2008年05月06日           もくじへ戻る トップページへ戻る 
    歌舞伎座 夜の部   三階B中央の席

  *青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ) 白浪五人男
    三幕九場

  *三升猿曲舞(しかくばしらさるのくせまい)
    長唄囃子連中


青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ) 白浪五人男
 弁天小僧菊之助:菊五郎
 日本駄右衛門:團十郎
 南郷力丸:左團次
 赤星十三郎:時蔵
 忠信利平:三津五郎
 浜松屋宗之助:海老蔵
 木下川八郎:松江
 大須賀五郎:男女蔵
 千寿姫:梅枝
 川越三郎:市蔵
 薩島典蔵:團蔵
 伊皿子七郎:友右衛門
 浜松屋幸兵衛:東蔵
 柵(しがらみ):田之助
 鳶頭清次:梅玉
 青砥左衛門藤綱:富十郎

序幕
第一場 初瀬寺花見の場
舞台は桜が満開の鎌倉初瀬寺 小山判官の息女・千寿姫は父の三回忌の仏事と 信田家断絶以来行方知れずとなっている許婚・信田小太郎が他界したとの噂を聞いて、小太郎の仏事のために局の柵たちを供に参詣に来ています。
折からここへ 奴の駒平を伴った若衆がやって来ます。
若衆の姿を見た柵が気に留めて声をかければ 若衆は千寿姫の許婚・信田小太郎である事が分かります。
許婚の小太郎に逢えて喜ぶ千寿姫でしたが 小太郎は信田家のお家再興が叶うまでは千寿姫と添うことはできないと言います。
これを聞いて悲しむ千寿姫が自害しようとするので 小太郎はこれを止め、柵の勧めで千寿姫と共に傍らの茶屋に入ります。


皆がこの場を去ると ここへ、小山判官の家臣でお家乗っ取りを企む薩島典蔵が現れ 信田家浪人・赤星十三郎が拠所ない事から盗み出した仏事の回向料、百両を取り返します。
百両を取られ、信田家の浪人と知られた赤星十三郎がこの場を去ると 典蔵一行は、小太郎と千寿姫を取り押さえるため 茶屋に踏込みます。
しかし、中から現れたのは武者修行の浪人者で 典蔵は無礼の詫びにと先ほどの百両を取られてしまいます。


皆がこの場を去り 再び誰もいなくなると 難を逃れた小太郎と千寿姫が茶屋から出てきます。
千寿姫は仏事のために持参した重宝・胡蝶の香合を小太郎に預け 共に小太郎の仮の住居へ向かいます。


二人がこの場を去ったところへ 先刻の武者修行の浪人者が戻ってきます。
これを駒平が呼び止め 先ほど手に入れた小山家の回向料を渡して欲しいと言います。
しかし、武者修行の浪人者は 自ら盗賊忠信利平であると名乗り 二人は斬り結ぶ事になります。



第二場 神輿ヶ嶽の場
舞台は神輿ヶ嶽の辻堂 千寿姫を連れてここまで来た小太郎は 突然、態度を変え 実は盗賊、弁天小僧菊之助であると名のります。
弁天小僧は 昨年、行き倒れになった信田小太郎を介抱した折に 小太郎が千寿姫と取り交わした千鳥の名笛を預かり 小太郎に成りすましていたのでした。
弁天小僧は千寿姫に女房になれと迫りますが 許婚・小太郎が亡くなった事を知り千寿姫は悲しみ、盗賊と契りを交わした事を恥じて谷に身を投げてしまいます。


胡蝶の香合も手に入れた弁天小僧がこの場を去ろうとすると 辻堂から旅の修験者が現れ、胡蝶の香合を置いて行けと言います。
これを聞いた弁天小僧は 修験者と争いますが 打ち負かされてしまいます。
実は修験者は大盗賊・日本駄右衛門で 弁天小僧は一味の連判状に血判をして仲間になります。



第三場 稲瀬川谷間の場
舞台は稲瀬川の流れる谷間 身を投げた千寿姫は息を吹き返します。
折りしもここへ 信田家の後室のために、薬代百両を奪おうとしてしくじってしまった赤星十三郎が 申しわけのため自害しようとやって来ます。
千寿姫と十三郎は互いの素性を話し、意外な縁に驚きますが どうにかなるわけでもなく、共に死のうと決意します。
千寿姫が先に自害し 後に十三郎が続こうとするところへ、忠信利平が現れ十三郎を止めます。
話をしてみれば 利平は十三郎の家来筋にあたることが分かり 先刻の百両を十三郎に渡します。
十三郎は利平が日本駄右衛門の一味だと知ると、自分も一味に加わりたいと言い 利平は十三郎を日本駄右衛門に引き合わせることにします。


折りしもここへ 先刻、奴・駒平と名乗っていた盗賊の南郷力丸 さらに、日本駄右衛門と弁天小僧が現れ 五人は暗闇の中で探りあいながら この場を去るのでした。


二幕目
第一場 雪の下浜松屋の場
舞台は浜松屋の見世先 ここへ振袖姿の武家娘、二階堂信濃守家臣・早瀬主水の娘が若党・四十八を供にやって来ます。
店の者は婚礼を間近にした娘を丁重にもてなしますが 娘が、あたりを気にしながら懐へ緋鹿子の小布を入れるのを見咎めた手代が、これを番頭に告げます。
番頭は娘が万引きをしたと思い算盤で額に傷を負わせます。
しかし、娘の懐中から出てきた小布は他の店の品でした。
浜松屋の若旦那・宗之助らは慌てて謝りますが 供の若党・四十八は聞き入れません。
来合わせた鳶頭・清次が中に入って話しますが やはり、事は収まらず 主人の浜松屋幸兵衛が十両を包んで詫びようとします。
しかし、四十八は百両を要求するのでした。


幸兵衛から百両を受け取り 娘と四十八が店を立ち去ろうとすると 奥から玉島逸当と名乗る侍が現れ、娘が男だと見破ります。
正体を見破られた娘は、振袖を脱ぎ胡坐をかきながら刺青を見せると 盗賊・弁天小僧菊之助 四十八は南郷力丸であると名乗ります。
これを見た浜松屋幸兵衛は二十両を渡し 弁天小僧と南郷力丸はこの場を去ります。
二人が立ち去ると浜松屋幸兵衛は玉島逸当を奥へ案内するのでした。



第二場 雪の下浜松屋蔵前の場
舞台は浜松屋の土蔵の入り口がある部屋 幸兵衛は玉島逸当をもてなし、先刻のお礼の品物を用意しようとしています。
すると 玉島逸当は有り金全部を出せと言い 折からここへ弁天小僧と南郷力丸も現れます。
実は、玉島逸当は盗賊の首領・日本駄右衛門で 先刻の強請りは浜松屋の財産を全て奪うためのものでした。


しかし、話すうちに 宗之助は日本駄右衛門の、弁天小僧は幸兵衛の実子である事が知れます。
十七年前に幸兵衛が初瀬寺に詣でた際 喧嘩騒ぎに巻き込まれて取り違えたのが宗之助で 以来、我が子として育ててきたと話します。
そうして 同じ時、貧苦から我が子を初瀬寺に捨てた実の親が日本駄右衛門でした。
一方、幸兵衛の実子の弁天小僧は この時、南郷力丸の父親に拾われて力丸と兄弟同様に育ったのでした。


さらに、幸兵衛は 以前、小山家の家中の者で 紛失した胡蝶の香合を捜していると言います。
これを聞いた弁天小僧は 主筋である千寿姫を死なせた事を悔やみます。


日本駄右衛門一味に追手が迫った知らせがあり かねてより手下・悪次郎が注文してあった小袖を幸兵衛が餞別に渡すと 日本駄右衛門らは浜松屋を去るのでした。


第三場 稲瀬川勢揃の場
舞台は稲瀬川の堤 春雨の中 揃いの小袖を着た日本駄右衛門、弁天小僧、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸は、大勢の捕手に囲まれ 次々に名乗りを上げると 捕手に立ち向かい落ち延びて行きます。


大詰
第一場 極楽寺屋根立腹の場
舞台は極楽寺の大屋根 重宝・胡蝶の香合を浜松屋に届けようとした弁天小僧でしたが 裏切り者の悪次郎が胡蝶の香合を滑川に落としてしまいます。
悪次郎を斬った弁天小僧は ついに捕手に囲まれ 大屋根で立腹を切ります。


第二場 極楽寺山門の場
舞台は極楽寺山門 日本駄右衛門に弁天小僧の最期を伝えに来た手下が突然打ちかかってきます。
じつは 二人の手下は青砥左衛門藤綱の家臣、川越三郎と大須賀五郎で 日本駄右衛門を捕らえるために身をやつしていたのでした。



第三場 滑川土橋の場
山門の傍らにある土橋では 青砥左衛門藤綱が伊皿子七郎と木下川八郎に松明を持たせ、滑川に落ちた十文銭を拾うところ 胡蝶の香合も拾い上げます。
山門の上から藤綱一行の様子を見ていた日本駄右衛門は 縄に付く覚悟をしますが 藤綱は後日の約束をして別れるのでした。






三升猿曲舞(しかくばしらさるのくせまい)
 此下兵吉:松緑

舞台は小田春永の館 此下兵吉が御殿の様子を窺っているところを朋輩の奴たちに見咎められます。
掴みかかろうとする奴に此下兵吉は能の様子を窺っていたと言い 所望されるまま、舞を見せます。
>猿が参りて此方の御知行・・・
猿廻しの様子など真似 扇を手に舞い また、くだけた手踊りを見せます。
>晩の泊りは御油赤坂に・・・
街道筋の賑やかな踊りを見せ 花槍を持っての踊りから 討ちかかる奴を払いのけます。
賑やかな所作ダテから
>猿と獅子とは文殊の侍宿・・・
扇を手に舞い納めます。




☆「青砥稿花紅彩画 白浪五人男」は1862年初演、黙阿弥作の五幕の世話物ですが 舞台面が美しく、 また多少時代がかった感じもある舞台です。
「浜松屋」と「稲瀬川」はよく上演されるのですが 通しでの上演はそれほど多くないので 今回は全体の流れも良く分かりました。
今回のように通しで上演される時は「青砥稿花紅彩画」 浜松屋と勢揃いだけの上演の時は「弁天娘女男白浪」の外題になるのだそうです。

全体には まず、それぞれがニンに合ったお役で かつ、皆様 格のある役者さんが揃っていて 舞台は世話物でサクサクと展開していくわりに 大時代な雰囲気もあり、見応え十分でとても良いです。
特に、序幕と大詰の美しい舞台面は素敵です。
また、今回は通しでの上演ですので 見慣れた‘浜松屋‘‘稲瀬川‘に より深みを感じました。


私の好みですが(笑) 今回の舞台は序幕がとても良いと思いました。
「初瀬寺花見の場」は 鐘の音の入った下座で幕開き 舞台は満開の桜の初瀬寺(新清水)です。
この新清水の舞台は「新薄雪物語」を模しているのですが 私は見た瞬間に「桜姫」を思い浮かべてしまいました。(笑)
途中、上手側から 菊五郎丈、梅枝丈、左團次丈、田之助丈が舞台に並ぶように位置するのですが 衣装が黒赤青白と並びまして、桜の舞台にとても美しく見えます。

菊五郎丈の信田小太郎が なんともはんなりと艶っぽい感じで良いです。
それでいて千寿姫の手を取って歩くところなどは 懐の大きさを感じて、カッコ良いのですね。

梅枝丈・千寿姫が赤姫の楚々とした可愛らしさと一途な思いの娘らしさを上手く見せていたと思います。

また序幕では 時蔵丈・赤星十三郎、三津五郎丈・忠信利平が良かったです。
時蔵丈の立役も珍しいかと思うのですが 柔らかさの中に芯を感じました。
三津五郎丈・忠信利平は骨太な感じがします。
大きさ、重みがあり 渋くて大人な忠信利平です。(^^ゞ
「月が昇ったか〜」でキット決まった三津五郎丈、カッコイイです。
お二人が それぞれのキャラクターの個性をかなりクッキリと見せてくれているので舞台全体の幅が大きくなるように思いました。
で、三津五郎丈と左團次丈の立ち回りのときの下座がチョッと楽しくて良いです。

田之助丈・柵、團蔵丈・薩島典蔵のお二人が脇をシッカリ固めていました。


「神輿ヶ嶽の場」では 菊五郎丈の信田小太郎が、実は弁天小僧だと分かるわけですが 「初瀬寺花見の場」の菊五郎丈が、はんなりと艶っぽく かつ、懐の大きさを感じて、カッコ良く見えるので 神輿ヶ嶽で弁天小僧の正体を現した時のチョッとべらんめいな調子に変わったスイッチが効いてくるのだと思います。
また 本当の小太郎から千鳥の笛を奪い、千寿姫も騙して胡蝶の香合も奪った盗賊なのですが ‘嫌な悪い奴‘には見えなくて、あくまでも‘粋‘に見えるところで 舞台がとても面白くなるのだと思いました。

團十郎丈・日本駄右衛門は菊五郎丈・弁天小僧と対して十分大きく存在感がございますが 盗賊という感じより‘親分‘な雰囲気に見えました。(^^ゞ


「稲瀬川谷間の場」では だんまりが良かったです。(笑)
あの、理屈ではなくて この5人でのだんまりが良いのです。
もしかすると そう頻繁に見る事ができないだんまりではないかしら っと、思いました。


二幕目は見慣れた「浜松屋」と「稲瀬川」がある舞台ですが 通しで見ますと、いつもより面白く見えるのが不思議です。(笑)

「雪の下浜松屋の場」 ここはもう菊五郎丈の弁天小僧がとても良いです。
娘姿も可愛らしく 男と見破られて開き直ったところも、こなれた感じでわざとらしさが無く それでいて、粋で大きな感じがあります。

この場面で特に良いと思いましたのは東蔵丈・幸兵衛です。
何がどうというのでもないのでしょうが この場の浜松屋の主人の雰囲気がございます。
何と申しましょうか 渋いけれど情があって 品があって、腰の低い感じがあって、大きなお店の主人の重みがございます。

それと海老蔵丈・宗之助が良いです。
見る前は‘どうよ?‘っと、思っていたのですが 少しナヨっとした感じがケッコウ良いと思いました。(^^ゞ

で、唯一 この舞台で 似合わない!っと、思いましたのが 梅玉丈・清次です。
すみません・・・どうしても鳶頭には見えませんでした。
それと、手拭は弁天小僧の前に‘放る‘のではなくて ‘投げつける‘のだと思うのですが・・・。(^_^;)

丁稚の子役さんは 毎回、卓球(テニス?)とかサッカーとか野球とかしているのでしょうか?
日によって違うのかしら?


「浜松屋蔵前の場」は 種明かしの様な流れですが 日本駄右衛門と宗之助が実の親子だと名のった時に場内から笑いと拍手が聞こえておりました。(^_^;)
ここは成田屋のお二人が持って行った感じでした。(笑)


「稲瀬川勢揃の場」は 浅葱幕を振落とすと稲瀬川の土手の舞台になります。
舞台面の華やかさと相俟って三味線がとても良いです。
下座が良くて 三味線、鼓、鐘、太鼓、大太鼓と入って これに合わせて弁天小僧、忠信利平、赤星十三郎、南郷力丸、日本駄右衛門 と花道に出ます。
3階からですと花道に並んだところは見えません。(T_T)
舞台に並んだところで 皆様をシッカリ見る事ができるのですが 通しでここまでの経緯が語られておりますので 並んでいても各キャラクターがしっかり意識できて「稲瀬川勢揃の場」だけを見るのとはゼンゼン違って とても篤みを感じました。


大詰の「極楽寺屋根立腹の場」は立ち廻りがスゴイです。
大まかな流れは 大屋根中央に弁天小僧、これに2人でかかり 次に4人がかり、2人がかり そこから梯子 綱を使って この後8人が屋根上でトンボ 弁天に絡んで1人でトンボ 2人で梯子 8人で梯子 3人で組んで1人が倒立 大勢で梯子(数え切れませんでした) 菊五郎丈が梯子で決まって、‘どんたっぽ(‘どん‘が太鼓、‘たっぽ‘が鼓 だそうで 太鼓と鼓のゆっくりめの合方です)‘から三つ太鼓になり動きが早くなって22人(だと思います)の絡み 立ち腹から‘がんどう返し‘で舞台面が変わり大セリで山門が上がってきて さらにセリで團十郎丈・日本駄右衛門が出ます。
立ち回りは全て 斜めな大屋根の上ですし 降りる時はトンボで屋根から落ちる感じになるわけですし そこで梯子とか綱を使っての大人数での立ち回りですので これはもう迫力がございます。
歌舞伎でなければ見ることのできない舞台です。(^。^)

「極楽寺山門の場」は とにかく舞台面が美しいですし ここまでの大道具さんに拍手したいです。

「滑川土橋の場」は五右衛門と久吉の「南禅寺山門」を模しています。(っと、申しますか ‘そのまんま‘な感じです。)
富十郎丈・藤綱が幕切れ前をシッカリ押さえてくれました。





☆「三升猿曲舞」は 所作ダテが見どころの舞踊で 1819年(7)團十郎の初演した舞台です。
‘ほうおう‘の写真は青系の地色の衣装ですが 今回の舞台は白地の衣装で、とても清々しい雰囲気です。
時間的には十数分と短いですが きっちりとした踊りを見せてくれるので とても気分良く見終わる事ができました。
余談ですが「三升猿曲舞」の‘三升‘というのは成田屋の紋の三升の事だそうで これを‘しかくばしら‘と読むのは・・・・・筋書きでは、狂言「靭猿」から‘四角柱や角柱、角のないこそ添いよけれ‘にちなんでいると書かれていて イヤホンガイドでは、この説の他に‘初演の成田屋の紋、三升の紋が四角い柱の様に見えるから‘ っと、いう説もあると言っていました。
私は後説の方が‘らしい‘と思いましたが・・・。(笑)
で、‘猿曲舞‘というのは此下兵吉が木下藤吉郎だからです。






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