2009年01月03日・18日      もくじへ戻る トップページへ戻る 
    歌舞伎座 夜の部   三階B上手より・三階B下手より

  *壽曽我対面
    一幕

  *新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子
    長唄囃子連中

  *鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)
    一幕二場


壽曽我対面

曽我五郎:吉右衛門
曽我十郎:菊五郎
舞鶴:魁春
近江小藤太:染五郎
八幡三郎:松緑
化粧坂少将:菊之助
梶原景時:錦吾
梶原景高:亀蔵
大磯の虎:芝雀
鬼王新左衛門:梅玉
工藤祐経:幸四郎


  あらすじはこちらでどうぞ







新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子

小姓弥生 後に 獅子の精:勘三郎
胡蝶の精:千之助
胡蝶の精:玉太郎
局吉野:歌江
老女飛鳥井:吉之丞
用人関口十太夫:高麗蔵
家老渋井五左衛門:友右衛門


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鰯賣戀曳網(いわしうりこいのひきあみ)

猿源氏:勘三郎
海老名なあみだぶつ:彌十郎
博労六郎左衛門:染五郎
庭男 実は 藪熊次郎太:亀蔵
亭主:東蔵
傾城蛍火 実は 丹鶴城の姫:玉三郎


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3日の感想など

☆「壽曽我対面」は曽我物狂言の舞台で、現行の舞台は1885年(M18)に黙阿弥がまとめた台本をもとにしています。
享保時代(江戸中期)から初春に曽我物を上演する吉例があり そのようなところから、お正月にピッタリの舞台です。



大太鼓が入って幕開き 舞台は工藤祐経の館 板付きで大名の出になり、状況説明の台詞 障子の内から幸四郎丈・祐経の声が聞こえ 染五郎丈・近江小藤太と松緑丈・八幡三郎が舞台の市松模様の揚げ障子を揚げると 舞台一面に庵木瓜の紋、中央に黒地に金糸で庵木瓜の刺繍の衣装で幸四郎丈・祐経の出になり 一度、二重から降りて 櫓に一礼の後、上手の高座に移ります。
きっちりした型のある舞台ですので 初日ですが、流れに沿って進んでいきます。
十分に大きな舞台です。


幸四郎丈は台詞が籠る感じで 特に一番はじめの「園の梅、今を盛りに鶯の」の台詞は少し聞き取り辛いように感じました。
大きさは十分で、衣装など拵えも華やかなのですが なんと申しましょうか 籠っていて、年寄りくさく老けた感じがいたします。
祐経の重さを出すために渋くしすぎたのでしょうか?
そのわりには、鬼王が持参した友切丸を確認するところなど軽めにサラッとしているのですね。
初日ということで全体の重みがまだ定まっていない感じです。

魁春丈・舞鶴、芝雀丈・大磯の虎、菊之助丈・化粧坂少将のお三人 大きくて、品格十分です。
魁春丈・舞鶴は力紙の鬘にもかかわらず ただ力強い感じではなく、すっきりと綺麗 芝雀丈・大磯の虎は芯を感じさせる存在感があり 菊之助丈・化粧坂少将は小顔でとても可愛いです。(^^ゞ
また、亀蔵丈・景高の口跡、台詞がとても良いです。
ここはまだ、舞台にそれほど大きな動きがあるわけではございませんが 台詞で聞かせてくれて、一気に舞台が大きくなるように感じました。
後に十郎と五郎が舞台に出てからも、その迫力に押されない存在感がございます。
染五郎丈・近江小藤太は、かすれてガラガラ声の感じも無く聞きやすい台詞 五郎、十郎が舞台に上がって、対するところでも大きさがあり良いと思いました。
松緑丈・八幡三郎はキッパリとしています。


魁春丈・舞鶴の花道付けからのヨビで鳥屋から聞こえる「かしこまってござりまする」の声が、もうワクワクするような元気な声です。
この時の魁春丈・舞鶴のすっとした姿がとても綺麗でした。
十郎と五郎が対面三重で鳥屋から出て花道七三で決まります。

まず 吉右衛門丈・五郎ですが ここ、上半身が少しだけしか見えないのですが(^_^;) 吉右衛門丈が五郎に見えたので感激してしまいました。(^^ゞ
さらに、台詞の高音が良いです。
多少、声を作っているような無理な感じで語尾が潰れるように聞こえる事もあるのですが それでも、コーンっと抜けるような高音は聞いていて気分が良かったです。
また、花道から舞台に上がる時の足取りが 大きく力強くて軽快、若さがあってとても元気です。
舞台に上がってからもヤンチャイ感じが出ていて 「でぇも〜」「いやだいやだ、堪忍袋の緒が切れた〜」の台詞なども、悪戯ガキのようで可愛くさえ感じられます。
ですが、迫力があるのですね。
三保神楽の下座になって盃事になりますが 緊張感が凄くて、今にもガバッと祐経に掴みかかりそうな雰囲気です。
まだ初日で、盃を割る時のタイミングが合わない感じだったのが気になりましたが 三方を潰す時の抑えた迫力は怖いくらいです。
祐経の「およばぬことだ、かなわぬことだ」の台詞に怒る五郎、マジっぽくてニヤッとしてしまいました。(^^ゞ

菊五郎丈・十郎が とても良いです。
‘動‘の五郎に対して‘静‘の十郎 低めに抑えた台詞に重みがあり、兄弟の‘兄‘としての格を感じます。
始終、前のめりな五郎を抑える十郎ですが 怖いくらいの迫力がある吉右衛門丈の五郎を抑える菊五郎丈・十郎の大きさがスゴイと思いました。
盃を受ける五郎の言動を案じ、少しずつ五郎ににじりよる十郎の緊張感がひしひしと伝わります。

梅玉丈・鬼王新左衛門まで大きな舞台です。



全体には  初日ということもあり まだ妙な間があったり、流れがイマヒトツでしたが これは日にちが経てば問題の無い事で とにかく、鬼王や梶原親子にいたるまでとても大きい舞台です。
特別なことが無くても これだけの役者さんがいらっしゃって、大な舞台にならなければ困ります。(^^ゞ
吉右衛門丈・五郎の大きさと抜けるような高音の口跡の良さ、スゴイ迫力 菊五郎丈・十郎だからこそ抑えられた五郎・・・たぶん、菊五郎丈の十郎でなかったら 五郎は祐経に襲いかかっていたと思います。(笑) 
吉右衛門丈・五郎がヤンチャで大きく、怖いくらいの迫力があり これを抑える菊五郎丈・十郎は懐の大きさがあり格があり、すごく緊張感がありました。
五郎が盃を貰う時に、こんなに緊張感を感じた舞台は初めてでした。
大きさ、格、篤み、とてもバランスの良い兄弟だと思います。
魁春丈・舞鶴と芝雀丈・大磯の虎の品があって大きな感じが良いと思いました。
「壽曽我対面」は様式的な色合いの強い舞台ですが、今回のように怖さを感じるほど迫力のある舞台は初めて見ました。(^^ゞ



おまけ
「島台」(花道から五郎、十郎が出てくる時に持っている足の付いた小さな台です)についておもしろいエントリーを見つけました。
なんでも、上に乗せる品物には、いろいろな形式があるのだそうで 今回の舞台は市村座式で「宝尽くし」というのだそうです。
乗っている品物は 五郎が小槌、宝鑰(ほうやく:宝物の鍵)、筒守(宝巻:宝巻はお経の事だそうで そのお経を収めた筒)、丁字(ちょうじ:フトモモ科の常緑高木。つぼみを乾燥したものを生薬や香辛料にし、また油をとる) 十郎は金烏帽子なのだそうです。
確かに、筋書きの写真を見ますと それらしき物が乗っているようです。(^^ゞ
で、この品物は森田座式「松竹梅」と中村座式「大工道具」もあるのだそうです。
昨年2月歌舞伎座の三津五郎丈の舞台では、森田座式「松竹梅」だったということなので 筋書きを引っ張り出しまして写真を見てみたのですが(笑) 確かに、島台の上には盆栽のような松竹梅(梅は紅白です)が乗っていました。
こういう事って、なかなか気付きませんね〜。
詳しい事は参考にさせていただきました梅之丈のブログのこちらのエントリーをごらんくださいませ。





18日の感想など

☆ 「壽曽我体面」は、3日に見ました時より流れも良くなり より、見応えのある舞台になっていました。
特に、幸四郎丈・祐経の台詞が 初日より良く聞き取れるようになり 大きく迫力がございます。
幕切れ間近の「裾野で会おう」の台詞の大きく迫力のあること!ゾクッとするほど良いと思いました。(^^ゞ

吉右衛門丈・五郎は、高音の声が歌舞伎座の高い天井を突き抜けるようで また、大きさ勢いの良さがマスマスUPしておりました。
名乗りのときの吉右衛門丈・五郎、とてもカッコイイです。
菊五郎丈の十郎がしっかり見ているから抑えられているので チョッとでも目を離したらゼッタイ祐経に飛び掛ると思います。(^^ゞ
ただ、やはり あの高音の声は、作って出しているようで(元来の吉右衛門丈の声質とは多少異なる音域なのでしょう) 時々、喉が潰れたような感じになるのが気がかりでした。
菊五郎丈・十郎は、初日から安定しておりまして 一番安心して見ていられます。
抑えた感じで物静かですが 重さ、しっかり感があり大きさがございます。
また、常に五郎と祐経の間合いを案じる緊張感があり 様式的な舞台の中に、型だけでないドラマ性を出していたと思います。
五郎、十郎ともに 押しのある大きな舞台で 兄弟のバランスも良いと思いました。

他は 魁春丈・舞鶴、芝雀丈・大磯の虎が大きくて立派です。
また、亀蔵丈・景高の台詞 口跡の良さ、歯切れの良さ、とても良いです。











3日の感想など

☆「春興鏡獅子」は1893年(M26)初演 (九)團十郎初演の石橋物の舞踊で 後に(六)菊五郎に受け継がれました。
前シテを傾城で踊る「枕獅子」から 舞台を江戸城に移し、お小姓が将軍の前で舞を披露するという趣向にし 後シテに能の石橋を取り入れた構成になっています。
舞台のおおまかな流れがこちらの感想欄に書いてございますのでよろしければご覧くださいませ。



幕開きは江戸城、大奥御殿 友右衛門丈・家老渋井五左衛門、高麗蔵丈・用人関口十太夫、吉之丞丈・老女飛鳥井、歌江丈・局吉野(お具合が良くなられてなによりです)が並び大きな舞台です。
特に、吉之丞丈と歌江丈が並びますと グッと舞台に篤みが出るように思いました。
また、友右衛門丈・渋井五左衛門の老けた感じに品と優しさがあり良いと思いました。
ここだけを見ても、今回の舞台が大きな舞台だということが伝わり 出だしからワクワクしてきます。

舞台の四人が上下に入って、舞台正面奥に長唄囃子の雛壇 オキ唄で上手から勘三郎丈・弥生の出になります。
衣装は藤色地で六代目・音羽屋の型です。(ちなみに、市川宗家と成駒屋型は黒地です。)
手を引かれて出てくる弥生ですが 初々しくてとても可愛く(実年齢をまったく感じさせません) ふっと視線を遠くへ(場内へ)流して客席を引きつける感じ ですが、けしてくどくなくあざとくなく 視線の中に状況を見定めるような、客観的な雰囲気を感じます。
舞台に一人残り >忍ぶ便りも長廊下 で、心を決めて >されば結ぶのその神や で、襟を正して ここからスッと気持ちが入って落ち着く感じ その姿が可愛らしく美しく、それだけでない大きな格があり とにかく、客席でのワクワク感は最高でした。

笛が入り曲調がゆったりとして >人の心の花の露 から川崎音頭 袱紗の四方さばき、中腰でゆったり決まる決まりが綺麗です。
調子が変り女扇を使ってテンポ良く可愛らしい踊りになります。
手踊りになって、賑やかに鳴物が入り >朧月夜やほととぎす で、時鳥(ほととぎす)が飛びます。
まず、ここまで あっと言う間です。
いえ、別に踊が短くなっているわけではございませんで 今まで見た舞台と同じなのですが 感覚的に短く感じました。
私は自分で踊りを踊るわけではございませんので どうしても曲調のゆったりとした踊りは見ておりまして辛くなることが多いのですが 今回は川崎音頭になってからの勘三郎丈がとても初々しく、可愛らしく 見惚れているうちに曲調が変りました。

気が変わって >時しも今は牡丹の花の から、再び扇を使って >散るはゝ 散りくるはゝ 扇をはらはらっとさせて牡丹の散る風情 ここ、長唄がとても好きです。
中ダメで決まって >咲き乱れたる から二枚扇になります。
ここまで、初日とは思えない流れの良さ 勘の良さ 所作の一つひとつが途切れることなくなめらかに進みます。
さりげなく決まる決まりが とても綺麗です。

扇を一枚、後ろの後見に飛ばして >牡丹に戯れ獅子の曲 から、石橋の様子を踊る能の雰囲気を感じるところになり 獅子頭とともに花道からの引っ込みになります。

ここまでで前シテが終了するのですが とにかく、所作が練れていてなめらか 草書の踊りです。
今まで、前シテがとかく長く感じられる事が多かったのですが 今回は最短、あっと言う間の前シテでした。
それと もう一つ 気負いをぜんぜん感じませんでした。
舞台を見ておりまして、これだけ充実感があるにもかかわらず 押し寄せるようなEnergyを感じるのではなく あくまでさりげなく自然体でいて客席を引き込むような舞台だと思いました。



弥生が花道から入ると、長唄の雛壇が左右に分かれて 中央奥から胡蝶の精、千之助丈(上手)と玉太郎丈(下手)の出になります。
舞台に出る時は二畳台に乗って出るのですが 立ち上がる時に玉太郎丈がヨロッとこけまして(笑) これがまた、可愛いのですね〜。(^^ゞ 
お二人とも 初日なのに、良く合っていて 一生懸命なのが分かります。
おばさんは、頑張れ〜 っと、応援してしまいました。

胡蝶が上手下手それぞれに入って後、大薩摩になり >それ清涼山の石橋は 二畳台に牡丹が出て ‘露‘となり それから‘乱序‘ 花道から後シテ、勘三郎丈・獅子の精が出ます。
一度戻って二度目で舞台に上がるのは弥生の出に合わせたものです。
舞台に上がったところの勘三郎丈のカッコ良いこと(^^ゞ 勢いがあり、勘三郎丈独特の挑戦的な前向き感を感じました。
で・・・ふっと・・・獅子ってネコ科なんだな〜 っと・・・。(笑)

>牡丹の花に舞い遊ぶ から、再び胡蝶が舞台に出て 胡蝶と獅子の精の件の後に毛振りになります。
幕切れ間近 巴の毛振りの時ですが、下手の胡蝶お二人は初日には羽ばたくだけで回っておりませんでした。
まだ、小さいので難しいのかな〜 っと、思いました。
勘三郎丈・獅子の精 毛振りの体力的な勢いは、やはり少なくなっているように感じました。
ですが、毛の振り方が上手く それゆえ、軌跡が綺麗で大きく勇壮に見えます。
毛が、毛先まで神経が通っているように すごく綺麗に振れていたと思います。
ガサガサと勢いだけで振り回しているのではなく グーッと大きく振れる感じで それでいて、振っている勘三郎丈の身体もヘンに斜めになるようなことが無く 腰が据わって、すっと芯が通っていて安定感があり綺麗です。
あくまでも‘舞踊の毛振り‘という感じで 勢いで見せるというのではなく 技・芸で見せる毛振りだと思いました。
ホント、上手いですね〜。



全体には この舞台も、良くなかったら困ります。(^^ゞ
前シテ、勘三郎丈の弥生 所作が練れていて草書の踊りです。
さりげなくお勤めのようで とても綺麗です。
後シテは大きく勇壮 毛振りの勢いは初日と年齢を思えば妥当な感じ ですが、サスガに美しい毛振りです。
毛先の軌跡の綺麗なこと また、毛を振る体が腰が据わって体の線がすっきりと綺麗です。
胡蝶は千之助丈(上手)と玉太郎丈(下手)、お二人とも同じ歳の8歳 一生懸命でとても可愛いです。
幕切れ前のところは 下手で蝶の羽ばたき ここは回っていませんでした。
まだ、小さいので難しいのでしょうね。(^^





18日の感想など

☆「鏡獅子」は、幕開きすぐの友右衛門丈・渋井五左衛門が 品があり、穏やかで、とても良いです。
初日の時も品があって良いと思ったのですが 今回はさらに穏やかな感じもあり、年の初めの観劇ということもあり 良い雰囲気だと思います。
それとやはり 友右衛門丈、高麗蔵丈、吉之丞丈、歌江丈 の4人が幕開きすぐに並ぶと舞台が大きくなります。
で、今回は千之助丈と玉太郎丈の頑張りが嬉しかったです。
流れも良くなり、お二人のタイミングもピッタリですし 後シテ・獅子の精が振った髪がぶつかっても冷静で なにより、今回は幕切れ近く 上手で獅子が巴に髪を振る時に、下手でお二人で回っていました。
これ、初日には蝶の羽をハタハタさせているだけだったのですが 今回見ましたら、一生懸命に回っていました。
いつからでしょう?
まだ、たどたどしくて不安定ですが 一生懸命が伝わりまして、マタマタおばさんは応援してしまいました。(^^ゞ
頑張れ〜!!!











3日の感想など

☆「鰯賣戀曳網」は、室町時代後期の御伽草子「猿源氏草紙」を源にした 三島由紀夫作、1954年(S29)初演の新作の歌舞伎です。
ですが、一見 新作歌舞伎には思えないほど 歌舞伎らしいおおらかさがあり また、古典歌舞伎のような見どころもしっかりと盛り込まれた舞台で なにより、見終わった時のほのぼの感は最高です。(^^ゞ
誰にでも分かるお話で、楽しい舞台ですので 初めて歌舞伎を見るという人にはお薦めです。
ちなみに 18日の観劇に長男(中学1年)を連れて行きましたが 飽きることなく見ていることができました。(笑)



幕開きで馬方の合方 舞台は五條橋 彌十郎丈・海老名なあみだぶつ、品があって優しい雰囲気 人の良さそうな感じが、この舞台のほんわかとした雰囲気に良く合っています。
また、染五郎丈・博労六郎左衛門も加減のあるおどけぶりで良いと思います。

六郎左衛門が上手に入ったところで花道からの出で勘三郎丈・猿源氏の出になります。
「伊勢の国に阿漕ヶ浦の猿源氏が鰯かぅえぃ〜」っと、ヘニャヘニャ声が聞こえます。
あ〜、なんだか懐かしい感じで(笑) 嬉しくなりました。
勘三郎丈・猿源氏は 蛸柄の半纏に中村屋格子の衣装、桜色(鴇色?)の鉢巻を左で結んだ拵えです。
薄いピンク色の病鉢巻が(笑) 猿源氏のぽ〜っとした恋煩いにぴったりです。
今回の舞台で全体的に思ったことなのですが このところの勘三郎丈も加減のあるおもしろさで なあみだぶつに蛍火を見初めた話をする時も、後ろ向きで馬に乗る時も 流れの中からはみ出すことなく、流れの中の笑いで 砕けすぎないところが良いと思いました。



居所変りで五條東洞院の揚屋 板附で傾城が並びます。
京妙丈、綺麗ですね。(^^ゞ
傾城たちが蛍火の貝合せの貝を見ているところに 舞台正面奥から玉三郎丈・蛍火の出になります。
見た目という事ではなく(^_^;) 大きく格のある蛍火で、場内の視線を集める抜群の存在感がございます。
私がこの舞台を見た時のことしか分かりませんけれど 私の観劇時には、毎回この場面で場内から‘わぁ〜‘っと、声が上がります。(笑)
貝合せを始める蛍火ですが どことなくおっとりとして品のある、他の傾城たちには無い大きさを感じます。
怪しげな庭男を気にする時の、市井の傾城にしては芯のある雰囲気に 実は丹鶴城の姫という身分を垣間見る感じです。
また、玉三郎丈らしい とろっとした台詞が、とても可愛く感じられます。

この後、東蔵丈・揚屋亭主が宇都宮弾正が揚屋に来ることを告げ 傾城たちが奥に入ったところで、彌十郎丈・なあみだぶつが天つつの合方で花道からの出になります。
東蔵丈・亭主は揚屋の亭主ですが、大きな商いをする揚屋の亭主らしい懐の深い感じと、やはり品を感じます。
東蔵丈、彌十郎丈、ともに ほのぼの感があり また、品があると思いました。

ここへ猿源氏の宇都宮弾正が現れます。
花道からの出になりますが ポワッとしたところが、なんとも頼りなさ気で ですが、ここも加減があり はじけ過ぎないところが良いです。
玉三郎丈・蛍火が再び舞台に出て あの盃事になるのですが すみません、ここだけはチョッとオーバーアクションを期待してしまいました。(^^ゞ
前回(2005歌舞伎座)の鶴松丈の禿があまりにもジャストタイミングな転がり方をしたのが印象に残っておりまして(きっと、これからも忘れないと思います) ついつい期待してしまいました。(笑)
勘三郎丈・猿源氏の戦物語は、竹本鳴門太夫との件もございますが 語りが始まりますと、しっかりとして聞き応え十分です。
竹本に乗って大きく勢いがあり、決まり決まりがしっかりとして 時代物の面白さを垣間見る事ができます。
こういうところが、「鰯賣戀曳網」の面白いところの一つだと思います。
このところの禿や竹本とのやり取りは しっかりと型として残っているところですし また、魚の戦物語は語られる内容は珍妙ですが(笑) その方法はしっかりとした時代物の竹本に乗った語りで 新作の歌舞伎ですが、その中に古典を意識した‘いかにも歌舞伎‘らしい要素があります。
で、これは猿源氏だけではございませんで 他の傾城たちがこの場を去り 蛍火と猿源氏だけが舞台に残ってからも歌舞伎らしい見どころは続きます。

舞台に二人残る猿源氏と蛍火なのですが ここ、毎回 膝枕のお二人が絵になるのですね。
玉三郎丈・蛍火がめっさかわいい。"^_^"
頭のネジが2,3本飛びます。
で、かなりグダグダになった頭で 蛍火のクドキになるわけです。(笑)
柔らかに決まる玉三郎丈・蛍火の決まりがとても綺麗で 竹本に乗ってのクドキが可愛くて艶っぽくて それでいて、どことなく迷子になった時の幼さが語る玉三郎丈・蛍火に感じられ この一瞬、丹鶴城の高殿で鰯賣の売り声を聞いているお姫様が見えるようです。
ここは、あまりの可愛さに 舞台から目が離せないところです。
後から冷静に考えれば 鰯賣の売り声を追いかけて城を抜け出し迷子になったお姫様って、とんでもないお姫様なわけですが 玉三郎丈のお姫様ならありそうな気がして(笑) 何回見ても納得してしまいます。(^_^;)
ワタクシは 桜姫といい、この蛍火といい こういう‘とんでもないお姫様‘をお勤めになる玉三郎丈が大好きだったりいたします。(笑)

先刻の亀蔵丈・庭男が実は丹鶴城から来た藪熊次郎太であることが知れ 持参した金で蛍火は自由の身になり猿源氏のもとへ行きます。
お気の毒なのは次郎太でございます。(笑)
幕切れ前と幕外は 玉三郎丈・蛍火が持っていきます。
丹鶴城のお姫様としての品格、大きさ 猿源氏を想う一途さ可愛らしさ 両方のスイッチが絶妙です。
幕外の鰯賣の売り声「いわしこぅ〜えぃ〜」 場内をぐるっと巡るような口跡でとても良かったです。
花道七三で 勘三郎丈・猿源氏が「ホントニ、いつも綺麗だね」っと、おっしゃっていました。(^^ゞ



全体には この舞台は 今月、ワタクシが一番見たいと思っておりました演目で その期待以上に楽しい舞台でした。
ぽわっとした勘三郎丈・猿源氏 綺麗で可愛い玉三郎丈・蛍火 最高です。
さらに良いのは 面白いけれど加減のあるところで 勘三郎丈も玉三郎丈も抑えるところはシッカリ抑えていて 砕けすぎない面白さが見えるのが良いです。
特に 勘三郎丈・猿源氏の魚尽くしの戦物語 と 玉三郎丈・蛍火の竹本にのってのクドキが良いと思いました。
猿源氏の魚尽くしの戦物語は時代物のような大きさ勢いがあり 蛍火のクドキは、いっきに時を戻るような幼い可愛さを感じさせます。
幕切れ前のお姫様は 品格十分で、きっぱり大きくてカッコイイです。
もう、今の歌舞伎座で この舞台を見ることは無いと思いますが 数多い歌舞伎の演目の中でワタクシの好きな演目の一つですので せめて「歌舞伎座さよなら公演」で見ることができて良かったです。





18日の感想など

☆「鰯賣戀曳網」は 初見の長男(中学1年)にも、ある程度お話の内容が分かる楽しい舞台です。
今月の夜の部に長男を連れて行って良かったと思いました。
玉三郎丈・蛍火と勘三郎丈・猿源氏のイキがぴったりで あまり、理屈を考えず楽しく見てまいりました。
幕切れ間近、玉三郎丈・蛍火の「いわしこぅ〜えぃ〜」の声が場内をグルッと一回りして天井に抜けていくようでスゴク良かったです。
初日の時も良いと思ったのですが 今回はそれ以上で、すごく気分の良くなるような嬉しくなるような口跡でした。
ちょっと、耳に残って忘れられないくらいです。
掛け声がたくさんかかり 拍手もすごかったです。(^。^)

おまけ
18日には長男も一緒に観劇したのですが ‘海老名なあみだぶつ‘というネーミングが 理解できなかったと申しましょうか、違和感があったと申しましょうか 素直に「ヘンな名前」っと言っておりました。(笑)
歌舞伎の名前って、ケッコウいいかげんなものが多いので あまり気にならなかったのですが 言われてみれば確かヘンですね。(笑)
この名前・・・何か由来があったようなないような・・・すみません、はっきり覚えておりません。(^_^;)






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