がこれを止め、桔梗を退かせ玄蕃に蘇鉄を片付けさせます。


折りしもここへ鷹狩に出かけていた春永が小姓・蘭丸や家臣らを従えてやって来ます。
上機嫌であった春永は、武智の紋・水色桔梗の幕が饗応の場に張られていることに気付き不機嫌になって幕を引き下ろし器物を蹴り飛ばしてしまいます。
光秀は春永の言葉に従い饗応の準備をしたのですが 春永は公家の機嫌取りをして後々の足がかりにするつもりだろうと言います。
しかし光秀は、これを否定し春永の短慮を諌め ますます春永を怒らせてしまいます。
怒った春永は、蘭丸に鉄扇で光秀を打ち据えろと命じ さらに、饗応役を蘭丸に変え、光秀は領地で蟄居するよう命じます。
光秀は春永の仕打ちを堪え、残された鉄扇を見つめるのでした。




二幕目 本能寺馬盥の場
舞台は本能寺 毛利攻めのために本能寺に陣を構えた春永が家臣や園生の局を伴い現れます。
春永はもてなしのために活けられた花に目を留め 轡で錦木を活けた馬盥の活花が久吉の献上品と聞き、恩を忘れぬ久吉に機嫌を良くします。
しかし隣にあった紫陽花と昼顔の花籠を見て不快な顔つきになってしまいます。
兄・光秀への勘気を解いてもらおうと控えてした桔梗が詫びるのですが 春永は、一日で色が変わり閉じてしまう花は不吉だと言うのでした。


しかし春永は、家臣のとりなしや桔梗の懇願を聞き入れ光秀の対面を許し 出仕した光秀に錦木が活けてあった馬盥を盃にして酒を与えます。
光秀は差し出された馬盥の盃に驚きますが 異を唱えることなく酒を飲み干します。
これを見た春永は、光秀に久吉の下知に従えと命じ轡を投げつけます。
さらに、光秀の領地を蘭丸に与え 光秀が所望していた名剣・日吉丸を長尾弥太郎に与えます。
執拗な仕打ちに耐える光秀に春永はさらに白木の箱を渡します。
中に入っていたのは かつて光秀が浪人して困窮していたころ、来客の接待費用のために妻・皐月が売った切髪でした。
春永は、切髪を与えるのは困窮している光秀を哀れに思い取り立てた恩義を思い知らせるためだと言い 諫言は控えろと言うのでした。


春永が座を立ってしまい、皆がこの場を去ると 光秀は、案じる桔梗を先に帰らせ 一人、白木の箱を携えると 密かに意を決して愛宕山の宿所へ戻ります。



大詰 愛宕山連歌の場
舞台は愛宕山、光秀の宿所 光秀の妻・皐月が安田作兵衛、連歌師・丈巴と共に連歌をしているところへ 作兵衛に宛てた書状を持って本能寺から桔梗が戻って来ます。
これを読んだ作兵衛は 光秀の指示に従い領地亀山城へ引きあげます。
皐月は中国への出陣は叶わなかったと察して落胆しますが 春永の仕打ちを聞いていた丈巴は、光秀が謀判を起こせば味方する者がいるだろうと言います。
これを聞いた皐月は驚いて桔梗に本能寺での出来事を尋ねるのでした。


春永の仕打ちを聞いて皐月と桔梗が涙するところへ本能寺から上使として浅山多惣と長尾弥太郎がやって来ます。
上使の知らせに光秀が現れますが 上使が春永からの命を伝えようとした時、一陣の風に燭台の灯が消えてしまいます。
切腹しても春永の命には従えないという覚悟の光秀は、暗がりで白装束に身を改め辞世の句を読みます。
さらに、切腹の介錯のために長尾弥太郎が取り出した名剣・日吉丸を奪うと上使二人を斬り捨てるのでした。


折りしもここへ四王天但馬守が駆けつけ武智軍が本能寺へ攻め込んだと知らせ、光秀に出馬を促すのでした。











名残惜木挽の賑 お祭り

芸者・おえい:芝翫
鳶頭・照吉:歌昇
 〃 ・信吉:錦之助
 〃 ・染吉:染五郎
 〃 ・松吉:松緑
 〃 ・勝吉:松江
手古舞・おやす:孝太郎
 〃   ・おゆき:芝雀

舞台は木挽町、年に一度の祭りの日 鳶頭や手古舞がやって来て華やいだ雰囲気になります。
するとそこへ振舞い酒にほろ酔い機嫌の芸者・おえいがやって来ます。
仲間が揃い祭り気分が盛り上がったところへ勢いのある獅子舞も加わり 華やかな賑わいが続くのでした。












天衣紛上野初花 河内山

河内山宗俊:幸四郎
高木小左衛門:段四郎
宮崎数馬:門之助
北村大膳:錦吾
腰元浪路:高麗蔵
松江出雲守:梅玉


  あらすじはこちらでどうぞ








☆今回の「竜馬がゆく」は 司馬遼太郎作の小説を舞台化したもので 一昨年に始まりました染五郎丈の舞台の三作目 完結篇です。
新作の舞台ですので、型があるというわけでもなく さっくりと楽しんで見てしまいました。

染五郎丈・竜馬、一作目から変わらないテンションの高さはスゴイと思いましたし また、時間の経過を感じさせない一貫性があり良いと思いました。
染五郎丈が作る竜馬像が、はじめからしっかりと見えていて かつ、勢いが落ちることなく 最後まで見せきっています。
役作りというところで芯があるのだと思いました。

松緑丈・慎太郎も同様に時間経過の違和感がなく 染五郎丈と共にこの舞台の世界観を作っていたと思います。

全体には 頻繁に舞台が回りまして、めまぐるしく感じました。
TVや映画などの映像でしたら それほど気にならない場面転換かと思うのですが やはり生の舞台ですと、ちょっとめまぐるしいです。
また、終結へ向かわせようということだと思うのですが お話しに発展的なところがなく、ドラマ性が薄く、単調な台詞劇のようでした。
一作目から通してではなく 今回の三作目だけしか見ておりませんと とても平坦な舞台になってしまうと思いました。
ですが、一作目から通して見ておりますと 今回の三作目は、なかなか良いのです。
ドラマということですと前回の二作目が良いと思ったのですが 一作目からの流れを見ておりますと、今回の幕切れ前の竜馬にグッときます。
一作目からの時間の経過が竜馬の時間と重なり、その流れの中で竜馬の志が中断されてしまうむなしさ、馬鹿げた妄想に対しての腹立たしさ、などなど ‘あ〜あ〜、まったく・・・‘っと、思うようなラストになっていたと思います。
ワタクシ的にはかなり印象的でした。
この舞台は全て通して見た時に、一番良く見える舞台かもしれません。

ほか、篤みのある門之助丈・後藤象二郎 回転が速く機転の利きそうな猿弥丈・近江屋新助と高麗蔵丈・すみ 当時の一般人の様子をわざとらしくなく見せていた男女蔵丈・桃助などが良かったです。
それと素朴な雰囲気の芝のぶ丈・とめに暖かみがあり良かったです。











☆「時今也桔梗旗揚」は1808年初演、南北作の時代物です。
本名題は「時桔梗出世請状(ときもききょうしゅっせのうけじょう)」で五幕の舞台です。
全体のお話しは光秀が本能寺で春永を討つまでですが 昨今では「饗応」(序幕)、「馬盥」(三幕目)、「愛宕山」(三幕目)のみの上演が多く 今回も、この三場の上演になります。
全体の詳しい流れが知りたかったのですが、さっくり調べたところでは見つかりませんでした。
いづれ機会がございましたら五幕通してのあらすじをまとめてみたいと思います。
それにいたしましても・・・この舞台が義太夫狂言でなく南北の舞台というところがおもしろいです。(^^ゞ



「饗応」
幕開き舞台は勅使の饗応をするための御殿の仮屋 上手から歌昇丈・山口玄蕃、下手から芝雀丈・桔梗の出になります。
出だしから時代物にはよくある展開なのですが とりあえず今回の上演範囲内では、この場面から繋がるお話しは無いのですね。
芝雀丈・桔梗が下手に入る時、いいよる玄蕃にツンっとするところが可愛かったです。


吉右衛門丈・光秀は舞台二重の御簾が上がって中央からの出になります。
パッと見、若狭之助かと思うような烏帽子大紋の拵えで すごく若々しく見えました。
色合いが、灰色がかった水浅葱に思えたのですが・・・筋書きの写真は灰色なのです。(^_^;)
桔梗と玄蕃の様子を見ていて簾内から声をかける吉右衛門丈・光秀はとても大きくて台詞の篤みなど怖いくらいの押しがございます。
ここで、大きな光秀を見るので 後に春永に対して自らの念を抑えるような凄みが効いてきます。
出始めの陰に籠った重圧感が、春永の登場後も続きます。
どことなく平然とした雰囲気で 下手に出てはいるけれど、ハラでは春永を馬鹿にしている感じがいたします。
馬鹿にしつつ、春永の気性と立場を考えて我慢しているように思えました。
なので、もっともらしく理屈を言う光秀に分の無さを感じてしまいます。
鉄扇で叩かれちゃってもしかたないんじゃない とか思ってしまうのですね。
どうしても光秀に自分の気持ちを乗せることができませんでした。(^_^;)
これが良いのかは?です。
ただ、この場では 春永との性格や考え方の違いが見えてくると申しますより 光秀は根暗なんだな〜 っと、思いました。
ワタクシ、こういう舞台(例えば「鏡山旧錦絵」とか「俊寛」とか)を見ますと たいてい上手に位置する人の心情の方が理解しやすいのです。(笑)


対する富十郎丈・春永 さっくりと力みが無く、嫌味に感じません。
天幕を引き下ろすところや饗応のための用意を蹴散らすところなど、加減があり芝居としての品が感じられるので生々しさがございません。
時代物のガッツリした雰囲気は少ないように感じましたが 心情としては春永の方が理解できました。(笑)


ほか、種太郎丈・力丸 台詞、声の感じが場内に通るようで良いと思いました。
‘とても良いけれど、これは誰だろう?‘ っと、思いました。
これまでより 一段、上がった感じです。



「馬盥」
大太鼓が入り、笛の音の寺方の合方で幕開き 舞台は本能寺 富十郎丈・春永が花道からの出になります。
この場の衣装は小忌衣、足を気遣って舞台の上手の椅子に座ります。
ここもさっくりした運びですが 活花一つで見せる、形ではない真意への要求が分かります。
さらに、富十郎丈・春永は単純に気性の激しい暴君ではなく 用意周到な知恵者の雰囲気がございます。
取り成しの者たちに問いただす台詞「いとわぬか?」っと、問う一言の内にハラにある光秀への制裁の念が窺えます。
光秀の本意ではない恭順を疎ましく感じている春永の心情が見えてきます。
こういうところ、富十郎丈・春永が 手に負えない駄々っ子のような暴君ではなく、周りに居る家臣や光秀より心情的にも格上な感じが伝わり、ハラがしっかりしていて良いと思いました。
順番が前後いたしますが。このまま書きます。
対面を許された光秀が来たところ 「光秀近う」っと言う台詞に迫力があり、凛とした気位の高さがうかがえます。
また、切髪を見せた後 富十郎丈の春永には光秀への情が感じられます。
これまでの仕打ちが単純に光秀憎しではなく 家臣として光秀の力を使いたい、だから黙ってついて来い っと、いうように見えました。
荒さ、緻密さ 一色でない人物像を見せる幅がございます。


吉右衛門丈・光秀は蘭丸に呼ばれて花道からの出になります。
花道七三は見えませんが(^_^;) 台詞がコッテリとして大きく感じ 舞台上の富十郎丈・春永と斜めに客席を圧します。
とにかく、大きいです。
舞台に上がってから、春永の前に出るところ 重圧感があり立派です。
ここから後 馬盥で酒を飲むところ、久吉の下に着くよう命じられるところ、領地を取り上げられても所望の名剣日吉丸が人手に渡っても 表情をあまり変化させん。
重圧感はございますが 光秀に強い不満の色合いは見えず、内面の怒りも感じられません。
また春永の仕打ちに耐えているような雰囲気も少ないです。
とらえどころが無く感情を見せないところに根暗な光秀像が浮かびまして 陰湿で何を考えているのか分からない不気味さを感じます。
‘見せないところを見せる‘っと、いうことでは しっかり見せている舞台で、リアルに不気味で怖さを感じましたが 竹本が無いこともあり、歌舞伎のコッテリとした時代物の雰囲気は少なかったように思います。
白木の箱に切髪を見たところから少し雰囲気が違ってきて台詞に辛さが滲み出ます。
切髪を見た時の光秀と春永の決まり、ツケが入ってキッと決まったところの大きさがとても良いです。
ですが、生な火花は散らず 散らないところが上手いと思いました。
あくまでも、見せない芝居で 「僅かな値に変えて」っと、絞るような台詞ですが、それでも本意のハラは見えず とにかく我慢の光秀に見えます。
皆がこの場を去って舞台には吉右衛門丈・光秀一人が残り、静寂の舞台になります。
場内の静寂と緊張がスゴイ、大舞台です。
黙って箱を抱えて花道へ ここで「御還向」っと声が入り、七三でようやくグ〜ッと大きく変わるように光秀の心底が見えてきます。
ですが、まだ爆発するような感情の変化は見えてきません。
静寂の中で内側へ向かう激情が垣間見える感じです。


ほか、この場は 出すぎず控えすぎず、楚々とした雰囲気と気遣いを感じる芝雀丈・桔梗 台詞がたっぷりとして大きな芝居の吉之丞丈・園生の局が良いと思いました。



「愛宕山」
竹本の語りがございませんので、この場の前半はさらっと見てしまいまして 大舞台と感じましたのは後半、灯火が消えてからで 吉右衛門丈・光秀がすごく不気味で怖いです。(^_^;)
介錯のための日吉丸を改めるところなども 上使の二人の先は分かっているのにドキドキいたします。
汐入の合方(笛の入った合方)で辞世の句「時は今 天が下知る皐月かな」っと詠みますが 重圧で怖いくらいの気迫です。
で、上使を斬って ここまで抑えていた光秀の想いが一気に爆発します。
三宝を踏み砕いて大きく決まる見得、四王天但馬守が駆けつけてからの大笑い 客席で見ておりまして、すっきりいたします。
ですが、やっぱり光秀は根暗だな〜 っと、思ってしまいました。(笑)
この場の前半、白装束になる前の衣装 舞台を見た時には、銀色がかったグレーに見えまして良い色合いだな〜 っと、思いました。(筋書きの写真を見ますと鶯色っぽく見えまして、ライトや印刷の加減でズイブン違って見えるのだな〜 っと、思いました。)


ほか、魁春丈・皐月に品格があり良いと思います。
幸四郎丈・四王天但馬守が幕切れ前を大きくしていました。
ご兄弟 声が似ていて、台詞の聞き分けができませんでした。(笑)



全体には 吉右衛門丈・光秀の不気味さが一貫して感じられる 緊張感と篤みのある舞台だと思います。
富十郎丈・春永と吉右衛門丈・光秀の確執がガシガシと生でそのまま見えるのではなく 芝居として練れて見えていたと思います。
時代浄瑠璃の舞台ではございませんが 芝居としておもしろく、重圧感もございました。











☆今回の「お祭り」は‘名残惜木挽の賑‘っという副題が付いておりまして 山王祭りではなく、木挽町のお祭りになっています。
また、今回は鳶頭が五人と賑やかで それに芸者と手古舞も一緒の華やかな舞台になっています。
舞台の様子が「勢獅子」(こちらは常磐津ですが)と似ておりまして、ちょっと勘違いしてしまいそうです。(笑)

もとの「お祭り」は1826年初演の「再茲歌舞伎花轢(またここにかぶきのはなだし)」という所作事の三段目です。
山王祭りを題材にした踊りで 山車の行列を先導していた鳶頭が登場して、酔った勢いで惚気話を始めます。
大山参りの帰りがけ江ノ島あたりで出会った遊女とのクドキ、その気になって袖にされてあきらめて 洒落て都々逸となり 狐拳の踊りから 引き物尽くしの踊り地になり 二枚扇の獅子頭を持って若い者との所作立てになります。




屋台囃子で幕開き 上手に清元三挺四枚 大セリで鳶頭五人と手古舞二人の七人が出ます。
芝翫丈・芸者は花道からの出 黒地の衣装の芸者姿が粋でカッコイイです。
で、なんとなく ず〜っと芝翫丈を見ておりました。
仕抜きで他の方が踊っている時の芝翫丈 表情がリズムを取っていて、それを見ているのがおもしろかったです。(^_^;)
舞台正面奥に座っていらっしゃる芝翫丈、目立つのですね。(笑)
幕切れ間近の獅子は扇ではなく 染五郎丈と松緑丈それぞれが獅子頭を使って踊ります。
扇獅子の狂いの合方を取り入れたのだそうです。
幕切れは八人並んで散らし 芝翫丈が若い者を返して幕になります。

華やかで明るい舞台でしたので のんびりと見てしまいました。(^^ゞ











☆「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」は河内山宗俊と片岡直次郎を中心にしたお話しで 黙阿弥作、1881年(M14)初演の舞台です。
講談「天保六歌撰」(河内山、直侍、三千歳、暗闇の丑松、金子市之丞、森田屋清蔵の六人のお話だそうです)をもとにしています。

全体のあらすじは ↓このようなところです。





**********

湯島天神の境内で、真影流の剣客、金子市之丞が奉納試合を催し賑わっています。
しかし、ここへ博奕打ちの暗闇の丑松が因縁をつけてきたことから喧嘩になります。
市之丞は想いを寄せる吉原の遊女・三千歳を身請けする金を稼ぐために奉納試合を催していたのですが 三千歳が想うのは御家人崩れの片岡直次郎(直侍)で、丑松の兄貴分でした。



この喧嘩を納めたのはお数寄屋坊主の河内山宗俊 宗俊は強請りに行った質屋・上州屋で松江侯に奉公している娘・浪路の難を知り 二百両と引き換えに、娘を取り返してくる約束をします。



上州屋の元女中・おもとの夫は病の筆屋・幸兵衛 息子・新之助は上州屋に丁稚奉公していますが、吉原でお針仕事をするおもとの収入は僅かで 大口屋の寮番をしている親代わりの喜兵衛も力になってあげられません。
吉原に出入する按摩・丈賀の財布がなくなり、疑われますが 直次郎が三千歳の簪を抵当にして救ってやります。

一方、三千歳は 遣手婆のお熊に借りた金を催促され 返す当ても無く、直次郎に心中を持ちかけますが 直次郎は金のために死ぬのは嫌だと断ります。
しかし市之丞から身請けの話しが出て お熊から三千歳に貸した金も市之丞から出た金だと聞かされた直次郎は 借りた金、百両を返します。
あてが外れた市之丞は、闇討ちにする気で 後で飲みなおそうと根岸の料亭で会う約束をしてこの場を去ります。

ここへ宗俊が現れ 先刻の百両は上州屋から娘・浪路救出の前金として受取った金を融通したのだから 松江侯相手に一芝居打つ片棒を担ぐように直次郎に言います。
片棒を担いで半口乗った直次郎は さらに、三千歳が客からねだった五十両を受取り根岸へ急ぎます。

根岸では市之丞が直次郎を待ち伏せしていましたが 駕籠に乗っていたのは宗俊で、市之丞の突きつける白刃にもびくともしないのでした。



翌日、松江家上屋敷 意に従わない浪路を松江侯が手討ちにしようとするところを近習頭・宮崎数馬が止めています。
これを見た重役・北村大膳は数馬と浪路は不義の関係だと言いますが 家老・高木小左衛門は松江侯に諫言するのでした。
折りしもここへ上野輪王寺の使僧・北谷道海(実は宗俊)が供侍(実は直次郎)を従えてやって来ます。
宗俊はお家にかかわる大事と脅し松江侯を呼び出すと 浪路の話を持ち出し、浪路の帰宅を承諾させます。
引きあげようとする宗俊を北村大善が呼びとめ、正体を見破りますが 高木小左衛門が、これを制し 上野輪王寺の使僧・北谷道海として事を納めます。



薮入りの日に宿下がりしてくる丁稚奉公の倅・新之助を祝おうとして、落ちていた鯛を拾った幸兵衛は魚屋・藤五郎に盗人と呼ばれ切腹するところを直次郎と三千歳に救われます。
三千歳は藤五郎の養女、直次郎は幸兵衛の父と師弟関係でした。

おもとの弟・半七が奉公先の金二百両を旗本・比企東左衛門邸の影富で騙し取られますが 直次郎がこれを取り戻してきます。
しかし、このことからお尋ね者となった直次郎は江戸を離れ甲州の母親に会いに行く事にします。



早春の雪の日 入谷の蕎麦屋で按摩の丈賀に出会った直次郎は三千歳が病になり、大口屋の別荘で養生していると聞きます。
直次郎は三千歳に会いに行きますが 途中で丑松に出会います。
丑松は自分の罪を軽くするため直次郎を訴人するのでした。

直次郎を想い病になった三千歳でしたが 高飛びする直次郎は、これが別れと起請を返そうとします。
しかし、半七が騙し取られた金の事で、直次郎に恩を受けた寮番の喜兵衛の説得で 直次郎は三千歳と共に駆落ちする事にします。

折りしもここへ市之丞が現れ 三千歳を身請けしたと言って直次郎を愚弄しますが 三千歳の年季証文を投げつけてこの場を去ります。
市之丞は三千歳の養父・藤五郎から 三千歳は腹違いの妹だと知らされたのでした。
踏込んできた捕手から逃れた直次郎は丑松を懲らしめ、宗俊を暇乞いに訪ねます。



松江邸での一件でお尋ね者となった宗俊は覚悟を決め 上州屋から受け取った金を本妻と妾に分け与え、身辺の始末を付けると 捕手が来るのを待っていました。
高飛びするつもりで訪ねて来た直次郎も宗俊の覚悟を見て、自らも覚悟を決めます。
半七が上州屋の婿として跡を取ることになり 三千歳は市之丞に託し 全て片を付けて宗俊と直次郎は捕らえられます。

**********








幕開きは松江邸 時間の都合だと思いますが、今回の舞台は上州屋はございませんで「松江邸広間の場」から始まります。
まあ、知られた演目ですから これでも分からない事はございませんけれど でもチョッと唐突な始まり方でした。
ですが 世話物ということもございまして さっくりと楽しく見てしまいました。



まず、幸四郎丈の河内山 もっと砕けた感じかと思ったのですが 茶目っ気はあっても軽くならず、コッテリとした大きさ格がございます。
また、一癖も二癖もあるハラが見えておもしろい(笑えるという事ではなく)です。
これまでにも何度か「河内山」は見ておりますが 今まで見ました中では一番‘河内山宗俊‘に見えました。(笑)
大きさ、ハラの太さ、押しがございますが 何より一番良いと思いましたのは‘悪党‘に見えるというところです。
何かに対抗するとか、胸ポンの頼れる人とかではなく ただの金欲しさの小悪党の強請りに見えるところがとても良いです。
今回、はじめて‘あ〜、河内山って 世間的には悪い奴なんだ‘ っと、思えました。(笑)
存在に大きさはございますが、小悪党なのです。

「広間の場」での松江出雲守に対する時の粘っこさ 嫌味っぽくて、いかにも‘強請り‘な感じです。(^^ゞ
それでいて 金に手を出そうとして時計の音に驚くあたり 幸四郎丈らしい茶目っ気があり 河内山の‘小‘悪党な感じが見えます。
「玄関先」では大膳相手の開き直りに 悪い奴の太っ腹な凄みがございます。
ですが、これがお芝居としておもしろく 見ておりまして胸のすくような舞台です。
花道に出てからの「ば〜かぁめぇ〜」の台詞 幸四郎丈のこの台詞、ケッコウ引っぱっる感じで とっても気分良かったです。(笑)
で、この前の台詞の中にございました「しゃしゃり出て土手に手をつく蛙かな」っというのはなんでしょうね?
とっさにメモってしまったのですが(笑) 幸四郎丈の工夫なのか、どこからかの引用なのか、ちょっと調べたのですが分かりませんでした。



対する、梅玉丈・松江出雲守 大名に見える品があり かつ、我がままで短慮な感じが伝わります。
育ちの良い我がまま坊ちゃんのような雰囲気でございましょうか。(^^ゞ
ですが、ただの我がまま坊ちゃんではなく 多くの家臣を従える格、大きさがございます。



段四郎丈・高木小左衛門 真面目で懐の大きな雰囲気がございます。
舞台が締まって良いと思いました。
ですが、出雲守に対して もっと押しがあってもいいように感じました。
門之助丈・宮崎数馬は一生懸命なところキッパリしたところが良いです。
真っすぐな感じに好感が持て 出雲守を諌めるところなどは十分な押しがございます。
高麗蔵丈・浪路 やはり少しキツイように感じました。
錦吾丈・北村大膳 もっと憎々しい雰囲気が欲しいです。
歌舞伎の舞台ですので、その範疇での品があるのは良いと思うのですが 広間での数馬や小左衛門、玄関先での河内山に対して もっと憎々しい押しが欲しいと思いました。



全体には、大きさ十分で楽しめる舞台だったと思います。
ワタクシ的には 昼の部で一番おもしろいと思いました。(^^ゞ
なので、よけい上州屋から見たかったです。






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