2007年12月07日           もくじへ戻る トップページへ戻る 
    国立大劇場 12:00開演   三階中央の席

  *堀部彌兵衛(ほりべやへえ)
    四幕

  *清水一角
    一幕二場

  *松浦の太鼓
    二幕三場


堀部彌兵衛(ほりべやへえ)
 堀部彌兵衛:吉右衛門
 たね:吉之丞
 さち:隼人
 半田判右衛門:桂三
 判平:玉太郎
 住持丈念:由次郎
 寺坂吉右衛門:松江
 中山安兵衛:歌昇

第一幕 高田馬場
舞台は高田馬場 松平家の菅野六郎左衛門と村上庄右衛門の決闘を遠巻きに見守る人々の中に浅野家家臣・堀部彌兵衛と妻・たねが居ます。
折から、たねが癪を起こし 幼い娘を抱いた彌兵衛は決闘の様子が気になってしかたありません。
村上庄右衛門には多くの助太刀がおり 菅野六郎左衛門は討ち取られてしまいます。
決闘は終わったかに思えた時、菅野六郎左衛門の助太刀・中山安兵衛が駆けつけ 居合わせた彌兵衛から、たねが幼子を背負っていた扱帯を借りると これで襷をかけ村上庄右衛門たちを討ち果たすのでした。



第二幕 芝愛宕下青松寺の客間
舞台は青松寺の客間 息子の墓参に来た彌兵衛夫婦は、住職・丈念に先日の高田馬場での決闘の折に扱帯を渡した若者の事を話し 養子になって欲しいが、名も聞く事ができず残念であったと話します。
ところが、ここへ茶を運んできた若者が 先日の助太刀の若者であったので、彌兵衛は驚きます。
若者は住職・丈念の縁戚で、いまは浪人して寺に居候している中山安兵衛という侍である事が分かります。
安兵衛は高田馬場で彌兵衛から借りた扱帯を返すと あらためて礼を言うのでした。
彌兵衛はすっかり安兵衛を気に入り 養子縁組を丈念に頼むのでした。



第三幕 十日後の芝愛宕下青松寺の客間
安兵衛は彌兵衛の養子の話を受け入れず この日も、たねが説得に来て もし、承知してもらえなければ離縁されてしまうとまで言いますが それでも、良い返事をしかねています。
そこへ後からやって来た彌兵衛が現れ 養子の事は主君にも話してあるゆえ、聞き届けてもらえなければ 妻・たねを離縁し、自らも浪人すると言い 中山姓のままでよいので、どうか養子の話を受けて欲しいと頼みます。
安兵衛は中山姓を変えなくても良いと聞き 熱心な彌兵衛の頼みに養子になる事を承諾します。
これを聞いた彌兵衛は喜び さっそく、三歳の娘・さちを安兵衛の許婚にし 十五年後、幼娘が十八歳になった折に祝言する事に決めるのでした。



第四幕 十五年後の米沢町彌兵衛宅
舞台は十五年後の彌兵衛宅 この十五年の間に彌兵衛の主君・浅野内匠頭は吉良上野介へ刃傷に及んだ罪により切腹となり 彌兵衛は浪士となって仇討の機会を狙っています。

折りしも彌兵衛宅の前で遊んでいた隣家の倅・判平は、父・半田判右衛門が浪人して貧しい暮らしゆえに他の子供たちにいじめられてしまいます。
突き飛ばされて衣服の汚れた判平を見た判右衛門は 倅可愛さに彌兵衛宅の木戸口に置いてあった炭を盗み 彌兵衛を訪ねて来た寺坂吉右衛門に見つかりますが、そのまま炭を抱えて隣家に逃げ込むのでした。


寺坂吉右衛門は 討入りが今宵であることを彌兵衛に告げると、この場を去ります。
いよいよ討入りと彌兵衛が意気込むところへ、馴染みの按摩が訪ねてきて 彌兵衛の力強さに驚きながら帰って行きます。
するとここへ、判右衛門が訪ねてきて 倅可愛さに炭を盗んだ事を詫びます。
しかし彌兵衛は判右衛門に同情し 判平が持って来た、父の手製の凧に‘忠‘という文字を書いてやるのでした。


判右衛門親子が帰って後 外出していた安兵衛が帰宅します。
仇討が今宵と決まり前祝の膳が用意されますが これは彌兵衛の娘・さちと安兵衛の祝言の膳でもありました。
これまで中山姓を名乗っていた安兵衛でしたが これより堀部安兵衛となって父・彌兵衛とともに仇討に向かう事となります。


約束の七つの鐘が鳴り 彌兵衛と安兵衛は、たねとさちに見送られ雪道を急ぎます。
隣家では判平が先刻の‘忠‘の文字が書かれた凧を揚げているのでした。






清水一角
 清水一角:染五郎
 一角姉お巻:芝雀
 一角弟与一郎:種太郎
 小姓芳丸:廣松
 牧山丈左衛門:歌六

吉良家牧山丈左衛門宅の場
舞台は吉良家牧山丈左衛門宅 赤穂浪士の討入りに備え縁家の上杉家から警護に出向いていた牧山丈左衛門は武芸の指南役も勤めています。
明後日には上野介は上杉の下屋敷へ移る事になっており また、内蔵助は遊興の日々であるゆえ浪士達の仇討は無いと考え 牧山丈左衛門は侍達を集め年忘れの酒宴を催しています。


するとここへ、すでにかなり酩酊した様子の清水一角が訪ねて来て 周りの侍が嫌な顔をするのも気にせず 立て続けに酒を飲むと 悪口雑言を並べはじめます。
そうして 仇討が無いと思った牧山丈左衛門の目は節穴で、仇討はあると言い、もし無ければ自らの首を差し出すと言います。
これを聞いた牧山丈左衛門は仇討が無い事に自らの首を賭けるのでした。
一角のあまりの狼藉に ついにこの場に居た侍達は耐えかねて、一角を取り押さえると門口から外に放り出してしまいます。
屋敷から閉め出されてしまった一角が内に向かって開けろと叫んでいるところへ、弟の与一郎が兄・一角を捜してやって来ます。
与一郎は、酩酊して叫んでいる一角を見つけると 介抱しながら兄・一角を連れて自宅へ戻ります。


吉良家清水一角宅の場
舞台は一角の留守宅 一角の姉・お巻が弟・一角のために肌着を縫っているところに吉良家家老・小林平八郎の使いでやって来た小姓・芳丸が酒樽を置いていきます。
ここへ与一郎に連れられて一角が帰宅しますが 酩酊している一角は姉や弟の意見も聞かず 先刻届けられた酒を飲むと酒樽を枕に寝入ってしまいます。


時は過ぎて同じ夜の子の刻 すっかり寝入っていた一角は山鹿流の陣太鼓の音に目を覚まします。
赤穂浪士の夜討ちに気づいた一角は姉の用意した肌着に着替え支度を始めます。
するとここへ 赤穂浪士の夜討ちを予想した一角を内通者と疑う牧山丈左衛門がやって来ます。
牧山丈左衛門は一角に槍で突きかかりますが じつは、先刻の約束どおり自らの首を差し出しに来たのでした。
しかし、一角は 今は対立している時ではないので共に夜討ちの防戦をするべく、牧山丈左衛門の命は預かると言います。
牧山丈左衛門を見送った一角は、姉・お巻に渡された女物の小袖で身を隠し 自らも夜討ちの騒動の中へ駆け出して行くのでした。






松浦の太鼓
 松浦鎮信:吉右衛門
 源吾妹お縫:芝雀
 大高源吾:染五郎
 宝井其角:歌六


  あらすじはこちらでどうぞ




3演目とも わりと、軽めの舞台でしたが 暮れの忙しい時期にチョッとお休み っと、言う感じには良い舞台だと思いました。
何より、粋でオチャメな(笑)吉右衛門丈を見る事ができます。(^。^)
客席も、平日でしたが ケッコウ埋まっておりまして 場内の雰囲気も良かったです。
舞台全体の面白さからすると「松浦の太鼓」が良いのだと思うのですが 「堀部彌兵衛」は台詞と役者さんの持つ雰囲気、あるいは地力で見せるような舞台だと思いましたので こちらは、吉右衛門丈の大きさを感じ取れる舞台だと思います。
終演時間が4:38でしたので いつもより長めかと思いますが 楽しく見てくることができました。





☆「堀部彌兵衛(ほりべやへえ)」は初代吉右衛門丈にあてて書き下ろされた宇野信夫作の舞台で 1939年(S14)に初演されました。
今回が4度目の上演ということですが当代吉右衛門丈の彌兵衛は初役になります。
堀部彌兵衛という人物は忠臣蔵のお話の中では一番年嵩だったというくらいしか記憶に残らないようなキャラクターで 養子にした安兵衛の方はよく知っているけれど本人はよくわからないといった感じです。
で、そのような人物に焦点を当てたのが今回の舞台です。
幕開きの時には 堀部彌兵衛は既に、21歳になる息子を亡くしており 15年後の仇討の折に76歳であったことを考えると 舞台上の堀部彌兵衛は61歳くらいなのだと思います。
ですので ここから先のお話の展開も 見た目に荒々しい動きがあるのではなく どちらかと申しますと暖か味を感じます。

第一幕は高田馬場での仇討ですが 時間的には短く、吉右衛門丈が舞台でオロオロしているうちに幕が下りる感じで これからのお話の導入部分といったところです。
それと 幕が下りた後の舞台転換の時間がちょっと間延びしてしまいます。
まだ5日ですから これからもう少し早くなってくると 見ている方の気持ちが途切れないと思います。
で、一つ分からなかった事が・・・‘縄襷は不吉‘だと堀部彌兵衛が言うのですが なぜでしょう?

第二幕はほとんど舞台に大きな動きがございません。
吉右衛門丈・彌兵衛、吉之丞丈・妻たね、由次郎丈・住持丈念のお三人が座ったままで台詞で舞台を進めて行きます。
ほとんどが吉右衛門丈の台詞で 舞台を展開していく感じです。
大きな動きがございませんので そこに居るという存在感と台詞の上手さが分かります。
内面の心情を舞台の篤みとして見せることのできる吉右衛門丈ならではの一幕かと思います。
全体にほのぼのした雰囲気で 由次郎丈・住持丈念の居眠りが、なんとものどかです。
この幕で 何気ない‘のどかさ‘を感じるので四幕目の境遇の変化に奥行が出るのだと思いました。

第三幕は歌昇丈のなんとも困った感じが良いです。(^^ゞ
で、真面目で人の良さそうな(笑)感じの歌昇丈・安兵衛と 頑固そうだけど、けっこうオチャメでしょ!っといった感じの彌兵衛のやり取りに味があって良いのです。
まだ小さい彌兵衛の娘を抱っこする歌昇丈・安兵衛・・・似合わないんですよ。(爆)

第四幕は第三幕から15年が過ぎていて 彌兵衛らはすでに浪人で、仇討直前です。
幕開きは子供たちの凧上げ風景なのですが 玉太郎くんが頑張っているのですね。
台詞もたくさんあるのですが しっかりしていてお行儀も良いです。
吉之助丈・按摩正庵の‘毎日を普通に暮らしている者の雰囲気‘がとても良い感じで味があり 仇討を控えている彌兵衛との対比に、奥行を感じます。
彌兵衛と按摩正庵とのやり取りが これからの成り行きを暗示しているのですが それだけではなくて、会話の中から彌兵衛の人となりが感じられ 強い意志の中にも優しいぬくもりを持つ、懐の大きさが見えてきます。
桂三丈・半田判右衛門が渋い感じで 同じ浪人でありながら、赤穂浪士の彌兵衛や安兵衛との対比が見えてくるようで やはり、舞台の奥行を出していると思いました。
松江丈の寺坂吉右衛門が舞台をキリッと引き締める感じです。
劇的に大きな動きがある舞台ではございませんが 一つひとつを積み重ねることで 舞台の篤み、奥行を出しているようです。

第四幕後半になりまして安兵衛と娘・さちの祝言があるのですが ここは、少し間延びした感じです。
何が、っというわけでもないのですが ここまでの奥行を感じる舞台と比べて、やや上滑りな感じがいたしました。
もしかすると‘艶‘があまり感じられないからかもしれません。
ですが、隼人丈は綺麗でした。(^^ゞ

この幕もやはり吉右衛門丈の地力で見せていく舞台の様に感じました。
これから吉良邸に出かけようという時に ‘上野介を討つ事ができなかった、主君内匠頭の遺志を継ぐのみ‘ と、言った内容の台詞を安兵衛に言うのですが 昨年の元禄忠臣蔵の内蔵助を思い出してしまいました。
幕切れ前の「雪晴れて 思いは叶う 明日かな」に泣けました。

この幕は彌兵衛の謡い、書、そして幕切れ前には花道七三で一句詠んで幕になります。
初代吉右衛門丈のために書かれた舞台だな〜っと、思うわけですけれど 当代も舞台で玉太郎丈・判平の持って来た凧に‘忠‘の文字を書きます。
判平がこの凧を揚げているところで幕切れになるのですけれど 上演回数分だけ、凧に‘忠‘の文字が書かれるわけですね。
この凧・・・御贔屓様とかに差し上げるのでしょうか?
まあ、どうでもいいことなのですけれど この後の凧の行方が何となく気になったりいたします。(笑)

全体にホンノリ感のある舞台で 大きな動きがあるわけではなく、台詞と内側からにじみ出るような雰囲気で見る舞台だと思うので 役者さんの地力が見える感じです。





☆「清水一角」は1873年(M6)初演の黙阿弥作の舞台で 47年ぶりの上演だそうです。
討入りの夜ということで 雪音で幕開きになります。
舞台は牧山丈左衛門・歌六丈の住居で年忘れの酒宴(忘年会ですね)の最中です。
歌六丈が大きくて良いです。
ここへ、清水一角・染五郎丈が花道の出て舞台に上がります。
ですが この時すでに清水一角は酩酊状態なのです。
‘魚屋宗五郎‘の様に はじめは酔っていなくて、かえって他の人より理にかなった人物が 酒に酔って変る様を見せるということではなく はじめから酔っているのですね。
で、上演中 ほとんど酔っているのです。(^_^;)
これでは対比する‘もと‘が無いので ただ、ベロベロのお兄さんを見ているようですし 見た目にも緩急がなく平坦な感じになってしまいます。
後半になってようやく一角がキリットなります。
陣太鼓でグッと舞台が盛り上がる感じで ここからの染五郎丈の決まり決まりはキリットしていてとても良いと思います。
染五郎丈と歌六丈の立ち回りも 動きが早いですし、大きくて良いです。
ですが 立ち回りをしながら袴を穿くので、綺麗に穿けないのですね。
ケッコウ頑張って袴を穿いている感じでしたし おもしろいやり方ですし ここは見どころなのだと思うのですが 着終わった袴は、後側がねじれてしまってグズグズでした。
これでは染五郎丈が花道七三で決まってもイマイチです。
染五郎丈は酩酊状態の一角をしっかりお勤めでしたし 陣太鼓を聞いてからのキリットした変化も良かったと思いますが どうも、お話の展開そのものがイマヒトツの様な気がいたしました。

清水一角宅の場では、やはり芝雀丈・お巻が存在感があってとても良いです。
舞台が大きくなります。
それと種太郎丈・与一郎が大健闘かと思います。
まだまだ、台詞が一本調子ですけれど 丁寧にお勤めになっていると感じました。





☆「松浦の太鼓」は‘秀山十種‘の一つです。
赤穂浪士討入りの日の 隣家、松浦鎮信を中心にお話が展開するのですが 今回の舞台は吉右衛門丈ももちろんですが 其角の歌六丈が、渋くて物静かな感じで大きくてスゴク良いです。
序幕での大高源吾・染五郎丈とのやり取りも渋い感じで良いのですが 二幕目・松浦邸の場での松浦鎮信・吉右衛門丈とのやり取りがスゴク良いです。
お縫・芝雀丈をかばい 頭を下げつつ、けして前に出ることなく けれど、松浦鎮信に対して一枚も二枚も上手な感じで 器の大きな人柄を感じさせます。

対する、松浦鎮信・吉右衛門丈は ハチャメチャなのに、しっかりお殿様に見える大きさがあり ヤンチャでオチャメなのに、砕けずに品格を感じます。
松浦鎮信というお役は 役者さんに重みがございませんと 見ていてコントの様になってしまうのですね。
ですが、吉右衛門丈の松浦鎮信は ヤンチャでオチャメな部分に‘粋‘を感じることができるので砕けて見えることがございません。
きっぷのいいお殿様に見えます。(^^ゞ
自分は連句の会などしているくせに 赤穂浪士が討ち入りをしない事に不満を持ち、お縫に暇を出すハチャメチャな感じ けれど その不満の中には廃れようとしている武士としての一本の筋があり、その部分に関しては重圧な品格が存在します。
元禄の頃の大名ゆえのアンバランスな行動、思い入れを 違和感なく見せていると思いました。
陣太鼓を聞いて指折り数を数えるところなど 子供の様に嬉々としていて、討ち入りという緊迫した事態を嬉しく感じているわけで けして楽ではなかったであろう赤穂浪士の苦労を思えば ‘お祭りじゃないんだからさ〜‘とか突っ込みを入れたくなるような感じなのですが それでも、一度 真剣に真面目になると きっと、松浦鎮信という人は ものすごく重圧で怖い人になれるのだろうな っと、思えるのです。
なにより、玄関先の場 幕切れ前がギャグにならずに しっかり収まって幕になったので気分良く帰宅できました。(^^ゞ

芝雀丈・お縫は品があり さらに、気廻しの利く雰囲気があります。
なので こんなに、利発で気遣いができるのに 暇を出されて気の毒だな〜 っと、思えますし 連句の会の席にいる家臣たちが、なんとなく同情する雰囲気がよく伝わります。
で、お茶を出すのに ちゃんと、お抹茶で茶をたてるやり方をなさっていらっしゃったようです。
ちょっとカッコイイな〜 などと、思いました。(^^ゞ
葵太夫のHPを拝見いたしましたら(‘今月のお役‘の2007年12月です) お縫のお手前は、松浦公末裔の茶道「鎮信流」と書いてございました。

大高源吾・染五郎丈が頑張っていると思いました。
序幕の両国橋の場での其角とのやり取りも すっきりと物静かで品があり落ち着いていて良いと思いました。
「明日待たるる その宝船」のところも 静だけれど思い入れがある感じです。
淡々としたところが 逆に、内に何かある感じを伝えているように思えました。
ですが、幕切れ前は 少し声が聞き辛かったです。






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