2007年11月09日           もくじへ戻る トップページへ戻る 
    国立大劇場 11:30開演   三階中央の席

  *通し狂言 摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
    四幕七場


通し狂言 摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
 玉手御前:藤十郎
 羽曳野:秀太郎
 高安俊徳丸:三津五郎
 奴入平:翫雀
 浅香姫:扇雀
 高安次郎丸:進之介
 誉田主税之助:愛之助
 おとく:吉弥
 桟図書:秀調
 高安道俊:彦三郎
 合邦道心:我當


序幕
住吉社前松原の場
舞台は住吉神社前 折りしもここへ 夫・高安道俊の病気平癒の祈願のため 奥方・玉手御前と嫡子・俊徳丸がやって来ます。
玉手御前は道俊の後妻で 歳のころも俊徳丸とあまり変わぬ若さです。


一行が祈願のため境内へ進むと ここへ、俊徳丸の異母兄・次郎丸が家来と共に現れ、浪人の桟図書と共に 俊徳丸を亡き者にし家督を継ぎ、許婚の浅香姫を奪う計画を話し この場を去ります。

しばらくして 祈願を終えた俊徳丸が戻ってきます。
ここへ腰元たちが宴の用意をしにやって来て 支度が調うと玉手御前は腰元たちを下がらせ 自ら俊徳丸にお神酒を勧めます。
お神酒とあっては断る事もできず 俊徳丸は鮑の貝に注がれた酒を飲み干します。
すると、玉手御前は この杯は‘妹背の固め‘と言い俊徳丸への恋心を打ち明けるのでした。
驚く俊徳丸は 玉手御前の邪恋を振り払い、この場を去ります。



二幕目
高安館表書院の場
舞台は高安館 住吉神社への参詣の後から、俊徳丸は難病に罹り視力も失われようとしています。
俊徳丸が気がかりな玉手御前は見舞いに行こうとするのですが 誉田主税之助の妻・羽曳野(はびきの)に止められます。
羽曳野は玉手御前の俊徳丸への恋慕を薄々気付いており また、夫・誉田主税之助(こんだちからのすけ)の言いつけもあり 俊徳丸の側へは誰も近づけないようにしていました。


折りしもここへ 桟図書が成りすました勅使・高宮中将がやって来ます。
偽の高宮中将は高安道俊に 家督を継いだ俊徳丸に参内させ、綸旨を提出するよう言います。
高安道俊は俊徳丸は病であるので参内は延期して欲しいと頼みますが 偽の高宮中将はこれを聞き入れません。
しかたなく 高安道俊は次郎丸が用意した小判を偽の高宮中将に渡し 参内の延期を許可してもらいます。


この様子を部屋で聞いていた俊徳丸は 自らが家を出れば家督は次郎丸が継ぎ高安家は安泰と思い 涙ながらに置手紙を書くと、館を出て行こうとします。
しかし玉手御前が、これに気付き 俊徳丸と共に家を出ると縋りつきます。
俊徳丸は、追いかけられぬよう 玉手御前を縄で縛ると、そのまま館を去ります。


羽曳野が玉手御前を見つけ縄を解き 俊徳丸が館を出た事が知れます。
悲しむ父・高安道俊でしたが 俊徳丸の気持ちを思い、後を追おうとしません。
俊徳丸の出奔を知った桟図書は これで家督を継ぐのは次郎丸だと笑うのでした。



高安館奥御殿庭先の場
舞台は高安館の奥庭 雪の中を玉手御前が俊徳丸を追って行こうとしています。
しかし玉手御前の俊徳丸への恋慕に気づいている羽曳野がこれを止めます。
羽曳野は玉手御前に意見しますが 玉手御前は意見を聞くこともなく、なおも俊徳丸を追おうと、羽曳野と立ち回りとなり 羽曳野に当て身をしてこの場を去ります。
玉手御前がこの場を去ると そこへ館を留守にしていた羽曳野の夫、執権・誉田主税之助が帰ってきます。
当て身を受けて倒れている羽曳野に気付き、駆け寄って介抱しますが 羽曳野からこれまでの事情を聞くと 勅使・高宮中将に不審をいだき、後を追って行きます。



河内国竜田越の場
舞台は雪の山道 継目相続の企てが上手くいったことを喜ぶ次郎丸は 奪った綸旨を桟図書に預け 家来と共にこの場を去ります。
後に残った桟図書も この場を去ろうとしますが ここへ誉田主税之助が追いつき、声をかけます。
慌てて勅使のふりをする桟図書でしたが 本物の高宮中将に会ったと言う誉田主税之助に偽者であることを見破られてしまいます。
さらに、誉田主税之助は 桟図書が次郎丸から預かった綸旨も取り返すのでした。



三幕目
天王寺南門前の場
舞台は賑やかな天王寺南門前 ここへ、俊徳丸の後を追って家出した許婚・浅香姫を探す奴・入平がやって来ます。
入平は参詣の人から椎寺の近くに目の不自由な病人がいたと聞き 俊徳丸ではないかと思い椎寺へ向かいます。
入平がこの場を去ると ここへ閻魔大王の首を乗せた荷車を引いて 勧進を乞う老人・合邦道心がやって来ます。
今は閻魔の信心を説く合邦道心ですが もとは、大名の倅で玉手御前の父親でありました。



天王寺万代池の場
舞台は万代池のほとり 病で目も見えなくなった俊徳丸が 池のほとりの蒲鉾小屋へ戻ってきます。
今日は彼岸の中日 俊徳丸は父や浅香姫のことを思い 西の方角へ日想観の祈りをします。
するとここへ 俊徳丸の後を追って家出した浅香姫がやって来ます。
しかし変わり果てた姿に 目の前に居る人物が俊徳丸だと気がつかず 俊徳丸の消息を尋ねます。
目が見えなくなった俊徳丸ですが 声を聞いて、尋ねた人が浅香姫だと気づきます。
しかし、自らの変わり果てた姿から名乗ることもできず 「俊徳丸は ”訪ねて来る者があれば 池に身を投げたゆえ、他の人と添うように” と、言い残し 巡礼に出た」と言います。
これを聞いた浅香姫は泣き崩れてしまいますが 姫を捜していた入平がやって来て再会を果たします。
浅香姫から事情を聞いた入平は この男が俊徳丸ではないかと思い、姫と共に身を潜めて様子を窺います。
目の見えない俊徳丸は二人が身を潜めている事に気付かず 浅香姫に逢えて嬉しかったが、名乗ることもできず追い返してしまったと悲しい気持ちを口にします。
これを聞いた浅香姫は俊徳丸に駆け寄り涙ながらに喜ぶのでした。


ところがここへ浅香姫に横恋慕する次郎丸が現れます。
入平は次郎丸の家来を追い払いますが この隙に次郎丸が浅香姫を連れて行こうとします。
しかし折りよく先刻の合邦道心が通りかかり 次郎丸を池に投げ込むと、浅香姫に俊徳丸を連れて逃げるよう言います。
浅香姫は合邦の荷車に俊徳丸を乗せると 懸命に車を引いて逃げるのでした。



大詰
合邦庵室の場
舞台は合邦道心の庵室 お辻こと玉手御前の母で合邦の妻のおとくが娘のための百万遍の供養を終えたところです。
高安道俊の後妻になったお辻でしたが、俊徳丸への不義から手討ちになったと思い 不憫に思った母・おとくが供養していたのです。
これを見た合邦はおとくを叱りますが やはり、娘のことを案じています。
しかし、武家に生まれた合邦は 高安道俊や俊徳丸への申しわけに 病の俊徳丸と浅香姫を庵室に匿っています。


折りしも 夜道を人目を忍んで、頭巾を被った玉手御前が庵室にやって来ます。
外から小声で母・おとくを呼びますが 高安家への義理から合邦が逢うことを許しません。
なおも玉手御前が母を呼ぶので おとくは合邦に、供養までしたのだから娘の幽霊に逢うのであれば義理は欠かないと頼み 玉手御前を庵室に入れるのでした。
浅香姫と俊徳丸を追って来た入平は藪に隠れて様子を見ることにします。


再会を喜ぶおとくですが 俊徳丸への不義を尋ねます。
すると玉手御前は やはり俊徳丸への想いを語り、夫婦になりたいと言います。
娘の邪恋に怒った合邦が刀を抜きかけるのをおとくが懸命に止め 俊徳丸への想いを口にする娘の手を引いて暖簾の奥へ連れて行きます。


隣の部屋からこの様子を窺っていた浅香姫は俊徳丸と共に逃げようとします。
しかし奥から玉手御前が現れ俊徳丸を見つけると縋りつき 俊徳丸の病は自らが住吉神社で飲ませたお神酒に毒が入っていたからだと言います。
俊徳丸を病にして 浅香姫に愛想尽かしをさせ 自らの想いを遂げようとしたと言うのです。
これを聞いて、浅香姫は怒り 玉手御前に掴みかかりますが 逆に玉手御前に蹴り倒されてしまいます。
娘のあまりの様子を見て ついに合邦は刀を抜くと玉手御前に突きかかり 玉手御前はこの場に倒れます。
庵室の騒ぎに 藪の中に隠れていた入平が飛び込んできて 玉手御前の様子に驚きます。


倒れた玉手御前は 母・おとくに支えられ 俊徳丸への邪恋は全て偽りであったと、これまでの経緯を語ります。
次郎丸の企てを知った玉手御前ですが 次郎丸も俊徳丸も継母である玉手御前には共に義理ある子ゆえ 次郎丸も罪人にする事はできませんでした。
そこで、俊徳丸の命を守るために不義をしかけ病にして出奔させたのでした。
さらに、俊徳丸の病は 寅の年月日刻に生まれた女の胆の生血を毒酒を飲んだ盃で飲めば治るので 寅の年月日刻に生まれた玉手御前自らが合邦の手にかかり俊徳丸の病を治すのだと言います。
玉手御前は合邦から刀を貰い受け、自らの胆を刺し生血を鮑の盃に入れ俊徳丸に飲ませると 俊徳丸の病は治るのでした。


皆が涙するなか 誉田主税之助が現れ、次郎丸の企てが露見し俊徳丸の家督相続が認められたことを伝えます。
玉手御前は百万遍の数珠の輪の中で 皆に見守られ手を合わせ息絶えるのでした。




国立「摂州合邦辻」を見てまいりました。
藤十郎丈、引っ張ることすごいです。(^^ゞ
丸本の細かい流れが ケッコウ疲れました。(笑)
三津五郎丈の俊徳丸がしっとりした柔らかな感じでとても美しいです。
特に、序幕はドキッとするくらい良いです。

全体の感想といたしましては 私には感覚的にまだよくわからない感じがいたしました。
舞台がどうこう言う以前に 玉手の心情とか、結末のなりゆきとか 私のキャパシィティーでは理解できない事が多いのです。
いっそ、玉手と俊徳丸が一緒に駆け落ちでもしてしまうとか 片思いに我慢できずに玉手が死んでしまうというのであれば ‘な〜るほど‘ っと、理解できたかもしれないのですが 大義名分が付いて「あっばれ女の鑑とも云はるるお身」と言っても、ホントは俊徳丸に恋慕の情があったわけですから(筋書きなどを読みますと藤十郎丈は 玉手は俊徳丸を愛していたのだとおっしゃっていらっしゃいますので) ‘あったのに、最後に周りはないと思い、でも奥底ではあった‘ わけなので ‘あっばれ女の鑑‘っということで幕になるのも‘ふ〜ん、そうなんだ〜‘っと思ってしまうのですね。
結局、本当のところは誰もわかってくれないわけで だから、哀れなのですけれど このあたりの複雑な心情が私にはイマイチ伝わらないと申しましょうか よくわからなかったりするのです。
どうも・・・背伸びして見ているような雰囲気でした。(笑)





今回の上演は39年ぶりの完全通し上演で、さらに丸本歌舞伎でございまして かなり重量感を感じる舞台でありました。
ですが、最近は同じ演目の上演が多く また、内容もコミカルなものとか 歌舞伎の舞台にしてはあっさりしているな〜っと思える様な舞台が多いので 今回の様な舞台をガッシリと見るのもいいのではないかと思いました。

さて、今回の舞台は藤十郎丈が玉手御前をお勤めで 他の方々もおおかたが上方の役者さんでございます。
ですので、舞台全体に柔らかな感じがございまして 大きな起伏、急激な緩急があると申しますより 丸本に沿ったきめ細かな表現の積み重ねでお話が展開する感じです。
小さな所作の一つひとつに ‘それなりな‘意味があるようで そこのところを見ている側も自然に理解できないと ただ、すらすらすら〜 っと、お話が進んでしまうのかもしれません。

舞台の流れは、通し狂言ですがスッキリ整理されているようで 複雑にならずにわかりやすい展開です。
このお話自体に、あまり馴染みの無い私などには展開がよく分かり良かったです。
とりあえず、順に書いてまいります。





序幕は まあ、これからのお話の発端という事です。
波音の太鼓で幕開きで 竹本が簾内のオキ、朋太夫 舞台は奥に海の住吉神社で オキから下座に代わって花道から俊徳丸・三津五郎丈と玉手御前・藤十郎丈の出になります。
この時 藤十郎丈は下げ髪に花簪、打掛で 艶っぽく 一緒にいる俊徳丸と見た目の年齢さを感じさせません。
玉手御前の年齢を俊徳丸と比べて、それほど上であると解釈していないからではないかと思います。
3階席からですと全体のaboutな見え様になるわけですが 並んで歩くお二人に艶っぽい華やかさが見られて良いと思いました。
とりわけ、序幕は三津五郎丈の俊徳丸が良いと思いました。
前髪のはんなりとした柔らかさと品がございまして 美しい俊徳丸です。
で、これからのお話の展開に係わるところで進之介丈の高安次郎丸が居るのですが むきみの隈で掴み立ての切藁の鬘で、顔や鬘の感じは杉王丸の様なのですが、チョッとおかし味のある演じ方をなさっていらっしゃいます。


表書院の場では秀太郎丈の羽曳野(はびきの)が手強い雰囲気で良いです。
藤十郎丈・玉手御前とやりあうところも きっぱりして、緊迫感もあるのですが やはり上方の雰囲気がございますので、全体に柔らかな感じでピリピリしないのが良いです。
彦三郎丈の高安通俊は大きさがございますが 舞台全体の雰囲気に合った柔らかさもあり、控えめな感じでバランスが良いと思います。
また、秀調丈の桟図書(かけはしずしょ)が目を引きました。
勅使なわけですが これは、その様に見えないところが 面白くて良かったです。(^^ゞ
ここでの三津五郎丈の俊徳丸は序幕での華やかさはなくなって 切ない感じがいたします。
ですが、やはり品があってしっとりした感じはあるのです。


庭先の場は 舞台が変わりまして、竹本が蔵太夫 雪の奥庭で、ここに黒地の衣装の藤十郎丈・玉手御前がきっぱりとしたコントラストでとても良いです。
まずは、藤十郎丈の玉手御前と秀太郎丈の羽曳野のやり取りが巧みで お二人の立ち回りもチョッと珍しいものを見たかな〜(笑) などと思ってしまいました。(^^ゞ
で、この場で印象に残りましたのは 愛之助丈・誉田主税之助(こんだちからのすけ)です。
ワタクシ、あまり愛之助丈の舞台を拝見する機会がございませんで 先月、歌舞伎座で久しぶりに拝見いたしまして 大きさを感じるようになったな〜 っと、思ったのですが 今回も舞台にいらっしゃるのは短いですが 重心が低いと申しましょうか、ガッシリした感じがございまして 大きく重量感がございました。
が・・・サスガに、秀太郎丈と夫婦というのは チョッと可哀想じゃないですか?
とても頑張っていらっしゃって どっしりしているのですが 秀太郎丈・羽曳野の夫には見えないのですよ。(^_^;)
まあ、逆に言えば この年齢差を感じなくなればスゴイのでしょうけれど。


続く竜田越の場でも愛之助丈が良かったです。
先月と今月と舞台を拝見いたしまして 1月の浅草が何だかとても楽しみになってきました。(笑)


三幕目は南門前の場から始まります。
ここから、翫雀丈・奴入平と我當丈・合邦道心が出ます。
竹本が二挺二枚になりオキで、花道から翫雀丈・入平の出になります。
なんでしょうね・・・ここまで、舞台がなんとなく重たい感じであったのですが 当事者ではない入平が出たところで 見ておりましてホッと明るい感じになったような気がいたしました。
続いての我當丈・合邦が、人の良い優しい感じでございますので さらに、舞台が和むようです。
ですが、ここでの合邦が良い人なので 後の、庵室の場がさらに悲しくなるのですね。
ちなみに・・・念仏踊がフォークダンスの様でした。(^^ゞ


舞台が回って万代池の場になり 竹本が鳴門太夫になり、三津五郎丈・俊徳丸が花道からの出になります。
ここは謡曲・弱法師を意識している場面だそうです。
またまた蒲鉾小屋の登場で(笑) 俊徳丸と浅香姫・扇雀丈が出会います。
台詞でお話が進み 最後が立ち回りとなります。
翫雀丈・入平の次郎丸の家来たちとの立ち回りの後、下手から登場の我當丈・合邦と次郎丸との立ち回りがございます。
前半は三津五郎丈・俊徳丸の哀れだけれど品格のある感じが良く、義太夫でたっぷりと また、柔らかな感じも良いです。
後半の立ち回りは それほど、動きの激しい感じではございませんで 立ち回りを見るというより お話の流れの中で立ち回りもある っと、いった感じです。
ですが、翫雀丈のノリの台詞にリズムがございまして 暗い雰囲気の舞台に活気が出ると申しましょうか 気分が軽くなる様でございます。
この場の最後に浅香姫が俊徳丸を荷車に乗せて花道から引っ込むのですが ここの場面、いつどこで見たのかわからないのですが 見た覚えがございました。
赤姫の浅香姫が病の若者、俊徳丸を荷車に乗せて行く姿に、かなりインパクトがございます。
さて・・・どこで見たのでしょう。(・・?


いよいよ大詰の合邦庵室の場です。
ここまで、長かった〜。
この場は 元は武士だけれど娘を思う優しい気持ちが見える合邦・我當丈が良いです。
我當丈がお持ちの暖かい雰囲気が泣かせるのですね。
玉手御前が 自らの行いの真相を話した時の「おい!やい!」に泣けました。
さらに、吉弥丈のおとくがとても良いです。
先月のお国でも吉弥丈、すごく良いと思いましたが 今月のおとくも‘情‘があって良いです。
年齢的にはお若いのですけれど 六段目のおかやをお勤めになられる方ですから キャパシィティーは十分なのだと思います。
また、吉弥丈は 底に‘凛‘とした品格の様なものを感じさせるところがございます。
それが、今回の 元は武士で大名の倅であった合邦の妻、というお役に生きていると思いました。

さて・・・舞台は合邦の庵室で、百万遍の供養の後 我當丈・合邦が舞台に出て 吉弥丈・おとくのお二人となります。
二人は娘の玉手御前が死んでしまっていると思っているのですが 元、武士の父親と、娘を不憫と思う母親の心情の違いが、会話の中から分かります。
ですが、どこにも険悪な雰囲気はございませんで 合邦も実は娘の事が気がかりであるし また、夫婦・親子の関係が暖かいのだと感じます。
この暖かさが なおさら悲しさを誘うわけです。

この後 竹本が出語りになり 花道から藤十郎丈・玉手御前の出になります。
黒地の衣装に黒い頭巾で 途中でおこついて、七三で少し振り返って そのまま舞台に上がります。
下手の門口のところで庵室の中の様子を窺います。
この時に 花道から翫雀丈・入平が出て 門口の玉手御前に気が付き、そのまま下手の藪に潜みます。
で、この時の藤十郎丈・玉手御前の姿の何とも良いこと・・・。
見た目に華やかで美しいわけではございません。
ですが 門口のところで 動かずに、じっとうつむいて 斜めに見える姿が 愁いを感じるというのでしょうか とても美しいのです。
すみません、理由は分かりませんが とにかく、目を引く大きさ美しさがございます。

門口で中に声をかけ 気付いたおとくが合邦に頼んで玉手御前は庵室に入ります。
花道のところの頭巾や、庵室に入ってからおとくのところへすぐに行かずに暖簾の方に行ったり、奥の間に行こうとして合邦に気付いて向きを変えておとくのところへ行く っと、いう様なやり方は丸本のやり方の様で 見た目の型ではなくて、理由があって‘その様になっている‘のだそうです。
まあ・・・確かに、理にかなった所作なのです。
で、もちろんここは語りと三味線でお話が進みます。
なので、こってりとしていて しっかり意識を向けていないと分からなくなってしまいます。(^_^;)
私には かなりヘビーです。

おとくと再会した後、クドキになります。
藤十郎丈の玉手御前は丸本通り、ここでのクドキのみです。
ここで玉手御前の話し、クドキですが これを直接目の前で聞いているのは、もちろん俊徳丸ではないのですが 話している藤十郎丈・玉手御前の可愛らしくて艶っぽいこと。
さらには、ここでの玉手御前は 娘なのです。
通俊の後妻ではなくて 娘のお辻なのです。
すごく可愛いくて一途なのです。
藤十郎丈の女形はスゴイです。
たぶん奥の間に匿われているであろう俊徳丸を意識して 俊徳丸に聞かせるべく、思いっきりの娘心で想いを話すのですね。

クドキの後に暖簾のところから奥に入るのですが ここは吉弥丈・おとくに引きずられる様にして入ります。
藤十郎丈・・・ケッコウふくよかでいらっしゃるわけで 手を引きながら奥へ入る吉弥丈、ご苦労様でございます。
なのですが 最近の客席は箸が転がっても笑いが起きるので(^_^;) ここでもドットくるのかと思いましたら きませんでしたね。
舞台の状況はけして笑える状況ではないわけですから、当然なのですけれど でも、舞台に笑わせない力があるわけなので スゴイと思いました。

一度、舞台から人がいなくなり時間の経過を見せた後 浅香姫・扇雀丈と俊徳丸・三津五郎丈が上手の奥の間から出ます。
玉手御前が追って来たので、二人でここから逃げようとするわけですが 玉手御前に見つかってしまうわけです。
俊徳丸に擦り寄る玉手御前の なんともいえないドキドキする様な艶っぽさ。
嫌そうな、俊徳丸。
浅香姫・扇雀丈を蹴り倒すところの玉手御前・藤十郎丈もスゴイ気迫なのですが その前の、俊徳丸にすがり付き擦り寄る玉手御前の 見た目の艶っぽさの奥にある‘情‘の強さの凄みを感じるのです。
何をどうしたって これでは浅香姫の負けだよね っと、思うほどの情念が見えるのです。

なのに、これだけの想いがあるのに 最後、手負いになって ‘実は、これは嘘でした‘ って、これが私には納得できないのですよ。(^_^;)
確かに、大義名分があれば 俊徳丸や合邦や周りの人は納得して 貞女なのかもしれませんけれど 玉手御前の本当の心は誰にも届いていないわけなので これでいいの? とか、思ってしまうのです。
それは、お前が未熟者だからだよ っと、言われれば そうなのでしょうけれど・・・。
で・・・ここの場面は手負いの玉手御前を皆で囲んで 語りと三味線で見せていくのですけれど ‘引っ張るな〜‘ っと、いう感じです。
舞台面の動きはそれほど大きくございませんで 三味線を聞かせてグングン引っ張る感じです。
いかにも藤十郎丈の舞台だな〜っと思います。
でも、もう幕切れ間近で集中力のカラータイマーがピカピカしはじめておりました。(^_^;)
最後に愛之助丈・誉田主税之助が出て 俊徳丸の家督相続が認められたことを告げて幕になります。
この時点で、次郎丸の企ては露見してしまっているわけなので 次郎丸に対して継母としての義理を通す事も無いと思うのですけれどね・・・それでも、俊徳丸への情愛は偽りであったという事で幕になるのです。
たぶん・・・これだから 見ていて想いが残るのだと思うのです。
玉手御前は俊徳丸を守って良かったと思っているのでしょうから。
う〜ん・・・これが心情として受け入れられるようになりたいな〜・・・っと、自分のキャパシィティーのなさを思い知ったのでありました。(^_^;)






もくじへ戻る     トップページへ戻る     五十音順へ戻る