| |
| シアターコクーン 一階中央上手の椅子席 |
*東海道四谷怪談 南番 四幕九場 |
東海道四谷怪談 南番 お岩・小仏小平・佐藤与茂七 : 勘三郎 民谷伊右衛門 :橋之助 お梅 :七之助 按摩宅悦 :亀蔵 伊藤喜兵衛・お熊・舞台番 :笹野高史 直助権兵衛 :弥十郎 お袖・お花 :扇雀 序幕 第一場 浅草観音額堂の場 舞台は浅草観音の境内 ここで、浪人・四谷左門の妹娘・お袖が楊枝を売る店で勤めて おりますと そこへ以前、塩冶の家中・奥田家の奉公人であった直助権兵衛がやって来 て お袖に言い寄ります。 お袖は直助権兵衛をはねつけるのですが 隣の茶屋の女房からお袖が夜になると地獄宿 に出ていると聞き 直助権兵衛はその夜、出かけていくのでした。 お袖と直助権兵衛が立ち去ると ちょうどそこへ四谷左門が物乞いの者たちに追われて やって来ます。 縄張りを荒らしたと言われているところへ お岩の元夫・民谷伊右衛門が通りかかり四谷 左門を助け 姉娘・お岩との復縁を願うのですが 塩冶家への不忠を理由に断られてしま うのでした。 四谷左門はこの場を立ち去り 民谷伊右衛門はその後を追うのですが この民谷伊右衛 門の後ろ姿を見送る 高家の用人・伊藤喜兵衛の孫娘お梅の姿がありました。 ここへ、非人に成りすまして師直の様子を探る奥田庄三郎が来合わせ、伊藤喜兵衛に近 づくのですが 塩冶浪人だと見破られ回文丈を奪われそうになります。 しかし、折りよく通りかかった 小間物屋の姿に身を変えた、お袖の夫で元は塩冶の家中 であった佐藤与茂七に救われます。 二人は後に改めて会う事を約束して別れますが 佐藤与茂七は地獄宿の女房から、 楊枝屋の女が地獄宿に出ている事を聞き 自分の女房のお袖だとは知らずに その夜、 地獄宿に出かけることにするのでした。 第二場 按摩宅悦内の場 地獄宿・按摩宅悦の家にやって来たお袖は 直助権兵衛が客なので驚きます。 お袖は、言い寄る直助権兵衛に 夫・佐藤与茂七への義理立てを話します。 そうしているうちに後から佐藤与茂七がやって来て 偶然にもお袖と再会します。 お互いになぜこの様な場所に居るのかと口論になりますが じきに仲直りし、二人で帰っ てしまいます。 残された直助権兵衛は恋の恨みから佐藤与茂七を殺そうと 与茂七が持って行った提灯 を目当てに後を追うのでした。 第三場 浅草観音裏田圃の場 一人で観音裏へやって来た佐藤与茂七は 同志・奥田庄三郎と会い、仲間の出立を促す 回文状を受け取ると 敵の目をくらますため互いの着物を交換し、提灯も渡すと 鎌倉へと 向かいます。 二人が立ち去ると 先刻の四谷左門と、これに追いついた民谷伊右衛門が現れます。 民谷伊右衛門は再びお岩との復縁を願うのですが また、断られてしまったことから、 ついに四谷左門を斬り殺してしまうのでした。 ちょうど同じ頃 直助権兵衛は目当てにしていた提灯と着物から、入れ代わっている事に 気付かずに奥田庄三郎を斬り殺し 犯行を隠すために顔の皮を剥ぎ取ります。 同じときに互いに犯行に及んだ民谷伊右衛門と直助権兵衛は 顔見知りであったことから 結託して 四谷左門と佐藤与茂七を捜しに来たお岩とお袖の姉妹を騙し 夫婦になれば 四谷左門と佐藤与茂七の敵を討ってやると言うのでした。 二幕目 第一場 伊右衛門浪宅の場 お岩は男子を出産しますが産後の経過がよくなく寝付いてしまいました。 寝付いたお岩の代わりに按摩宅悦の口利きで雇った小仏小平という者が 主人の病のた めに伊右衛門の家に伝わる‘ソウキセイ‘という妙薬を盗みます。 小仏小平を捕らえた伊右衛門は浪人仲間と共に小仏小平を折檻し戸棚に押し込めてしま います。 そこへ、隣家の伊藤喜兵衛から見舞いが来て 見舞いの品と共に、お岩に血の道の妙薬 を置いていきます。 折から借金の取立てに来た質屋に‘ソウキセイ‘を預けると 伊右衛門は伊藤喜兵衛の家 に礼を言いに出かけます。 一人になったお岩が見舞いの血の道の妙薬を飲むと にわかに高熱を発し顔面が激しく 痛み出すのでした。 第二場 伊藤喜兵衛内の場 伊藤家に礼を言いに来た伊右衛門に 喜兵衛は孫娘・お梅の願いを聞いて嫁に貰ってほ しいと頼みます。 はじめは、妻ある身と断る伊右衛門でしたが 高家への推挙を条件に婚儀を承知するの でした。 第三場 元の浪宅の場 伊右衛門の留守宅ではお岩が薬のためにますます苦しみ 顔面はひどく変わってしまい ました。 帰宅した伊右衛門は新たに妻を娶るので 四谷左門の敵討ちは止めると言い 金のため に、赤子の着物や蚊帳まで持ち去るのでした。 伊右衛門の指図でお岩に不義を仕かけようとした宅悦でしたが お岩が宅悦の無礼に怒 り さいぜん折檻された小仏小平が落とした短刀で斬りつけるので 宅悦は鏡を取りお岩 の顔が醜くなったこと、伊右衛門や伊藤喜兵衛の企みを全て話すのでした。 驚くお岩でしたが伊藤喜兵衛に礼を言いに行くと言い出し 身なりを整えるために鉄漿を つけ母の形見の鼈甲の櫛で髪を梳くのですが 髪は梳くたびに抜け落ちてしまうのでし た。 宅悦がお岩を止めようとするうち お岩は先刻の小仏小平の短刀で喉を突き絶命してしま います。 内祝言をすませて戻ってきた伊右衛門はお岩の様子を見ると 戸棚に押し込めたままの 小仏小平をも斬り殺すと 二人の遺体を戸板の表裏に打ち付け川に流してしまうのでし た。 伊藤喜兵衛に伴われてお梅が嫁入りしてきますが お梅にはお岩の、喜兵衛には小平の 亡霊が取り憑き 迷った伊右衛門は二人を斬り殺してしまいます。 三幕目 砂村隠亡堀の場 舞台は深川隠亡堀です。 伊藤家は没落し物乞いとなってしまったお梅の母・お弓と乳母・おまきがやって来ます。 しかし、お岩の祟りからおまきは大きな鼠に引かれて死んでしまいます。 そこへやって来た、鰻かきの権兵衛と言われるようになった直助権兵衛が 鰻を取るため に水中を探ると髪のからんだ鼈甲の櫛がかかります。 折りしも、人目を忍んでこっそり釣りにやって来た伊右衛門は 高家に奉公していた母親・ お熊に出会い ここで、仕官の手づるとなる師直直筆の書付を受け取るのでした。 二人の様子を聞いていた直助権兵衛は伊右衛門に声をかけます。 先刻からこの場に居合わせたお弓が 直助権兵衛と伊右衛門の声を聞きつけ 伊右衛門 の消息を訊ねるのですが 事情を知られては困る伊右衛門はお弓を川に蹴落としてしまう のでした。 直助権兵衛が立ち去ると かわって浪人仲間の秋山長兵衛が現れ、加担した悪事のため 追われているので逃げるための金を出せと言われます。 しかたなく伊右衛門は金の代わりに先刻の師直直筆の書付を渡すのでした。 一人残った伊右衛門の前に戸板が流れつき 引き上げてみればお岩の死骸が恨みを言 い 戸板が裏返れば小仏小平の遺骸が薬をくれと手を出すのでした。 舞台には鰻かきを手にした直助権兵衛、回文状を持った佐藤与茂七が現れ 伊右衛門と 三人でのだんまりの争いとなります。 ついに、回文状は直助権兵衛の手に 直助の名が入った鰻かきの棒は佐藤与茂七の手 に渡るのでした。 大詰 第一場 蛇山庵室の場 舞台は蛇山の庵室 ここで伊右衛門はお熊と共に 講中の唱える念仏に助けられていま したが お熊はお岩に殺されてしまいます。 浪人仲間の秋山長兵衛もお岩に取り殺され 師直直筆の書付も鼠に食い荒らされてしま います。 第二場 仇討の場 ついに蛇山の庵室を逃げ出した伊右衛門は佐藤与茂七に討たれるのでした。 |
☆「東海道四谷怪談」は1825年初演の四世鶴屋南北の作品です。 上記のあらすじで「塩冶」とか「高」とか書いてございますので おわかりかと思いますけれど 「東海道四谷怪談」は「仮名手本忠臣蔵」の外伝的なお話として作られた舞台でございます。 初演の時には「仮名手本忠臣蔵」と「東海道四谷怪談」を組み合わせて二日がかりで上演したのだそうです。 なんだかスゴク疲れてしまいそうです。(^^ゞ このお話 あまりにも有名で歌舞伎を知らなくても「東海道四谷怪談」あるいは「お岩様」を知らない人ってあまりいないのではないでしょうか。 私は子供の頃テレビで見たやたらとオッカナイ「東海道四谷怪談」を今でも覚えております。(^_^;) でも、このお話が「忠臣蔵」とかかわりがあるというのは歌舞伎を見るようになってからでございます。 それにしても凄い取り合わせの様な気もいたします。 「仮名手本忠臣蔵」と「東海道四谷怪談」って人の中にある陽と陰が表裏一体って感じです。 でも、今の世の中「仮名手本忠臣蔵」みたいな事はあまり聞きませんけれど「東海道四谷怪談」なみのお話って 毎日の様にニュースとかで見聞きしている様に思います。 殺伐としたと言うのも もちろんなのでしょうけれど より、人間のお話なのかもしれません。 さて、今回のコクーン歌舞伎「東海道四谷怪談・南番」は1994年にシアターコクーンで上演されたコクーン歌舞伎第一回目の舞台なのですけれど ワタクシこの頃まだ頻繁にオンシアター自由劇場の舞台を観にシアターコクーンへ出かけていたにもかかわらず コクーン歌舞伎は観ていなかったのでございます。 たぶんこの頃は、歌舞伎座にかなり頻繁に出かけておりましたので 歌舞伎は歌舞伎座って思っていたのだと思います。 どうしても、シアターコクーン=オンシアター自由劇場からぬけられなかった様なのです。(^^ゞ で、今回チョッと思いの残る「東海道四谷怪談」と言うことで、1994年の「南番」を観て来たわけでございます。 ケッコウ楽しかったですよ・・・って、‘楽しい‘お話じゃあないはずなんですけれど でも、楽しかったです。 このあたりまでなら 私は歌舞伎の舞台だと思えます。 舞台が小さいですし、進み方もたたみかけるようにUpTempoで進みますけれど 間合いが歌舞伎ですのでキッチリ決まって進みます。 なので、いいところでバシバシ声がかかっておりました。 舞台は定式幕がかかり、桟敷席上部に「東海道四谷怪談」と書かれた提灯がさがっておりました。 ツケはもちろん、下座などの音楽も‘いつもの歌舞伎‘と変わりません。(笑) が、これが歌舞伎らしい雰囲気を出すのには大事かな〜なんて思ったりするのです。 歌舞伎で‘音‘を変えてしまうことって わりと簡単になさる事が多いように思うのですけれど 私はこれっておかしいと思うのです。 下座や浄瑠璃や 楽器━太鼓、笛、三味線など それこそひとつ一つの‘音‘の中に歌舞伎の様式の大事な要素があるわけなので こういった‘音‘を簡単にポンっとなくしてしまうのはどうなのかなと思うのでございます。 歌舞伎って歌舞伎の様式を踏まえていて歌舞伎なのだと思うので それを簡単になくしてしまうのであれば 歌舞伎というジャンルにとどまっていることはないと思います。 でも、みんながそうしたら歌舞伎ってなくなっちゃいませんか・・・。 まあ・・・なんと言うのか・・・大歌舞伎でしっかり歌舞伎の舞台をお勤めになられる役者さんがいらっしゃるからできる舞台なのかな・・・なんて気もいたします。 まあ、今回の舞台の場内に広がる歌舞伎の色合いは いい感じでございました。 ですけれど 前半、5:00から始まって約2時間、7:00まで休憩がございません。 オバサンは少し疲れました。(^^ゞ 舞台の流れが良かったので それほどシンドイとは思いませんでしたけれど でも、もう少し時間の配分を考えてもらえるとありがたいかな〜と思いました。 ちなみに 15分しかない休憩時間にいつもの歌舞伎座の様にお弁当を食べ始めた お隣の席のおばさんお二人は時間内に食べきれずに暗くなった場内で戸惑っていらっしゃいました。 歌舞伎って舞台だけが歌舞伎ではないんですけれど・・・。 開場の前後、幕間、そういった時間的なことや ロビーとか劇場周辺とかの空間的なところも さらには、場内の人・見に来る人だけではなくてそこにいる全ての人 そういった諸々が混じって歌舞伎なので‘歌舞伎なんだ‘と言うのであれば ‘歌舞伎なんだ‘と言える様にして欲しいし そうでないのならば‘これは歌舞伎風な小劇場です‘でいいと思います。 その方が 何でもアリでやりやすいんじゃないかしら。 今回、私が座っておりました席は1階の椅子席の2列目で上手よりでありました。 桟敷席との間の通路に近くて 上手の階段のスグ横あたりです。 ケッコウおいしい席でございまして 勘三郎さん、橋之助さん、扇雀さん、弥十郎さん、などが目の前を通って行かれました。(私はミーハーです) え〜もちろん、下手の通路の方がたくさん役者さんは通りますけれど 怖いから嫌です! 暗がりの中から‘うわ〜‘なんて出てこられたらたまりません。(~_~;) 後半は1時間ほどですが「戸板返し」「ちょうちん抜け」といったもともとの歌舞伎の演出がウケていました。 で、最後はジャブジャブプール大会のようでございます。 おもしろいですよ〜。 小さい子供が水しぶきを上げてキャ〜なんて騒いでいる感じです。 桟敷席の前の方は カッパやビニールシートを貰っていましたけれど それでも 水しぶきがかかりそうです。 後ろで見ている私は それを見て笑っちゃいましたけれど・・・m(__)m 今までのお岩様の哀れなお話は吹っ飛んでしまいます。 キャーキャー、ワ〜ワ〜、大ウケです。 後に残る暗い感じや重たい気持ちが吹っ飛んでしまうので 見た目には楽しくていいのでしょうけれど 今までの、お岩様のあの切ないお話は一体なんだったんだろ〜とも思います。 「伊右衛門浪宅の場」での勘三郎さんのお岩の あの哀れさや悲しさや怒りや、そういったことが水しぶきと共に吹っ飛んでいくのでした。 オモイッキリ盛り上がって盛大に拍手している人たちは 何に拍手していたのかな?なんて思ったりもします。 私はあの時 水遊びや、派手な立ち回りや、ドカドカ落ちてくる雪に、拍手していましたよ。 あの幕切れ前の水浴び大騒ぎの中で それまでに演じられてきた舞台上の人たちの いろいろな心情をシミジミと感じて思い出している人なんて場内にいたのかしら? これはもちろんコクーンだからできる演出なのだと思います。 舞台はヤッパリ勘三郎さんの舞台でしょう。 哀れな、けなげな、しかしそれゆえの美しさがございます。 そうして観ていて切なくなるほどの誠実さ・・・。 「伊右衛門浪宅の場」で赤ん坊を抱いて座る勘三郎さんの横顔の綺麗なこと。 ここがあるので 後半が凄まじいのでございます。 こういう真面目な人を騙しちゃいけませんね。 あの 早い、たたみ掛ける様な舞台展開と幕切れ前の大騒ぎの中で かなり鮮明に残っているのが 「伊右衛門浪宅の場」での勘三郎さんのお岩です。 薬を飲む時に何度も‘ありがとうございます‘って言って 薬の包紙をポンポンはたいて ほんとに‘ありがたがって‘いるのですけれど こちらは結末を知っていますから、悲しくなってきます。 観ていてやるせない気持ちで一杯になります。 でも、どん底の感じに陥らないのは 勘三郎さんのキャラクターなのでしょうね。 で、前後するのですが与茂七がかっこいいです。 橋之助さんは マスマス良い舞台を見せてくれます。 少ししか経っていないのに 前に舞台を見たときより毎回‘良いな‘と思います。 型でキッチリ決まって見せてくれるし トッテモ速い立ち回りでスピード感のある舞台を見せてくれるし 現代にもキットこういう人っているよって感じの伊右衛門だし 後半のジャブジャブは勘三郎さんと楽しそうだったし 次は何を見せてくれるのかな〜なんて思ってしまいます。 ほか、弥十郎さん それから笹野高史さんが頑張っていらっしゃいました。 4月9日なんて かなり中途な日にちに出かけたわりにとっても盛り上がった舞台でございました。 それにいたしましても・・・歌舞伎の役者さんって泳ぎができないと勤まらないとはじめて知りました。 カナヅチの人ってどうするのでございましょうね?(笑) |