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| 歌舞伎座 昼の部 三階B中央の席 |
*赤い陣羽織 一幕三場 *恋飛脚大和往来 封印切・新口村 二幕 *羽衣 長唄囃子連中 |
赤い陣羽織 お代官:翫雀 女房:孝太郎 お代官こぶん:亀鶴 お代官奥方:吉弥 おやじ:錦之助 第一場 舞台は村のおやじの家 見た目はいまひとつだが、とても人のいいおやじが利発で可愛い女房と、馬の孫太郎と仲良く暮らしています。 折りしもここへ 見た目はおやじとよく似ているけれど、赤い陣羽織を着ていつも威張っているお代官が見回りに来ます。 お代官は女房に横恋慕しているのですが これに気付いているおやじは、女房にお代官をからかってやれと言い 馬小屋に姿を隠し様子を見ます。 こぶんを連れて見回りに来たお代官は、赤い陣羽織の自慢などして女房と世間話をしていましたが 姿の見えないおやじが、じきに戻ってくるのを確かめるとこの場を去ります。 お代官の様子に 馬小屋から出てきたおやじと女房は笑いあい、上機嫌で晩酌を始めますが ここへ、お代官のこぶんと庄屋がやって来て おやじを捕らえて連れて行ってしまいます。 女房はお代官の指図と気が付き きっとお代官が家に忍んで来るだろうと、戸締りをして鍬を持ち お代官と争う用意をして待ち受けるのでした。 第二場 舞台は夜更けのおやじの家 庄屋の家に連れて行かれたおやじが逃げ出してきます。 しかし、家に入ると囲炉裏のところにお代官の赤い陣羽織が掛けてあり 奥の間からはお代官の声も聞こえます。 おやじは女房がお代官に寝取られたと思い、仕返しをしようと赤い陣羽織を着てお代官になりすまし お代官の屋敷へ出かけて行きます。 おやじが去った後、奥の間からお代官が出てきます。 じつは、お代官は おやじの家に忍んで来たのですが 途中にある橋で滑って川に落ち、さらに女房に鍬で叩かれ気を失ってしまったのでした。 女房を寝取ろうという計画に失敗したお代官は 不機嫌に怒って、様子を見に来たこぶんを叱りつけます。 周りを見れば、家には誰もおらず しかたなく屋敷へ戻ろうとするのですが 今度は、自慢の赤い陣羽織が見あたりません。 代わりに 傍らに置いてあった、おやじの着物を着たところへ 逃げ出した女房が庄屋を連れて戻ってきます。 庄屋は、おやじの着物を着たお代官を おやじと間違え、捕らえようとしますが こぶんの話で人違いだと気付きます。 女房らの話を聞いたお代官は おやじはきっと、意趣返しのために赤い陣羽織を着て屋敷に行ったのだろうと思い 慌てて後を追います。 第三場 舞台はお代官の屋敷の門前 四人はおやじを追ってやって来ますが 門番はお代官は先刻戻って来たと言って門を開けてくれません。 困ったお代官は 何とか門を開けさせようと大きな声で叫んでみます。 すると門が開き、中から奥方が現れ お代官はすでに戻っているゆえ 門の中には誰も入れないと言うのでした。 お代官は返す言葉もないのですが 一緒に駆けつけた女房はおやじの事が心配で泣き崩れてしまいます。 これを見た奥方が 女房を気の毒に思い、屋敷の奥へ声をかけると 奥から赤い陣羽織を着たおやじが現れます。 おやじの姿を見た女房は お代官を鍬で叩いて逃げ出した経緯を語り、自分の気持ちも知らないで奥方と浮気したおやじを責めるのでした。 しかし、奥方が おやじは屋敷に乗り込んで来たものの 中の様子に驚いて、何もできなかった事を語ります。 全ての事情が明らかになり 役に立たなかった庄屋とこぶんは役を解かれ お代官は奥方に睨まれ おやじと女房は喜んで二人仲良くこの場を去るのでした。 恋飛脚大和往来 封印切・新口村 封印切 亀屋忠兵衛:藤十郎 傾城梅川:時蔵 丹波屋八右衛門:三津五郎 槌屋治右衛門:歌六 井筒屋おえん:秀太郎 新口村 亀屋忠兵衛:藤十郎 傾城梅川:時蔵 忠三郎女房:竹三郎 孫右衛門:我當 序幕 新町井筒屋の場 舞台は大坂新町の廓、井筒屋 折から、大尽の猪山に呼ばれた遊女・梅川がやって来ますが 気分が優れない様子を察した女将・おえんは猪山を奥座敷へ案内します。 この場に残った梅川は、気遣う女将・おえんに 恋仲の亀屋忠兵衛が身請けの手付けを支払ったまま期限が過ぎても後金の支払いができず音沙汰も無く そこへ、嫌いな丹波屋八右衛門の身請け話が持ち上がり 心配で忠兵衛に文を書いたのだと話します。 ここへ、梅川から文を貰った忠兵衛がやって来ます。 商いの大切な為替の金子を預かっている忠兵衛は、このまま帰ろうとするのですが どうしても梅川に会いたくなり 見世先からおえんを呼びます。 喜ぶ梅川の様子を見たおえんは、裏の離れで話ができるように手配するのでした。 舞台は裏の離れ おえんが猪山の相手をしにこの場を去り、忠兵衛と梅川の二人になります。 梅川は顔を見せない忠兵衛に不満を言いますが 忠兵衛がつれないそぶりを見せるので、泣きだしてしまいます。 これを見た忠兵衛は 梅川の想いに優しくこたえ、近いうちに後金の用意ができるので 手付けの期限を延ばしてもらえるように、抱えの槌屋治右衛門に頼んで欲しいと言います。 舞台は井筒屋の見世先 槌屋治右衛門が来て、梅川に八右衛門の身請け話を進めると言います。 しかし、梅川は 忠兵衛と八右衛門は友だちなので、忠兵衛と深い仲の自分が八右衛門に身請けされたのでは義理が立たない また、忠兵衛は後金の用意ができたので忠兵衛に請け出されたいと頼みます。 これを聞いた治右衛門は梅川の願いを聞きとどけるのでした。 ここへ八右衛門が梅川の身請けの金を持ってやって来ます。 しかし、治右衛門は身請けの話は無かった事にすると言って金を返します。 これを忠兵衛の頼みと察した八右衛門は 腹いせに、忠兵衛の悪口をさんざんに言います。 あまりひどい悪口に 二階で様子を見ていた忠兵衛が、たまりかねて姿を現し、八右衛門の言う事は嘘だと怒ります。 驚いた八右衛門でしたが 忠兵衛に金はあるのかと聞き、自分の金を見せびらかします。 困った忠兵衛は預かっている為替の金子を父親から貰った小遣いだと偽って見せ 八右衛門の挑発に乗り誤って封印を切ってしまいます。 為替の封印を切れば斬首になる事はわかっているので 覚悟を決めた忠兵衛は、残りの為替の封印も切り 三百両を梅川の身請けの金として治右衛門に渡します。 これを見た八右衛門は金の包紙をこっそり拾うと 忠兵衛の金が為替の金である事に気付き、訴人するためにこの場を去ります。 治右衛門やおえんは梅川の身請けに喜んで、用意のためにこの場を去ります。 しかし、梅川とこの場に残った忠兵衛は 身請けに喜ぶ梅川に先刻の金子は為替の金であった事を告げ 一緒に死んで欲しいと言うのでした。 梅川は驚きますが忠兵衛と共に死を決意します。 ここへおえんが梅川を迎えに来ます。 忠兵衛は先に梅川を西口に行かせると 後からおえんに祝儀を渡し、梅川のともへ向かうのでした。 二幕目 新口村の場 舞台は雪の降る大和、新口村 忠兵衛と梅川は、忠兵衛の故郷、新口村まで落ち延びて来ました。 忠兵衛は実父・孫右衛門の顔を一目見たさにここまで来たのですが 大罪を犯した身で会いに行く事もできず 小作人の忠三郎の家を訪ねます。 しかし忠三郎は留守あったので 女房に村での詮議の様子などを聞き、忠三郎を呼んできて欲しいと頼みます。 忠三郎の女房がこの場を去ると 忠兵衛は梅川に共にこの地で死んで、亡き母にあの世で対面しようと話します。 梅川は嫁姑の対面ができることを喜びますが 京に居る両親にもう一度会いたいと泣くのでした。 二人は忠三郎が戻るまで 忠三郎の家で待つ事にします。 折りしも、ここへ 忠兵衛の実父・孫右衛門がやって来ますが 雪道で転んで鼻緒が切れてしまいます。 これを家の中から見ていた梅川が外に飛び出し 孫右衛門を助けます。 孫右衛門に代わって、鼻緒をすげ替えた梅川は 孫右衛門の懐紙を形見にしたいと自分の持つ懐紙と取り替えるのでした。 すると、孫右衛門は 梅川が忠兵衛と駆け落ちした相手だと悟り、近くにいるであろう忠兵衛に意見しますが それでも、逃げて欲しいという思いから梅川に持ち合わせた金を渡します。 梅川は、これが最後となる親子の対面を頼み 養子親の義理から対面を断る孫右衛門に目隠しをして、忠兵衛と対面させるのでした。 対面の叶った忠兵衛と孫右衛門でしたが 追っ手が迫ったので 孫右衛門は抜け道を教え、梅川と忠兵衛は二人で落ち延びて行きます。 羽衣 天女:玉三郎 伯竜:愛之助 舞台は三保の松原 >風早の三保の浦曲をこぐ舟の >浦人さわぐ >浪路かな ここへ伯竜という漁師がやって来ます >万里の好山に雲忽ちにおこり >一楼の明月に雨はじめて晴れり >げにのどかなる時しもや >春のけしき松原の >浪立ちつゞく朝霞 >月ものこりの天の原 >及なき身のながめにも >心そらなるけしきかな すると、よき香りがして 見れば松の枝に美しい羽衣が掛かっています。 近づいてよく見れば どうやら常の衣ではない様子。 伯竜は家の宝にしようと思いたち 羽衣を手にこの場を去ろうとします。 すると 「なうその衣はこなたのにて候。何しにめされ候ふぞ。」 っと、声がします。 「それは天人の羽衣とて。たやすく人間にあたふべき物にあらず。本のごと くに置き給へ。」 羽衣を返して欲しいと頼むのは天女でした。 しかし伯竜は家の宝にするので返せないと言います。 これを聞いて 天女は羽衣がなければ天に帰ることができないと悲しむのでした。 はじめは、羽衣は家の宝にすると言っていた伯竜でしたが 天女の悲しむ様子に、天女の舞を見せてくれるのであれば羽衣を返そうと言います。 すると天女は喜び‘月宮をめぐらす舞曲‘を奏じると言いますが 羽衣を先に返してもらわなければ舞う事ができないので先に返して欲しいと言います。 これを聞いた伯竜は 先に返せば舞わずに天に帰るのではないかと言うのでした。 しかし天女に 「いや疑は人間にあり。天に偽なきものを。」 っと、言われ 恥じ入り、羽衣を返します。 >東遊の駿河舞 >東遊の駿河舞 >此時や始めなるらん >春霞 >たなびきにけり久かたの >月の桂も花やさく >げに花かづら色めくは春のしるしかや >おもしろや天ならで >こゝも妙なり天津風 >雲の通路吹きとぢよ >乙女の姿 >しばし留りて 羽衣を返してもらった天女は鞨鼓を付けて舞い始めます。 クセから序ノ舞 >又は春立つ霞の衣 >左右左 >左右颯々の >花をかざしの天の羽袖 >なびくもかへすも舞の袖 最後が破ノ舞となり >東遊のかずかずに >東遊のかずかずに >その名も月の色人は ・・・・・ >三保の松原浮島が雲の >愛鷹山や富士の高嶺 >かすかになりて >天つ御空の >霞にまぎれて >失せにけり 伯竜に舞を見せた天女は天へ戻って行きます。 注:上記は、あらすじを書くために謡曲から抜いたものです。 参考:半漁文庫 http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/ |
16日に見にまいりました歌舞伎座・昼の部の感想など書かせていただきます。 この日は「羽衣」の歌舞伎チャンネルの録画がございましたので 舞台の方もスッカリできあがったのなだ〜っと、思いつつ見てまいりました。 平日の昼間でしたので団体の方も多かったのですが 上手な掛け声がたくさん掛かりましてケッコウ客席も盛り上がっていました。 ☆「赤い陣羽織」は原作がヨーロッパの「三角帽子」とうい風刺物語りだそうで これをもとに木下順二が民話劇にしたものです。 以前にも歌舞伎で (6)歌右衛門、白鴎、(17)勘三郎で上演された事のある舞台です。 で、‘ほうおう‘には”市井の農民が権力者をやっつけてしまう痛快な物語り”と書いてあるのですが 実際に舞台を見ますと これが、ほのぼのでございまして とてもお代官が権力者に見えないのでございます。(笑) さらに、市井の農民がお代官をやっつけると申しますより シッカリ者で、頭の上がらない奥方にやっつけられる感じです。 ですけれど、これはこれで とても面白いですし 何より、ほのぼの感がとても良いです。 緞帳が上がる前、オープニングの曲が・・・なんとも、昔話でございまして ここだけでも思わずフフフっと笑みがこぼれてしまいます。 中でも一番の‘ほのぼの‘はお代官・翫雀丈で 民話劇の雰囲気があるので、権力を振りかざす嫌な奴の感じがございません。 全てが‘アハハハ・・・‘で済ますことができます。 ですけれど 笑いを取りに来る感じがございませんので わりと自然に‘らしく‘見えて面白く それゆえ‘ほのぼの‘見えるのだと思いました。 それと、三幕目のお代官の奥方・吉弥丈が舞台をしっかり締めてとても良いです。 この場面までズット舞台面が地味でしたので 見た目にもパッと映えて見えますし 吉弥丈のキッパリ感がこれまでの騒動をビシッと収めるのにぴったりでした。 女房・孝太郎丈は可愛い感じです。 すみません・・・しっかり者で気立ての良い優しくて可愛い女房には見えるのですが どうも、飛び切りの美人にはチョッとかもしれません。(^_^;) ケッコウ元気な女房でございまして フットワークも軽いです。 あの・・・演舞場の千鳥・七之助丈を拝見した時も思ったのですが この、フットワークの軽さは納涼などで拝見いたします福助丈に似ている様な気がいたしました。 若手の方の流行でございましょうか・・・。 で、健闘なさっているな〜 っと、思いましたのが おやじ・錦之助丈でございます。 この舞台 主だった役者さんが上方の方でございまして さらに、ほのぼの感のございます民話劇ですので 舞台全体の雰囲気が‘まあるい‘のですね。 そのなかで どちらかと言えばスッキリな雰囲気の錦之助丈ですので 馴染むのに大変なのかな〜 っと、感じました。 もう16日ですので、舞台の流れもそれなりにできあがっているのだと思いますが 純朴な雰囲気はございまして、とても健闘しているのは伝わるのですが‘ほのぼの‘した‘まあるい‘感触は少なめかもしれません。 でも・・・これはしかたがないですかね・・・。(^^ゞ 全体には、もう少しテンポアップしても良いのではないかと思いました。 おやじと女房の会話の部分などは長く感じますし 全体にのんびり感のあるお話ですけれど 舞台の流れがのんびり過ぎるとダレてしまいます。 それと・・・馬クンはもっと活躍するのかな〜 っと、思っておりましたが そうでもないのですね。(笑) ☆「恋飛脚大和往来:封印切・新口村」、良いですね! 私は遠征ができませんので なかなか上方の舞台を見る機会がなく 今回の舞台はとても嬉しかったりいたします。 ネチッコイ感じが良いですね〜。(^^ゞ で、今まで何回か封印切を見てはいたのですが どうも、イライラしてしまいまして ‘忠兵衛は何やってんじゃい!‘っと思ってしまう事が多かったのですね。(笑) ですけれど、きっと私が歳を取ったからでしょうね 今回は、なんとなく忠兵衛の意地が伝わった様な気がいたしました。 だから歌舞伎は面白いです。(^^ゞ そうして、新口村の我當丈! 泣けましたよ〜。 「封印切」 まず!良いな〜っと思いましたのは秀太郎丈でございます。 何とも良い雰囲気で 上手く書けませんが‘味‘があると申しましょうか こういう人が身近にいたら良いな〜 っと、申しましょうか その様なおえんなのです。 とても自然なので、身近にいそうな雰囲気なのですが やっぱり、舞台なので こんなに都合の良い人はいないのですね。(笑) 見た目が小柄な方ですので 可愛い感じもございまして 細かいところに良く気の付く、柔らかい感じが良いです。 忠兵衛と梅川を離れ座敷に案内するところの気廻しの良い感じや 幕切れ前の忠兵衛を受けての見送りの場面の優しげな感じなど とても上手いと思いました。 特別、前に出るわけでもございませんが 舞台での存在感がすごいです。 ‘ちゅうちゅう‘って・・・夜の部だけではなかったのですね〜。(爆) 時蔵丈・梅川は 可愛くて艶っぽくて、上方風のじゃらじゃら感がございます。 江戸、吉原などの傾城とは感じがハッキリ違うのがわかります。 時蔵丈は、どうも‘あっさり‘しているという印象があったのですが 今回の梅川は柔らかな感じももちろんですが 舞台でのテンポとか台詞の感じとかに まったりした雰囲気があり とても良いと思いました。 今月の昼の部で健闘なさっていると思いました、もう一人の役者さんが八右衛門・三津五郎丈でございます。 大健闘です。 ですけれど やはり、柔らかさと申しましょうか 内側から滲み出てくるようなネチッコサはないのですね。 どうしても、キッパリしてしまうようです。 これもしかたないですかね。(^^ゞ 同じ様にキッパリした雰囲気でも、大きさを出すお役の槌屋治右衛門・歌六丈は良かったです。 ドッシリ感があり 舞台に篤みが出ます。 で!忠兵衛・藤十郎丈は独壇場ですね〜。 っと、申しますか 私、「封印切」って藤十郎丈の舞台しか見た事がないのです。 ですので今のところ鴈治郎型、藤十郎丈の「封印切」が全てなのです。(^^ゞ チョッと他の役者さんの舞台を想像できません・・・。 え〜・・・あの、丸っこい感じ=忠兵衛 だったりいたします。(笑) それで先にも書きましたが 今まで「封印切」を見ますと忠兵衛と八右衛門のやり取りに腹が立つ事が多かったのですが(笑) 今回は忠兵衛と八右衛門の意地の張り合い、探りあいが面白いと感じました。 一番はじめの花道からの出、ここの楽しそうな嬉しそうなチョッと脳天気な感じのところから 梅川と二人でいる時の上方風のじゃらっとした感じ 見世先に戻っての八右衛門に仕向けられてからの引くに引かれなくなってしまった意地の張り合い 封印を切ってしまった時の暗転 その場その場での感情の動きが リアルだけれど、芝居として見ていられる範疇で伝わり 振り返れば、舞台全体での感情の振幅の大きさに感心してしまいます。 そうか!「封印切」って、こんなに劇的な展開の舞台だったのね っと、改めて感じました。 幕切れ前は花道で引っ張りますね。 舞台から花道に出て、さらに花道で舞台のおえんとやり取りがあり チョッと長めな感じですけれど 吸引力があるのでしょう ダレません。 梅川を一人で先に出しておいて 後から、出るわけですが ここは、おえん・秀太郎丈の受けもとても良くて 後に、新口村が続きますので 余韻が残って良いと思いました。 「新口村」 この舞台は、我當丈が渋いですがすごく良いです。 無理に哀れを誘うことなく 淡々としている姿に寂しさが見えたりいたします。 もう、花道から舞台に上がる時の後姿が何とも良いです。 あ〜、この人は一生懸命に真面目に生きてきて 縁を切ったとしても息子の事を思っているのだな〜 っと、思わせる奥行があるのです。 こういう舞台って孫右衛門をお勤めになれる役者さんがいないとできない舞台なのだろうな〜っと思ってしまいました。 舞台を見ておりまして思い浮かんだのが‘燻し銀‘という言葉です。 こういう舞台を見て泣けるのも歌舞伎の良さでしょうね。(^^ゞ 藤十郎丈と時蔵丈は黒地の比翼の衣装が雪の舞台に映えてとても素敵です。 寂しい舞台面ですので 時蔵丈の梅川は華がりますし、孫右衛門に対しての甲斐甲斐しさも自然で良いと思います。 が!やっぱり この舞台は我當丈・孫右衛門でしょう!(^^ゞ ☆「羽衣」という舞踊はもとは能の「羽衣」を題材にしていて 歌舞伎では(5)菊五郎の初演で長唄と常磐津の掛合いの舞踊だったようです。 後に常磐津が独立して「松廼羽衣(まつのはごろも)」となりましたが この他にも一中節*の「松羽衣」や長唄の「天人羽衣」があるそうです。 今回の舞台は長唄囃子での舞台ですので「天人羽衣」がもとになっているのだと思いますが かなり能を意識した舞台でございまして 玉三郎バージョンなのだと思われます。(^^ゞ お話の流れは能の「羽衣」と同じです。 『漁師の伯竜が浜辺で天女の羽衣を拾い、天女が返して欲しいと頼んでも はじめは家の宝にする(能では国の宝だそうですが)などと言って、なかなか返そうとしないのですが そのうちに天女が可哀想になり 舞を見せてくれたら返すと約束します。天女は羽衣を返してもらうと、約束どおり舞を舞って天に帰ります。』 能の「羽衣」は嫁さんにしたりはしないのです。(^^ゞ で、どうももとの舞踊では前半のまだ羽衣を着ていない天女の時に 天女と伯竜との色模様の踊りがあるらしいのですが 今回の舞台って・・・なかった様な気がいたします。 ほとんど(っと、申しますか 全部っと申しますか・・・)玉三郎丈が踊っていた様な気がするのですけれど・・・? 鳴物と太鼓の波音で幕開きになり 上手に長唄囃子のひな壇がございます。 この舞台、歌舞伎舞踊でのもとが「松廼羽衣」で新古演劇十種のひとつだからでしょうか 舞踊ですけれど定式幕を引いての幕開きでございます。(それとも、歌舞伎チャンネルの録画のためでしょうか?) 舞台は三保の松原、大きな松に羽衣がかかっています。 舞台下手から伯竜・愛之助丈が出て羽衣を拾います。 愛之助丈、白塗りが美しくて素敵ですね。 能がかりな舞台ですので伯竜は大口袴です。 で、伯竜が羽衣を手にしたところで花道から天女・玉三郎丈の出になります。 スゴク綺麗です!!! この時の台詞は能風でございまして歌舞伎の台詞ではございません。 船辨慶の様な感じです。 「のうその衣はこなたのにて候。何しにめされ候ぞ。」 「それは天人の羽衣とて。たやすく人間にあたうべき物にあらず。本のごとくに置き給へ。」 っと、こんな感じだったと思います。 台詞に大きな感情表現はないのですけれど それでも、可哀想に思えてくるから不思議です。(笑) 花道から舞台に上がって伯竜に羽衣を返してっと、頼むのですが 天女って、空を飛んだりできるのに、とっても弱いんだ〜っと気が付きました。(^^ゞ 鬼女ではないわけですね。(笑) 玉三郎丈の天女 天に帰れなくって寂しいな〜 っと、いう感じがするのです。 だた舞台に立っていて 思いっきり感情を抑えた台詞でです。 上手いな〜。 後半は羽衣を着て鳳凰の天冠と鞨鼓を付けた踊りになります。 この時に羽衣を先に返してしまったら天に帰ってしまうのではないかと疑う伯竜に天女が 「疑は人間にあり。天に偽なきものを。」 っと、言うのですけれど カッコイイのですよ・・・玉三郎丈。(^。^) で、ここの踊りは‘駿河舞*‘というのだそうで これも能からきているようです。 ですのではじめの方は笛と鳴り物だけです。 鞨鼓を付けるのは歌舞伎の「松廼羽衣」から来たもののようで能の「羽衣」にはございません。 後半の踊りもほとんど玉三郎丈がお一人で踊っていらっしゃいまして わりと‘静‘な雰囲気でございます。 玉三郎丈大好きな私は‘わ〜綺麗!‘っと思いつつ見ておりましたけれど もしかするとチョッともの足りない感じであったかもしれません。 いよいよ幕切れ間近になりまして 天女が天に帰る頃ですね ここから愛之助丈が天女を追うような感じで舞台が展開いたしまして 長唄もアップテンポになります。 幕切れは 松の後ろに上がったり、宙乗りなどもあるようですが 今回の舞台は花道を使いました。 ですが・・・花道で鳥屋に入ったのかスッポンに入ったのかが?です。 3階からは見えないのですもの。(T_T) 全体には、かなり能風な舞台でございまして 玉三郎ワールド全開っといった感じです。(^^ゞ 長唄囃子の舞台ですが 能を意識している様なので かなり押さえ気味な感じで 玉三郎丈や愛之助丈の見た目の華やかさからすると 耳から感じる華やかさには多少欠ける様にも感じました。 ですが、玉三郎丈も愛之助丈もとても美しくて それだけでも私などはOKだったりいたします。(^^ゞ この幕から幕見もたくさんの人で やっぱり、美しい舞台は良いよね〜 などと思ってしまいました。 一中節 京都で始まった浄瑠璃で 座敷で語ることが多っかたそうです。 歌舞伎に出る事もあったようで、豊後節(ぶんごぶし)━豊後道成寺の時の浄瑠璃です━とも関わりがあるようです。 参考URL 日本の伝統音楽歌唱編 http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/edc8/deao/icchu/index.html (こちらで、一中節の「松の羽衣」を聞く事ができます。 駿河舞 駿河の風俗舞で、東遊びの一つです。 有度浜(うどはま)に天人が下って舞ったと伝えられるものだそうです。 駿河舞の時に歌われる歌を‘駿河歌‘というのだそうですが こんな歌詞です。 『やうとはまに するがなる うとはまに うちよするなみは ななぐさのいも ことこそよし (二段)ことこそよし ななぐさのいもは ことこそよし あへるとき いささはねなんや ななぐさのいも ことこそよし』 二段は舞う人がいなくなるまで繰り返すのだそうで 歌詞の感じも‘囃子言葉‘の様に思えます。 で、「するがなる うとはまに うちよするなみは」 と言うのは 「駿河なる 有度浜に 打寄する波は」 っという事で 天女が天から降りてきて舞を舞ったというお話をもとにしているわけです。 東遊び 東舞という歌舞の一つで もとは東国地方の民間舞踊だったそうです。 で、 >東遊の駿河舞 >東遊の駿河舞 >此時や始めなるらん から、”駿河舞はこんな感じで始まったのよ” っと 言う事になるわけです。 以下が駿河舞で 天人が舞った舞ですので羽衣を着て踊ります。 >春霞 >たなびきにけり久かたの >月の桂も花やさく >げに花かづら色めくは春のしるしかや >おもしろや天ならで >こゝも妙なり天津風 >雲の通路吹きとぢよ >乙女の姿 >しばし留 りて >此松原の >春の色を三保が崎 >月清見潟富士の雪いづれや春のあけぼの >たぐひ浪も松風ものどかなる浦のありさ ま >そのうへ天地は >何を隔てん玉垣の >内外の神の御末にて >月も曇らぬ日の本や づづく・・・・・ 今回の「羽衣」は長唄の舞台ですが どうも、かなり能風で 台詞も歌詞も謡曲の「羽衣」から引いた部分がほとんどです。 ですので(5)菊五郎の「羽衣」にある様な色模様などはマッタク無いのです。 参考URL 半漁文庫 http://www.kanazawa-bidai.ac.jp/~hangyo/ 日本舞踊演目辞典 http://www.nihon-buyo.com/2006/02/post_25.html |