| |
| 歌舞伎座 昼の部 三階B中央の席 |
*種蒔三番叟(たねまきさんばそう) 清元連中 囃子連中 *傾城反魂香(けいせいはんごんこう) 土佐将監閑居の場 一幕 *新歌舞伎十八番の内 素襖落(すおうおとし) 竹本連中 長唄囃子連中 *曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ) 御所五郎蔵 二幕 (‘侠‘おとこだての旧文字が出ません) |
種蒔三番叟 三番叟:梅玉 千歳:孝太郎 >その昔 秀鶴(ひいずるつる)の名にし負う 都上り折を得て・・・ 千歳と三番叟が舞台に現れます。 まず、三番叟が舞いはじめ >似せ紫もなかなかに・・・ >とっぱひとえにありがたき・・・ >さっぱも おのが故郷へは・・・ 揉み出しの踊り、烏飛びを見せ 鈴を手に踊ります。 >天の岩戸のなあ 神楽月とて・・・ ここで、千歳の露払いの舞になりなります。 >ようよう目出たいな・・・ 舟唄から >見事に見事に さっても見事に手をつくし・・・ 氏神詣での様子を見せ 娘を連れた氏神詣での折に >笛の拉ぎの音も冴えたりな・・・ 長者に娘を嫁に欲しいと望まれ >藤内次郎が栃栗毛に乗って・・・ 嫁取りの使者・藤内次郎が栗毛の馬で使いに出かける様子を踊り >さて婚礼の吉日は 縁を定めの日を選み・・・ >様はナア百までナアナアエ 私や九十九まで ナアナアエ・・・ >やがて孫 曽孫玄孫(ひこやしゃご)をもうけ 末の楽しみ・・・ 娘は嫁に行く事になったので、嫁入りの長持唄にあわせての踊りになり 婚礼の様子や 末永く暮らし子孫が増え、末まで栄える様子を踊っていきます。 >欲しかおましょぞ 一枝おりて・・・ 賑やかな踊りになって >千秋万歳 万万歳の末までも・・・ 三番叟と千歳が目出度く舞い納めます。 傾城反魂香(けいせいはんごんこう) 土佐将監閑居の場 浮世又平:吉右衛門 おとく:芝雀 土佐修理之助:錦之助 将監北の方:吉之丞 狩野雅楽之助:歌昇 土佐将監:歌六 あらすじはこちらでどうぞ 新歌舞伎十八番の内 素襖落(すおうおとし) 太郎冠者:幸四郎 姫御寮:魁春 次郎冠者:高麗蔵 三郎吾:錦吾 鈍太郎:彌十郎 大名某:左團次 舞台は松羽目 ここに大名某が現れ、伯父を誘って伊勢参宮に出かけるので 太刀持ちの鈍太郎を呼び太郎冠者を召し出すように言います。 鈍太郎に呼び出され、太郎冠者が現れると 大名某は伯父のところへ行き、伊勢参宮の誘いをするように言いつけます。 舞台は伯父の屋敷 太郎冠者がやって来ると、次郎冠者と三郎吾がこれを迎え 不在の伯父に代わり姫御寮が姿を見せます。 姫御寮が 父は多忙であるため、伊勢参宮に同道できないと伝えるので 太郎冠者は挨拶をしてこの場を去ろうとします。 しかし姫御寮は太郎冠者の門出を祝うと言い、酒宴の用意をするのでした。 酒宴がはじまると姫御寮と次郎冠者が連れ舞を舞い、三郎吾も踊ります。 宴も盛り上がったところで姫御寮が太郎冠者に那須与市の物語を所望するので 太郎冠者は扇を手に物語をはじめます。 太郎冠者は源平の戦の折、平家の女房が揚げた扇の的を那須与市がみごとに射抜いた様子を舞ながら語ります。 これを見て姫御寮はとても喜び 餞別に素襖を与えます。 太郎冠者は挨拶をしてこの場を去りますが 素襖を大名某に取り上げられては大変と思い隠して帰る事にします。 なかなか太郎冠者が戻って来ないので気を揉んでいた大名某でしたが ようやく太郎冠者が戻って来たので伯父の様子を尋ねます。 しかし、すっかり酔ってしまった太郎冠者は姫御寮からの言伝を伝える事もできません。 大名某は怒りますが 酔って上機嫌の太郎冠者は舞をはじめます。 すると、その拍子に素襖が落ちて これを鈍太郎が見つけ大名某に渡します。 ようやく事の次第が分かった大名某は、素襖を隠しますが 太郎冠者は素襖を落とした事に気が付き探し始めます。 さりげない振りをして、落とした素襖を探す太郎冠者を見て 大名某は笑いますが やがて大名某と太郎冠者と鈍太郎の三人で素襖の取りあいとなり 大名某が素襖を持って逃げるのを太郎冠者が追いかけるのでした。 曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ) 御所五郎蔵 御所五郎蔵:仁左衛門 皐月:福助 逢州:孝太郎 星影土右衛門:左團次 甲屋与五郎:菊五郎 陸奥の大名・浅間家に仕えていた須崎角弥は腰元・皐月と恋仲でしたが 皐月に横恋慕する星影土右衛門の不義の密告により 浅間家から追放されてしまいます。 その後、星影土右衛門も皐月を追って浅間家を出ます。 角弥は御所五郎蔵と名を替え、皐月と共に都へ上ると評判の男伊達になり 皐月は五郎蔵が病の折、薬代のために身を売り それからは廓勤めをしています。 序幕 第一場 五條坂仲之町の場 舞台は桜の五條坂仲之町 御所五郎蔵が子分を引き連れてやって来ます。 すると 陸奥を出て都へ上り剣術師範になっている星影土右衛門が門弟たちと共に現れます。 折りしも、すれ違い様に土右衛門が五郎蔵を呼び止めたので 互いの門弟と子分たちが喧嘩腰になります。 これを制した五郎蔵と土右衛門は 改めて、互いが遺恨のある相手と気が付きます。 互いの素性に気付いた二人でしたが 土右衛門は先ごろ門弟が廓で無法な振る舞いをした折に、五郎蔵が懲らしめた事に礼を言い 仕返ししない代わりに、皐月を身請けすると言います。 しかし、五郎蔵は 皐月は自分の女房ゆえ、自分が許さなければ身請けはできないと言い 仕返しを恐れて皐月の身請けを許したのでは男が立たないと突っ撥ねます。 二人が睨み合い、喧嘩になるかと思われた時 甲屋与五郎が仲裁に入り喧嘩を収めるのでした。 二幕目 第一場 甲屋奥座敷の場 舞台は甲屋の奥座敷 皐月は五郎蔵から頼まれた二百両の金策に困っています。 五郎蔵の旧主・浅間巴之丞は傾城逢州のもとへ通う内に借財を作り その金・二百両の期限が今宵に迫っていて 代わりに五郎蔵が金の工面をしようと苦労しているのでした。 折りしも、ここへ土右衛門が現れ 皐月に五郎蔵への退き状を書く代わりに、二百両を貸そうと言います。 悩んだ末に 皐月は退き状を書く事にします。 これを聞いて喜ぶ土右衛門は門弟たちと酒宴をはじめ 皐月が退き状を書いていると 五郎蔵がやって来ます。 何も知らない五郎蔵は 突然の皐月からの退き状を見て驚きますが 皐月は手切れの金と言って先刻の二百両を渡し 五郎蔵に愛想づかしするのでした。 愛想づかしと皐月の心変わりに怒った五郎蔵は必要な二百両も突き返し、皐月に打ちかかろうとしますが 逢州が現れてこれを止めます。 止めた相手が逢州であったので 五郎蔵はしかたなく引き下がりますが 啖呵を切ってこの場を去るのでした。 五郎蔵がこの場を去ると 土右衛門は皐月を連れて花形屋へ行く事にしますが 皐月が癪が起こったと言うので 代わりに逢州が土右衛門と共に花形屋へ行くと申し出てくれます。 皐月を連れて行きたい土右衛門でしたが 逢州は旧主の身染めた傾城なので断る事もできず 代わりに皐月の裲襠を着た逢州と共に花形屋へ向かう事にします。 この場に残った皐月は思案の末 五郎蔵に、愛想づかしは二百両のための偽りであると謝り 金を逢州に頼んで五郎蔵に渡してもらおうと決めます。 第二場 廓内夜更けの場 舞台は夜更けの廓内 五郎蔵が土右衛門と皐月に遺恨を晴らそうと待ち受けています。 するとここへ 土右衛門と、皐月の裲襠を着た逢州が やはり皐月の提灯を持った若い衆や茶屋女房のおわさたちと共にやって来ます。 逢州が皐月の代わりであることを知らない五郎蔵は一行に襲いかかり 逢州を皐月と思い込んで斬り殺してしまいます。 土右衛門は騒ぎに紛れ妖術を使ってこの場を逃れますが 再び現れると五郎蔵と斬り合いになるのでした。 |
4日に見にまいりました11月歌舞伎座・顔見世・昼の部の感想など書かせていただきます。 じつは、それほど珍しい演目でもございませんし・・・っと、申しますか‘またこの演目なの‘っと言う感じで 見る前はそれほど期待していなかったのですが これが、実際に劇場で舞台を拝見いたしますと 良いのですよ〜。 サスガに顔見世 これだけ芯になる役者さんと周りを固める役者さんがそろいますと 舞台が大きくなるのですね。 最近は昼夜通しですと すごく疲れるので、4日も昼の部のみの観劇だったのですが それでも、終演後はクタクタで 帰りの電車では爆睡してしまいました。(^^ゞ 昼の部に関しましては どの演目もグイグイ引っ張られて気の抜けない舞台ばかりでございます。 ☆「種蒔三番叟」は能の「翁」をもとにした‘三番叟物‘のひとつですが もとは清元と長唄の掛け合いの「舌出し三番叟」で この「舌出し三番叟」を清元で独立させて演奏するのが「種蒔三番叟」といいます。 「舌出し三番叟」は(3)歌右衛門の初演です。 まず、幕開きからのオキのところ >その昔、秀鶴(ひいずるつる)の名にし負う >都上り折を得て >教え請地の親方に >舞の稽古を志賀山の >振りもまだなる稚気に >忘れてのけし三番叟 ここから >とっぱひとえにありがたき >花のお江戸の御贔屓を >頭に重き立烏帽子 と、このあたりまでは 江戸に来ていた(3)歌右衛門が大坂に戻る折に、中村仲蔵に縁の中村座で「舌出し三番叟」を踊ったことからできた歌詞なのだそうです。 ‘秀鶴‘というのは仲蔵の俳名のことで ‘志賀山の‘とございますのは、たぶん舞踊の志賀山流で踊る三番叟 っと、いう事で 仲蔵が(10)勘三郎襲名の折に中村座で踊った「寿世嗣三番叟(ことぶきよつぎさんばそう)」のことだと思います。 まだ幼少であった(3)歌右衛門は仲蔵が大坂に来た時に、この三番叟を教わっていたのだそうです。 ですので‘振りもまだなる稚気に‘ っと、なるのだと思います。 で、(3)歌右衛門が大坂から江戸に下り 再び大坂に戻る折に 中村座で「舌出し三番叟」として踊ったのだそうです。 ですので‘とっぱひとえにありがたき 花のお江戸の御贔屓を‘っと続くのだと思います。 今回の舞台は この「舌出し三番叟」で清元を独立させた舞台という事です。 11月顔見世の昼の部の演目には「素襖落」がございまして これが松羽目物ですので 「種蒔三番叟」の舞台では背景が同じにならないように松竹梅になっています。 全体に柔らかい感じの舞台面でございまして 梅玉丈、孝太郎丈の舞踊とあいまって ソフトで上品な雰囲気になっています。 また、もとは「舌出し三番叟」で三番叟は赤い舌を出す演出なのですが 今回は「種蒔三番叟」としての上演ですので 三番叟は種蒔のための鈴を持って踊るのですが、舌は出しません。 正直・・・ここだけの話ですが・・・ワタクシ的には梅玉丈の‘舌出し‘はあまり見たくないので(^^ゞ 良かったです。(笑) 幕開きは上手に清元で 下手から千歳・孝太郎丈と三番叟・梅玉丈の出になります。 出だしは笛のみで 三味線が入って砕けた感じになります。 衣装が三番叟が素襖に烏帽子 千歳が素襖に梅の花簪です。 ‘揉の段‘‘鈴の段‘‘宝船‘と続くのですが 全体にゆったりして大きい舞台です。 ですが‘揉の段‘‘鈴の段‘‘宝船‘と変化がしっかり見えて面白いです。 舞台には清元とお囃子のひな壇が上手にございますが 役者さんは梅玉丈と孝太郎丈のお二人だけです。 なのに、歌舞伎座の大きな舞台が少しも大きく感じません。 特に‘宝船‘は、おおらかで お二人の踊が、とても大きく見えます。 三番叟・梅玉丈と千歳・孝太郎丈が 帆と船先だと思うのですが、お二人を起点に船の輪郭が見えて 穏やかな海原を進む宝船が見えるようです。 これ、きっと3階席から見た方が全体のスケールの大きさが分かるかもしれませんね。 三番叟・梅玉丈は足を踏んでもドタドタすることなく 鈴を持ってもうるさくなく 大きくて柔らか、上品な感じです。 さらに、千歳・孝太郎丈がとても良いです。 素襖を脱いでからの孝太郎丈、すごく綺麗でして 踊りも体の線がすっきりしていて、大きくて柔らかです。 とくに、上半身が柔らかで 女形の艶っぽさが見え 品があって、華がございます。 ☆「傾城反魂香」、もとは近松門左衛門作の全三段の時代浄瑠璃ですが 近年の舞台は(6)菊五郎演出の舞台が多いのだそうです。 幕開きから端場が終わって出語りで清太夫の竹本で吉右衛門丈・又平と芝雀丈・おとくが花道からの出になります。 で、ここまで 虎が出て消えるまでの端場ですね 出だしのところですが 錦之助丈が、とてもしっかりしていて、ここからもう舞台がぐんと大きく感じます。 このお役、わりと若い方がお勤めになられる事が多くて 子供々々した感じがあったのですが さすがに錦之助丈はすっきりと端整ですが、存在感があり 何より、この修理之助なら虎を書き消す事ができるだろうな っと、思わせます。 また、将監の命で姫君を助けに行くところ 吉右衛門丈の又平と対するところですが 好感の持てる真面目さがあり、又平を思う気持ちも汲み取れて それでいて、ガッシリ睨み合うところなどは吉右衛門丈・又平に負けていなくて存在感がございます。 歌六丈・将監も大きさがございますし とても‘情‘を感じる将監です。 懸命に訴えるおとくや又平に対して 何とかしてやりたいが、今のままではイマヒトツ・・・困ったな〜 っと、いう感じがとても良く伝わります。 もう、ホントニ困った顔つきをなさるのですよ。(^^ゞ ですので 絵が手水鉢を抜けて 又平に名字を与える時 とてもホッとしたような嬉しい感じが伝わるのです。 もしかしたら 又平が絵を描くことで功をなしたのを一番喜んで、名字を与える事ができて一番嬉しかったのは将監ではないのかしら っと、思えます。 情と優しさ、親心の様な感じの暖かさのある将監だと思いました。 吉之丞丈・将監北の方は 品の良さが幕開きすぐから舞台を篤みのあるものにしているようです。 さらに、やはり‘情‘を感じる北の方でございまして 又平夫婦が訪ねて来たときの「よう、みえましたのう」と一言の台詞にも暖か味があります。 また、名字を許されて裃に着替える又平に、それとなく声を掛ける様子に気遣いがあって この夫婦の事を何かと心配していたのだろうな っと、思わせます。 歌六丈・将監と吉之丞丈・将監北の方の 又平夫婦への‘何とかしてあげたいけれど、さて困ったな〜‘という感じがしっかり伝わるので 絵の功で名字を与える事ができて良かったという嬉しい思いがより生きてきて 又平夫婦だけではなくて 舞台全体から暖かい雰囲気が伝わります。 また、歌昇丈・雅楽之助のノリ地が、とても耳に心地良くて 勢いがございます。 なのに 荒くないのですね。 芝雀丈・おとく、明るくて可愛くって一生懸命で やはり、又平への‘情‘を感じます。 舞台に上がって 又平に代わっての挨拶が、おしゃべりですがとても可愛く見えます。 単にでしゃばったおしゃべりではなくて すっきりとした品のある可愛さを感じます。 それで、とにかく泣けるのです。 「手も2本、指も10本」、又平の手を取ってグーット内側に染み込むような台詞が いじらしくて、悲しくて、切なくて、 あ〜何とかしてあげたい っと、思っちゃうのですね。 私は、今回の舞台は 又平より芝雀丈のおとくに泣けました。 で、吉右衛門丈・又平ですが これが、少しも嫌味なところがなくて見ていて後味の悪さを残しません。 かと言って もちろん、ただ滑稽なばかりではございません。 突き抜けた透明感があるというのでしょうか 加減がとても良いのだと思います。 とくに、前半の必死で将監に名字が欲しいと頼むところ 高二重にかかる入れ歯の端っこに小さくなって座る姿の 何と申しましょうか‘哀愁‘と申しましょうか 一生懸命と一種の寂しさと入り混じった感じが伝わります。 ですので、後半の嬉しさが とても暖かく感じられるのだと思います。 舞台中央で決まって幕切れとなりますが ここも大きいです。 こういう大きさって 吉右衛門丈ならではかな〜っと思います。 全体に、隙の無い真面目な舞台 密で重圧 役者さんがそろった舞台で 大きな舞台だと思います。 「大頭(だいがしら)の舞」について こちらの感想欄に 少し調べた事が書いてございますのでよろしければご覧くださいませ。 ☆「素襖落」はもとが狂言の松羽目物なのですが これが、なんとも歌舞伎のすごいと申しましょうか‘らしい‘と申しましょうか 「素袍落」の中に「奈須与市語」を入れてしまうのですね。 この「奈須与市語」は狂言では珍しく笑いのないとても緊張した曲でございまして 狂言の中の‘語り‘の部分を抜く大きな演目なのです。 で、それを 可笑しみのある「素袍落」の中に入れて舞踊劇として見せてしまうわけで この、なんでもありの感覚がいかにも歌舞伎っと言う感じです。(笑) 初演は1892年(M25)で(9)團十郎の初演ですので やはり那須与市の語りは見どころなのだと思います。 片しゃぎりで幕開きで 舞台は松羽目、上手に竹本が出て 下手のお幕から左團次丈と彌十郎丈の出になります。 別にどうということもないのですが 彌十郎丈が目を引きました。 なんと申しましょうか 松羽目物の品を感じるというのでしょうか 舞台は面白い展開なのですが 砕けすぎない、はみ出さない雰囲気が 節度のようなものを感じて良いと思います。 舞台から呼ばれて太郎冠者・幸四郎丈が出ます。 踊りの上手い方ですので面白いのですが 私のおりました3階Bでは 少し台詞が聞きづらかったです。 ですが 那須与市の語りは 大きさ、義経と与市とのキッチリした切り替え、など動きの緩急がとても良く 落ちる扇を踊りで見せていくところなどはとても良いと思いました。 もとの狂言の緊張感が みごとに歌舞伎の舞踊劇の艶に変っているのですね。 上手いな〜。 で、舞台は ここの物語のところから舞台正面奥に長唄のひな壇が出て 竹本と長唄の掛け合いがスリリングなのです。 これが 幸四郎丈の義経と与市のスイッチとピッタリ噛み合って 歌舞伎らしい華やかさと適度な緊張感があって 思ったより(笑)舞台が大きく見えました。 魁春丈の姫御寮は歌舞伎ならではの紅一点、綺麗ですね。 やはり、松羽目物の品格があります。 また、錦吾丈が落ち着いた雰囲気で良かったです。 全体に 砕けすぎず品があり かつ、大きな舞台で 雰囲気としては‘大人の落ち着いた‘(笑)舞台であると思います。 ☆「曽我綉侠御所染」は黙阿弥が市川小團次に宛てて書いた舞台で 当初の眼目は今回の舞台にはございません 五郎蔵の尺八、皐月の胡弓での最後であったのだそうです。 ここの場面 映像のみで仁左衛門丈と玉三郎丈で見たのですが どう見ても変なわけで(だって、死のうというのに尺八と胡弓ですもの)それを納得できるほどの力で見せきってしまうお二人にスゴイな〜 っと、思ったことがございます。 「曽我綉侠御所染」全体のお話は 「浅間嶽(あさまがたけ)*」のお家騒動をもとにしたお話で 前半の時代物風な‘時鳥‘にまつわるお話 と 後半の世話風の‘五郎蔵‘のお話から成ります。 ‘時鳥殺し‘はあまり上演されないそうなのですが 吉田千秋写真集の中に百合の方・勘弥丈で時鳥・玉三郎丈の写真があるのですが これ、ケッコウすごいのです。 マジでほっぺに痕がつきそうです。 今回の舞台になりました場面だけ見ますと 粋な感じもある、江戸の世話物風に見えるわけですが 全体を見れば かなり、ドロドロな雰囲気のお話です。 吉原すずめの下座で幕開きで 吉原仲之町の桜の舞台です。 巴之丞は五條坂の遊廓で遊ぶうち逢州を見染めるということになっているのですが 舞台は吉原なのです。 これが、先ごろ読みました「吉原はこんなところでございました」の中にございました写真にそっくりでして 大きな桜や、山口巴の名とか、松葉家の行灯とか・・・あ〜舞台だけれど‘ホント‘なんだ〜 っと、思ってしまいました。(笑) ここに、両花道で 仮花から五郎蔵・仁左衛門丈、花道から星影土右衛門・左團次丈の出になります。 舞台は桜の仲之町、客席は両花道で 場内がとても華やぎます。 3階Bの私のおりましたところからは 両花道の七三の仁左衛門丈と左團次丈の胸から上しか見えませんが お二人ともかっこよくて、特に仁左衛門丈の台詞のキッパリしたところがなんとも良いです。 舞台に出て中央で五郎蔵・仁左衛門丈と星影土右衛門・左團次丈の上手下手が入れ替わります。 華があって大きくて絵になる舞台です。 仁左衛門丈の五郎蔵が、超カッコイイです。 幕開きの時の白っぽい衣装は 少しモコモコした感じがしたのですが 皐月の愛想づかしの時の衣装は地の色合いが濃いこともございますが クッキリしていてとてもカッコイイです。 この舞台での五郎蔵って 侠客の親分と言っても、どちらかというと短慮で思慮深いという感じではないのです。 なので、心情がどうのというより いきなり、スコンっと第一印象で客席を持っていくようなお役かと思われるので 仁左衛門丈の台詞の粋な感じや姿のすっきり美しい感じはサスガだな〜っと思ったりいたします。 私などは いきなりスコンっと持っていかれました。(笑) ホント!カッコ良い。(^^ゞ で、愛想づかしの場面で 五郎蔵・仁左衛門丈が皐月・福助丈のところへ行きかけるのを逢州・孝太郎丈が止めるわけですが ここ、並んだお二人がゼンゼン親子に見えません。 それは、見えては困るわけですが(笑) なんといっても、お二人の間にある年齢差を感じないのです。 仁左衛門丈が五郎蔵になっているのだと思います。 何でこんなに若くてカッコ良く見えるんだろ〜。(^o^)v 左團次丈の星影土右衛門は もう手の内なのでしょうね。 ワタクシ的には敵役でも 今回の星影土右衛門や黒手組曲の鳥居新左衛門がケッコウ好きだったりいたします。 それにいたしましても・・・星影土右衛門ってドロドロドロで忍術を使ったりするのですよね。 歌舞伎って面白いな〜。(笑) (追記:梅之丈のブログで知ったのですが 原作ですと、幕切れ前の五郎蔵との立ち回りのところが違っているそうで 原作では土右衛門は立ち回りの時にドロドロドロで花道スッポンに消えて 驚く五郎蔵で舞台は幕になり その後、幕外になってドロドロドロでスッポンから再び登場して ニッタリ笑って悠々と幕外の引っ込みになるのだそうです。 なんだか、仁木みたいな感じなのですね。 でも、これで見てみたい気がいたします。) 菊五郎丈の甲屋与五郎が大きいです。 これだけなのですが 舞台が大きくなるのです。 でも・・・なんか・・・真面目な菊五郎丈を拝見するのって久しぶりかも・・・。(^^ゞ 福助丈の皐月は 余計な事もなく、良いと思うのですが イマヒトツ精彩がないというのかインパクトがないです。 哀れな感じとか、自分を抑えてじっと耐える感じのお役の福助丈って いつも上手いな っと、感じることが多くて 今回もいじらしい寂しい辛い感じがとても良いです。 ですが、イマヒトツ 華やかさとまではいかなくても ‘艶っぽさ‘と申しましょうか 胡弓に合うような‘しっとり‘した感じが欲しいと思いました。 以前は腰元であっても この場面での皐月は傾城なわけですので。 で!この舞台、孝太郎丈の逢州がとても良いです。 綺麗だし、大きいし それでいて、控えめな感じがあり品があります。 皐月や五郎蔵に対する優しさが とても良いです。 皐月に打ちかかる五郎蔵・仁左衛門丈を止めるところで 五郎蔵・仁左衛門丈と逢州・孝太郎丈の年齢差を感じないのは 仁左衛門丈ももちろんですが、孝太郎丈の逢州が大きいこともあるのだと思います。 さらに・・・幕切れ前はご苦労様でございます。m(_ _)m *「浅間嶽(あさまがたけ)」 元禄歌舞伎の名狂言で「けいせい浅間嶽」をもとにした お家騒動物で、これに絡んで和田右衛門と傾城三浦、巴之丞と傾城奥州のお話などをいろいろに変えた‘浅間物‘のことです。 |