2008年03月11日          もくじへ戻る トップページへ戻る 
    歌舞伎座 昼の部   三階B中央の席

  *春の寿
   三番叟  長唄囃子連中
   萬歳    竹本連中
   屋敷娘  長唄囃子連中

  *一谷嫩軍記 陣門・組打
    一幕

  *女伊達
    長唄囃子連中

  *夕霧 伊左衛門 廓文章 吉田屋
    竹本連中
    常磐津連中


春の寿
三番叟
 翁:我當
 三番叟:歌昇
 三番叟:翫雀
 千歳:進之介

萬歳
 萬歳:梅玉

屋敷娘
 お梅:扇雀
 お春:孝太郎


三番叟
松の舞台に翁、千歳、三番叟が現れます。
翁と千歳が国家安穏、天下泰平を祈って舞ます。
翁の荘重な舞に続き 千歳が清々しい舞を見せ 翁と千歳が舞い納めます。
続いて、控えていた三番叟が賑やかな舞を見せます。
五穀豊穣を祈り 揉み出しの踊り、烏飛びなどを見せ 鈴を手に賑やかに舞うと
目出度く舞い納めます。


萬歳
舞台は初春、紅白の梅が咲く中 萬歳がやって来て 賑やかに踊り始めます。
商売繁盛を祈って華やかに踊ると 続いて街の様子を賑やかに踊ります。
街娘、姥、市で買物をする人々の様子を踊り 舞い納めるとこの場を去ります。


屋敷娘
舞台は桜の咲く春 大名屋敷に奉公するお梅とお春が宿下がりの帰り道 恋の話しなど語りながら踊ります。
相手を想う気持ちなど語りながら踊ると 気を変えて手鞠唄に合わせて賑やかに踊り、飛び交う蝶と遊びます。
続いて鈴太鼓を手にして楽しく踊ると 日が暮れかかるのに気が付き、この場を去ります。





一谷嫩軍記 陣門・組打
 熊谷次郎直実:團十郎
 玉織姫:魁春
 平山武者所季重:市蔵
 熊谷小次郎直家 無官太夫敦盛:藤十郎


  あらすじはこちらでどうぞ





女伊達
 木崎のお秀:菊五郎
 淀川の千蔵:秀調
 中之島鳴平:権十郎

>よしあしの喧嘩のあとの仲直り・・・
脇差に尺八を背に差し肩に手拭をかけた女伊達・お秀が喧嘩を仕掛けてきた男伊達の淀川の千蔵と中之島鳴平を従えて現れます。
掴みかかろうとする二人の手を振り払い 打ちかかってくるところを難なくかわします。


>ええ、恋をしょうなら新町橋へ・・・
男伊達をからかうように、惚れた男への想いなど話します。


>これは廓にかくれなき・・・
伊達男の花川戸の助六の真似などして見せます。


>色の意気地にのぼりつめ・・・
廓の若い者が大勢駆けつけてきて お秀に打ちかかりますが お秀はこれも難なく振り払うのでした。






夕霧 伊左衛門 廓文章 吉田屋
 藤屋伊左衛門:仁左衛門
 扇屋夕霧:福助
 太鼓持豊作:愛之助
 吉田屋女房おきさ:秀太郎
 吉田屋喜左衛門:左團次

舞台は年の瀬の大坂新町、吉田屋の見世先 阿波のお大尽が傾城・夕霧がなかなかやって来ないので怒っています。
そこで太鼓持たちは嘉例の餅つきをしてお大尽の機嫌をとると見世の中に入って行きます。


皆が居なくなると、ここへ編笠を被った紙衣姿の伊左衛門がやって来ます。
伊左衛門は豪商・藤屋の若旦那で、夕霧と言い交わした仲でしたが あまりの放埓のために勘当されていました。
勘当の身から、吉田屋へも顔を見せなかった伊左衛門でしたが 夕霧が病と知り訪ねて来たのです。
以前と変わらぬ風情で、見世先から吉田屋の喜左衛門の名を呼びますが 出てきた店の若い者たちは、伊左衛門の粗末な姿を見て竹箒で追い払おうと打ちかかります。
しかし見世の中から現れた喜左衛門が皆を止め、編笠の中を覗き伊左衛門と気付きます。
喜左衛門は二年ぶりの再会を喜び 伊左衛門を奥座敷へ案内します。


舞台は吉田屋の奥座敷 紙衣姿の伊左衛門に喜左衛門は自分の羽織を着せかけます。
感謝する伊左衛門を見て 喜左衛門は同情しますが 伊左衛門は‘総身が金ゆえ、冷える‘と答えるのでした。
これを聞いた喜左衛門は‘餅つきの日に総身がお金のお大尽が来るのは縁起が良い‘と喜びます。


喜左衛門に呼ばれた女房・おきさが奥座敷にやって来て 伊左衛門との再会を喜びますが なかなか夕霧の事を話そうとしないので 伊左衛門はやきもきして、とうとう夕霧の様子を尋ねます。
するとおきさは 夕霧は病が癒えて、今も吉田屋に来ていると話します。
喜んだ伊左衛門は さっそく、夕霧の座敷を覗きに行きますが 夕霧が阿波のお大尽の座敷に出ていると知り不機嫌になってしまいます。
喜左衛門夫婦は 腹を立てて帰ろうとする伊左衛門を止めます。
そうして 喜左衛門は自分が夕霧を呼びに行くので待っていて欲しいと言い残しこの場を去ります。


夕霧と連れ弾きした懐かしい唄を聴きながら 座敷に一人残った伊左衛門は、夕霧を待ちかねつつも 夕霧の心変わりを案じ、拗ねて炬燵で寝たふりをします。

しばらくして、夕霧がやって来ると 炬燵で寝たふりをしている伊左衛門を起こします。
しかし、伊左衛門は相手にせず とうとう、夕霧のことを万歳傾城とののしります。
伊左衛門が、あまり腹を立てるので 太鼓持・豊作が間に入り二人の仲を取り持ちます。


夕霧は伊左衛門に逢えず 心配のあまり、病になり ようやく逢えて嬉しく思うのに つれなくするのは悲しい と、嘆きます。
これを聞いた伊左衛門は 夕霧の気持ちを察し 再会できた事を喜びます。


するとここへ喜左衛門夫婦の案内で、藤屋の番頭が夕霧の身請けの金を持ってやって来ます。
伊左衛門の勘当が許され、夕霧も身請けして藤屋に迎えられることになったのでした。




☆「春の寿」は舞踊の「三番叟」「萬歳」「屋敷娘」の競演ということで 短い所作事を並べて一幕にしたものですが それぞれ趣が異なり楽しめます。


「三番叟」は五穀豊穣、天下泰平など祝う舞踊で能の「翁」を基にしたご祝儀舞踊です。
今回の舞台では前半が翁と千歳、後半が二人三番叟の踊りになっていて 形式的な流れとしてはオーソドックスな感じです。

幕開きは片しゃぎりで 舞台正面奥に長唄七挺七枚、下手に鳴物 松の舞台に 能の「翁」を基にしている事を意識してか、下手に橋掛りの欄干がございまた。
ですが翁他四人の皆様の出は舞台中央の大セリからの出です。
私は、都内から出る事がほとんどございませんので(^_^;) 進之介丈の舞台をあまり拝見する事が無いのですが 今回は時間的にはとても短いのですが、踊りを見る事ができました。
何がどうしたということもないのですが(笑) 若々しくて良いと思いましたし、表情の雰囲気が(13)仁左衛門丈によく似ていらっしゃるので頑張って欲しいな〜 っと、思いました。
我當丈は大きさを感じる翁ですが 足の具合がよろしくないのでしょうか、立ち上がる時に辛そうな感じでした。

鼓で翁を送って、我當丈・翁と進之介丈・千歳が下手に入ると三番叟のお二人、歌昇丈と翫雀丈の踊りになります。
一度、花道に出てから早間の曲で舞台に出ますが 歌昇丈のキレの良いキッパリした感じがとてもカッコイイです。(^^ゞ
全体にテンポが速いこともあり、見ていて楽しい感じで 見た目の体型もさることながら(笑)お二人のイキがピッタリです。
中啓と鈴を持って踊る‘鈴ノ段‘のところなどは 足を踏んで軽快で力強くて、見ていてとても元気になります。
歌昇丈と翫雀丈のガップリ組んだ踊が、とても見応えがあり楽しいです。
二人の三番叟がセリで下がると 舞台の松が紅白の梅に替わって 上手奥から竹本四挺四枚が出ます。


「萬歳」は竹本の舞台になりますが、まず初めの三味線の音がとても良いです。
なんと申しましょうか、三味線が細棹から太棹に替わって 音の違いがスゴク良くて、舞台の雰囲気がイッキに変わる感じです。
葵太夫のオキで、下手から前髪で鼓を持った梅玉丈の出になります。
紫地の衣装に足袋も薄い色合いの紫で、扇も赤紫な感じで 途中、肌脱ぎになるところも藤納戸色の様な色合いで 全体に紫のイメージでしょうか、スゴク艶っぽいです。
毎回思う事ですが 梅玉丈の前髪のお役は艶っぽくて品があって、雰囲気がとても良いです。
引っ込みは花道スッポンからのようでした。


居所代わりで舞台奥に長唄五挺五枚が出て オキから扇雀丈と孝太郎丈が花道の出になります。
「屋敷娘」というのは大名屋敷に行儀見習いに行っている娘の宿下がりの様子を踊るものだそうで お二人も矢絣の衣装でした。
舞台に上がって 手踊りから手鞠の踊りになり、引き抜きで衣装が替わります。
何となく・・・どこかで見た様な・・・。
さらに 手踊りから鈴太鼓を使った踊りになります。
あ〜・・・これも先日、夜の部で見た様な・・・。(^_^;)
お二人で並びますと 扇雀丈は少しキリットしている感じで 孝太郎丈は可愛い感じ それぞれ雰囲気がございまして面白いです。





☆「陣門・組打」は並木宗輔作1751年初演の全五段の時代浄瑠璃「一谷嫩軍記」の二段目にあたり この後のお話が「熊谷陣屋」に繋がります。
ストーリーは平家物語の‘敦盛最期‘を取り入れた展開になっています。
また、「組打」では遠見の演出に子役を使うなど とても、歌舞伎らしい舞台です。
「一谷嫩軍記」のあらすじ → こちらの感想欄をご参考くださいませ。
熊谷直実の鬘について  → こちらの感想欄をご参考くださいませ。


遠寄せの下座で幕開き 上手に竹本で愛太夫の呼びで花道から藤十郎丈・小次郎が出ます。
白を基調とした拵えで 楚々として涼やか、若々しく初々しい小次郎で ぽっちゃりとした感じが、少年の雰囲気です。
特に、糸に乗って名乗りの時の台詞が 一途な若さを感じてとても良いです。
とても喜寿とは思えません。(^^ゞ
平家の陣中から聞こえる管弦に耳を澄ましているところへ市蔵丈・平山が来るのですが 藤十郎丈の小次郎は‘管弦に耳を澄ましている‘ことが見た目に分かりやすく また市蔵丈は台詞の雰囲気がとても大きいので、単純にズル悪い感じの平山ではなく 熊谷と張り合う武将の格も感じられます。
腹に一物 っと、いう感じに重みがあります。
ですので舞台全体に より篤みが出るように思いました。
特に、ここではノリの台詞が しっかりたっぷりしていて良いです。
花道からの出で團十郎丈・熊谷が舞台に上がります。
とても大きな熊谷で 何と申しましょうか、変な怖さが無いと言うのか 感触が暖かな感じというのでしょうか 優しい情を感じる熊谷です。
平家の陣屋から小次郎を助け出して連れ帰るところは、花道七三でキット立ち止まる型のままですが 一瞬の緊張感がとても良いです。
で、この後の 白馬に乗った藤十郎丈・敦盛が品があって歌舞伎の華があってとてもカッコイイです。(^^ゞ
3階から見ますと舞台が見渡せますので白馬と赤い幌がとっても美しいです。
これは、本当は小次郎なわけですが 少しも悲愴感を感じさせず、品格共に敦盛で それでいて小次郎を全うするわけなので、やっぱりスゴイです。

竹本が六太夫に替わりまして須磨浦の磯端になり 花道から魁春丈・玉織姫の出になります。
品格もさることながら 一途な感じがとても良く、キッパリとした大きさも感じられる玉織姫で 市蔵丈・平山を突っぱねるところ、結末は分かっているのですが それでも‘そうだよね‘っと思えます。
紅一点ではございますが 全体の流れの中で特別に‘紅‘を感じさせない時代物の硬質感があり 市蔵丈・平山に対しても気持ち的にけして負けていない強さがあると思いました。

波幕を落として遠見になります。
一声から謡曲の‘敦盛‘で藤十郎丈・敦盛が花道から出ます。
ここは台詞があるわけでもなく ただ、千鳥の合方で馬が舞台を行ったり来たりするだけなのですが ‘いかにも歌舞伎‘という感じで、とっても楽しいです。(^^ゞ
で、遠見になりまして‘ほにほろ‘の馬に乗ったチッサイ敦盛がスゴク可愛いです。(笑)
敦盛の子役さんは この後、熊谷の子役さんが舞台に出るまで一人で芝居しているわけで ケッコウ視線を集めて頑張っていました。(^^ゞ
遠見の熊谷と敦盛が組打になったところで浅葱幕を下ろして上手から白馬だけが出て花道へ引っ込みます。
このところの、波幕を落とすところから白馬が花道へ引っ込むまで これは、歌舞伎ならではの部分で とても素敵だと思います。

白馬が引っ込むと、下座の波音で浅葱幕を振落としてセリで藤十郎丈・敦盛と團十郎丈・熊谷が上がってきます。
上手の竹本が御簾を上げで葵太夫に代わります。
まだこれからの展開の準備段階の様なところですが ここも‘いかにも歌舞伎‘っと、いった感じで楽しいですし たっぷりとした流れですが、見た目の切り替わりが明快です。
お話そのものは、かなりスゴイ内容で楽しいものではないわけですが それを見せ方で‘芝居‘にしてしまうところが良いです。
兜を取った藤十郎丈・敦盛は、敦盛でございまして 少しも見た目で小次郎を見せずに熊谷と親子を感じさせるのはスゴイと思います。
「討たれし跡にて我が死骸、必ず父へ送り給はれかし」と言っておきながら 「早く御身が手にかけて、人の疑ひはらされよ」と手を合わせるところの腹の決まった感じや 「後れしか熊谷。早々首を討たれよ」と言い放って一瞬熊谷を見た視線をすぐにキットそらすところの決意などは 躊躇している父親の熊谷より、きっぱり割り切って覚悟していて、しっかりしているようです。
藤十郎丈の重圧な感じが そのまま敦盛の格で、かつ小次郎の決意に見えるようです。
対する團十郎丈の熊谷は、親としての心情がとてもよく伝わり かつ、十分に大きさがあると思います。
特に、敦盛の首を討ち玉織姫を見取った後の「どちらを見てもつぼみの花。都の春より知らぬ身の・・・」からの台詞がとても大きくて深みがあると思います。
台詞が高音になる部分が声が割れてしまうので 聞きづらいところもあるのですが 全体にはこの場の武将としての大きさ、この後の‘熊谷陣屋‘に繋がる子を討つ親の心情とその様にならなければならなかった世の無常が とてもよく伝わると思いました。

全体には 古典の時代物の歌舞伎をそのまま余計な事をせず過不足無く 役者さんの篤み、地力でドーンと大きく重圧に見せてくれる舞台で 歌舞伎として、見た目の面白さもあり 十分に心情も伝わる大舞台だと思います。

で・・・余談ですが 私が昼の部を見ました11日の事ですが、2回ほどアレレ(~_~;)な掛け声がかかりました。
こういう掛け声がアリなのか?なのですが なんだか おせっかいに説明臭い掛け声で 私には、こんな感じ(~_~;)でございました。
1回目は 熊谷が敦盛と玉織姫を水葬にするところ 上手の板に二人を乗せて海に流す時に「公達哀れ!」っと掛かりました。
2回目は 幕切れの時「諸行無常!」と掛かりました。
タイミングは良かったので こういう掛け声もアリなのかもしれませんが どちらも思い入れの深い場面ですから できれば気を取られるような掛け声はパスしたかったです。





☆「女伊達」は1809年初演の変化舞踊「邯鄲園菊蝶(かんたんそののきくちょう)」の一場面です。

この舞台は江戸の女伊達、木崎のお秀・菊五郎丈が 大坂の男伊達、淀川の千蔵・秀調丈と中之島鳴平・権十郎丈を相手に立ち回りを見せる っと、いう舞台で 菊五郎劇団の立ち回りを楽しんでしまいました。(^^ゞ
吉原仲之町の舞台で幕開き、舞台正面には長唄囃子のひな壇が出ています。
花道からお三人の出になりますが ここは3階からイマヒトツ見えません。(^_^;)
舞台に上がりましてから 菊五郎丈ももちろんですが、権十郎丈と秀調丈が良くて 特に、権十郎丈のキッパリスッキリしているのにどことなく艶のある感じがとても良いです。
傘を使った所作立てでは 権十郎丈は八ツ花菱、秀調丈が花かつみの傘だったと思います。
あ〜そうか〜音羽屋じゃないからね〜 っと、思いながら見ておりましたら その後の所作立てでは若い者の皆様が‘おとわや‘の傘をお使いでした。(^。^)
立師は菊十郎丈だそうです。
幕切れ間近の‘おとわや‘の傘が並ぶところなどは、とても華やかで楽しいです。
とにかく、この舞台は 菊五郎丈の粋な感じの女伊達も素敵でしたが 菊五郎劇団ならではの所作立てを楽しんでしまいました。(^^ゞ

おまけ。
‘ほうおう‘をチラッと読みましたら‘江戸の女伊達が大坂の二人の男伊達を相手に‘っと、書いてございまして 何で‘大坂‘なんだ? っと、思いました。
で、チョット調べてみましたら 元々は女伊達も江戸の女伊達ではなくて、大坂の女伊達であったそうで、長唄にも >恋をしょうなら新町橋へ 難波名とりの女子だち 都女郎のやさ姿・・・ とあります。
初期の頃に舞台をお勤めになった役者さんの家柄にもよるようなのですが 元は大坂新町橋の奴が、この女伊達のモデルなのだそうです。





☆「廓文章」は近松作の人形浄瑠璃「夕霧阿波鳴渡」(1712年初演)の「九軒吉田屋の段」と「扇屋内の段」を繋ぎ合わせて子供抜きで軽めにした様な舞台です。
「夕霧阿波鳴渡」は泣けるような展開もあるのですが 「廓文章」の方は、よりオシャレ〜な感じです。(^^ゞ

幕開きは松飾の吉田屋見世先で、お大尽の餅つきの後 上手に竹本三挺三枚、綾太夫の呼びで 花道から面明かりで仁左衛門丈・伊左衛門の出になります。
3階からですと花道七三に来るまで仁左衛門丈のお姿が見えませんで(^_^;) チョッと寂しいのですが(笑) 七三で見える上半身のはんなりとした雰囲気で、頭のネジが1本飛びました。(^^ゞ
竹本は >今日の寒さを喰いしばる。 っと、語りますけれど 舞台は華やかで、伊左衛門に哀れさはなく品のある艶がとても素敵です。
で、「喜左衛門。内にいやるか。ちょっと逢いたい、喜左、喜左」っと呼ぶところが とにかくボンで可愛いのです。(笑)
それでいて 紙衣の袖を引く喜左衛門に「紙衣ざわりが、荒い」と、細かいところに向ける気遣いや、何となくの上から目線の感じがあり 篤みのある伊左衛門です。
伊左衛門がピッタリの仁左衛門丈を見ておりまして これが、来月「勧進帳」で弁慶をお勤めになる役者さんかい!?っと思ってしまいました。
仁左衛門丈!すごすぎ!(^^ゞ
左團次丈・喜左衛門も伊左衛門を立てて腰の低い感じがとても良いです。

道具代わりで舞台が変わり、門松が笑いを取っておりました。(笑)
座敷に通った伊左衛門は、やっぱり何となくぽ〜っとした感じがボンなのですが 「七百貫目の借銭負うて、びくともせぬはおそらく藤屋伊左衛門。この身が金ぢゃ。総身が冷えてたまらぬ」と言うあたり、床本にはございます「日本に一人の男」の台詞はございませんが それだけの奥行を感じる、ただのボンじゃない感じが見えてとても良いです。
また、左團次丈の喜左衛門のさりげない気遣いがでしゃばること無く 暖かみを感じて良いと思います。
ここは伊左衛門と喜左衛門が向き合って話しているだけのところで 大きな動きがあるわけではございませんが 仁左衛門丈も左團次丈もとても雰囲気が良いです。
この後、舞台に秀太郎丈・おきさが出ます。
私は、上方の色街の置屋の女房というのが どの様な雰囲気なのかは、お知り合いもおりませんので存じませんけれど でも、たぶんこういう練れた感じの こだわらないけれど、こってりした雰囲気があるのだろうな〜 っと、思わせます。
上手いんでよ〜。(^^ゞ
それで、やっぱりオチャメな感じがあるのです。
さらに あたりまえと言えば、そうなのかもしれませんが 仁左衛門丈とイキがピッタリです。
夕霧が吉田屋に来ていると聞いた伊左衛門が奥の座敷を見に行くわけですが ここの仁左衛門丈が真面目に可愛いです。
頭のネジがもう1本飛びました。(笑)
この後の拗ねたところも 少しも嫌味な感じがなくて、ウキウキ感を感じる面白さがございます。

舞台正面奥の下手寄りに常磐津が出て、福助丈・夕霧の出になります。
上手よりの舞台正面奥の座敷から、伊左衛門の座敷にやって来るわけですが 懐紙で顔を隠して舞台に出て、伊左衛門を見てハッとした感じで懐紙を落としたところが まず、チョッと寂しげな それでいて、可愛らしくて とても良いと思います。
拗ねる伊左衛門に対してのクドキも 可愛らしさがあります。
総じて しっとりした艶はございますが、それほど愁いを感じる切ない想いの夕霧では無く わりと軽いめのあっさりとした雰囲気だと思いました。
仁左衛門丈・伊左衛門は「蹴る、蹴る」っと、駄々っ子状態ですが(笑) このあたりも後に残るものが無いので、たわい無いじゃらじゃら感が重たくならずに見やすいです。
仁左衛門型では 今回は愛之助丈ですが、太鼓持が入りますので 伊左衛門と夕霧の思い入れの部分が、それほど深刻に重たくならず 多少もの足りない感じもあるのですが 逆に柔らかな雰囲気で艶があり、楽しく見終われる舞台なので 終わった後の感触がとても良いです。
仁左衛門丈も福助丈も そういう意味ではあっさりとした感じでイキがピッタリだと思います。
幕切れ前は伊左衛門の勘当が許されて、夕霧の身請けの千両箱が積み上げられ 超Happyendになるわけです。

全体には とにかく、仁左衛門丈の伊左衛門が素敵です。
見惚れてしまう舞台で(笑) 見終わった後の感じがホワホワして、とても楽しい気分になれます。
これで、マスマス来月の「勧進帳」が楽しみになりました。(^^ゞ

余分・・・仁左衛門、伊左衛門、喜左衛門・・・分かりづら〜。
「喜左衛門。内にいやるか。ちょっと逢いたい、喜左、喜左」っと呼ぶところ、笑ってしまいました。(^_^;)



おまけ
「夕霧阿波鳴渡」あらすじ

九軒吉田屋の段
年の瀬の揚屋吉田屋では吉例の餅つきが行われています。
ここへ吉田屋主人・喜左衛門に呼ばれて扇屋の傾城・夕霧がやって来ます。
夕霧は言い交わした仲の伊左衛門が放蕩ゆえに勘当になって逢うことができなくなってから病になってしまいましたが 四国の侍で夕霧と近付きになりたいという客が居るので来て欲しいと喜左衛門からの呼出しがあり出かけてきたのでした。
以前は欠かさず伊左衛門と二人で吉例の餅つきに来ていた夕霧は 逢えなくなってしまった伊左衛門に逢う心でやって来たと言うのでした。


夕霧が座敷へ行くと ここへ紙衣姿に編笠を被った伊左衛門がやって来ます。
店の若い者たちは追い払おうとしますが 喜左衛門が気付き、二年ぶりの再会を喜び座敷に通します。


座敷に通された伊左衛門は吉田屋に夕霧が来ていると聞き喜びますが 以前に自分と張り合った阿波のお大尽の座敷に出ているのではないかと思い込み すっかり拗ねてしまいます。

喜左衛門の計らいで座敷を抜け出した夕霧は 飛び立つ思いで伊左衛門のもとにやって来てますが 拗ねてしまった伊左衛門は夕霧に冷たくあたります。
夕霧は伊左衛門の身を案じて病になったと嘆きます。
これを聞いて伊左衛門は夕霧の想いを察し 再会を喜びます。
そうして 七つになるという二人の間にできた子の様子を尋ねます。
すると夕霧は 二人の間の子は 阿波の大尽・平岡左近と自分との子だと偽って平岡左近に渡したと言います。
話を聞いた伊左衛門は もっとな事だと言いますが 藤屋を立て直すために子供を取り戻せないかと言います。


するとここへ夕霧を呼んだ侍客が刀を持って現れます。
じつは、この客は平岡左近の妻・雪で 子のできない自分に代わって夫・左近の子を産んでくれた夕霧を請け出して 共に暮らそうと思い、訪ねて来たのでした。
しかし、今の話を聞いてしまい 二人を刺して自らも死のうと思ったのですが 傾城に嫉妬して死んだと思われては 夫の名が出て恥になるので このまま二人の子・源之助を貰えないかと言います。
雪の想いに感じ入った伊左衛門と夕霧は 源之助を渡す事にします。
そうして 生きているうちに もう一度、源之助に会いたいと言う夕霧に 雪は身請けの話をすると言うのでした。



平岡左近宿宅の段
年の瀬の左近の宿宅 ここへ喜左衛門に連れられて身請けされた夕霧がやって来ます。
夕霧は自分を乳母として迎えてくれた雪に礼を言い 雪は喜左衛門に金を渡すために奥に入って行きます。
皆が奥へ入ってしまうと 夕霧は我が子可愛さに、源之助に縋る様に泣きだし 一目会いたさに、駕篭かきに成りすましてここまで来た伊左衛門は、こらえきれずに源之助に抱きついてしまいます。
驚いて怒る源之助でしたが 乳母となった夕霧の頼みで 伊左衛門を父と、夕霧を母と呼びます。
喜ぶ伊左衛門と夕霧でしたが ここへ、左近が現れ 源之助が自分の子で無いことを承知で可愛がり、夕霧も乳母として迎えたというのに この様に忍んで来て親子の名乗りをするとは 武士を捨てさせる為かと怒り 雪が止めるのも聞かず、源之助から脇差を奪い取ると追い出してしまいます。
驚いた源之助は中に入れて欲しいと泣きますが 夕霧が事を分けて話をすると 実の父母が恋しいと言うのでした。
ようやく親子が出会えたのもつかの間 夕霧は再び扇屋へ戻る事になります。



扇屋内の段
扇屋に戻った夕霧の様態は悪くなり 伊左衛門と源之助は物乞いになっています。
今も、医者が夕霧の容体を見に来ていますが 思わしく無い様子です。
夕霧の様子を心配した伊左衛門と源之助は せめて声だけでも届けばと、扇屋の門口で「間の山」を唄います。
この声に伊左衛門と源之助が来ていることが知れ 二人は夕霧のもとへ案内されます。
再び親子がめぐり逢い 夕霧は伊左衛門に髪を切ってもらい、父子に水を飲ませてもらいたいと言います。
するとここへ 雪の使いで喜左衛門が身請けのための金子を届けに来ます。
さらには伊左衛門の母親が供人に金箱を持たせてやって来ます。
伊左衛門の勘当は許され 夕霧と源之助は嫁と初孫として迎えられる事となりました。







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