2006年12月10日           もくじへ戻る トップページへ戻る 
    歌舞伎座 夜の部   三階A上手よりの席

  *神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)
    一幕

  *江戸女草紙 出刃打お玉(でばうちおたま)
    二幕五場

  *新歌舞伎十八番の内 紅葉狩
    常磐津連中
    竹本連中
    長唄連中


神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)
 頓兵衛:富十郎
 新田義峯:友右衛門
 うてな:松也
 六蔵:團蔵
 お舟:菊之助

舞台は矢口の渡し 渡し守・頓兵衛は足利と新田の争いの折、金目当てに新田義興を騙し溺死させた強欲者です。
折からここへ新田義興の弟・義峯が馴染みの傾城・うてなを伴ない戦を逃れてやって来ます。
強欲な頓兵衛は村名主に呼ばれ留守のところ 頓兵衛の一人娘・お舟が二人の応対に出ます。
頓兵衛の妻はすでに亡くなり 今は一人娘のお舟が居るばかりですが、お舟は気だての優しい美しい娘です。
舟を出して欲しいと頼む義峯でしたが すでに夜になっていて渡し舟が無く、義峯は一夜の宿を頼みます。
お舟は気品のある義峯に想いをよせます。
恋しい義峯に自らの想いをうちあけるお舟でしたが 義峯の懐にあった源氏の白幡の戒めにより、二人は気を失ってしまいます。
この様子を見ていた、頓兵衛の手下・六蔵が訴人しようとするので 気付いたお舟は六蔵を引きとめ、義峯を亭座敷に匿います。
しかし、体良くお舟に追いやられた六蔵は義峯のことを訴えるためこの場を去ります。
お舟が義峯の休む亭座敷に入ると 藪の中から頓兵衛が現れ床下に忍び込み 亭座敷の床下から義峯を刺します。
しかし頓兵衛が刺したのは 義峯の身替りになったお舟でした。
深手を負ったお舟は頓兵衛を止めようとしますが 頓兵衛はお舟の言葉も聞かず この場を落ち延びた義峯を追うため 新田の落人を捕らえる合図の狼煙を上げます。
狼煙の合図で川の両岸が包囲され、義峯とうてなは逃れる事ができなくなってしまいます。
お舟は、何とか二人を逃そうと 包囲を解くための知らせの櫓太鼓を打つことを思い出します。
頓兵衛に刺され深手を負ったお舟ですが 二人を逃すために、邪魔をする六蔵を刺し 最後の力を振り絞って知らせの太鼓を叩きます。
川には義峯を追う頓兵衛の姿が見えるのですが 天空から飛んできた義興の恨みの白羽の矢に射抜かれてしまいます。






江戸女草紙 出刃打お玉(でばうちおたま)
 お玉:菊五郎
 おろく:時蔵
 森藤十郎:團蔵
 広円和尚:田之助
 増田正蔵:梅玉

舞台は谷中 以前、出刃打ちの曲芸をしていたお玉は 今では岡場所で隠れ遊びに通う広円和尚の相手などをしています。
ある日、そこへ これから敵討ちをしようという若い武士・増田正蔵が客としてやってきます。
正蔵は返り討ちになる事を恐れているのですが お玉はそんな正蔵に好意を持ちます。
敵討ちの日、やはり腕の立つ敵の森藤十郎に返り討ちになりそうな正蔵をお玉は出刃打ちで助け 正蔵は敵討ちに成功します。
それから、28年後 2人は偶然に、おろくの出合茶屋で再会します。
年老いたお玉は下働き、出世した正蔵は客でした。
懐かしく思い声を掛けるお玉でしたが 大病を患い老けた様子のお玉を正蔵は相手にしません。
罵倒されたお玉は怒って 不忍池近くで、帰路の正蔵に出刃を打ちます。
目に出刃を受けた正蔵でしたが 供のものがお玉に斬りかかるのを止めると この場を去ります。
なぜ、斬りかかるのを止めたのか不思議に思いながら 一人残ったお玉は正蔵の後姿を見送りますが ふと、正蔵の心に気付くのでした。






新歌舞伎十八番の内 紅葉狩
 更科姫 実は 戸隠山の鬼女:海老蔵
 山神:右近
 平維茂:松緑

舞台は紅葉の美しい戸隠山 平維茂が従者をともない紅葉狩にやって来ると 先に幔幕を廻らして酒宴を催している一行が居る様子です。
どちらのお方の催される酒宴かと思い尋ねてみれば 高位の姫がお忍びで後遊興とのこと。
これを聞いた維茂は、邪魔にならぬように静かにこの場を去ろうとするのですが 幕内より呼び止められます。
幕内から出てきたのは振袖姿の更科姫、立ち去ろうとする維茂を酒宴に誘います。
なお遠慮して帰ろうとする維茂を引きとめ、腰元たちが踊り始めます。
是非にとの誘いに維茂は酒宴に加わり 維茂の従者も酒に酔って面白く踊ります。
酒宴が進み、維茂の申し出で更科姫の舞が始まります。
しかし、姫が舞ううち維茂と従者達は酒に酔ったのかうとうとし始め ついに寝入ってしまいます。
維茂の様子を窺っていた更科姫は 維茂が寝入ってしまうと鬼女の本性を見せ、腰元を引き連れ幕内に入って行きます。


鬼女の本性を見せた更科姫がこの場を去ると 山神が現れ、眠ったままでは維茂が鬼女に食われてしまうと なんとか維茂を起こそうとします。
足拍子を踏み、維茂を揺り動かしますが 維茂がなかなか起きないので、山神は鬼女を退治するための名刀を置いてこの場を去ります。


山神がこの場を去ると、ようやく維茂一行は目を覚まします。
維茂は夢の中で正八幡大菩薩のお告げを聞き、更科姫が鬼女であることを知ります。
そして正体を見とどけるべく幕内に入って行きます。
残された従者達も目を覚ましますが こちらは、鬼女を恐れて逃げて行きます。


しばらくして幕内より鬼女となった更科姫と、これを追う維茂が現れます。
鬼女は維茂に襲い掛かろうとしますが 維茂の持つ名刀の威徳によって取り殺すことができません。
争ううち ついに維茂は松の大木の上に鬼女を追いつめるのでした。




☆「神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)」は福内鬼外(平賀源内)作の全5段の江戸浄瑠璃の4段目です。
舞台は矢口の渡、これは今の大田区でございまして川は多摩川でございます。
川崎方面と東京大田区方面を渡す場所であったようです。
この舞台の内容はケッコウ陰陰滅滅な感じでございます。(^^ゞ

前半は見ておりましてチョッと意識がモウロウとしそうでございましたが 後半、頓兵衛・富十郎さんが舞台に出てからは強欲非道な迫力に圧倒されまして シッカリ舞台に見入ってしまいました。
怖いほどの‘悪さ‘にハラがあって つくりごとに見えません。(笑)
とことん、強欲非道な感じがあって 刺された菊之助さんのお舟と対する時も 悪い事に後ろめたさを微塵も感じないので 堂々と悪くて、その悪さを納得してしまいます。
この頓兵衛だったら 瀕死の娘を目の前にしてもゼッタイ金の事のみを考えて 罵倒もすれば打擲もするだろうっと思えるのです。
ほんと、みごとに瀕死の娘の‘瀕死‘を無視して義峯を探して障子を倒したりしてくれます。
花道の引っ込み‘くも手蛸足‘もジャラジャラという刀の鍔の音がなんとも不気味な感じで 頓兵衛の常人離れした感性を感じます。
ここ、富十郎さんの動きがかなり不気味に見えるのですもの。(^^ゞ
それと後半 富十郎さんの‘怖い凄さ‘と 義太夫の清太夫の声質がピッタリでございまして 凄みのある舞台になっていたと思います。
最後の幕切れ前 白羽の矢が刺さったところも‘これは、キット後々何やら祟りそう‘とか思えるほどの不気味さ凄さでございます。
震える腕がかなり怖かったです。
一つ気になった事がございました。
舞台下手の藪の中から出ていらっしゃる時につまづいて前のめりに倒れたので チョッとビックリいたしました。
これって、演出でございましょうか?
それともアクシデントでございましょうか?

お舟の菊之助さんは前半とても娘らしくて可愛いです。
義峯を見初めて‘わ〜‘っという感じで舞台中央に戻るところなど可愛さがございますし うてなに気付いて‘ど〜しょ〜‘って戸惑うところもいじらしかったりします。
友右衛門さんの義峯も台詞の感じがとても歌舞伎味がございまして 上品な義峯であると思います。
ですけれど前半のお2人はイマヒトツ引き付けるところがございませんで スッキリと品良く進むのですが あっさり薄味なのでございます。
チョッとさらさらしているかな〜っと思いました。
後半の菊之助さんは迫力がございます。
その迫力とは裏腹に 懸命に父親・頓兵衛に意見し 義峯の‘未来で添おう‘という言葉を信じて命がけの行動が 何だか、とても哀れに思えます。
救われないな〜っと・・・。
こういう人を薄幸っていうのでしょうか。
櫓に登って太鼓を打とうとするあたりは三味線が連引きで櫓三重になります。
音的にもケッコウ迫力がございます。
で、團蔵さんの六蔵との立ち回りは千鳥の合方で このあたりも、哀れな感じのお舟ですが それを後に残さないようにテンポが速い感じです。
で、團蔵さんご苦労様でございます。
今月スゴクたくさんのお役をお勤めでございます。(^^ゞ





☆「出刃打お玉(でばうちおたま)」は池波正太郎作の舞台で、新しい歌舞伎です。
ワタクシ的に今月一番の舞台でございました。
上手いわ〜、菊五郎さんと梅玉さん。

マズ前半。
菊五郎さん上手いです。(^^ゞ
前半は正蔵と対して 正蔵に好意あるいは興味を持って 行き過ぎない優しさが良いです。
いつ死んでも良いのだといいきる女の チョッとした好意がリアルに感じます。
このくらいの事はあるかもしれないっと思えるのです。
正蔵の様子を好意を持っても客として見て、酒を運び羽織を着せかける その仕草に良い意味での距離感があって さめた感性を感じます。
それゆえ、この後の28年などという時間経過に違和感を感じないのだと思います。
敵討ちの後の幕切れ前 「強かったね」「うん」って なんとも良い雰囲気のお玉と正蔵なのでございます。

で、梅玉さん 先月の綱豊と同じ人とは思えない(笑)梅玉さんでございます。
この正蔵というお役は初役だそうでございますが かなり、良い感じだと思います。
どうも、捌役のイメージがございますので そのギャップがおもいっきり楽しいのでございます。
とくに、前半の‘23歳‘の正蔵は最高です。(大笑)
見えますもの。
布団に包まったままのところなど可愛いくらいです。(爆)
お玉に「怖い」と抱きつくところも 敵討ちも こういう場面を梅玉さんで見られるのね〜っと ケッコウ楽しかったです。

田之助さんの和尚が、また良いのです。
いやらしさが嫌味のない可愛らしさに替わって見えます。
で、チョッと気になったこと。
舞台で田之助さん串団子を食べていらっしゃったようだったのですが これ、3階から見ると、どうも本物の様に見えたのですけれど どうなのでございましょう?
もし、本物なら太りそうです。(^^ゞ

この他、歌江さん、家橘さん、が舞台を篤くしてくれています。
ここでも、團蔵さんご苦労様でございます。(^^ゞ

で、28年後。
菊五郎さんの変わり様が良いです。
可愛い‘婆さん‘です。
客席大うけでした。
梅玉さんは、こちらもハマっているんですね〜。(^^ゞ
お玉と正蔵が出会ってしまって お玉が話しかけたときの2人の雰囲気がなんとも言えない感じです。
お玉の思っている懐かしさと 正蔵の驚き、戸惑いのすれ違いが舞台の上に見えるようです。
懐かしく思うお玉の行動も 驚き戸惑う正蔵のリアクションも どちらも‘こんな感じだろうな‘っと納得できるリアルさがあります。
なので、正蔵がお玉を叩いて逃げ出すのが なんとなく気持ちとして分かるような気がします。
最後のところは舞台は忍ばずの池で‘何かありげ‘な感じです。
薄暗い舞台で どうもそのままのお話では舞台同様、救われない暗い感じらしいのですが 多少アレンジしてあって後味の悪くない舞台にしてあるのだそうでございます。
確かに、菊五郎さんと梅玉さんのやり取りで後味の悪さはマッタク残りません。
どちらかと言うと 幕切れ前、花道で正蔵が「身から出た錆だ」という台詞と これを見ながらフット気付いたように「正蔵さん」っと言うお玉の台詞で この舞台は、後に暖かい感じすら残る世話物になっていると思います。





☆「紅葉狩」は1887年の初演で成田屋の舞台でございます。
三方掛け合いで紅葉がイッパイの華やかな感じの舞台です。

まず、松緑さんの維茂はピンッとおひげで スッキリ綺麗です。
役どころが どうも、昼の部の「忍夜恋曲者」と似ておりまして こちらも‘怪しげ‘を退治するわけでございます。(^^ゞ
やはり動きの線がとても綺麗で 舞台で、大きく見えます。

それから、右近さんが良くて とても14歳には見えません。
舞台に居てもスゴク大きく見えます。
一つひとつの動きが丁寧でシッカリ決まります。
唯一、14歳だわっと思いましたのは声がかすれている事ぐらいでございます。
声変わりなのですね〜。

で、海老蔵さんですけれど・・・先月といい今月といいどうしたのでございましょうね。
一言で言うと‘あまりお行儀のいい舞台には見えません‘でした。
更科姫がイキナリ大股で股割り(しこ踏み?)をした時には 見ているこちらが恥ずかしくなりました。
赤姫の衣装であの形は絵になりません。
どう見ても美しくは見えないと思うのですが・・・。
さらに、上手に引っ込む時も 何であんなにドカドカと踏みしめるのでしょう。
‘本当は鬼女なのだぞ、怖いのだぞ‘を見せるためなのかもしれませんけれど 即物的に目の前で見なくとも鬼女なのは分かっている事なので ハラでしっかり役ができていれば客席には伝わると思うのですけれど。
そのまま、スッと立ち姿はとても美しく見えるので よけいに落差を感じました。
また、鬼女になってぶっかえった後 決まるごとに‘ファ〜‘とか‘シャ〜‘とか唸るのは何でございましょう。
私は怒った時のネコが相手を威嚇するのを思い浮かべてしまいました。(^^ゞ
コレもあまりお行儀が良いようには思えなのですけれど。
だいたい、場内を威嚇してどうするのでございましょうね〜?






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