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| 歌舞伎座 昼の部 一階後方中央の席 |
*江戸の夕映(えどのゆうばえ) 三幕五場 *雷船頭 常磐津連中 *歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり) 一幕 *権三と助十(ごんざとすけじゅう) 二幕 |
江戸の夕映(えどのゆうばえ) 本田小六:海老蔵 おりき:菊之助 おきん:萬次郎 お登勢:松也 お蝶:右近 おむら:家橘 松平掃部:團蔵 堂前大吉:松緑 序幕 第一場 築地河岸 舞台は官軍によって制圧された江戸、築地河岸 ここへ品川沖に停泊している江戸幕府 の軍艦に乗り込もうと旗本の本田小六がやって来ます。 しかし、軍艦に幕臣たちが乗り込むのを阻止するため 大川に舟を出す事が禁じられ 不 審者を取り締まっているのでした。 本田小六は取締りをしていた官軍に見つけられ捕まりそうになるのですが これを斬り闇 の中へ逃げて行くのでした。 序幕 第二場 舟宿網徳の家 舞台は同じ夜、舟宿の綱徳 ここで娘のお蝶と船頭たちが世間話などしていると 芸者の おりきが語る清元が二階から聞こえてきます。 船頭たちは清元を耳にして おりきと良い仲の堂前大吉や幕府軍のことを悪く言うのです が 二階から降りてきた堂前大吉は、江戸の町が戦火に包まれずにすんでよかったのだ と言うのでした。 ここへ先ほどの本田小六が品川沖へ舟を出して欲しいと頼みに来ます。 本田小六と旧知の間柄である堂前大吉は 許婚のお登勢のためにも行くのを止めるよう に言います。 しかし蝦夷へ行く事を決意している本田小六は聞き入れず 老船頭の新兵衛は舟を出す と言い おりきは途中まで一緒に舟に乗ろうと言うのでした。 序幕 第三場 元の築地河岸 本田小六を心配して様子を見に来た堂前大吉は お登勢と行き合います。 堂前大吉はお登勢に 本田小六は武士の意地を貫いて旅立ったので許して欲しいと言う のですが お登勢は全て覚悟していたと答えます。 しかし、去り状を残して旅立った本田小六に せめて去り状は返したかったと言うのでし た。 舟に同乗したおりきが川口で降りるはずなので、ここで本田小六と会えるかも知れないと 堂前大吉はお登勢と共に川口へ行こうとしますが 折悪しく総督府の参謀・吉田逸平太と 出会います。 吉田逸平太はお登勢の美しさを見て 後日、屋敷を訪問すると言って立ち去るのでした。 第二幕 町の碁会所 舞台は晩秋の松平掃部の家の碁会所です。 お登勢が仕立物の針仕事をしながら母のおむらと 江戸に戻ってこない本田小六の話を していると おりきと堂前大吉がやって来ます。 堂前大吉はすっかり町人になり おりきは踊りの師匠をしておりましたが お登勢たちの 暮らしを気遣い 仕立物を集めて届けに来たのでした。 堂前大吉とおりきが仕立物を置いて帰ると入れ替わって お登勢の父・松平掃部が戻って きます。 以前の同僚に総督府への仕官を勧められている松平掃部ですが これをきっぱりと断り ます。 さらに 部下たちに案内されてやって来た吉田逸平太に お登勢には許婚があり 薩長と 付き合うつもりもないので もう訪ねて欲しくないと言うのでした。 第三幕 飯倉坂の蕎麦屋 舞台は飯倉坂の蕎麦屋 ここで落ちぶれた本田小六が一人酒を飲んでいると 近所の 寺の住職の妾・おきんがやって来て 松平掃部がお登勢と吉田逸平太の縁談を断った ために 追い立てにあったと話していきます。 迎えが来ておきんが帰ると 入れ違えに酒を飲みに堂前大吉がやって来て 本田小六に 気が付き声をかけます。 しかし、本田小六はろくに返事もしないありさまで 堂前大吉は本田小六に なぜずっと待 ち続けているお登勢のところに帰らないのかと詰め寄るのでした。 本田小六は 死にそこなって帰って来て、去り状を渡した女に逢いに戻れるはずはないと 言います。 武士の体面や意地にこだわる本田小六にあきれる堂前大吉でしたが お登勢のために何 とか二人を会わせようと説得します。 しかし本田小六は動こうとしないのでした。 しばらくして、蕎麦屋の小僧の知らせで おりきとお登勢がやって来ます。 美しい夕映えの中 ようやく再会できた二人を見てよろこぶ 堂前大吉とおりき。 そうして お登勢と本田小六は ただただ見つめあうのでした。 雷船頭 船頭:松緑 雷:右近 舞台は夏の隅田川 浴衣姿の船頭が客の忘れたオカメの面に気付くところへ にわかに 雲行きが怪しくなり 雷鳴と共に天から雷が落ちてきます。 粋な船頭はチョッと気の弱い雷を相手に軽妙な踊りを踊ります。 気を良くした雷は 船頭と共に踊ると やがて吉原へ向かおうと舟に乗り込むのでした。 歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり) 外郎売 実は曽我五郎:團十郎 曽我十郎:梅玉 小林朝比奈:三津五郎 小林妹舞鶴:時蔵 工藤祐経:菊五郎 舞台は遠く富士を眺める大磯の廓 ここで富士の巻狩の総奉行・工藤祐経が休息をして います。 するとそこへ外郎売の声が聞こえ 酒宴の座興に呼ばれます。 外郎売は見事な早口の言い立てを披露するのですが 酒宴の中にいた珍斎を相手にして いるうち 工藤祐経に迫ろうとします。 実は外郎売はかつて工藤祐経に討たれた河津三郎祐安の子、曽我五郎でありました。 工藤祐経に挑みかかろうとする曽我五郎を化粧坂少将が止めるところへ 兄の曽我十郎 が駆けつけ 時節を待つように言うのでした。 供の者と立ち回りの末、敵に名乗りを上げる兄弟の様子を見た工藤祐経は二人の胸中に 感じ入り 狩場の絵図面を二人に与え 巻狩の後、兄弟に討たれる意向を示します。 十郎・五郎の兄弟は 工藤祐経と後日に狩場での再会を約束するのでした。 権三と助十(ごんざとすけじゅう) 権三:菊五郎 助十:三津五郎 おかん:時蔵 助八:権十郎 彦三郎:松也 勘太郎:團蔵 家主六郎兵衛:左團次 彦兵衛:田之助 序幕 神田橋本町裏長屋の場 舞台は井戸替えの日の神田橋本町の裏長屋 長屋の人たちが総出で井戸替えをしてい るなか 権三は昼寝をしています。 そこへ権三と駕籠を担いでいる助十がやって来て なぜ井戸替えに出ないのかと言い争 いになってしまうのですが 折りしも井戸替えが始まり 助十はこの場を後にします。 助十と弟・助八が再び権三の内の前に戻って来て 助八が井戸替えの最中に猿回しの 与助が連れている猿にからかわれたと怒るのを 助十がなだめるうちに兄弟喧嘩になって しまいます。 そこへ家主・六郎兵衛がやって来て 兄弟喧嘩を止めさせ井戸替えにいくように言い さら に権三夫婦にも井戸替えに早く行くように命じるのでした。 権三と助十兄弟が井戸替えに行くと 入れ違えで、先ごろまで長屋に住んでいた小間物 屋彦兵衛の息子・彦三郎が訪ねてきます。 彦三郎は、父・彦兵衛が旅籠屋の女隠居を殺害して百両奪った罪で捕らえられ牢屋の中 で死んでしまったという手紙を受け取り 無実を信じて大阪からやって来たのでした。 家主・六郎兵衛は 彦兵衛が白状して結審したことゆえ、裁きをやり直すことはできないと 言い これを聞いた彦三郎は駆け込み訴えをすると言い出します。 井戸替えに行っていた権三と助十は 二人の様子を見て意を決し 殺害のあった夜、左官 屋の勘太郎が天水桶で何か洗っていたことを話します。 これを聞いた家主・六郎兵衛は三人を騙りの罪で奉行所へ連れて行き お白州で今の話 をすることを思いつくのでした。 第二幕 神田橋本町裏長屋の場 舞台は一ヶ月ほど過ぎた裏長屋 騙りの罪で奉行所へ連れて行かれ取調べも済んで お預けの身となった権三と助十が また女房・おかんや弟・助八と喧嘩をしています。 ところが そこへ一度牢に入った勘太郎が牢から出されて 酒を持って挨拶にやって来 ました。 勘太郎は自分が疑われたのは日ごろの様子が良くないからだと神妙な面持ちで言うの ですが 言葉とは裏腹な嫌みな態度に助八は怒ります。 権三と助十も 助八の言うとおりだと ついに、勘太郎と喧嘩になってしまうのでした。 力のある勘太郎でしたが とうとう長屋の者たちに縛られてしまいます。 そこへ再び勘太郎を捕らえに役人がやって来ます。 実は大岡越前守は、はじめから彦兵衛を無実だと見抜いていて 彦兵衛を死んだ事にし て 勘太郎が犯人である証拠を得るために牢から出したのです。 真犯人の勘太郎が捕らえられ 死んだことになっていた彦兵衛も無事に戻って来たのでし た。 |
☆「江戸の夕映(えどのゆうばえ)」は大佛次郎(おさらぎじろう)作の舞台で1953年(S28)の初演でございます。 昭和の歌舞伎で かつ お話そのものも歌舞伎にしては時代が明治ですから 舞台の雰囲気は新しい歌舞伎の感じがいたします。 台詞の感じや、舞台の進む感じは ‘お芝居‘と言った風情がございます。 ですけれど この新作歌舞伎の雰囲気が 小六、大吉、おりき、の海老蔵さん、松緑さん、菊之助さんにぴったりくる感じで 全体にとてもいい舞台でございました。 少しも‘古新しい‘感じがしないのは舞台の役者さんの新しい感性が感じ取れるからの様な気がいたします。 この舞台が書かれたのは もちろん、今よりはズット以前ですけれど なのに、二幕目のおりき・菊之助さん、大吉・松緑さんの夫婦を見ておりますと 今時の若いご夫婦ってこんな感じじゃないかしら、っと思えます。 やっぱり‘今‘の役者さんが舞台にいるからなのですね。 台詞にしても、そこからくみ取れる感情にしても 等身大であってストレートです。 海老蔵さん、菊之助さん、松緑さん、のお3人の持つ感性がそのまま生きる舞台であると思います。 演出が團十郎さんでございましたので よりお三人の持ち味が生きたのかもしれません。 このお3人、これからもとても楽しみな方ばかりでございますし もっといろいろな舞台を観てみたいと思いました。 また、周りの役者さんが良いです。 私が舞台を見にまいりましたのは4日、まだ始まって間がない頃でございましたが かなり長い台詞もスッカリ入っていらっしゃって 少しも途切れる所がございません。 第三幕目のはじめ おきん・萬次郎さんの長い台詞はスゴイです。 とても綺麗に聞こえて 聞き惚れてしまいます。(笑) 序幕の老船頭・菊十郎さんのシブイ感じ、にじみ出る様な雰囲気がいいです。 とにかく どちらもマダ4日目とはとても思えないのでございます。 周りのシッカリした舞台はやはり篤みがあります。 菊之助さんは綺麗です。 やはり華がございます。 で、チョッと貫禄?も・・・?(笑) 右近さんのお蝶が「姉さん」と呼ぶのですけれど まったくピッタリ「姉さん」に見えます。 やはり、最近の舞台でドンドン大きくなっていらっしゃるのだろうな〜っと 嬉しくなってしまいました。 一途な小六の海老蔵さんのカッコイイこと。"^_^" もっと素直になったら〜などとオバサンは思いながら見ておりましたが、青春真っただ中〜って感じがそれはそれで良かったです。 こういう内側に向くようなキャラクターって暗いばかりな感じですけれど そんな事はなくて‘青年‘が見え隠れするのです。 今回の舞台で一番良かったのは松緑さん、だと私は思いました。 4日目でこれだけ見せてくれるのですから嬉しいです。 台詞がシッカリ入って気持ちを乗せているように見うけられました。 なので、言っている事にかなり説得力がある様な気がいたします。 三幕目、小六を相手に思うところをぶちまける大吉・松緑さんに場内から拍手が起きました。 妹の様に思う、お登勢のため、というところがシッカリあるので全体を通して一本通るものがあり これが三幕目につながるのでございましょう。 この舞台は派手な演出のある舞台ではございません。 役者さんの持つ‘味‘と 台詞で舞台が進みます。 この様な舞台で 序幕の出のところ、それから三幕目は特によかったと思います。 團蔵さんの松平掃部はダンディーなお父さんですね。 なんだか娘にはメチャ甘いお父さんって感じでございます。(^^ゞ そのぶん家橘さんのおむらが渋いのでございましょうか・・・。(笑) ほか、松也さんと右近さんが頑張っていらっしゃいました。 序幕第二場・船宿網徳の家での右近さんは目を引きました。 まだお若いのに(って、この時はまだ13歳でございましょうか?)4人ほどの船頭を相手に 立派に船宿の娘を演じていらっしゃいました。 とても自然な感じでしたが ちゃんと船宿の娘に見えました。 これからが楽しみでございます。 ☆「雷船頭」は1839年に上演された四季を題材にした四変化舞踊の中の一つで「夏船頭」とも言うのだそうで 夏の雰囲気の舞踊でございます。 そう言えば たしかに、船頭は粋な感じの浴衣姿ですし 雷が落ちてくるのも夕立があったからでございます。 空から落ちてきた雷と船頭の踊りでございまして まあ、明るくて楽しげな感じの舞踊でございます。 で、衣装がわりとサッパリした感じであったからでございましょうか 松緑さんがとてもスッキリして見えました。(^^ゞ もちろん見ていて動きがとても美しいです。 この舞台‘雷‘を右近さんがお勤めですが、とても頑張っていらっしゃいました。 ☆今月の舞台で一番観たかったのが「外郎売(ういろううり)」でございます。 もちろん!團十郎さんの復帰の舞台でございますから 思い入れいっぱいで拝見いたしました。 「外郎売」は歌舞伎十八番の一つでございまして 1718年に二世團十郎が初演したのだそうでございます。 で、今回の舞台は1980年(S55)に当代の團十郎さんが復活したものでございます。 今回はおめでたい舞台でございますし 後半に「寿曽我対面」の「対面」の部分がプラスされ、立ち回りもあり 大変に華やかな舞台になっておりました。 また、菊五郎さんの工藤祐経 梅玉さんの十郎 三津五郎さんの朝比奈 などなど とっても豪華な舞台でございます。 幕が開きまして舞台は奴が並んで浅葱幕でございます。 浅葱幕が落ちますと 舞台は大磯のあたりで後ろに富士山と上手の紅梅、下手の白梅で「曽我」の面々が並びます。 工藤祐経が高座に落ち着いたところで いよいよ花道奥、鳥屋口から外郎売の声が聞こえます。 場内の視線が一斉に(っと思いました)花道に向きます。 チャリンと幕が開く音がして團十郎さんが出てまいります。"^_^" 出た瞬間に拍手してしまいました。 もちろん!!!私だけではございませんで 場内大きな拍手でございます。 拍手の中を7・3までいらっしゃって ここまで来たところで、すかさず「おめでとう」「待ってました」っと声がかかりました。 わ〜嬉しいですね。 團十郎さんのよく通るお声が場内に響きます。 舞台に上がりますと 今度は「お帰りなさい」っと声がかかります。 劇中で口上がございまして、後半に花道より梅玉さんの十郎が出て 五郎と十郎が花道と上手で立ち回りとなります。 後半は「寿曽我」と同じ様な感じで 五郎・十郎・朝比奈で富士 工藤祐経が鶴に見立てての見えで幕になります。 とても豪華で華やか、美しい、マサニ‘絵の様な‘舞台でございました。 ☆「権三と助十(ごんざとすけじゅう)」は1926年の初演で 岡本綺堂の舞台でございます。 「大岡政談」を元にしているお話ですけれど この舞台が「修善寺物語」や「番町皿屋敷」と同じ作者の舞台であるとは思えないほど‘ハジケタ‘舞台でございます。(笑) この舞台も‘お芝居‘な感じの舞台なのですけれど おもしろいです。 ワタクシ、久しぶりに大笑いしてしまいました。 それにいたしましても、ほんとうにマダ4日目なの?っと思うくらいシッカリできた舞台です。 でなければ、こんなに笑えませんもの。 すでにチャンと‘間‘ができているという事なのでございましょう。 で、菊五郎さん三津五郎さん権十郎さんはもちろんなのですけれど 時蔵さんがこんなにハジケル方だとは思っておりませんでした。 なんだかいつもトッテモ真面目な感じでありましたので さらに爆笑でございました。 團蔵さん、チョッと怖い感じでございます。(笑) なんか今の世の中 近くにもいそうな人みたいでございます・・・。 まあ、團蔵さんが怖いぶん 周りの人はおもしろく見えてしまうのですけれど。 それから 何と申しましても 左團次さんがとっても台詞が多いのでございますけれど 頑張っていらっしゃいました。 ご苦労様でございます。(^^ゞ こういう舞台は乗れないと 際限なくどうしようもなくなってしまうのですけれど やはり菊五郎さんの力が大きいのでしょうか とにかく笑えます。 岡本綺堂作の舞台でございますから やはりわりと新しい感じの舞台なのですが‘古新しい‘感じがいたしません。 トッテモすんなり観ていられました。 グルッと見回しても こういう舞台は菊五郎さんなのかな〜などと思ってしまいます。(^^ゞ 三津五郎さんの助十も良く菊五郎さんの権三と息が合っていたと思います。 これって、十八代目との舞台が生きているってことなのでございましょうか? 幕切れ前、田之助さんが彦兵衛の役で出ていらっしゃるのですが すかさず菊五郎さん「台詞が少なくてよかったでしょ〜」って これで、幕です。(爆) |