2006年07月09日           もくじへ戻る トップページへ戻る 
    国立劇場 大劇場 14:30開演の部   一階後方花道外の席

  *彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
    毛谷村
    一幕二場


彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
毛谷村
 六助:梅玉
 微塵弾正:松江
 弥三松:玉太郎
 お幸:歌江
 お園:芝雀

豊前国彦山杉坂墓所(ぶぜんのくにひこさんすぎさかはかしょ)の場
  舞台は彦山の杉坂墓所 ここで毛谷村に暮らす六助が亡き母の四十九日の通夜をして
  います。
  そこへ年老いた母を連れて微塵弾正と名のる浪人がやって来ます。


  六助は八重垣流の達人・吉岡一味斎から剣術の秘伝を受けている剣豪でありましたが 
  師・吉岡一味斎の言葉に従い仕官を断っていました。
  そこで、領内では剣術の試合で六助を倒した者を召し抱えるというお触れが出されてい
  ます。


  微塵弾正は老母の暮らしのために試合で負けて欲しいと六助に頼みます。
  自分の母を亡くしたばかりの六助は‘老母の暮らしのため‘と言う微塵弾正の言葉に 試
  合の勝ちを譲る事を約束します。


  微塵弾正が立ち去り、しばらくすると幼子を連れた老人が山賊に追われて逃げてきます。
  老人は幼子をかばい深手を負ってしまいます。
  水を汲みにこの場を離れていた六助が戻って来て、二人を助けますが 深手を負った老
  人は幼子を六助に預けると息を引き取るのでした。


 豊前国毛谷村六助住家の場
  舞台は六助の家 先日の約束のとおり六助は微塵弾正と剣術の試合をして勝ちを譲りま
  す。
  仕官が決まり横柄な態度をとる微塵弾正ですが 老母のために勝ちを譲った六助は満足
  そうに微塵弾正を見送ります。


  試合の立会いに来ていた役人も帰ってしまうと そこへ、旅姿の老女がやって来ます。
  老女は、六助が身寄りが捜しに来た時の目印にと門口に掛けてあった弥三松の着物を見
  て 六助の家で休ませて欲しいと声をかけます。
  老女は六助の剣術の師・吉岡一味斎の後室、お幸でありましたが お幸のことを知らない
  六助は ただならぬお幸の様子を見て ひとまず奥の座敷に通すのでした。


  六助が、亡き母を想って泣く弥三松を不憫に思いながら寝かしつけていると 通りかかっ
  た虚無僧が、門口の弥三松の着物に目を留めます。
  外の様子に気付いた六助が 虚無僧が偽者であると見抜くと 突然、虚無僧は‘家来の
  敵‘と言って六助に斬りかかってきます。
  やはり虚無僧は偽で女でありましたが 騒ぎで目を覚ました弥三松が‘伯母様‘っと声を
  上げて虚無僧姿の女に駆け寄ります。
  虚無僧姿の女は弥三松の伯母、お園で 吉岡一味斎の娘 六助の許婚でありました。
  先日の杉坂での出来事を聞き、六助が許婚だとわかったお園は 甲斐甲斐しく六助の世
  話を始めます。
  はじめは驚いていた六助でしたが お園から父・吉岡一味斎が京極内匠に闇討ちされ、
  妹で弥三松の母も返り討ちにあった事を聞ききます。


  折りしも、ここへ様子を聞いていた先刻の老女・お幸が奥の座敷から現れお園と対面し
  お園の母であり吉岡一味斎の後室である事がわかります。
  お幸は六助とお園に祝言を挙げさせるのでした。


  ここへ杣(木こり)たちが斧右衛門の老母を戸板に乗せてやって来ます。
  見れば斬られて亡くなった老母は 先日、微塵弾正が連れていた老母でありました。
  微塵弾正は仕官のために老母を殺し、六助を騙したのでした。
  さらに、お幸の持つ人相書から 微塵弾正が敵の京極内匠だとわかります。
  六助はお園から勝利を祈って紅梅を、お幸から祝言を祝って椿の枝を授かると 敵討ちの
  ため城中へ向かうのでした。




☆「毛谷村」は1786年初演の人形浄瑠璃「彦山権現誓助剣」・全11段の9段目です。
 今回の舞台は客席に小学生や高校生が来る事を考えているようで 「杉坂墓所の場」と「六助住家の場」の二場を上演いたしました。
 ですから、弥三松がなぜ六助の家に居るのか、微塵弾正(実は京極内匠)がどの様にして六助に近づいたか また、なぜ六助が試合に負けたか など経緯がわかりやすくなっていました。
 全11段の長編時代浄瑠璃ということで歌舞伎では「毛谷村六助住家の場」の上演だけの場合が多いようですが どうも、文楽の方ではこの他に「須磨浦の段」「瓢箪棚の段」も上演される事があるようでございます。
 で、このお話 六助は宮本武蔵 京極内匠(微塵弾正)は佐々木小次郎 をそれぞれモデルにしているのだそうです。
 でも・・・今回の舞台を見ていて 武蔵、小次郎ってイメージではなかったですけれどね・・・。(^^ゞ
 六助もお園も怪力の持ち主で好青年に美女 京極内匠(微塵弾正)はオモイッキリの敵役というキャラクターです。
 白黒がハッキリしているので見ていて理解しやすい舞台です。


 大まかなあらすじは
○毛谷村に住む六助は一味斎から剣術の秘伝を授かります。
○一味斎は郡音成(こおりおとなり)に仕える剣術師範で 妻・お幸 長男・三之丞 お園、お菊の姉妹 がいます。
 長男・三之丞は病弱 お菊は弥三郎との間に弥三松という子供がいます。
 お園は実の子ではありませんが 婿を取って跡を継がせようと考えています。
○京極内匠はお菊に横恋慕していますが相手にされず 一味斎との御前試合にも負け 恨みを持っています。
 京極内匠は自分が武智光秀の忘れ形見であると 武智の残党・四法天但馬守(しほうでんたじまのかみ)に教えられ 名刀・蛙丸の事も知ります。
○郡音成(こおりおとなり)が石清水八幡を勧請した折 一味斎は京極内匠に闇討ちされます。
 お園の武芸の腕前を試した弥三郎の父・衣川弥三左衛門は仇討免許をお園に渡します。
 病弱な長男・三之丞は足手まといにならぬため切腹してしまい 母・お幸、お園、お菊が仇討の旅に出ます。
○お菊は弥三松と家来・友平を連れて旅をしていましたが 京極内匠に出会い、返り討ちになってしまいます。
 家来・友平は弥三松を連れて お園を捜すことにします。
○お園は山城国で夜鷹に姿を変え敵を捜していましたが友平からお菊の死を知らされます。
 友平が敵の手がかりになると思った‘臍の緒書‘を見れば誕生日の他は書いてなく 無念さに腹を切り‘臍の緒書‘を池に投げ込みます。
 すると池から水気が立ち 名刀・蛙丸を吹き上げます。
 折りしも姿を現した京極内匠が、これを取ると お園が行く手を阻み 瓢箪棚で二人は争うのでした。
○杉坂墓所→上記参考
○毛谷村→上記参考
○六助は微塵弾正、実は京極内匠と再試合をして勝ちます。
 さらに京極内匠の持つ刀が蛙丸であり 武智光秀の残党であると知れます。
 六助の助太刀でお園は本懐を遂げます。

  参考:カブキ101物語


 毎年6月、7月の鑑賞教室は わりと若手の方が舞台をお勤めになられる事が多い様なのですけれど 今回は梅玉さん芝雀さんの舞台でございました。
 さらには後半の竹本が清太夫でございまして ほんとうに嬉しい舞台でありました。

「杉坂墓所の場」
 ここの梅玉さんの六助は‘好青年‘という言葉がピッタリの感じです。
 また弾正の松江さん、良かったと思いました。

「六助住家の場」
 幕開きから板付きで六助と弾正の試合になります。
 前の場からの流れが続いていて、いい展開だと思います。
 試合の最中の弾正と、勝ってからの弾正が わりとわかりやすく(笑)変化していて 今回の様な客席にとっては見やすいと思いました。
 ここでも梅玉さんは十分で‘いい人の六助‘です。
 この後、弥三松 お幸、お園と対していくのですけれど いつでも一本芯に‘いい人‘がございます。
 まあ、いいのですけれど でも、ただ‘いい人‘なのはチョッと味気ないところもございます。(笑)
 また 弥三松を抱えて男泣きとか、太鼓やお人形で遊ぶとか・・・子供になれていない隣のおじさんといった感じで ヤッパリ良すぎて引っかかりがないのかな、と思いました。
 それでもう少し工夫がなかったかな、と思いましたのが お園が飯炊きなど始めるあたりでございまして 舞台中央に立ったままなのですね。
 私の観ておりました席が下手よりでしたので お園の姿が木戸口とかぶってしまう事もあって やたらと中央の六助が目に入るのですが いまひとつリアクションが少なくて、手持ち無沙汰の感じがいたしました。
 しかし、訪ねて来たお幸に対する時の扱いや お園の虚無僧姿に意見する時などはとても良かったです。
 とくに、弥三松の隣に寝そべって 外に居る虚無僧姿のお園と話している時の六助・梅玉さんは良い感じで 世話風のカッコよさがございました。
 幕切れ前の三味線にのってのノリの台詞も良かったです。
 ワタクシ、梅玉さんの口跡が好きだったりするので よけい良かったと思いました。

 芝雀さんのお園は花道からの出です。
 深編み笠をかぶっている時は声を低く抑えていて 笠を取って声の感じが女形の高さになるようなのですが これが、ケッコウ効果的でありました。
 舞台に出てからは忍びとの立ち回り 六助との立ち回り あるいは、六助が許婚と知れて飯炊きや 今までの経緯を語るクドキなど ズット動いていらっしゃってその場その場での動きが流れに乗って違和感なく伝わりました。
 クドキのところでの梅之さんとのカラミは見た目に動きがあって 客席に子供がいっぱい居る様な舞台では効果的であったと思います。

 歌江さんのお幸は立派で一味斎の妻にピッタリの感じでございます。
 なにより、後半 六助が‘師の後室‘あるいは‘義母‘として頭を下げる存在になっておりました。
 で、お金を六助と投げ合うところ やはり子供にウケテいました。(笑)

 松江さんの弾正は頑張っていらっしゃったと思います。
 試合中と試合後の感じの違いもよかったですし、引っ込みの時の花道7.3での‘嫌なヤツ風‘の笑いも良かったと思います。
 ここが、どうみたって一筋縄ではいかない悪い奴であるので この後の六助の‘いい人‘が際立ちます。

 全体的に前半のテンポの良さが後半に続かなくなる感じがありまして 竹本の清太夫がかなり元気な語りをなさるわりに 舞台はテンポが上がらず元気がありません。
 う〜ん、優等生な感じの舞台です。
 これだけの役者さんの舞台なのにチョッともの足りない感じがいたしました。
 また、今回は客席がいつもの感じと違いまして子供がたくさん居て、歌舞伎を見慣れていらっしゃらない方が多いので 客席の反応がいつもと違っておりました。
 掛け声はかなり掛かっていたのですけれど いいところでの拍手が少なかったりタイミングが合わなかったりしたところもございました。
 芝居は舞台だけではないと言うのがよくわかるのでございます。(^^ゞ






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