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| 新橋演舞場 夜の部 三階B下手よりの席 |
*妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 三笠山御殿の場 一幕 *隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ) 法界坊 三幕 浄瑠璃 双面水照月(ふたおもてみずにてるつき) 常磐津連中 竹本連中 |
妹背山婦女庭訓 三笠山御殿の場 お三輪:福助 求女 実は 藤原淡海:染五郎 橘姫:高麗蔵 豆腐買おむら:歌六 鱶七 実は 金輪五郎今国:吉右衛門 舞台は三笠山、蘇我入鹿の館 ここへ入鹿の妹・橘姫が、想いを寄せる烏帽子折の求女のもとから戻ってきます。 ところが橘姫の振袖の袂に赤い糸が付けられており これをたどれば、糸に引かれて苧環を手にした求女がやって来ます。 この赤い糸は求女が橘姫を追うために付けたものでありました。 館に入った求女は 橘姫が入鹿の妹だと気付きますが 橘姫はかねてより求女が実は藤原淡海であると気付いていました。 入鹿の妹・橘姫に自らの素性を知られた淡海は橘姫を討とうとしますが 命を惜しまぬ橘姫の覚悟を見て 入鹿が奪った十握(とつか)の宝剣奪い返したならば 夫婦になろうと約束します。 橘姫は兄・入鹿を裏切る事になると嘆きますが 想いを寄せる淡海のために、願いを聞いて宝剣を奪うことにします。(姫戻り) 淡海と橘姫が宝剣を取り戻すため館に入ると そこへ、苧環を手にした杉酒屋の娘・お三輪がやって来ます。 お三輪は隣家の求女を想っておりましたが 求女が美しい姫を追って行ったので 求女の着物に付けた苧環の白い糸をたどって来たのですが 途中で糸が切れてしまい 館に迷い込んだのでした。 折りしも ここへ、豆腐を買いに出かけるおむらが通りかかり お三輪は、おむらの話から 求女と館の姫が祝言を挙げる事を知ります。 話を聞いたお三輪は求女を取り戻そうと館の内へ入ろうとするのですが 通りかかった官女たちに止められてしまいます。 とっさに、お三輪は祝言を見たいと言うのですが これを聞いた官女たちは 無理やり酌の取り方を教えたり、‘高砂‘や‘馬子唄‘を歌わせたりして いじめたあげく 突き倒して奥へ入ってしまうのでした。 お三輪が 悔しさに、苧環を抱え 一度戻って加勢を連れて来ようかと思案するところへ 館の奥から祝言の声が聞こえてきます。 これを聞いたお三輪は、ついに嫉妬に狂って疑着の相を現し 館の奥へ押し入ろうとします。 するとここへ 鱶七、実は藤原鎌足の家臣・金輪五郎今国が現れ、刀でお三輪の脇腹を突き刺します。 橘姫の言いつけた事かと、悔しがるお三輪に 金輪五郎今国は 真実を語るのでした。 求女は 実は、藤原鎌足の子息・藤原淡海であること。 白い牝鹿の血を飲んだ母親から生まれた入鹿は、爪黒の鹿の血と疑着の相のある女の生血を注いだ笛を吹くと正体を失い 倒すことができること。 それゆえ この笛を手に入れた淡海は入鹿を倒すことができ、手柄となること。 そして お三輪は、この功により 高家の北の方だと言います。 これを聞いたお三輪は 求女のためになったと喜び 来世では求女と添える事を願いつつ 求女を恋い慕いながら息絶えるのでした。(金殿) 隅田川続俤 法界坊 法界坊:吉右衛門 おくみ:芝雀 若党五百平:歌昇 手代要助:錦之助 息女野分姫:染五郎 丁稚長太:玉太郎 永楽屋おらく:吉之丞 大坂屋源右衛門:歌六 道具屋甚三:富十郎 序幕 第一場 向島大七入口の場 公家の吉田家は朝廷から預かった‘鯉魚(りぎょ)の一軸‘を紛失した事から家名断絶となり 嫡子・松若は縁のある商家・永楽屋の手代・要助と名を変え 一軸を探していました。 折りしも 永楽屋の後家・おらくは 大阪屋源右衛門が‘鯉魚の一軸‘を持っている事を知り 娘・おくみを嫁がせる代わりに 一軸を百両で買い取る事にします。 舞台は向島大七の入口 大阪屋源右衛門と話していた ‘鯉魚の一軸‘を盗んだ郡領の家臣・牛島大蔵が去ると 永楽屋の後家・おらくの一行がやって来ます。 さっそく おらくは大阪屋源右衛門から、一軸を受け取ると 要助に預けます。 折りしもここへ 釣鐘建立の勧進をしている法界坊が来ます。 法界坊は永楽屋の娘・おくみを想っているのですが 要助に想いを寄せるおくみは相手にしません。 おらく一行が大七の内へ入ると 法界坊は、再び現れた牛島大蔵に 金目当てで 一軸と、松若の許婚・野分姫の行方について協力する事にします。 そして、来合わせた永楽屋の番頭・長九郎を仲間に引き入れると、大七へ入っていくのでした。 皆がこの場を去ると 松若の行方を捜す野分姫が若党・五百平を供にやって来て 大七へ入って行きます。 序幕 第二場 大七座敷の場 大七へやって来た 野分姫は、松若と再会します。 ‘鯉魚の一軸‘も手に入り 後は、買い取るために必要な百両があればお家再興が叶うので 二人は喜び、再開を約束してこの場は別れる事にします。 野分姫が去ると おくみが二人の事に気付き、やって来て つれなく当たる要助に恋文を渡します。 しかし、要助はこの文を投げ捨ててしまい それを法界坊が拾うと さらに、言い争うおくみと要助が気付かずにいるので ‘鯉魚の一軸‘と釣鐘建立の絵図面をすりかえてしまいます。 法界坊が、言い争うおくみと要助に気づかれずにこの場を去ると 今度は、大坂屋源右衛門がやって来て 先刻、法界坊がすりかえた釣鐘建立の絵図面を‘鯉魚の一軸‘と思い 床の間にかけてあった掛け軸と更にすりかえるのでした。 おくみと要助がようやく言い争いを止めたところへ 永楽屋の番頭・長九郎がやって来て 百両を貸すと言うので 要助は喜んで証文を書きます。 要助がおくらに呼ばれ この場を去ると 長九郎がおくみを口説き始めます。 ところが、ここへ法界坊が現れ 長九郎を追い払うと 自分がおくみを口説き始め、付文を渡します。 おくみは法界坊を相手にせず 付文を投げ捨て逃げてしまうのでした。 折りしも、ここへ訪ねて来た 元吉田家に仕えていた甚三が法界坊の付文を拾います。 おくみが座敷を立ち去ると 大坂屋源右衛門がやって来て、おくらを呼び おくみは間男しているとおくらに言います。 ここへ先刻おくみに相手にされなかった法界坊が 要助とおくみを連れて来ます。 要助の姿を見て長九郎が 先ほどの百両を返せと言い出し 無理やり金を取り立てます。 しかし、この百両は偽金で 要助は窮地に立たされてしまうのでした。 折りしもここへ甚三がやって来て要助をとりなすと 法界坊が間男の証拠だと差し出したおくみの恋文を 先ほど拾った法界坊の付文とすりかえ読み上げます。 また、長九郎はおくらに勝手に金を貸したと咎められ 証文も焼けてしまい 要助は窮地を救われるのでした。 序幕 第三場 向島牛の御前鳥居前の場 舞台は白髭神社の鳥居前 長九郎が駕籠を用意してやって来ます。 駕篭かきを遠ざけおくみを待ち伏せるところへ 法界坊がやって来て‘鯉魚の一軸‘を渡し礼金を貰います。 法界坊が立ち去ると 要助を追っておくみが通りかかります。 長九郎はおくみを捕らえると駕籠へ押し込め 駕篭かきを呼びに行きます。 するとここへ法界坊が再び現れ ‘鯉魚の一軸‘を取り戻し 通りかかりの男から葛籠を奪うとおくみを葛籠へ押し込め姿を隠します。 長九郎が駕篭かきを見つけられずに戻って来て ひとりで駕籠を担いでこの場を立ち去ると 今度は、大坂屋源右衛門と要助がやってきます。 源右衛門はおくみへの想いが叶わぬ遺恨から 先ほど大七ですりかえた掛け軸を切り裂いてしまいます。 源右衛門がすりかえる前に 本物の‘鯉魚の一軸‘は法界坊がすりかえているのですが これを知らない要助は、本物の‘鯉魚の一軸‘が切り裂かれたと思い 源右衛門を殺し自らも腹を切ろうとします。 しかし、探しに来た甚三に助けられます。 甚三が傍らにある葛籠に源右衛門を隠そうとすると 中ならおくみが現れたので 甚三は源右衛門の死骸を葛籠に入れ おくみと要助を連れてこの場を去ります。 第二幕 向島三囲土手の場 舞台は向島三囲土手 法界坊の小屋があります。 折りしもここへ 要助、おくみ、野分姫が通りかかりますが 突然の落雷で気を失ってしまいます。 これを見た法界坊は要助を縛って藪の中に隠すと 気付いた野分姫を口説こうとするのですが、聞き入れられなかった事に腹を立て‘要助からおくみとの仲に邪魔な野分姫を殺してくれと頼まれた’っと嘘を言い野分姫を斬ってしまいます。 法界坊の言葉に騙されたまま斬られた野分姫は要助を恨んで死んでしまいます。 法界坊は邪魔が入った時のためにと、落とし穴を掘り おくみを口説こうとするのですが おくみが息を吹き返したところへ甚三が駆けつけ 要助とおくみを助けます。 法界坊は、すりかえて手に入れた‘鯉魚の一軸‘を見せつけますが 自ら掘った落とし穴に落ちてしまい 甚三に討たれます。 甚三は‘鯉魚の一軸‘を手に入れ 要助とおくみを、隅田川の渡し守をしている妹・おしづの元へ向かわせますが 要助に恨みを持つ野分姫の亡霊が現れ、二人の行く手を阻みます。 これを見た甚三が‘鯉魚の一軸‘を野分姫に差し向けると 威徳により亡霊は姿を消します。 しかし、二人の後を追おうとした甚三を亡霊となった法界坊が引き戻すのでした。 大詰 隅田川渡船の場 双面水照月(ふたおもてみずにてるつき) 法界坊の霊、野分姫の霊:染五郎 渡し守おしづ:福助 要助 実は 吉田松若丸:錦之助 おくみ:芝雀 舞台は隅田川の渡し場 甚三の妹で渡し守のおしづが、要助とおくみを待っているところへ 二人がやって来ます。 三人は野分姫のために形見の袱紗を火にくべて弔うと おくみとそっくりな女が姿を現します。 これは法界坊と野分姫の霊が双面となって現れたもので ある時はおくみとして要助に寄り添い また、野分姫としておくみを呪います。 二人のおくみは区別ができず 要助を取り合うのでした。 これを見ていたおしづが 観世音の尊像を差し向けると、怨霊は本性を現すのでした。 |
☆「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 三笠山御殿の場」は 近松半二、三好松洛らの合作で全五段十二場の人形浄瑠璃「妹背山婦女庭訓」の四段目「金殿の段」にあたります。 「妹背山婦女庭訓」の大まかなお話は以下のようでございます。 初段 ・大内 天智天皇の御世 実権を持つ蘇我蝦夷は、邪魔な藤原鎌足の失脚を謀ります。 この様な折 太宰少貮の後室・定高が娘・雛鳥に婿を取り家を継がせたいと願い出ます。 一方、鎌足は蝦夷に謀反の疑いをかけられたため 宮中を離れ蟄居する事になります。 ・小松原 大判事清澄の子息・久我之助と太宰少貮の娘・雛鳥は春日野で出会い互いに想いを寄せますが 二人はそれぞれ領地争いで不仲の家の跡取りである事に気付きます。 ここへ、鎌足の娘で天智天皇に仕える釆女(うねめ)が宮中より逃げてきて 久我之助に救われます。 ・蝦夷館 蘇我蝦夷が雪見の宴を開いているところへ久我之助が呼び出され釆女の入水の事実を問われます。 久我之助は野辺の送りを済ませた事を伝え この事で父・大判事清澄から勘当されたので蝦夷に仕えたいと願い出ます。 帰ろうとする久我之助に追手がかかりますが これを切り抜け悠々と立ち帰るのでした。 入鹿は父・蝦夷の暴虐のため 百日の修行の後、命を絶とうとします。 これを知った、入鹿の奥方・めどの方は 入鹿のために、蝦夷を諌めようとしますが 逆に連判状のありかを言えと斬られてしまいます。 折りしもここへ反逆の証拠となる連判状を持って勅使として安倍中納言行主と大判事清澄が来ます。 反逆が明らかになり 蝦夷は切腹しますが 飛んできた矢に安倍中納言行主は射抜かれてしまいます。 驚く大判事清澄の前に、入鹿が現れ 百日の仏法帰依の修行と偽り 宮中の宝蔵より宝剣を奪い自らが天下を奪うのだと言うのでした。 二段目 ・猿沢池 天智天皇は釆女(うねめ)が猿沢の池に入水したと聞き、やって来ます。 ここで対面した藤原鎌足の子息・淡海は 天皇に勅勘の許しを願い出ます。 折りしも 入鹿が国を奪ったとの知らせが入り 淡海は盲目の天皇をどこかへ連れ去ります。 ・葛籠山(鹿殺し) 鎌足は元家臣の狩人・芝六に理由は告げず 爪黒の牝鹿の血潮を手に入れるよう命じます。 爪黒の牝鹿の血潮は 入鹿を討つために必要なものでした。 芝六は鹿を射ると死罪になる事を承知で 女房お雉の連れ子・三作とともに爪黒の牝鹿の血を手に入れます。 ・芝六住家(萬歳・芝六忠義) 淡海は天智天皇を芝六の家に匿っています。 しかし、天皇は盲目なので この場が芝六の住家とは気付かず お神楽を命じ、皆困りますが 萬歳を舞ってごまかします。 芝六は手に入れた鹿の血を淡海に渡したのですが 鹿を殺せば石子詰めの死罪になります。 女房・お雉が案じているところへ 村人の、訴人すれば褒美が出ると言う声が聞こえます。 これを聞いた三作は父・芝六の身を案じて 自分を訴人させ身代わりになろうと 弟・杉松に訴人状を届けさせます。 折りしもここへ 入鹿の差し向けた役人が天皇の詮議にやって来ます。 役人が三作を人質にして問い詰めると 芝六は大庄屋のところで白状すると言って出て行きます。 これを見た淡海は芝六の忠義を疑い天皇の身を移そうとするのですが お雉は芝六の帰りを待って欲しいと、止めるのでした。 芝六が大庄屋のところに行っている間に 先刻、杉松が届けた訴人状を見て役人が三作を鹿殺しの罪で連れて行きます。 そこへ芝六が帰って来て 子供を人質に取られたとて忠心は堅いと 自らの忠義を淡海に示すために 我が子・杉松を殺します。 これまで三作の事を黙っていたお雉でしたが 杉松が殺されたのを見て 先刻、鹿殺しの罪で連れて行かれたと話します。 これを聞いた芝六は自分の罪のために連れて行かれた三作を殺してはならぬと駆け出しますが 折りしもここへ、鎌足と釆女(うねめ)が三作を連れてやって来ます。 芝六は忠心を認められ玄上太郎として仕える事を許され また、三作の刑罰のために掘った地中より 内侍所の二種の宝が見つかります。 鹿殺しの掟から 三作の代わりに杉松を埋め 菩提のために釣鐘を建立する事となります。 また、地中より見つかった神鏡の光を浴びて天智天皇の目が見えるようになります。 三段目 ・太宰館(花渡し) 太宰館を訪れた入鹿は太宰の後室・定高と大判事を呼び出します。 そして 大判事には息子・久我之助は釆女の方を匿っているのではないか、もし違うのであれば 久我之助を出仕させるよう命じます。 また 定高には 大判事家との不仲は偽りで娘・雛鳥と久我之助は密通している、もし違うのであれば 雛鳥を自らの后に差し出すよう命じます。 そして、荒牧弥藤次に遠眼鏡で見張るよう言いつけるのでした。 ・吉野川(山の段) 吉野川を挟んで向かい合う 太宰の屋敷と、大判事の屋敷。 久我之助が勘気を受け、この屋敷で暮らす事を知り 雛鳥も向かい合う太宰の屋敷に来ています。 二人が吉野川を挟んで見つめ合うところへ 入鹿の命を受けた大判事と定高が悩みながら戻ってきます。 しかし、川を隔てて大判事と定高は意地を張り合い 入鹿の申し出を聞き入れる時は 花の盛りの桜の枝を川に流すと約束します。 大判事は久我之助から本心を聞き 今、出仕すれば拷問を受け殺されるのは明らかゆえ 切腹するよう言います。 定高は雛鳥に久我之助のために入内するよう言うのですが 本心は、首を渡すつもりであったと語り これを聞いた雛鳥は喜び、久我之助への想いを貫き死を覚悟します。 互いに相手の子を救おうと 花の付いた桜の枝を川に流すのですが 子供が亡くなる時の泣き声で 相手もまた死を選んだ事に気付きます。 両家は和解し 雛鳥の首は雛人形の輿に乗り 吉野川を渡って久我之助の元へ嫁入りして行きます。 四段目 ・杉酒屋(井戸替・杉酒屋) 井戸替えの日 隣家に近頃越してきた烏帽子折りの求女は 井戸替えの事を知らず、参加しなかったために長屋の人たちから苦情を言われてしまいます。 慌てて謝る求女に 長屋の者が、これから酒盛りを始めるので共に飲めと言うのですが 求女は酒は飲めないと断ります。 すると今度は、共に踊れと言われてしまうのですが 求女は折を見て抜け出すのでした。(井戸替) 井戸替えも終わり、酒盛りも静まって 日が落ちた頃 求女のところへ美しい姫が訪ねてきます。 この様子を見ていた丁稚・子太郎は 寺子屋から戻って来た、杉酒屋の娘・お三輪にこの事を話します。 話を聞いたお三輪は 子太郎を使いにやり、求女を連れ出すと二人の仲を約束したのは偽りであったのかと問うのでした。 しかし、求女は 約束は神に誓って偽りないと言います。 この言葉に お三輪は七夕に供えた苧環を持って来て、心変わりがないように 赤い糸を求女 白い糸をお三輪が持つことにします。 折りしもここへ先刻の姫が来て、お三輪と 求女の引き合いになってしまいます。 ところが引き合ううち お三輪の母親がやって来たので 姫が外へ出て行ってしまい これを追って求女も出て行き さらに、お三輪も求女を追って行くのでした。(杉酒屋) ・道行恋苧環 出て行く姫の後を求女が追い 求女の後をお三輪が追います。 そうして 姫とお三輪は 求女を間に引き合うのでした。 と、三笠山近くまで来た時 鳴る鐘の音を聞いた姫が驚く様子を見た求女は姫の振袖の端に苧環の赤い糸を付け お三輪は求女の裾に白い糸を付け 共に後を追ってきます。 ・入鹿御殿(鱶七上使・姫戻り・金殿) 三笠山の入鹿の贅を尽くした御殿では酒宴の最中 ここへ鎌足の使いで鱶七という漁師がやって来ます。 鱶七は鎌足がこれまでの事を詫びていると伝え 詫びのしるしとして酒徳利を出すのですが 怪しいと言われ、毒見をして 酒を全て飲んでしまいます。 さらに 鎌足からの書状を差し出すのですが これも疑われ 鱶七は鎌足の本心が知れるまで人質となります。 館に留め置かれた鱶七は酒に酔い一眠りしようとすれば 下から槍が突き上げますが これを枕に寝てしまうのでした。 さらには 毒酒を飲まされそうになるのですが 折から来た使いの者と共に奥へ入って行きます。(鱶七上使) ・(姫戻り)→上記のあらすじ参照 ・(金殿)→上記のあらすじ参照 ・奥殿(入鹿誅伐) 橘姫は、今様を遊覧する入鹿から十握(とつか)の宝剣を奪おうとしますが これに失敗 しかし、入鹿は折からの笛の音に正体がなくなり 宝剣はたちまち金龍の形となり雲にうねり雨を呼び御溝水(みかわみず)に飛び込んでしまいます。 しかし鎌足が兵を従えやって来ると 兵を集める山の頂を登る時、金龍が自らの袖に落ち、たちまち十握の宝剣に変わった事を話します。 正体のなかった入鹿は ここで気が付き、鎌足をめがけて飛び掛りますが 鎌足が神鏡を差し向けると入鹿の勢いは衰え 宝剣で首を落とされます。 しかしなおも、炎を吹き上げる入鹿でしたが 鎌足の読経により静まるのでした。 五段目 ・志賀都 志賀の都で 入鹿討伐に功績のあった人々の恩賞が下されました。 さらに橘姫は豊代姫と名を変え、淡海の妻となり 大判事は三作を養子にする事となります。 参考:カブキ101物語り ようこそ文楽へ TOP:http://homepage2.nifty.com/hachisuke/index.htm http://homepage2.nifty.com/hachisuke/yukahon/imoseyama.html 今回の舞台は‘鱶七上使‘がございませんで‘姫戻り‘からになります。 で、橘姫が高麗蔵丈 求女(実は淡海)が染五郎丈でございますが 高麗蔵丈は赤姫にしては少しキツイ感じですし 染五郎丈は少し小さい感じです。 橘姫は赤姫ですけれど 一途でけなげ、さらには想いを寄せる求女のためには兄を裏切る芯の強さ こういった心情の篤さが見えません。 また、求女は実は淡海であるわけなのですが やはり内側に重み、篤さが見えません。 なので ここはイマヒトツ平坦な感じがいたしました。 福助丈のお三輪は かわいそうな感じ、哀れな感じがシッカリ見えて また、悲しいくらいな一途な気持ちが伝わるように感じました。 ホント、福助丈は‘哀れ‘を感じるお役って上手いですよね。(^^ゞ 今月の舞台も妙にギャグル事もなくキッチリしていて とても良いと思います。 前半の‘酌の取り方‘や‘高砂‘や‘馬子唄‘などのイジメは イマヒトツ締まらないと申しましょうか 何のためにこんなめに合っているのか 一点に集中する想いが薄い様な気もいたしましたが 後半、一人その場に残されたあたりからの心情の変化がよくて 苧環を見ながら求女を想う寂しい気持ちから 一度家に戻って出直して来ようかとうい迷い心 さらに、館の奥からの声を聞いての嫉妬の想い 次々に変化する心情がシッカリ伝わります。 また、最後の苧環を手にして求女を想うところの 突き抜けたような透明な感じの哀れさはとてもよかったと思います。 で、一つ気になりましたのが お三輪をイジメ過ぎじゃないでしょうか・・・。 いえ この場はイジメられないとお話にならないのですが いじめる官女が顔の付近に檜扇をあまり近づけているので 見ておりまして、なんとなく気になってしまいました。 この舞台の後半は吉右衛門丈の鱶七が大きいです。 ここだけ見ますと‘鱶七上使‘がございませんので この人誰?っという感じに唐突に舞台に現れるのですが(笑) 今までの舞台の空気を一新してしまいます。 荒事の豪快で大きな鱶七で さらに、ノリ地の台詞がとても良いです。 これまでの せつなくて悲しい雰囲気にリズムが出て 幕切れに見ている側が思いを引きずることなく終われます。 ☆「隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ) 法界坊」は吉右衛門丈で見てみたかった舞台です。 で、とっても面白いです。 いえ ただ笑えて面白いと言う事ではなくって 何回見ても面白いだろうと思わせる味のある舞台だと思います。 何より、一番感じましたのは 出ていらっしゃる役者さんそれぞれがピッタリで上手いのです。 なので 舞台が少しも軽くなく それでいて面白いのです。 3日に昼夜通しで見ました中では 一番、役者さんとお役がピッタリと合っている舞台だと思います。 まず、吉右衛門丈ですが スゴイですね〜、これが鱶七 いえ、鬼平と同じ人ですからね〜。(^^ゞ でも・・・私はズット以前 大魔神子の吉右衛門丈を見た事があるので 実は、吉右衛門丈は突き抜けると‘かなり‘スゴイのだと思っておりました。 で、ヤッパリそうでした。(爆) 料亭・大七で‘鯉魚の一軸‘を奪って 要助とおくみの後ろで踊りながらのイナバウアーもウケておりましたが・・・まだ、これで引っ張るのか〜っとも思いました・・・。(^^ゞ ですが吉右衛門丈の法界坊は チョッとカッコよく感じるところもあるのです。 ただずるくてヘンに可笑しいヤツっという様な法界坊ではなくって ズッシリ感のある、実は心底はかなり怖いヤツかもしれない、みたいな 奥行きを感じるのです。 本気で怒らせると怖いみたいな感じです。 これなら 後に幽霊になって出てきてもチットモおかしくない法界坊です。 富十郎丈は マダ、3日目でしたが台詞もそれほど違和感なく(^^ゞ ヘンに間があくこともなく 吉右衛門丈と息もぴったりで とても篤みのある舞台になっています。 富十郎丈のチャキットした口跡がとても良いです。 芝雀丈のおくみは可愛くて一途な町娘の雰囲気がございます。 また、錦之助丈の要助がピッタリです。 要助は手代ですが 実は、公家の嫡子ですので その品格がございます。 料亭・大七でのおくみとのジャラジャラした会話もいいです。 やはりニンのお役なのでしょう 華がございますし存在感もございます。 ☆「双面水照月」は下手の常磐津と上手の竹本での掛け合いとなります。 幕開きから下手に常磐津連中が並び置きから浅葱幕が落ちます。 今回は、法界坊の吉右衛門丈ではなくて 野分姫の染五郎丈が双面で法界坊と野分姫の霊を踊ります。 野分姫はとても美しくて素敵です。 ですが、やはりチョッと押しが弱い感じでございまして 法界坊のしたたかさが出ない感じです。 この場は福助丈が渡し守・おしづですが とてもよくて、一番この場の雰囲気があったように思います。 衣装が船頭の‘厚司(あつし)‘で これがとても粋に似合っておりまして素敵です。 幕切れ前の染五郎丈・野分姫に観世音の尊像を差し出してのやり取りは迫力がございました おくみの芝雀丈 要助の錦之助丈 昼の部に引き続き この舞台でも並んでお二人とも素敵です。(^。^) この場は これまでのお話の続きですが 舞台の雰囲気を変えて所作事になっています。 なので お話の流れは続きますが 舞台はより様式的になっていて 幕切れには染五郎丈が二段に上がり絵面で決まります。 |