2007年01月14日           もくじへ戻る トップページへ戻る 
    歌舞伎座 夜の部   三階A中央の席

  *廓三番叟
     長唄囃子連中
  *祗園祭礼信仰記  金閣寺(ぎおんさいれいしんこうき  きんかくじ)
     一幕
  *新歌舞伎十八番の内  春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)
     長唄囃子連中
  *処女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし) 切られお富
     二幕


廓三番叟
 傾城千歳太夫:雀右衛門
 番新梅里:魁春
 新造松ヶ枝:孝太郎
 新造春菊:芝雀
 太鼓持藤中:富十郎

吉原遊郭の奥座敷に 太夫、新造、太鼓持、が現れ それぞせを翁、千歳、三番叟、に見立て めでたく舞います。





祗園祭礼信仰記  金閣寺(ぎおんさいれいしんこうき  きんかくじ)
 松永大膳:幸四郎
 雪姫:玉三郎
 十河軍平 実は 佐藤正清:左團次
 松永鬼藤太:彌十郎
 慶寿院尼:東蔵
 狩野之介直信:梅玉
 此下東吉:吉右衛門

舞台は京・金閣寺 足利義輝を倒した松永大膳は金閣寺の二階に義輝の母・慶寿院尼を閉じ込め さらに、金閣寺の天井に龍の絵を描かせるべく 絵師狩野雪舟の孫、雪村の娘・雪姫と夫・狩野之介直信を捕らえ軟禁してしまいます。
大膳は雪姫に横恋慕しており 絵を描かない雪姫に、絵を描くか自分の意に従うか迫り 承知しなければ夫・直信の命はないと脅します。


折りしもここへ大膳に奉公を願い出た此下東吉が十河軍平とともにやって来ます。
大膳は東吉と碁の勝負をしますが 東吉に負け、碁笥を井戸に投げ込み 東吉に‘手を濡らさず‘碁笥を井戸から取るよう命じます。
東吉は瀧の流れを使い見事に碁笥を井戸から取り出し 大膳の臣下となります。


皆が奥へ行き大膳と雪姫二人になると 大膳は雪姫に龍の絵を描くように命じます。
雪姫が夫・直信のために絵を描きたいが手本がないので描けないと言うと 大膳は手にした刀を抜き龍を出して見せるのでした。
この刀こそ狩野家の宝剣で、雪姫の父・雪村が殺され奪われたものでした。
大膳が父・雪村の敵と知った雪姫は 大膳に斬りかかりますが 逆に捕らえられ桜の木に縛りつけられてしまい 夫・直信は処刑のため舟岡山へ連れて行かれてしまいます。


一人残った雪姫は 祖父・雪舟の故事を思い出し、桜の花びらを集めて鼠の絵を描けば 描いた鼠が動き出し雪姫を縛った縄を食いちぎるのでした。
自由になった雪姫でしたが これに気付いた鬼藤太に捕まりそうになるところを 此下東吉に助けられ 夫・直信を追って舟岡山へ急ぎます。


大膳の臣下になると偽り金閣寺までやってきた東吉の目的は慶寿院尼を助け出す事でした。
東吉は桜の木を上り二階の慶寿院尼を助け出すと これに気付いた大膳に、実は真柴久吉であると名乗り 戦場での再会を約束するのでした。






新歌舞伎十八番の内  春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)
 弥生 後に 獅子の精:勘三郎
 胡蝶の精:宗生
 胡蝶の精:鶴松
 老女飛鳥井:歌江
 局吉野:歌女之丞
 用人関口十太夫:猿弥
 家老渋井五左衛門:芦燕

舞台は江戸城大奥 正月六日のお鏡曳きの日 将軍のご所望で お小姓・弥生が お鏡曳きの獅子頭を使って所作事をすることとなり 老女飛鳥井や局吉野に手を引かれ恥じらいながら舞い始めます。
やがて弥生は祭壇にある獅子頭を手にするのですが 折りしも現れた蝶に獅子頭が突然動き出し 弥生は獅子頭に体をひきづられるようにこの場を去ります。


弥生が去ると舞台には女の童の姿をした胡蝶の精が二人現れ羯鼓と鈴太鼓を使って可愛らしく舞い始め やはりいつしかこの場を去ります。

舞台には長唄のひな壇ばかり 大薩摩の後、鳴物の静寂漂う‘露‘から獅子の出になる‘乱序‘となり 獅子の精が花道から出てきます。
舞台に上がった獅子の精が二畳台で眠りにつくと 先ほどの胡蝶の精が再び現れ獅子を起こします。
獅子は胡蝶に起こされ、勇み長い毛を振り 胡蝶は戯れ舞遊びます。
そうして再び二畳台に上がった獅子は静に座に納まるのでした。






処女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし) 切られお富
 お富:福助
 井筒与三郎:橋之助
 穂積幸十郎:信二郎
 お滝:高麗蔵
 蝙蝠の安蔵:彌十郎
 赤間源左衛門:歌六

序幕
第一場 鎌倉長谷小路赤間妾宅の場
舞台は赤間源左衛門の妾宅 源左衛門の妾・お富と井筒与三郎が忍び会っています。
小指を切って心の証しを立てるお富でしたが 今は、妾の身の上 与三郎は後ろ髪を引かれる思いでこの場を去ります。
折りしもここへ赤間源左衛門が現れ 与三郎との密会を責め、お富を斬り苛むのでした。
倒れたお富を見て、息絶えたと思った源左衛門は後始末を蝙蝠の安蔵に命じ、この場を去ります。
安蔵はお富にまだ息がある事に気付き 介抱して女房にしようと、葛籠に入れ立ち去ります。


第二場 薩た峠(さつたとうげ)一ツ家の場
舞台は薩た峠の一ツ家 折りしもここへ提灯の火を借りに寄った与三郎は 安蔵の女房になっているお富と再会します。
与三郎がお富の傷の理由を聞くうち かつてお富の父親が与三郎の父に仕えていた事が分かります。
与三郎の父は主家の重宝を盗まれた責めを負い切腹 与三郎が詮議したところ府中の道具屋にある事が分かりますが 手に入れるための金の工面ができずにいるのでした。
これを聞いたお富は 金の調達を与三郎と約束し 思案の末、赤間屋という女郎屋 実は赤間源左衛門の店に強請りに行く事にするのでした。


第二幕
第一場 府中宿赤間屋見世先の場
舞台は赤間屋の見世先 評判を聞いてやってきた穂積幸十郎が奥へ入ると これを見ていた蝙蝠の安蔵が女を連れて来たと言い、源左衛門にお富を引き合わせるのでした。

第二場 赤間屋奥座敷の場
舞台は赤間屋の奥座敷 お富を見て驚いた源左衛門でしたが 二人を奥座敷に通すと 金を要求するお富に百両を渡そうとします。
しかし、二百両の金が欲しいお富は啖呵を切って源左衛門を強請ります。
折りしもここへ 源左衛門の女房・お滝が来て 二人を追い返そうとしますが お富と安蔵は源左衛門が実は盗賊・観音久次であることなどをほのめかすので 源左衛門は二人の言うとおり二百両を渡すのでした。


お富と安蔵が金を手にして帰ると ここへ先ほどの穂積幸十郎がやって来ます。
穂積幸十郎は 源左衛門が盗賊・観音久次で、与三郎の捜す重宝を盗んだのも源左衛門である事をつきとめ召し捕りに来たのでした。


第三場 狐ヶ崎畜生塚の場
与三郎のためにお富が強請りに行った事を知る安蔵は手に入れた二百両を持って上方へ逃げる事にします。
しかし、これに気付いたお富は先回りして待ち伏せし、安蔵に斬りかかるのでした。




☆「廓三番叟」は特別に劇的なストーリーがあるというような舞踊ではありません。
 吉原の廓の様子などを風情ゆたかに舞います。
 能の「翁」を元にした歌舞伎の「三番叟」を さらに廓の風情を舞うというチョッと艶やかな舞台にしているのが廓三番叟でございます。
 もともと「翁」は神事に行われるので 歌舞伎の「三番叟」もやはり神事を行う、おめでたい事がある、などの時に上演されます。
 で、今回の廓三番叟も舞台は廓で艶っぽいですけれど お正月の廓の風情を唄いながら一年の平穏を願う舞踊でございます。
 (2005年10月06日昼の部より

 いかにもお正月といった感じの舞台で 上手には鏡餅や南天などがあり 華やかで風情のある舞台です。
 で、今月はさらに配役も豪華でございまして(笑) できればもっと長く見ていたいと思ってしまいます。(^^ゞ
 なんでございましょうね〜・・・とにかく 舞台の華やかさ、存在感が凄くてイッキニ場内を舞台に引き寄せる感じです。

 雀右衛門さんの太夫は存在感、篤さ、押し出しがスゴイ!!!
 ほとんど動かないのに(^^ゞ なんであんなに舞台で大きく見えるのでしょうね。
 ですけれど チットモ威圧感がないのです。
 スゴク可愛らしいのです。

 富十郎さんは後半からの出で もったいない〜 っと言う感じです。
 同じ舞台に雀右衛門さんといらして‘これだけ?‘っと もの足りなくって できればモット踊っていただきたかったです。

 で、芝雀さんが さりげなくいろいろと動いていらっしゃって ご苦労様でございます。
 他、魁春さん孝太郎さん コレだけ豪華に役者さんがそろって お正月ならではの舞台なのでしょうね。(^。^)





☆「金閣寺」は1757年初演の人形浄瑠璃「祗園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)」の四段目の切と奥(四段目は 口:浮世風呂の段、切:金閣寺碁立の段、奥:金閣寺爪先鼠の段から成ります)にあたります。
 全体の流れは松永大膳のたくらみを小田信長と此下東吉が阻止するという内容ですけれど メインになるお話は大膳、雪姫、東吉などの活躍です。

 で、チョと気になりまして調べた事が・・・舞台では雪姫は舟岡山に行き、大膳と東吉の再会の約束で幕になるのですけれど 床本では、東吉が久吉を名乗り大膳と対する時に 舟岡山から、十河軍平と直信と雪姫が戻って来るのです。
ここで、雪姫と直信に慶寿院尼が
 「雲竜を描かせよと二人の者を呼寄せしも、大膳を欺いて奪ひ返せし家の旗、慶覚に伝えさせ潔く死なんもの」
 っと、言うのですね。
 じつは、幕開き間近に大膳が
 「詰牢とは品を変へ舞ひ歌はせて奔走するも、慶寿院が指図した天井に墨絵の竜、直信に代って画くか、但し抱かれて寝る所存か、どうぢゃどうぢゃ」
 っと、言っているので 何で慶寿院の指図なのかと思いまして 床本を見ましたら 足利の家の旗を雪姫と直信に渡したかったからなのですね。
 ここが舞台の金閣寺の二階の場面で言われたのか チョッと確認できなかったのです。
 まあ、どうでもいいのでしょうけれど 私がスッキリしたという事でございます。(^^ゞ


 で、今月の「金閣寺」の感想ですけれど・・・言葉が出ませんね、とにかく美しい・・・。
 良い舞台です、私が見ました最近の舞台ではダントツに良いです。
 華あるし、実あるし。(^。^)
 大歌舞伎ならではの大セリを使った演出も豪華です。
 なにより役者さんがそろっていらっしゃる。
 大膳と東吉の碁立など秀山祭みたいでしたし。
 ここは吉右衛門さんが大きくなり過ぎず抑えていたのが良かったような気がします。
 決まり決まりはキッチリと押さえていて それで、前に出過ぎない感じが 全体のまとまりをよくしていたと思います。
 もちろん他の方も皆様 みな大きな役者さんばかりで・・・って、見た目のことではございませんよ(笑)・・・舞台の篤さ押しの良さはスゴイです。
 さらに、この舞台は義太夫狂言でノリの台詞が耳に心地良いのです。
 特に、吉右衛門さんの東吉の碁立のところなど 最高に良かったです。
 もっと桜がたくさん降っても良いのになどと思いましたが たまに、固まった桜が降ってきてましたね。(~_~;)
 玉三郎さんに当たったらどうしよ〜などと思いつつ見てしまいました。(笑)
 でも、絵になる舞台でございます。

 マズは玉三郎さんの雪姫が綺麗です。
 ただ綺麗ではなくて‘格‘を感じます。
 これがスゴイです。
 美しいしですし、品もございますが それ以上に‘格‘を感じるのですね。
 ‘位‘でもいいでしょうか。
 ただ美しくて可愛らしいのではなくて 1本ピシット芯の通った感じなのです。
 雪姫は武士の娘ではございませんで絵師の娘ですけれど 歌舞伎の舞台では‘三姫‘の一人でございます。
 立女形の大役でございます。
 玉三郎さんの雪姫は このお役の持つ、役自体の‘格‘を持っているように感じます。
 時として近寄りがたいほどの強さを感じ スパークする様な鋭さを感じ 芯を感じ かつ、美しく可愛らしく一途な雪姫で おそらく、これだけの‘格‘を感じる事のできる雪姫は そうはいないのではないかしらっと思いました。
 はじめの、舞台に出るところ 上手の障子が開いて座る姿の可愛いことと言いましたら・・・。
 うつむき加減で腕を胸の前にしての思案顔 大膳の要求に困って‘どうしよう‘の表情がなんとも素敵です。
 玉三郎さんの雪姫は ここで何に困って思案しているのかがよく分かるのですね。
 ひとり言の様に‘どうしよう‘と言いつつ経緯のすべてを話してしまうのです。
 でも、チットモ説明っぽくないのは玉三郎さんの自力のなせる事かと思います。
 ここから碁立の間 雪姫って、大膳と東吉の間に入るような入らないような お話に絡むような絡まないような、そんな感じなのですね。
 舞台中央に出るまでの柱のところの決まりの形の美しいこと 舞台中央では大膳と藤吉が碁を打っているのですが どうも、視線が玉三郎さんの雪姫から離れませんでした。
 舞台中央に出てからは 出すぎず、引かず、難しいのではないかしらっと思いました。
 ですけれど、今回の舞台は ここでの大膳、東吉、雪姫のバランスがとても良いです。
 玉三郎さんの雪姫の‘出るところ‘と‘抑えるところ‘のメリハリが良いのだと思います。
 桜の木に縛られてからは もう、玉三郎さんの独壇場でありまして 降りしきる桜の下 決まる姿の美しいことと言いましたら。
 ここは義太夫の三味線も連れ弾きになります。
 あの広い舞台を桜の花びらを集める玉三郎さんの雪姫 あんまり綺麗でけなげで可愛くて ずっとオペラグラスで追ってしまいました。(笑)
 花道からの引っ込みは宝剣をしっかりと抱えるやり方で 可愛くくだけることなく最後まで雪姫の持つ品格を通した感じでした。
 カッコイイ・・・。(^。^)
 これほどの雪姫に想われる直信って幸せだな〜。(^^ゞ

 それから大膳の幸四郎さんが良いです。
 色悪な感じがイッパイなんですもの。
 もともと大きな方で押しはあるのですね で、そこに白塗りの王子鬘小忌衣(おみごろも)といういでたちで 「それともに直信を殺しともなか、おうと云うて雲竜を画きなりと、抱かれて寝なりとその方が得心しだい、生かさうと殺さうととっくりと思案して、よい返答聞くまでは蒲団の上の極楽責め、芸者ども張り上げて歌へ歌へ」 さらには「コリャ雪姫、心にさへ従へば直信は助けんと、つがひし詞反古にもなるまい、暮を待って閨の盃、抱いて寝たその上で直信は赦してくれう」などとおっしゃる。
 よっぽど雪姫が好きなんだな〜っと 国崩しの大悪人でも、ただ悪くないというキャラクターがそのまま舞台にいらっしゃるのですね。(^^ゞ
 色気があって大きくて でも、悪人の太さがございます。
 上手いな〜っと 嬉しくなってしまいます。
 この台詞がチットモ変に聞こえませんで カッコよく聞こえるのは やっぱり幸四郎さんの上手さなのでございましょう。
 幕切れ前は三段に上がって見得になります。
 今月の幸四郎さん とっても良いです。

 今回の舞台での吉右衛門さんの東吉は居場所がとても良いです。
 やはり大膳、東吉、雪姫のバランスの良さを生むポイントではないかと思います。
 さらに、先ほども書きましたが碁立のノリの台詞の聞き心地の良さはこの舞台を格段に面白くしていると思います。
 また、東吉というキャラクターの持つ軽妙な感じが良く出ていますし それでいて、碁笥を持っての見得などは やはり大きくきまって良い形です。
 吉右衛門さんの持つシャレた感じの軽妙さとドッシリとした篤さ深さが両面で見られる感じがいたします。





☆「春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)」は1893年(M26)(9)團十郎初演の舞台でございます。
 この後(6)菊五郎が再演し現在に至っています。
 おおまかな舞台の流れは以下の様な感じです。

>しょう歌牧笛の声 人間万事さまざまに
長唄の出囃子が流れて弥生が手を引かれて上手から出てきます。
一度は逃げてしまいますが再び手を引かれて舞台に登場します。

>忍ぶ便りも長廊下
ここで覚悟を決めて 正面の将軍にご挨拶。

>されば結ぶの その神や あまの浮橋渡りそめ
弥生の所作事がここから始まります。
手踊りから
>人の心の花の露 濡れにぞ濡れし鬢水の はたち鬘の堅意地も
ゆったりと川崎音頭になり袱紗を使います。

>春は花見に 心うつりて山里の
ここからは塗骨の女扇を使った踊りになります。
はじめは御殿女中のお花見物見の雰囲気
>青葉しげるや夏木立 飛騨の踊りはおもしろや
ここは飛騨踊の雰囲気です

>恨みかこつもな 実からしんぞ 気にあたろとは
長唄に太鼓で 手踊りとなり可愛らしく踊ります。
>朧月夜やほととぎす
ここで時鳥(ほととぎす)が飛ぶ風情で目線でこれを追います。

>時しも今は牡丹の花の 咲くや乱れて 散るはゝ 散りくるはゝ
ここから再び扇を使った踊りで 牡丹の花を見る風情です。
>花には憂さをも打ち忘れ
ここで中ダメで決まります。

>咲き乱れたる 風に香のある花の波
ここから二枚扇の踊りです。
合の手の間に扇を一枚後ろに飛ばして
>牡丹に戯れ獅子の曲 げに石橋のありさまは
扇一枚になり踊りも長唄も能の雰囲気を感じるところです。

この後、弥生が祭壇の獅子頭を手にして 獅子頭と弥生の相反する様子を見せながら花道の揚幕に入ります。
弥生が花道から入ると 舞台は長唄のひな壇が左右に分かれて 中央奥から二畳台に乗って女の童の胡蝶の精が二人出て 踊りとなります。
>世の中に 絶えて花香のなかりせば

胡蝶が上手下手それぞれに入って後 大薩摩になります。
>それ清涼山の石橋は 人の渡せる橋ならず

太鼓と小鼓の‘露‘となり それから‘乱序‘。
ここで獅子が花道から出ますが はじめは静にゆっくり七三まで出てそのまま、また揚幕に入り 再び出て、今度は舞台に上がります。

舞台の二畳台で獅子が眠るところへ
>牡丹の花に舞い遊ぶ
で、胡蝶の精が左右から出て獅子を揺り起こします。

>獅子は勇んで くる ゝ ゝ と
獅子の狂いになり、長い毛を振り 胡蝶は戯れ舞い遊びます。
>獅子の座にこそ直りけれ
二畳台に上がった獅子が静まり納まります。


・川崎音頭:伊勢音頭の一つでゆったりした曲調民謡です。
・飛騨(ひんだ)の踊り:この舞台では流れの良い軽快な踊りのところですが 阿国歌舞伎で使われた俗謡だそうで 古風な踊り唄なのだそうです。



 で、感想などですけれど・・・。
 私が以前、勘三郎さんの(当時は勘九郎さんでしたが)「鏡獅子」を見ましたときより前シテと後シテのバランスがとても良くなっていると思いました。
 まあ、以前見ました舞台は15年くらい前であったと思いますので 私の方の見方がズイブン変わっております。(笑)
 以前は前シテがマッタク?でしから・・・。(^^ゞ
 久しぶりに見ました勘三郎さんの「鏡獅子」 やっぱりスゴイです。
 とくに、前シテがたっぷりとして でも、可愛らしくて品のある弥生です。

 手を引かれて出てくるところの恥らう娘らしい感じから それでも、心を決めてご挨拶して踊りだすところの気持ちの切り替わりが スッと潔い感じで伝わります。
 ‘おっ、これからはじまる!‘みたいな期待感っというような感じです。
 で、川崎音頭でのしとやかさと袱紗を使った立ち振る舞いの良さ 塗骨の女扇の軽やかな感じから時鳥の目線の上手さ ここはチョとの間が良くて、スススッと視線が中を泳ぐようで 見ていて何だか嬉しくなってしまいました。

 で、再び扇を持ってからの‘咲くや乱れて 散るは ゝ 散りくるは ゝ ゝ ちり ゝ ゝ・・・‘のところ 長唄のノリがとっても良くて大好きです。(^^ゞ
 踊りのほうも 扇を散る牡丹の花びらの様にして 中ダメで決まりますが 勘三郎さん綺麗です。
 二枚扇も上手く捌いておりました。
 ここ、前に見たときには パシッとスパークするような気迫みたいなものを感じる時があったのですが 今回は、モット自然で柔らかでした。
 角が取れたと言うのか 練れたと言うのか 気負いを感じなくなりました。
 おそらく こういう一つひとつに気負いがないので全体に たっぷり、ゆったり、でも可愛らしく見えるのではないかと思います。
 この後、扇を一枚後ろに飛ばしますけれど 後見の方がナイスキャッチでありました。(^。^)

 弥生が獅子頭に引きずられて揚幕に入りますが ここもの緊迫感も見事です。
 で、舞台は胡蝶の出になります。
 以前見た勘三郎さんの鏡獅子は この胡蝶がちょうど今の宗生さん鶴松さんと同じ年くらいの頃の勘太郎さんと七之助さんでありまして 舞台を見て思い出しました。
 胡蝶が可愛いと場内が盛り上がります。(^^ゞ
 宗生さんと鶴松さん、上手いです。
 羯鼓と鈴太鼓を使った踊りですが 一生懸命がとっても可愛いです。
 さらに胸、肩、腕、手首、指先の線がお二人とも とても美しいです。
 これからとっても楽しみです。
 鶴松さん、昨年よりほっそりした感じになったような・・・。
 背がスッと伸びてカッコよくなるのかな〜。(^^ゞ

 大薩摩の後に獅子の精が花道から出ますが ここの演出って何回見ても鳥肌ものです。
 ‘露‘のドキドキする様な効果が良いのですね。
 今回の勘三郎さんの後シテ、獅子の精は キンキン、ガンガン押しまくる感じはないのですが 大きさを感じます。
 とくに、胡蝶と踊るところ 胡蝶を下手上手に追うようにするところ、両脇が胡蝶で舞台中央で回るところなど 獅子の持つ大きさ、寛大さ、優しさ、強さ、そういったものを感じます。
 やはりここも以前に見た時にはキッパリとした力強さが大きかったのですが 今回はモット感情豊かな感じがいたします。





☆「切られお富」は1864年の初演で黙阿弥作の舞台です。
 これ本外題が「処女翫浮名横櫛」というのですね。(^^ゞ
 なんか・・・スゴイわ・・・。
 で、筋書きを見ますと 近年では宗十郎さんの舞台が多いのですね。(見たかったな〜)
 私は舞台で見るのははじめてでございます。
 昨年あたり何度か歌舞伎チャンネルで放送しておりましたのを見ただけでございます。
 じつは、私の初見が上記のTVでのものでしたので「切られお富」って もっと、渋いイメージがありました。
 年代も違いますので比べてどうなのかは?ですけれど。
 ですけれど 今回、舞台で見ました「切られお富」はかなり軽めでありまして 良い悪いは別としてとて私には見やすかったです。

 福助さんのお富は初役だそうですけれど 雰囲気とても良かったです。
 幕開きスグの鎌倉での場面 与三郎と二人のところなどとても艶っぽくて素敵です。
 ここの色気・艶が良いので 場面が変わって薩た峠の茶屋になった時の変わりようが生きてきます。
 で、鎌倉での‘斬り苛まれて‘って この場面、過去にあった事ですから べつに、夢にしなくてもいいとは思いましたけれど 今回の舞台では あまり見たかったとは思いませんでした。
 こういう場面って様式として美しく見せてもらえないと ただのサスペンスになってしまうのですね。
 イマイチ 後に残ってしまいます。
 舞台で見るのがはじめてでありますので もともとがこうであったのか?ですが できればもうチョッと形にして欲しいな〜っと思いました。
 府中の赤間屋での強請の場面は悪婆がうまいです。
 水を得た魚って感じでございましょうか。(^^ゞ
 ただ、チョと軽すぎのところもあったかもしれません。
 ‘しがらみ‘というのか‘斜にかまえた‘というのか 上手く言えなのですが‘すれた深い渋み‘が薄いのですね。
 なので、ギャグになるところがございます。

 他、歌六さんの源左衛門が手強くて良かったです。

 この舞台、できればもう一度見てみたいです。
 え〜もう少し見やすい時間帯で。(^^ゞ
 今月の夜の部って ここまでが重量級でございましょ それで最後の演目で終演が9時過ぎですもの つらいですって!!!。
 「金閣寺」と「鏡獅子」でエネルギー使い果たしてしまった後ですらね〜。






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