2008年01月22日           もくじへ戻る トップページへ戻る 
    新橋演舞場 昼の部   三階B上手の席

  *通し狂言 雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)
    五幕九場


通し狂言 雷神不動北山櫻
 鳴神上人・粂寺弾正・早雲王子・安倍清行・不動明王:海老蔵
 雲の絶間姫:芝雀
 関白基経:門之助
 文屋豊秀:段治郎
 腰元巻絹:笑三郎
 秦秀太郎:春猿
 小野春風:宗之助
 山上官蔵:猿弥
 八剣玄蕃・黒雲坊:市蔵
 秦民部・白雲坊:右之助
 小野春道:友右衛門

発端
洛中不動堂の場
舞台は平安時代の洛中、鳴神上人が勤行をしている不動堂 折からここへ勅使・山上官蔵がやって来ます。
鳴神上人は 朝廷の命により、変成男子の行方を用い 女子として生まれるはずの陽成天皇を男子ととして誕生させ その褒美に戒壇を建立する事を許されていました。
しかし、勅使・山上官蔵は この約束を取り消し、鳴神上人を洛中から追放する勅命が出たことを告げに来たのです。
白雲坊と黒雲坊は朝廷の行いに怒りますが 鳴神上人は無念の思いで不動堂が打ち壊されるのを見ているのでした。



序幕
第一場 大内の場
舞台は不動堂が打ち壊されてしばらく後の大内 百姓たちが都に雨が降らず困っていると直訴に来ています。
百姓の話を聞いた関白基経、小野春道、文屋豊秀は 朝廷が雨乞いや加持祈祷を行うことを告げ、百姓に帰るよう命じます。
折りしもここへ早雲王子が現れ、日照は自らが終わらせると言い 朝廷が雨乞いの加持祈祷を命じた鳴神上人こそ、邪法を使い日照をもたらしたゆえ 天下国家を案じる自らの判断で鳴神上人を洛中より追放したと言います。
これを聞いた文屋豊秀は 早雲王子の早急な行いに意見します。
すると小野春道が 小野小町直筆の「ことわりや」の短冊を用いて雨乞いをした際に雨が降った事があると話し 文屋豊秀は安倍清行に日照の原因を占わせてはどうかと言います。
しかし早雲王子は 関白基経らが、民の事を考えて政を行っていないと非難し 百姓を慰めるためにこの場を去ります。



第二場 小原村松原の場
舞台は小原村 従者・紀定義が主を探しているところへ 主・安部清行がやって来ます。
しかし ここへ市女笠を被った女が通りかかると 女好きの清行は、さっそく定義を先に行かせ女を口説きはじめます。
ところが この女は山上官蔵がなりすましていたもので 占いによって日照の原因が、帝位を狙う早雲王子の策略によることが知られぬよう 清行の口を封じに来たのです。


するとここへ 小野家腰元・小礒と、小磯の預かる小野家家宝「ことわりや」の短冊を狙う石原瀬平が来ます。
清行を落し穴に突き落とした官蔵が瀬平と共に小礒を追うところへ 早雲王子が現れ、小磯に止めを刺し短冊を奪うと瀬平に預けます。



二幕目
小野春道館の場
舞台は小野春道の館 「ことわりや」の短冊紛失で家中が騒がしくなっています。
折りしも 日ごろから険悪な間柄の 家老・秦民部の弟・秀太郎と執権八剣玄蕃嫡子・数馬が口論となり これを腰元・巻絹が止めているところへ 八剣玄蕃と秦民部が現れます。
玄蕃は短冊紛失の責任は民部にあると言い 見つかぬ時は切腹するように迫るのでした。


ちょうどそこへ 文屋豊秀の家臣・粂寺弾正が、病のため輿入れが延期になっている錦の前の様子を聞くためにやって来ます。
姫・錦の前の病は不思議にも髪の毛が逆立つというものでありました。
これを見て驚く弾正ですが 春道と春風に対面したいので取り次いで欲しいと頼みます。
取り次ぎの間一人になった弾正は 美しい秀太郎や巻絹を口説いたりしておりましたが 毛抜や小柄が躍りだすのを見て不審に思うのでした。
ここへ元館の腰元・小磯の兄・小原万兵衛という男がやって来て 春風のため身重になり難産で死んだ妹・小磯を返せと言います。
これを見た弾正は男を手裏剣で討ち果たし 懐から小野家家宝の短冊を取り出します。
弾正は前に本物の小原万兵衛に会っていて 小磯が何者かに殺され家宝の短冊が奪われた事を聞いていたのでした。
家宝の短冊を取り戻した弾正は 次に姫・錦の前の病のからくりも見破り槍で天井を突きます。
すると大きな磁石を持った忍びのものが天井から転がり落ちてきたのでした。
姫・錦の前が髪につけていた櫛笄は鉄でできていたので大きな磁石にすいつけられて髪が逆立っていたのでした。
弾正はことの首謀者・八剣玄蕃を切り 小野家のお家騒動も収まり豊秀と姫・錦の前の婚儀も進むこととなって一同喜ぶなか 館を後にするのでした。



三幕目
第一場 木の島明神境内の場
舞台は木の島明神境内 山上官蔵に騙されて落し穴に落とされ行方が分からなくなっている安倍清行を従者の紀定義が捜してるところへ 雨乞いのために「ことわりや」の短冊を持って文屋豊秀が通りかかります。
定義が清行を捜している事を知った豊秀も共に清行の行方を捜す事にします。
するとそこへ 雨乞いのための巫女に引き寄せられて、女好きの清行が現れます。
捜していた清行の姿を見て安堵する二人でしたが 清行は豊秀に念によって旱魃の原因を教えると そのまま巫女を追ってこの場を去ります。
豊秀は、清行から 全ての事は早雲王子の計略で 雨を降らせるには、鳴神上人の行法を破る必要があり この役目は雲の絶間姫が適任であると知らされます。
事の真相を知った豊秀は この事を伝えるべく大内へ向かいます。



第二場 北山岩屋の場

  あらすじはこちらの「鳴神」をご覧くださいませ。


大詰
第一場 大内塀外の場
舞台は大内の塀外 折からの雨に関白基経が喜んでいるところへ、文屋豊秀が駆けつけ雲の絶間姫が鳴神上人の行法を破ったために雨が降ったのだと伝えます。
さっそく 関白基経が、この事を奏上するためにこの場を去ろうとするところへ 山上官蔵が現れ、雨が降ったのは早雲王子の命で自らが鳴神上人を討ち果たしたからだと言い 早雲王子こそ帝になるべきだと言います。
しかし 文屋豊秀は安倍清行の訴状を見せ、全ては早雲王子の企みであると言うのでした。
関白基経は全てを伝えるため大内へ向かい 文屋豊秀は抵抗する山上官蔵と斬り合いになります。



第二場 朱雀門王子最後の場
舞台は朱雀門 企てが知れるところとなった早雲王子が立て籠もり、大勢の捕手を討ち払っています。
すると 突然、不動明王の声が響き渡り 早雲王子は仏法の力により退けられてしまいます。



第三場 不動明王降臨の場
舞台には雲の間に浮かぶ不動明王 天地自然、全ての乱れを収めたと声が響き渡るのでした。



☆今回上演されました「雷神不動北山櫻」は 1742年初演の「雷神不動北山桜」を基にした舞台です。
今では通しで上演される事はあまりなく 歌舞伎十八番になっている「毛抜」「鳴神」が見取りで上演される事が多いです。
今回の上演でも大きな流れは「毛抜」「鳴神」「不動」を繋ぐような展開になっていました。

で、今回も(笑)3階席でしたが 運良く、前列の上手の席でしたので 花道七三まで十分に見る事ができました。

幕開きは海老蔵丈の口上から 客席に楽しんでもらいたい っと、いう意気込みが伝わります。
でも、ノリは軽めです。(^^ゞ
実は見終わってから気付いたのですが この口上の時の軽さが、そのまま舞台につながって なんとな〜く、軽いまま舞台が終わるのですね。
まあ・・・肩の凝らない歌舞伎芝居っと、いうところでしょうか。
口上の後、下り端の合方で舞台が変わります。
ここだけではございませんが 今回の舞台を見ておりまして、舞台転換がスムースで 長いお話のわりには全体に息が途切れることなく見る事ができたと思います。


発端
ここは後の「鳴神」のお話の前置き部分の様な感じです。
まあ、「鳴神」そのものは歌舞伎でもわりあいに知られていると思われる演目ですので よく上演される、雲の絶間姫と鳴神上人とのお話に至るまでの経緯も知られているかもしれませんが 今回の様に発端として演じられると、後の舞台に奥行が出ると思いました。
ここでの海老蔵丈・鳴神上人は、落ち着いた雰囲気があり良いと思いました。
また発端では右之助丈・白雲坊に、やはり歌舞伎味がございます。


序幕
ここは後の「毛抜」の前置き部分の様な感じです。
第一場の友右衛門丈と門之助丈を見まして 何となくホッといたしました。(笑)
第二場の安倍清行は筋書きを読みますと 原作では食に拘るそうですが、今回は女好きにして、口説く時にオリジナルなツラネを使ったのだそうです。
このあたりは、やはり海老蔵丈のお若い感じがいたします。
もしかすると ここで、原作の様に食に拘る安倍清行を演じられたら 舞台の構成に奥行とか味が出たかもしれません。
何せ、清行・弾正・鳴神・と どなたも女好きなわけで・・・。(笑)
ですが これは、年齢を経ないと出ない味かもしれません。
幕切れ前の海老蔵丈・早雲王子が とても良いです。
腹の太い大きさがあり、かつ不気味な感じもあり それでいて見た目も良いので(^^ゞ 海老蔵丈ならではの巨悪な雰囲気がございます。


二幕目
ここは「毛抜」にあたる部分です。
っと、申しますか・・・チョッと間合いを短く刈り込んだ「毛抜」です。(^^ゞ
まず、笑三郎丈・巻絹が目を引きました。
きっぱりとしていて舞台が締まります。
春猿丈・秦秀太郎は・・・無理がありませんか〜。
友右衛門丈・春道、宗之助丈・春風、橘三郎丈・万兵衛は安心して見ていられました。
市蔵丈・八剣玄蕃は 悪くないと思うのですが もう少し大きさがあってもいいような気がいたしました。
右之助丈の秦民部は、どうなのでしょう?
品のある秦民部だと思うのですが 柔らかな雰囲気は合うのでしょうか?
海老蔵丈・弾正は ちょっと声が裏返るところがあるのですが カラットした後に残らない雰囲気 あるいは、アッケラカンとした雰囲気は 弾正らしくて良いと思いました。

ここまで わりと軽くスススーッと舞台が展開してきます。
立つ毛抜を見てからの弾正の五つの見得もキッチリ決まっているのですが 全体の流れが早くて間合いを詰めているような感じなので せっかく大きく決まった見得も軽めに見えてしまいます。
タメが少ないのですね。
まあ、楽しいので良いのかもしれませんが グッと引きつける様な見どころ、しどころは見えてきません。
楽しいお手ごろ歌舞伎であると思うのですが 舞台の流れが平坦で、思い入れの起伏がイマヒトツ、表面的に見えてしまいます。
長いお話をテンポ良く見せていくために 舞台の流れを良くしたのだと思うのですが やはり、もの足りなさを感じます。


三幕目
第一場は木の島明神で幕開きです。
この一場は客席サービスの様な場面でございまして(笑) 段治郎丈・文屋豊秀、欣弥丈・定義 そして海老蔵丈・清行が客席に降ります。
客席通路を歩きながら、欣弥丈は客席に向かっていろいろ話しかけたりなさって 場内がとても盛り上がります。
後から客席に降りた海老蔵丈・清行と 客席通路を歩いてきた段治郎丈、欣弥丈が舞台下で一芝居して舞台に戻りますが 客席に、とにかく楽しんでもらおう! っと、いう意気込みが伝わるようです。
ここは 海老蔵丈・清行の飄々とした雰囲気が良く また、段治郎丈がしっかり落ち着いた感じで良かったです。

第二場は第一場から大太鼓でつないで舞台が変わります。
やはり舞台転換が とてもスムースです。
ここは「北山岩屋の場」ですが 間合いを短く刈り込んだ「鳴神」で 全体にテンポアップした流れの舞台になっています。
舞台が変わりますと 右之助丈・白雲坊と市蔵丈・黒雲坊が上手からの出になります。
白雲坊・右之助丈は‘らしさ‘があって良いと思いました。
二幕目の「小野春道館の場」、「毛抜」にあたるところですが この時の秦民部と八剣玄蕃よりも 白雲坊、黒雲坊のコンビの方がお二人とも良いと思いました。(^^ゞ
白雲坊、黒雲坊の‘白雲坊が蛸を食べます‘とか‘黒雲坊は酒を飲みます‘とかひとくさりあるのですが ササッと済みまして(^^ゞ 花道から芝雀丈・雲の絶間姫の出になります。
やはり 舞台がグッと大きくなるようです。
芝雀丈・雲の絶間姫 とても可愛らしいのですが 今回の舞台は 話の最中に、意識的に鳴神上人を見る様子とか 後半もかなりイケイケな雲の絶間姫で これって・・・あまりに露骨過ぎませんかね。(^_^;)
昨年5月の舞台での雲の絶間姫とはズイブン違いますので この違いはたぶん舞台の意図しているところの違いなのでしょう。
女形さんは立役さんに合わせる事が多いですから 今回は海老蔵丈の意向に合わせたということで そういう意味では、息の合った鳴神上人と雲の絶間姫でしたが 単純に私の好みではございませんでした。(^^ゞ
間合いを短くしているために 肝心の雲の絶間姫の馴れ初め話しは とりあえず、この話をしないと進まないから っと、いう感じがして どうも、話しに引き込まれる間もない感じです。
やはり、この場面も見どころしどころがイマヒトツ薄いと思いました。
酔ってしまった鳴神上人は そのまま舞台上で寝てしまい壇上には上がりません。
ここで、ようやく芝雀丈の雲の絶間姫らしさが出ます。
酔って寝ている鳴神上人に 本心を明かし、詫びる時の芝雀丈の雲の絶間姫の言葉には ‘申しわけない‘という思いや、‘とにかく、やり遂げなければ‘という意思を感じます。
芝雀丈・雲の絶間姫が花道から引っ込んで 白雲坊、黒雲坊、他の所化が舞台に出ると 鳴神上人はそのまま舞台でぶっかえりになります。
大薩摩が出て立ち回りになり ここの海老蔵丈・鳴神上人は大きくて、元気です。(^^ゞ
見ていて壮快になる 荒事の大きな立ち回りです。
全体に この第二場は、すごくダイジェストな「鳴神」でした。


大詰
第一場は 前の場面から、幕外で百姓と巫女の会話などを見せながら場を繋いで行きます。
幕間があるわけではございませんので 間があくことがなくて良いと思います。
幕開きは板附で門之助丈・関白基経 ここへ、段治郎丈・文屋豊秀が駆けつけて舞台に出ます。
ほんの短い間なのですが 歌舞伎の雰囲気がございます。(^^ゞ
この後、猿弥丈・山上官蔵と段治郎丈・文屋豊秀の立ち回りになります。

網代塀の模様幕を振落とすと第二場の朱雀門になります。
海老蔵丈・早雲王子はセリで舞台に上がります。
この場面は 立ち回りがスゴイです。
理屈ではなくて とにかく、スゴイな〜 っと、見入ってしまいました。(^^ゞ
梯子を使った立ち回りで三升に決まったり 7人をトンボで超えてみたり* 花道で梯子を使い、梯子の上で海老蔵丈・早雲王子がぶっかえったり その梯子を、そのまま舞台方向に倒したり* 立ち回りの名題下さんに拍手です!!!
海老蔵丈・早雲王子が朱雀門で碇知盛の様に後方に飛んで舞台転換になります。
(*最後にトンボで7人の返り越しを飛んだのは猿琉丈、梯子の一番上に居たスゴイ人は京珠丈 ブログのとこ様のコメントでお教えいただきました。m(__)m)

上手に大薩摩が出て 銅鑼(でしょか?)とライトとスモークで場を繋いで第三場になります。
今まで、舞台の切り替わりがとてもスムースでしたので ここは少し間があくような気がいたしました。
いきなり不動明王が出て全てを収めてしまうという‘いかにも‘歌舞伎らしい大詰なのですが 3階上手からオペラグラスを通して見えた、あの糸の様な縦線はワイヤーではないのかと思いつつ幕になりました。(^^ゞ


全体には 色合いが全て同じで、軽くお話が展開してしまい 思い入れとか、内面から見えてくる部分が無いので 歌舞伎の舞台としては、もの足りなくて飽きてしまいました。
ですが 舞台の展開のスムースなところなどはとても良く 客席を楽しませる事を意識した舞台で お芝居としては楽しめたと思います。






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