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| 歌舞伎座 昼・夜通し 三階B上手・三階B下手の席 |
*元禄忠臣蔵 昼の部 *江戸城の刃傷 二幕 *最後の大評定 二幕 *御浜御殿綱豊卿 二幕 夜の部 *南部坂雪の別れ 二幕 *仙石屋敷 二幕 *大石最後の一日 一幕 |
【昼の部】 江戸城の刃傷 浅野内匠頭:梅玉 多門伝八郎:彌十郎 戸沢下野守:進之介 片岡源五右衛門:松江 稲垣対馬守:男女蔵 平川録太郎:亀鶴 大久保権右衛門:桂三 庄田下総守:由次郎 加藤越中守:萬次郎 田村右京太夫:我當 第一幕 第一場 江戸城内松の御廊下 第二場 江戸城内御用部屋 第二幕 田村右京太夫屋敷小書院 あらすじはこちらでどうぞ 最後の大評定 大石内蔵助:幸四郎 井関徳兵衛:歌六 岡島八十右衛門:家橘 磯貝十郎左衛門:高麗蔵 片岡源五右衛門:松江 井関紋左衛門:種太郎 大石長男松之丞:巳之助 戸田権左衛門:錦吾 堀部安兵衛:市蔵 武林唯七:右之助 奥野将監:東蔵 大石妻おりく:魁春 第一幕 第一場 播州赤穂城下大石内蔵助屋敷玄関 第二場 〃 中座敷 第三場 〃 元の玄関 第二幕 第一場 赤穂城内黒書院の間 第二場 赤穂城内大手御門外 城外往還 あらすじはこちらでどうぞ 御浜御殿綱豊卿 徳川綱豊卿:仁左衛門 中臈お喜世:芝雀 富森助右衛門:染五郎 上臈浦尾:萬次郎 御祐筆江島:秀太郎 新井勘解由:富十郎 第一幕 御浜御殿松の茶屋 第二幕 第一場 御浜御殿綱豊卿御座の間 第二場 御浜御殿入側お廊下 第三場 御浜御殿元の御座の間 第四場 御浜御殿能舞台の背面 あらすじはこちらでどうぞ 【夜の部】 南部坂雪の別れ 大石内蔵助:團十郎 羽倉斎宮(いつき):我當 腰元おうめ:芝雀 腰元夜雨(よさめ):高麗蔵 寺坂吉右衛門:松江 堀部弥兵衛:家橘 落合与右衛門:東蔵 瑤泉院:芝翫 第一幕 芝高輪泉岳寺の境内 舞台は雪の泉岳寺 内匠頭の逮夜ということで堀部弥兵衛ら数人の浪士が墓参にやって来ます。 するとここへ、国学者の羽倉斎宮が現れ 昨今の内蔵助の行動に失望したと言い 止めるのも聞き入れず墓参のためこの場を去ります。 しばらくして内蔵助がやって来ますが 仇討を前に墓参する弥兵衛らの姿を見て、軽率な振る舞いはしないよう言うのでした。 内蔵助が墓所へ向かおうとするところへ 墓参から戻って来た羽倉斎宮が通りかかります。 羽倉斎宮は討入りの手引きをすると言いますが、内蔵助はこれを断るのでした。 第二幕 第一場 三次浅野家中屋敷 第二場 三次浅野家中屋敷瑤泉院様御居間 第三場 三次浅野家中屋敷門外 あらすじはこちらでどうぞ 仙石屋敷 大石内蔵助:仁左衛門 吉田忠左衛門:彌十郎 磯貝十郎左衛門:染五郎 間十次郎:高麗蔵 富森助右衛門:男女蔵 大高源吾:亀鶴 大石主税:巳之助 桑名武右衛門:錦吾 鈴木源五右衛門:由次郎 堀部安兵衛:市蔵 武林唯七:右之助 堀部弥兵衛:家橘 仙石伯耆守:梅玉 第一幕 仙石伯耆守役宅大玄関 第二幕 第一場 仙石伯耆守役宅表の間大書院 第二場 仙石伯耆守役宅元の大玄関 あらすじはこちらでどうぞ 大石最後の一日 大石内蔵助:幸四郎 おみの福助 磯貝十郎左衛門:染五郎 富森助右衛門:男女蔵 細川内記:米吉 久永内記:桂三 吉田忠左衛門:彌十郎 堀部弥兵衛:家橘 堀内伝右衛門:歌六 荒木十左衛門:東蔵 第一場 芝高輪細川家中屋敷下の間 第二場 芝高輪細川家中屋敷詰番詰所 第三場 芝高輪細川家中屋敷大書院 第四場 芝高輪細川家中屋敷元の詰番詰所 あらすじはこちらでどうぞ |
「元禄忠臣蔵」は 1934年(S9)に「大石最後の一日」が初演され、その後6年間にわたり全十編が上演されました。 真山青果作の新作歌舞伎です。 史実に基づいた台詞で見せていく舞台で 見ておりましても気の抜けない舞台です。(^_^;) 見取りで「御浜御殿綱豊卿」や「大石最後の一日」の上演が多く 通しでは、2006年に国立で3ヶ月間にわたっての上演が記憶に新しいところです。 歌舞伎座では昼夜通しで六編を上演するのは二十二年ぶりだそうです。 ☆「江戸城の刃傷」はお話の発端になるところですが 「仮名手本忠臣蔵」のように刃傷に至る経過や、その現場を舞台で見せることはなく 事件として内匠頭が上野介に斬りかかったという事からお話が始まり、なぜ斬りつけたのかの理由も明らかにはなりません。 初演は1935年(S10)です。 第一幕第一場「松の御廊下」 ここからお話が始まります。 この場は梅玉丈・内匠頭がスゴク良かったです。 見ている方も悔しくなるくらい無念な想いが伝わりました。 これはたぶん、後で羽交い絞めにしている菊十郎丈・梶川与惣兵衛のねちっこい感じも良かったのだと思います。 見ておりまして‘離してあげればいいじゃん‘とか、イラッといたしました。(笑) この舞台は刃傷に至る原因や経過が示されませんので これから先のお話の源になるのは、この場の内匠頭の‘無念‘のみです。 そういう事からも 梅玉丈は内匠頭の‘無念‘をしっかりと客席に印象付けていたと思います。 大袈裟に見せるのではなく、抑えがたい心情が台詞を通して伝わる感じなのでドタバタぜず品格があります。 さらに、今回は 刀を手放そうとしない内匠頭の武士としての心情が伝わり 内匠頭も武士を貫こうとした人なのだと気付きました。 短慮からではなく、あくまでも侍の志を持ってした行動なのだと思えました。 刀を手放す事を拒む梅玉丈・内匠頭の悲愴な雰囲気が印象に残ります。 彌十郎丈・多門伝八郎は どちらかと申しますとあっさりした雰囲気の伝八郎ですが 落ち着いて冷静、うわべだけでない思慮深さがあると思いました。 懐が大きく、やさしさを感じさせます。 少し前後いたしますが 出だしのところの亀鶴丈・平川録太郎、台詞が大きくて存在感があり、目を引きました。 第一幕第二場「御用部屋」 ここは彌十郎丈・多門伝八郎の勢いだけではない思慮分別からくる意見が良いと思います。 はじめは物静かですが、クレッシェンドしていくようで 抑えがたい心情の起伏が見え この場のどうにもならない状況への不満や憤りが感じられます。 勢いや気骨のあるようには見えませんが 武士としての一本筋の通った心情を持ち、思慮分別のある多門伝八郎だと思います。 対する萬次郎丈・加藤越中守は品格十分で さらに、力強い大きさがございまして 最後に伝八郎を一喝する時の迫力はスゴイです。 他、男女蔵丈・稲垣対馬守がキッパリしています。 第二幕「田村右京太夫屋敷」 我當丈・田村右京太夫、声の張りが良いでね〜。(^^ゞ この場の田村右京太夫は ともすると、意地悪く見えることもあるのですが 我當丈の田村右京太夫は淡々としています。 彌十郎丈・多門伝八郎は この場でも、やはり良いお役です。(笑) 泰平の世、組織として出来上がってしまっている中で その流れに安易に流されようとせず自己を持ち続けているのが分かります。 けれど、気骨のある人柄という事ではなく 思慮分別のある中で、自己の主張として意思表示しているように見えます。 梅玉丈・内匠頭は、一貫して‘討ち果たせなかった無念‘が伝わります。 また、片岡源五右衛門を見た時のハッとした様子が印象深いです。 義太夫狂言の様に、この場の心情が語られるわけではございませんが 後の「仙石屋敷」で内蔵助が仙石伯耆守の問いに対して 内匠頭は短慮で刃傷におよんだのではなく覚悟の上の事だった っと、答えた時に この場面が思い浮かびました。 ☆「最後の大評定」は内匠頭切腹の一ヶ月後の赤穂でのお話になります。 内蔵助は城明け渡しなどを進めますが 本心は天下の御政道に反抗する気だと言います。 これからの内蔵助の行動の出発点になるところで、1935年(S10)の初演です。 第一幕「内蔵助屋敷玄関」「中座敷」「元の玄関」 内蔵助の家族の状況、藩内のいざこざ そして、井関徳兵衛との再会が描かれます。 魁春丈・おりくは、凛として押しの強さや大きさも感じますが 出過ぎることが無く常に一つ引いたところが、この場の雰囲気に合っていて良いと思いました。 歌女之丞丈に歌舞伎味がございます。 巳之助丈は2006年の国立で第三部の主税をお勤めでしたが 今回は(ここは、松之丞ですが)台詞、声の調子などとても良くなっておりまして 頑張っていらっしゃるな〜 っと、嬉しく思いました。(^^ゞ 歌六丈・井関徳兵衛は、ヘソ曲がりな感じがございまして(笑) 身近にも居そうな昭和一桁の頑固親仁のようです。(^_^;) いえ、それがダメという事ではございませんで 頑固な一途さに、そうせずにはいられない性のようなものがあり(たぶん、それが武士としての生き方だと思っているからでしょう) 他の道を選べない(選ばない)寂しさを感じます。 とても篤み深さのある徳兵衛だと思います。 種太郎丈・井関紋左衛門が頑張っていらっしゃいました。 このお役の持つ‘まだ何も分からないのに道を決められてしまった悲劇‘のようなものが見えてきます。 「内蔵助屋敷玄関」で見た気の弱そうな優しげな姿が本来の紋左衛門なのでしょう。 メチャクチャな徳兵衛に、気弱に困った様子がどことなく微笑ましく それゆえ、若い身での覚悟に儚さを感じます。 で、幸四郎丈・内蔵助ですが 大きくて優しさが感じられ、とても良いと思いました。 松之丞を諭すところの親としての想いや優しさ 玄関先で徳兵衛に対する時の意志と強さ 十分に大きな内蔵助だと思います。 あの・・・今回は観劇日が後半という事もございまして いろいろと情報を得てからの観劇で あまり期待していなかったのですね。m(__)m ですが、余計な事を考えなければ 分かりやすく、自分の感情を乗せやすく 見やすい運び方だと思いました。 単純に芝居として見て楽しかったです。 第二幕第一場「黒書院の間」 ここの幸四郎丈・内蔵助、イマヒトツ強さは感じなかったのですが 十分な大きさは感じられました。 自己の思いを強く見せるのではなく 周りの意思を懐大きく受けとめるような内蔵助だと思います。 また、ただ受けばかりではございませんで 市蔵丈・堀部安兵衛に対する時など キッチリ抑えるところは、強さを出しているように見えました。 周りの状況を見定め 確固とした自己の意思を持ち 状況と意思との隔たりをどのようにするのか判断し 結論を出し 皆をまとめる 冷静でなければできない事だと思います。 幸四郎丈・内蔵助は リアルに筋道が分かるように描き出していたと思います。 ですが、大きな動きがあるわけではございませんので ハラのある台詞がものを言うところかと思うのですが リアルな分、歌舞伎味は薄く、少し物足りないように思えました。 第二幕第二場「大手御門外」 この場は歌六丈・徳兵衛が良いです。 ハッキリとした意志、目的があることが分かり そこへ辿り着くことへの哀れさを感じます。 どうしてもこの道を、それも息子を道連れに進まなくてはいけないのかと思ってしまいまして とても切ない感じです。 やはり、台詞などはどちらかと言えばリアルですが 失われつつある侍心、武士道というようなものを持ち続けている事は十分に伝わります。 思えば・・・内匠頭も徳兵衛、紋左衛門 そして内蔵助たち赤穂浪士 皆、武士ゆえに死を選ぶ者ばかりです。 幸四郎丈・内蔵助は大きいですが それ以上に、優しさ そして決意を感じます。 この幕切れ 花道に立った幸四郎丈・内蔵助に、抑えた激情がスパークするようでした。 心情を完全にハラで見せる見せ方も良いですが 幸四郎丈のように気付かせるような見せ方も良いと思いました。 ☆「御浜御殿綱豊卿」は「元禄忠臣蔵」全編の中でも上演頻度が高く 赤穂浪士以外の人物(綱豊)を軸にお話が展開する舞台です。 1940年(S15)初演です。 今月一番の舞台です。 もう、見る前からたぶんそうなのだろうな〜 っと、思っておりまして やはりそうでした。(^^ゞ 第一幕第一場「松の茶屋」は 仁左衛門丈・綱豊、一本芯のあるところに優しさや懐の大きさが見えます。 それと、危うい政情をやり過ごしている自己に対する自身と、そこからくる上から目線を容認できるほどのカッコよさがございます。 「一文の御報謝」っと言われて「ぜぜを持った事がない」と答え これがカッコよく思えるのが仁左衛門丈の綱豊だと思います。(笑) 秀太郎丈・江島は多少世話がかっておりますが、秀太郎丈らしい温かみがございます。 芝雀丈・お喜世は、武家に仕える品格はございますが 綱豊の台詞にあるように町娘の様な可愛らしさも感じます。 それと歌舞伎味がございまして 見ておりまして、なんとなくホッといたしました。(^^ゞ また、萬次郎丈・浦尾は品があるので それほどニクニクな感じではございません。 第二幕第一場「綱豊卿御座」の仁左衛門丈は先ほどとは趣きも異なり、落ち着いていて さらに、厳しさが見られます。 この場の前後、共に上から目線の綱豊ですが この場は、等身大の心情が垣間見えるところかと思います。 このあたりの舞台の流れのメリハリが上手いです。 富十郎丈・新井勘解由はホットな先生です。(^^ゞ 第二幕第二場「お廊下」で染五郎丈・富森助右衛門の出になります。 この場はまだチャメッケのある雰囲気です。 第二幕第三場「元の御座」 ここはもう、仁左衛門丈・綱豊の台詞がスゴイです。 緩急のある台詞で、新作歌舞伎なのに耳に心地良く ケッコウ難しい事を言っているはずなのに分かったような気になります。(^^ゞ それで、この場でのオモイッキリな上から目線がなんとも良いです。 今回は互角に渡り合う綱豊と助右衛門ではなく 初めから上から目線の綱豊を楽しんでしまいました。 おそらく、これは対する相手が染五郎丈の助右衛門ゆえに成り立つ事なのかと思うのですが ガップリ組んで丁々発止とやりあうと言うより 完全に相手は手の内 そこで、どのように真意を聞き出そうか っと、言う感じなのだと思いました。 始まる前から結果の予測ができる綱豊と助右衛門かもしれませんが それでも、仁左衛門丈がカッコ良いので私はOK.でした。(笑) 対する染五郎丈・助右衛門は大健闘だと思います。 声の擦れもそれほど気にならず、メイッパイで仁左衛門丈・綱豊にかかって行ったと思います。 なので、判官贔屓ではございませんが 綱豊が浅野家再興を綱吉に申し出ることを知った染五郎丈・助右衛門の「浅野家再興の儀は」っと、言う一言に打たれました。 で・・・この後の仁左衛門丈が(助右衛門の様子から仇討の真意を知ってニヤッとしたところなど嬉しくなってしまいます)超カッコよくて(^^ゞ 懐の大きさや頼れる感や優しさにカッコよさを感じます。(笑) ありえないことですけれど 綱豊=仁左衛門丈 に、見えてしまうんですね〜。 上手すぎです。 第二幕第四場「能舞台の背面」 この場で綱豊が助右衛門に説いた‘結果ではなく、その過程が誠実である事が大事だ‘ っと、いうような事が 後の「仙石屋敷」で活きてきます。 ここもやっぱり仁左衛門丈の大きさカッコよさが際立ちました。 幕切れ前、能舞台へ向かう綱豊のナルシスティックな雰囲気が、もう最高に良かったです。(^^ゞ ☆「南部坂雪の別れ」は 史実にあったことではなく 黙阿弥の「四十七刻忠箭計(しじゅうしちこくちゅうやどけい)」を元にした舞台で 討入り前夜、内蔵助が瑶泉院を訪ね、討入りの覚悟を伝えるところです。 1938年(S13)初演です。 第一幕「芝高輪泉岳寺の境内」 この一幕は2006年の国立では上演されなかったところで 赤穂浪士の様子や羽倉斎宮(はぐらいつき)の内蔵助に対する心情などが描かれています。 この一幕がございますと 後の「三次浅野家中屋敷門外」での内蔵助と羽倉斎宮とのやり取りが、どういう経緯から生じたのかがわかりやすくなります。 ここの内蔵助は團十郎丈です。 少しお痩せになったように見えましたが 台詞やお役の奥深い感じは、変らず存在感のある内蔵助です。 雪の中、袴の裾を摘んで歩く姿が、なんとも團十郎丈の内蔵助らしく(笑) 元来の内蔵助の穏やかな人柄が見えるようです。 羽倉斎宮に対しても ‘暖簾に腕押し‘のような内蔵助が、飄々としてわざとらしくなく自然に見えてきます。 対する我當丈・羽倉斎宮は イライラ感がよく伝わり、真っすぐな想いを持った人物として見えてきます。 口跡が良く、歌舞伎座の場内を響かせて抜けていくような台詞は素晴らしいと思いました。 第二幕第一場「三次浅野家中屋敷」では煤払いの様子から舞台が始まります。 芝雀丈・おうめは控えめで良いのですが もう少ししどころがあってもいいようにも思えました。 もったいない感じです。(^^ゞ 高麗蔵丈・夜雨は、大名家の腰元にしては賑やか過ぎ 間を取って芝のぶ丈・みゆきが丁度に見えました。(笑) 東蔵丈・落合与右衛門が優しい雰囲気です。 第二幕第二場「瑤泉院様御居間」は芝翫丈・瑤泉院が良いと思いました。 藤色の被布がとてもよくお似合いで品があり素敵です。 内蔵助に会い、早く話しを聞きたい様子が 髪に手をやるような細かい所作から窺えます。 立役の多いガッシリとした舞台ですが古典ではございませんので 新作歌舞伎として、こういうところのさりげないリアル感はさすがだな〜 っと、思いました。 それでいて 徐々に状況が煮詰まってきてからは、何もせずただじっと大きく受けて内蔵助に集中するような存在感がございます。 東蔵丈・落合与右衛門は優しくて真面目な感じです。 で、この場の團十郎丈・内蔵助 心中を語らない辛さ 一番分かってもらいたい人、語りたい人に何も話せないもどかしさが見えてきます。 また、淡々とした様子や台詞に 人としての寂しさが感じられ たった一人、語ることもできない孤高な様子に 内蔵助の真の強さを見るようです。 とても奥ゆきのある内蔵助だと思いました。 第二幕第三場「中屋敷門外」 我當丈・羽倉斎宮、こういうタイプの人って居るな〜 っと、思いつつ見てしまいました。(^^ゞ たいてい‘できるタイプ‘で一生懸命に物事に取り組む人ですね。 型で見せる古典でしたら敵役かもしれませんが 新作歌舞伎ですので、わりと身近に居そうな人に思えました。(笑) 単純にイジワルに見えないところが良いです。 この場の團十郎丈・内蔵助も、じっと耐えている内蔵助ですが 重圧感があり懐が大きく また、ピリピリしないおおらかさを感じます。 幕切れ前 瑤泉院と落合与右衛門に見送られる内蔵助に泣けました。 ☆「仙石屋敷」は、討入り後のお話になります。 「元禄忠臣蔵」では討入りの場面そのものは上演されませんで その折の様子は、この「仙石屋敷」で仙石伯耆守の取調べに対して内蔵助や赤穂浪士が語るだけです。 ですが、ここで内蔵助は伯耆守の問いに答える形で この討入りは、内匠頭の無念を晴らすため、各個人の意思で行われたことだと語ります。 吉田忠左衛門と富森助右衛門が伯耆守に訴え出る場面は1938年(S13) 伯耆守の取調べとそれに答える内蔵助らの場面は1939年(S14)に初演されています。 第一幕「大玄関」 幕開きは梅蔵丈・谷土源七と梅丸丈・伴得介の出から始まります。 何気ない屋敷の朝の様子ですが 梅丸丈が背が伸びてスッキリとなさって、びっくりいたしました。(^^ゞ 声変わりに入ったご様子で 少し声が辛そうでしたが、それほど違和感はございませんでした。 いや〜、それにいたしましても よそのお子は大きくなるのが早いですね〜。(笑) これからも頑張って欲しいです。 この場の梅玉丈・伯耆守は 私の観劇日には、それなりに練れていたようで 上手く加減を取っていらっしゃって 喜びようにあざとさはございませんでした。 梅玉丈・伯耆守のうれしい様子は 世相の‘仇討できて良かった感‘を上手く客席に伝えていたと感じます。 彌十郎丈・吉田忠左衛門の優しい雰囲気に きっと、内匠頭の刃傷などなければ今頃は穏やかな日々を送っていたのだろうな〜 っと、いうよな奥行を感じます。 第二幕第一場「表の間大書院」 ここは前半は梅玉丈・伯耆守の台詞が良いです。 新作歌舞伎の台詞が上手い役者さんですし、捌き役がニンにございますから 聴き応えのある台詞劇になっていたと思います。 中間では 手柄のあった浪士の話から仇討当時の様子が語られ 何人かの役者さんで舞台を繋いでいきます。 で、後半からは ほとんど動きもなく 仁左衛門丈の台詞でお話が展開していきます。 仁左衛門丈・内蔵助が良いです。 今回、「元禄忠臣蔵」の内蔵助は初役ということですが さすがに、台詞の緩急のつけ方が上手く 十分に歌舞伎味を感じる舞台でした。 昼の部の綱豊卿よりも 多少、重たい声質の台詞で重圧感があり 抑揚、緩急のある台詞で 動きがほとんど無い舞台を飽きさせません。 また、言っていること伝えたいことが、しっかり伝わるので 何だか泣けてきました。 内匠頭の無念を晴らすための討入りであったと話す内蔵助の言葉に、昼の部の一番はじめ 羽交い絞めになった内匠頭の‘無念‘な様子が甦ってくるようでした。 この場は 仁左衛門丈と梅玉丈が、がっしりと対していて また、それぞれのニンが活きた舞台だと思いました。 第二幕第二場「元の大玄関」 巳之助丈・主税が良いと思いました。 同じお役で同じ場面を2006年の国立で見ておりますが 全体的な落着き、台詞や声、雰囲気などとても良くなっていたと思います。 仁左衛門丈・内蔵助は情があり、やはり優しいです。 もちろん内蔵助としてのキッパリした強さはございますけれど 元来お持ちの柔らかさが親の情として見えてきます。 とても歌舞伎味を感じさせる内蔵助だと思いました。 ☆「大石最後の一日」は1934年(S9)初演で、「元禄忠臣蔵」の一番はじめに上演された舞台です。 お話としてはラストですが、舞台の上演としては出発点になるところです。 第一場「細川家中屋敷下の間」、第二場「詰番詰所」、第三場「大書院」、第四場「元の詰番詰所」 ここは「元禄忠臣蔵」というお話の中で一ヶ所だけプライベートな部分が描かれているところです。 それと同時に討入りに至る源、初一念を貫いた内蔵助の姿が描かれます。 幸四郎丈・内蔵助、私は良いと思いました。 2006年国立の時は、やたらと地味だった っと、いう印象が強かったのですが 今回は 舞台としての華、歌舞伎芝居の雰囲気があったと思います。 かなり理屈っぽく、感情を見せ過ぎかもしれませんけれど その分、見ていて分かりやすい内蔵助です。 大きさや落着きがあり また、大きな事を成し遂げた後の平穏な雰囲気を見せていたと思います。 幕切れ間近の「初一念が届きました」っという台詞は とても穏やかに聞こえ、全てを成し遂げたという内蔵助の心情をよく伝えています。 また、昼夜通して上演された、今回の「元禄忠臣蔵」のラストを印象付けたと思います。 福助丈・おみのは、感情過多 かなり‘ぶりっ子‘の感じでしたが 私には許容範囲でございましたし 一日通して見てきた舞台の中で、お話の起伏としてラストに盛り上がって良かったと思います。 おみのが内蔵助にすがりつくようにして泣き崩れるところなど 絶叫に近い泣き方でしたが、これに理屈ぬきで泣けました。 この絶叫のような訴えが おみのの十郎左衛門に対しての想いの深さをより強く印象付けていました。 この場に限って言えば 内蔵助の初一念とおみのの情愛が対になるように見え 大義に飲み込まれた私情が痛ましく思えます。 難しい事を言わなければ(^_^;) やはり、見やすいと思いました。 初一念を貫き通した内蔵助だからこそ この時のおみのの一途な心情を理解できたのだろうな っとも思えました。 おみのと内蔵助、まったく立場の異なる二人の中に それぞれの‘一念‘を見ることで 幅、奥ゆきと申しましょうか ここまで‘討入り‘という一筋で進んできたお話に多様性を感じ、舞台の篤みが増したと思います。 歌六丈・堀内伝右衛門は気骨のある感じで、舞台が引き締まり良いと思います。 染五郎丈・磯貝十郎左衛門は、真面目で一途な潔さを感じる青年の雰囲気がございます。 作ってそのように見えるのではなく 自然にそのように見えるところが良いと思います。 今回の歌舞伎座での「元禄忠臣蔵」は1日での通しですので、一気に見きる勢いがあり 歌舞伎味がある舞台だと思いました。 |