2005年10月06日           もくじへ戻る  トップページへ戻る
    歌舞伎座 昼の部   一階前方中央よりの席

  *廓三番叟(くるわさんばそう)
     長唄囃子連中
  *通し狂言 加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)
     四幕六場


廓三番叟(くるわさんばそう)
 傾城千歳太夫:芝雀
 新造梅里:亀治郎
 太鼓持藤中:翫雀
  吉原遊郭の奥座敷に 傾城千歳太夫、新造梅里、太鼓持藤中、が現れ それぞせを翁、
  千歳、三番叟、に見立て めでたく舞います。






通し狂言 加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)
 尾上:玉三郎     剣沢弾正:左團次
 お初:菊之助     岩藤:菊五郎

 序幕 試合の場
  舞台は多賀家、桃の節句です。
  当主息女・大姫への祝に局・岩藤や腰元たちが並び 祝儀を述べているところへ 中老・
  尾上が戻って来ます。
  大姫は亡き許婚の弔いのために剃髪を決心し その許しを乞う使者として大姫の父の元
  へ差し向けられた中老・尾上が許しをもらい戻って来たのです。
  大姫は尾上に亡き許婚・義高からもらった 旭の弥陀の尊像を預けるのですが 大姫が
  尾上を重用することを快く思わない岩藤が、それは自らの分であると言うのでした。
  そうしてさらに岩藤は 尾上に武術の試合をするよう迫ります。
  町人の娘で武芸のたしなみのない尾上を困らせようとするのですが 尾上の召使お初が
  代わりに立ち会うと名乗り出ます。
  お初は岩藤が連れる奥女中を打ち負かし、さらに岩藤の小手を取ります。
  卑怯な手を使う岩藤でしたが さらに立会いを望むお初を尾上が止め 大姫は 旭の弥陀
  の尊像を尾上に預けて剃髪に向かうのでした。


 二幕目 奥殿草履打の場
  舞台は多賀家の奥殿です。
  岩藤の兄・剣沢弾正が大姫の剃髪のさいに用いる蘭奢待(らんじゃたい)の香木を受け取
  りにやってまいります。
  香木を預かっておりました尾上が差し出した白木の箱の中に入っていたのは香木ではな
  く 岩藤の草履の片方でございました。
  ここへ岩藤に仕える奥女中がやって来て 草履のもう片方が尾上の部屋から見つかった
  と知らせます。
  岩藤は尾上が自分を陥れるためにした事で 蘭奢待の香木を盗んだのは尾上であろうと
  問い詰め 草履で尾上を打ち据えるのでした。
  申し開きのできない尾上に 剣沢弾正は事の次第を報告すると席を立ち 岩藤も大姫に
  知らせると言って奥へ入ってしまいます。
  残った尾上は悔し涙のうちに 先ほどの草履を袂に入れると 一人自分の部屋へと戻って
  行くのでした。


 三幕目 第一場 長局尾上部屋の場
  偶然にも剣沢弾正と岩藤が御家横領を企てている事を耳にしたお初が 尾上の帰りが遅
  いので心配いしているところへ 打ち沈んだ様子の尾上が戻ってまいります。
  尾上の身の回りの世話をかいがいしくするお初でしたが 疲れて元気のない尾上の様子
  が気になり 芝居見物の話などしながら「忠臣蔵」に例えて短気を起こさぬように言うので
  した。

  尾上はお初に親元へ手紙を届けるように 使いを言いつけます。
  お初が着替える間 尾上は親元への手紙を書き、先ほどの草履と共に文箱へ納め丁寧に
  紐をかけ、こよりで封印するのでした。
  先ほどからの尾上の様子が気になるお初は なかなか出かけられないでいるのですが 
  尾上に行かなければ暇を出すと言われ 気になりつつ出かけて行くのでした。


  尾上はお初の心遣いに涙しますが 剣沢弾正と岩藤の悪事を書き残して自害してしまい
  ます。


 三幕目 第二場 塀外烏啼の場
  使いに出たお初は 尾上の事が気になってしかたありません。
  供の中間は不吉な事ばかり言うし、烏は鳴くし、草履の鼻緒は切れるし・・・。
  そんなところへ 蘭奢待の香木を盗み出した牛島主税と これを追う伊達平がやって来て
  お初とともに3人、闇の中で揉み合いになります。
  すると騒ぎで文箱の封印と紐が解け先ほど尾上がしたためた手紙と草履が出てきます。
  尾上の本心を知ったお初は急いで尾上の元へ戻るのでした。


 三幕目 第三場 元の長局尾上部屋の場
  お初が部屋に戻ると すでに尾上は自害した後で 残された手紙から旭の弥陀の尊像も
  岩藤に盗まれた事を知ります。
  お初は剣沢弾正や岩藤の悪事を暴き、尾上の恨みを晴らそうと決心するのでした。


 大詰 奥庭仕返しの場
  舞台は岩藤が主君調伏の企てを奴に命じている奥庭です。
  奴がいなくなり岩藤だけになると そこへお初が現れます。
  奥庭は部屋方のお初が来る様なところではないと言う岩藤でしたが お初は尾上が持病
  のために意識がないので、旭の弥陀の尊像を貸してほしいと言います。
  驚く岩藤でしたが 頭が痛いと嘘を言ってごまかします。
  これを聞いてお初は 良いお守りがあるといい 先ほどの草履を頭に載せるのでした。
  草履を見た岩藤はお初の目的に気が付き 斬りかかります。
  とっさにお初が岩藤の傘で受けると 中から旭の弥陀の尊像が出てきます。
  お初は岩藤を斬り倒し 尾上の恨みの草履で打ち据えるのでした。


  尾上の恨みを晴らしたお初は 尾上の後を追って自害しようとしますが 剣沢弾正や岩藤
  の悪事を暴き 蘭奢待の香木と旭の弥陀の尊像を取り戻した功により 二代目尾上の相
  続を許されるのでした。




☆廓三番叟は特別に劇的なストーリーがあるというような舞踊ではありません。
 吉原の廓の様子などを風情ゆたかに舞います。
 能の「翁」を元にした歌舞伎の「三番叟」を さらに廓の風情を舞うというチョッと艶やかな舞台にしているのが廓三番叟でございます。
 もともと「翁」は神事に行われるので 歌舞伎の「三番叟」もやはり神事を行う、おめでたい事がある、などの時に上演されます。
 で、今回の廓三番叟も舞台は廓で艶っぽいですけれど お正月の廓の風情を唄いながら一年の平穏を願う舞踊でございます。

 今回は芝雀さん、亀治郎さん、翫雀さん、の舞台でございました。
 はじめの唄いだしは能の「翁」の「とうどうたらりたらりらたらりららりららいどう」と同じでございます。
 舞台奥に長唄囃子のひな壇が出ていて廓の座敷に太夫と新造が現れ 舞が始まります。
 芝雀さんの太夫はサスガ貫禄っといった感じで ゆったり風情良く感じられました。
 また 亀治郎さんですが 今回チョッと注目でございましてとても綺麗で可愛らしく目を引く舞台でございました。
 翫雀さんの太鼓持は三番叟にあたる役柄でございますから コミカルな楽しい様子が良かったと思います。

 艶やかでパット明るい舞台なのですが 上手に‘鏡餅‘、太夫は‘なんてん‘を手に(たぶん、なんてんの赤い実ではないかと思います)舞うわけで お正月気分いっぱいの舞台です。
 でも、なんで10月にお正月なんでしょう・・・?





☆今月、一番観たかった演目が加賀見山旧錦絵でございます。
 1782年の初演で 元は浄瑠璃を歌舞伎に移した舞台でございます。
 原作は全部で十一段でございますが 六、七段目を独立させて歌舞伎風に補綴したものが今の舞台になっているそうでございます。
 お話のネタになった事件が実際にあって それを取り込んで書かれたらしいのですが 全体のお話からするとサブストーリーでありました。
 それが ともすれば女性社会にありがちなテーマであることから 当時の奥勤めの女中に人気となったそうなのです。
 たしかに・・・ありそうな話でございます。

 やはり、玉三郎さんで書かせていただきたいかな〜っと思います。m(__)m
 序幕、とりあえず舞台に関係者(?)がみな集まったところへ 大姫の問いに答えるがごとく「だだいま戻りました。」の声で尾上・玉三郎さんが出てまいります。
 衣装は緋色の小袖に 打掛が白地に菊でうこん色の模様です。
 鬘が‘片はづし‘というチョッとかわったこしらえの鬘でして 岩藤も同じでございます。
 ‘凛とした中に清楚な美しさと優しさがある‘そんな感じが 舞台に出てきただけで伝わってまいります。
 それで シルエットがとても美しいです。
 ‘歩く姿はゆりの花‘って言いますけれど そんな感じでございます
 大姫の御前であること、岩藤との上下関係、お初の心情、こういったことに とにかく気を使って収めようとする ある意味、知的な・クールなカッコよさがございます。
 対する岩藤・菊五郎さんですが これがリアルな岩藤でございまして なんだか直ぐ身近にいそうな感じなのです。(^_^;)
 衣装は尾上と対照的で 黒地の打掛で藤の模様でございます。
 ここで対照的なのは岩藤だけではございませんで 腰元たちも対照的な衣装でございます。
 尾上の方は鴇色、岩藤の方ははなだ色、といった感じで さらに岩藤の方の腰元は普段は立ち役の方でございます。
 もともと岩藤は立ち役で‘いかにも‘っといった感じでなさる役でございますけれど 菊五郎さんの岩藤は立ち役の岩藤というより やはり女形の岩藤でございまして その分、リアルに見えるのでございます。
 で、よけいなのですが 岩藤が御家横領を企てていた事を少し横に置いて舞台を見てみますと、岩藤の言い分ももっともではないかしらと思えるのですね。
 それはマア、今のご時世 能力主義でもありましょうけれど でも やはり役付きがあるのであればトップダウンで事が決まり運ばないと もめるのも仕方がないように思えてしまうわけなのでした。
 このことを舞台を観ているときから‘思わせる‘リアルさが今回の岩藤にはございました。
 岩藤はここで庵崎求女に「奥向きは局の支配、お控えなされませ。」って言うのですよ。
 キッパリ仕事するキャリアって感じでございましょう。
 だからさ〜大姫がもうちょっと うまい具合に家臣を使えたらよかったのにね〜っとそんな感じでございます。(^_^;)
 この様な岩藤が言い出した無理な武術の試合に 困っている尾上を助けるのが召使のお初でございます。
 お初もカッコイイ出方をするのですね。"^_^"
 「誰も許しは致しませねど」って花道でハッキリと言って でも 尾上の名代で自分が立ち会うと願い出るんですね。
 とっても可愛らしくて元気な娘(こ)なのです。
 菊之助さんのお初は ここのところが本当に快活な娘(こ)でございまして 尾上のために一生懸命なのが伝わります。
 岩藤のだまし討ちに もう一度立ち会いたいと言うお初を尾上が止めるのですが ここも尾上とお初のバランスのいい上下関係が見ていてうれしくなります。
 尾上を思うお初と お初をかばう尾上が とてもいいのです。
 このあたりは やはり玉三郎さんと菊之助さんの‘いき‘なのでございましょうね。

 二幕目は尾上と岩藤のガップリ四つの舞台でございます。
 尾上・玉三郎さんの衣装はなんど色青緑・・・このあたりの色合いの地に銀杏、紅葉などの秋の葉の模様の打掛の衣装で やはり下手から舞台に出た時の瞬間がパット目を引くのでした。
 これからの展開もございますのでけして派手な衣装ではございませんけれど ただ暗いというより やはり清楚で知的な感じがするのでした。
 ですがここはつらい舞台でございます。
 限りなくクールに内へ内へと気持ちを抑えていくのが 観ていてつらいのですね。
 で、皆がいなくなってひとり舞台になると やはり美しい!!!
 見得でガット決まるようなことはないのですけれど 一つひとつの決まりがやわらかくでも美しく決まります。
 >女心もひとすじに・・・
 浄瑠璃の語りで ひとり残って悔し涙に泣きながら美しく決まるわけなので ヤッパリすごいのです。(^^ゞ
 草履を袂に入れる時、草履で打たれた髪を懐紙でぬぐう時など もうどうにもならないくらいせつなくなります。
 この後、花道から入って10分の幕間で三幕目の花道の出になりますけれど この10分の間に見事に尾上の心情が煮詰まっているのです。
 だた前の幕の気持ちを持ち続けるというより 10分の時間でさらに思いが深くなっている感じなのです。
 10分前に入った時よりさらに、はるかに、ど〜っと暗い縦線状態で 花道に出てきても客席で気が付かないほど静かで暗いのです。
 拍手なんてもちろんですけれど 声だって掛けられなくて ただただ見守るばかりです。
 こんなにスゴイ花道の出入りって見たことございません。
 なんだか 花道の長さがグ〜ンと長く伸びたみたいに 長い長い廊下の感じでございます。
 ここまで持ってこれるのってスゴイ気がいたします。
 対する岩藤・菊五郎さんは も〜ここはオモイッキリ尾上をいじめちゃえ〜っというところでございますので とっても気分よさそうでございます。(笑)
 草履を間にして岩藤と尾上とで決まるところもとっても良くてガシット決まってくれます。
 かえってこのくらい思いっきりスコーンっとぬけるように バシバシやってもらえると見ていてストレス解消になるかもしれません。(笑)

 三幕目の尾上の部屋ですが 衣装はうすい紫の被布の衣装です。
 尾上を気遣うお初とのやり取りが なんともせつなくて もちろん口数少なくズット気落ちしたままですけれど 尾上の思いつめた心情が舞台・場内ににじんでくるみたいな感じで広がります。
 静かだけれど実はすごいエネルギーを客席に放っている玉三郎さんに驚いたりするのでした。
 で、この巨大縦線状態が なんとか救われるのはお初の可愛らしさ・けなげさがあるからでございましょう。
 やはり 尾上とお初の互いを思いやる気持ちが とてもいいバランスで見れたと思います。
 お初が使いを頼まれて 尾上を気にしながら出かけるのですが その時、尾上を気遣い神棚に手を合わせる姿を見て泣き崩れる尾上で けなげなお初とつらい尾上の最後の別れで 客席で見ていて泣けました。
 この後、お初が出かけてからは玉三郎さんの一人舞台で 義太夫にのってのクドキがやはり綺麗です。
 ここで語られるのが今の尾上の本当の心情で ここを見ていると‘尾上だって若い娘でけして死んじゃっていい歳じゃないのに‘っと思うわけでございます。
 で、はじめのほうにも書きましたけれど やはりここでも玉三郎さんのシルエット・線がスゴク美しいです。

 ‘烏啼き‘を挟んで元の尾上の部屋に戻ります。
 今回、ここでの岩藤が尾上の部屋に忍び込んで旭の弥陀の尊像を盗む場面はありません。
 自害してしまった尾上の元へお初がかけ戻って来たところから始まります。
 で、旭の弥陀の尊像が岩藤に盗まれたことは 尾上の書置きからお初が知るわけです。
 この流れですと ‘烏啼き‘を挟んで前の‘尾上の部屋‘からの 尾上とお初の心の流れが途切れる事がございません。
 自害した尾上を見てお初が‘遅かった遅かった‘って言う台詞がメチャクチャ効いてくるのです。
 それでこれからしばらく無言で お初は尾上の自害の後の支度をするのですね。
 北枕に寝かせて、屏風を逆さにして、その上に長刀を置いて・・・。
 も〜悲しくって 泣ける泣ける。
 なので、ゼッタイ敵を討つぞ! っに頑張れって思うわけなのでございます。
 ここは菊之助さんのお初最高です。

 大詰が敵討ちです。
 おっかない岩藤と けなげなお初の一騎打ちでございます。
 で、やはりサスガうまいです。
 岩藤・菊五郎さんも お初・菊之助さんも パッシッと決まるところはシッカリ決まってくれるので 舞台でも花道に出ても‘絵‘になります。
 舞台の背景は一面の桜で 黒の衣装で蛇の目傘を持つ岩藤と、鳶石に黒の矢の字の衣装のお初が それぞれ傘と尾上の懐剣で立ち回りになります。
 最後、斬られた岩藤が手の甲を見せて幽霊の様な動きをいたします。
 おそろしや〜の感じなのですが「加賀見山再岩藤」につながるわけなのでした。
 お初は見事に敵を討って二代目尾上になって めでたしめでたしなのですけれど ヤッパリ、‘ね〜尾上さん、何も死ななくてもよかったんじゃない。‘っと思ってしまうのですね。(^^ゞ

 今月は 玉三郎さん昼の部が尾上で、夜の部が‘人形振り‘での清姫で なんだかひと月スゴク疲れそうな感じでございました。
 ご飯もゼンゼンおいしくないって感じになりそうです。(^_^;)
 ひと月間ご苦労様でございました。m(__)m





 今月は私にしては珍しく 昼、夜、共にかなり前の席でございまして よく見えるといえば まあ そうなのですけれど 舞台全体が一望できませんので‘絵‘になりにくくてチョッとつらい感じでございました。
 やはり もっと後方で視界に舞台と花道がいっぺんに入ってくるあたりが好きでございます。
 でも とりあえずよかったのは中央少し上手よりでございましたので 尾上の花道をシッカリ見ることができました。"^_^"






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