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確かに自分の体の中で起こっている変化はそれはもう不思議ではあるの ですが、しかしただ不思議がってばかりはいられないのでした。 私は残念ながら不思議の中に生きているわけではなくて この現実に 生きているので、自分のこれからの身のふり方を考えなくてはならなかった のです。 いちばん差し迫った問題は仕事でした。 私は結婚した時に別に辞める理由もなかったので、そのまま仕事を続け ていました。 さてここで問題です。 私に仕事をしながら 出産と子育てができるのか? 世の中には もちろん 仕事と子育てを両立させている人だっています。 でも 世の中の人ではなく私自身ができるかどうかなのでした。 そこでまず、妊娠初期 まだお腹が目立たないころ 就業規則を調べて みました。 それまで就業規則なんてまともに読んだことは無かったので 今更では あったのですが ‘へーこんな決まりがあったのか・・・‘ なんて思ったもの でした。 しかし、知りたかった出産や育児のための休暇についての記載はほんの わずかでした。 まず、育児休暇の記載はありませんでした。 記載されていないという事は育児休暇が無いと言うことです。 さらに、出産休暇が4ヶ月という記載。 うーん・・・ 出産ぎりぎりまで仕事をしていても生後3ヶ月ほどで子供を おいて出なければならないということです。 ちょっときついかなー・・・。 それで、総務にそれとなく聞いてみました。 するとやはり育児休暇はなし、出産休暇は6ヶ月まで延長できるという事 でした。 さらに総務のK課長が言うには、今いる子持ちの女性社員は出産前から ここで仕事をしていて 出産と育児の間一回退社して再就職しているそう なのです。 つまり 出産育児の時は退社して仕事ができるようになったところで、 経験者として優先的に再就職するという事です。 ふーん・・・でもこれでは何の確約も無いわけで、再就職できなければ それっきりと言う事だし だいたい仕事を辞めてしまっているのだから その間の金銭的保障はもちろん何も無いわけで 要するに ‘辞めてね‘ と言うことなのでした。 さて、そうするとネバってガンバって出産後6ヶ月で職場復帰するか退社 するか どちらにするかを選ぶ事になったわけです。 まず考えたのは仕事を続けるという事を前提にそれがだめな時は退社 するということでした。 仕事を続けるのであれば生後6ヶ月の子供を誰かに見てもらわなければ なりません。 母はウメ婆ちゃんの世話をしています。 ウメ婆ちゃんは寝たきりになっているわけではありませんが、まったく手放 しと言うわけにもいきません。 ですから、子供を見るといっても子供だけを見てもらうわけにはいかない のです。 では、保育園などに預ける事を考えました。 どうしても私が仕事を続けるのであれば、母と保育園とを何とか使いまわ していけば出来そうな気もします。 ただここで私は、たとえそれが出来たとしても私一人で子供を抱え込んで 母と保育園のやり繰りをするのは嫌だと思いました。 子供は私一人の子ではないからです。 私だけが出産育児と仕事について考え選択する事はおかしいと思いまし た。 母親 父親、母は女 父は男、それぞれ役割が違います。 しかし、‘親‘ の部分はフィフティーフィフティーです。 それなので、私は子供の父親である連れ合いにこう言いました。 「自分が仕事を続けるのであれば、生後6ヶ月の子供を預けなければ ならないのだけれど、すじ子さんはウメ婆ちゃんの介護があるから預けると なると保育園を探す事になると思うんだ。で、私立でも何でもとにかく預け られれば 後は多少すじ子さんにも見てもらって なんとかなるかもしれな いんだけれど、明さんにもそれなりに見てもらわないとだめなんだよね。」 「何を見るの?」 「子供の送り迎えや検診その他いろいろ・・・。」 「ひょっとすると、急な病気とかも・・・風邪で病院へいくとか・・・。」 「うん。そういう事もあるだろうね。」 「仕事してるのに急に休めないよ・・・。」 「仕事続けるなら、私も同じでしょ・・・。でもさ・・・自分が具合悪けりゃ 急でも休むよね・・・。子供はだめなの・・・。なんか変じゃない。」 「そりゃそうだけど・・・。」 「ここはまあ 明さんの決めるところかな・・・。明さんがフィフティーフィフ ティーで子供を見れるなら私は仕事を辞める事はないんだよね。」 「できなかったら、仕事辞めちゃうの?」 「さー・・・どうかな・・・。でもそうなるかな。別に私はキャリアで仕事してる わけじゃないからさ。学校出て社会人になったらそりゃー仕事しないとねっ て感じで仕事してるし、ほら‘仕事命‘ってわけじゃないでしょ。自分の好き な事するために仕事もしないといけないかなーってことだから。仕事しなく て遊んでていいよーって言うなら大喜びだけどね。本読み放題 歌舞伎座 行き放題とかさ・・・。」 「そんな事あるわけないだろ・・・。」 「そうでしょ・・・。私がさ仕事辞めない方がいいかなーって思うのは子供が 生まれれば食い扶ちが増えるわけで それなのに懐が減るっていうのは あんまり賢くないかなーと思うからなんだけれど・・・。」 「姉さんが言ってた。子供は金かかるって。」 「まあ、派手にガンガン仕事しなくても この時期細く長く仕事続けてれば 先はまた続いてくからね。辞めちゃったらそこまでじゃない。」 「そう・・・。僕の返事しだいなんだ・・・。」 「何がキッチリかはよくわかんないけど、まあとりあえず言葉的にキッチリ 半分 明さんが子供に実際にかかわって子育てするのであれば、私が仕事 を辞める理由はないし、逆にそこまでかかわれなくて 私が背負う事が多い のであればこれから先を考え直さないといけないよね。仕事一人ぶん、育 児両親ぶん、これじゃあ私はもたないわ・・・。もたなくて仕事に穴あけるの 最悪だよね・・・。」 「わかった。とりあえず、お金のこともあるから 会社でそれとなくしらべて みるよ。出産休暇とか育児休暇とかあるかどうか総務に聞けばわかると 思うから聞いてみる。それに 同期の奴にも子供が生まれて間がないのが いるから そいつにもちょっと聞いてみる。女性にはあるかもしれないけど 男には休暇はないかもしれないけどね。でも、とにかく聞いてみるから。」 「たのむね。」 私だってたぶん父親に出産休暇や育児休暇が認められているとは思って いませんでした。 今は、父親にもこのような休暇を認めている会社が多少はあるのかもし れませんが、九年前は母親でさえ珍しい休暇でありました。 あー・・でも、今でもこのあたりの事はあまり変わってはいないのかな・・。 ただ、私としては 子供の父に親として担ぐべき事をしっかり担いでもらい たいと思ったのです。 子供を私一人で抱えるのではなく、はじめから父親に半分渡す。 これは、母親が意識しないとできない事のような気がします。 だって、生まれる前は100パーセント母親がその体の中に子供を抱えて いるわけですから。 まだ目にしない存在しない でも 命ある子供に、母親と同じ時期から シッカリかかわってもらう。 子供のために考えてもらう。 母親はこの時期 食事ひとつにしても子供の事を考えているわけで、 これはもう自分の体の中に子供がいるので強制的に考えざるをえない のですが、父親はこの時期ハッキリ言ってまだ第三者です。 痛くも痒くもないわけで、それを親子の関係に引きずり込むのは母親だと 思ったのです。 そして、なによりありがたいのは 明さんがそれをシッカリ受け止めて シッカリ考えて ない時間を工面して一生懸命父親稼業をしてくれた事 でした。 今でもそれは変わらないのですが、実際 この時もあちこち調べて聞いて くれたのでした。 一週間ほどして明さんが言いました。 「休暇の事ね調べたんだけど、出産休暇は三日あるんだよ。だけど、育児 休暇はないんだ。」 「出産休暇があるの? 産むわけでもないのに。」 「産むわけないだろ。違うんだよ、ほら・・・出産に立ち会うとか、出生届を 出すとか、そういう事の休みなんだって。」 「おもしろいね。でも、育児休暇はないんだ。」 「うーん・・・。ないんだよ。」 「そりゃ残念だなー。生まれるまで私が全部子供を抱えてるんだから、生 まれたら明さんにバトンタッチしてみんな見てもらおうと思ったのにさ。」 私は笑いました。 「全部なんか見れないよ・・・。それに、僕の仕事 出張が多いから子供を 半分見るなんて無理みたいなんだよね。最近子供が生まれた同期の奴に 聞いてみたんだけど、時間が不規則だし出張が多いし無理じゃないかって 言うんだ。」 「あーそうね・・・。時間なんてあってないような物だね。だいたい定時 なんてあるの?」 「そりゃ、あるけど 事務職じゃないからね関係ないし それじゃ仕事に なんないでしょ。でね・・・それよりもなんだけどさ、せっかく生まれてくるのに 二人ともそばにいてやらないっていうのは、なんかかわいそうじゃない? 一人でお留守番みたいで・・・。ちょっと調べながら思ったんだけれどね、 やっぱり、君がそばにいた方が子供はうれしいんじゃないかな・・・。どうし ても続けないといけないんじゃなかったら、仕事辞めてくれるかな・・・。 残業手当もあるし、出張手当もあるし、たぶんもう少ししたら代理から 課長になれると思うし・・・。おこづかい少なくてもいいからさ・・・。」 「この歳で仕事辞めたら 子育て終わってもたぶん仕事ないよ。まあ 何人産むかにもよるけど・・・。」 「いいよ。なんとかするから。」 私は、すじ子さんとも相談して 仕事を辞める事にしたのです。 どうしても、仕事を続ける必要がなかったからではあったのですが 辞める方を選んだのは、明さんの ‘せっかく生まれてくるのに二人とも そばにいてやらないのは、かわいそう。‘ と言う言葉があったからです。 とにかく、私の中の不思議はどんどんふくれるばかりで 本当にせっかく 頑張って生まれてくるのであろうに 生まれる前から傍らを離れる事ばかり 言っていたのでは やはり寂しい気もするかと思ったのでした。 すじ子さんは、子供を押し付けられずにすんだので大喜びしておりました。 まあ、私も昨年あたりまで自分の時間などなかったのですが、かれこれ 九年近い子育て期間もそれはそれで最高の時であったと言えるのでした。 ‘これはちょっとできないよ‘って言うような、経験がそれはもう数限りなく あり 出産後約九年経ってその間の全てを、仕事を辞めて子供と過ごした 全てを、肯定できるのでした。 あの時、私は仕事を辞めたいと思っていたわけではありません。 逆に、続けられれば続けようと思っていました。 辞めたのは‘無理をせず、まあ 流れに乗るか。‘くらいの気持ちでした。 でも今振り返れば、この時期オモイッキリ子供と付き合えたことは 何より 自分自身にとって宝であったのではないかという気がするのです。 出産や育児を経験した今 やっぱり、仕事を続けていた方がよかったか なーと思ってはいないという事です。 さらに言えば、私には仕事と妊娠出産育児を全てこなす事はできなっかた であろうと思います。 どうしてかと言えば、三十四歳から三十八歳までの4年間に三人の子供 をお腹を切って生むということが、自分の体にどれだけのダメージをあたえ たかがわっかたからなのです。 子供を産むということは母体にとって凄い負担になるのです。 昔の人はたくさん子供を産んでなどと言う人もいますが、他の多くの事柄 は昔と今とでは違うのに なぜ ここだけは比較して同じと言うのでしょう。 たぶん、昔と今とでは 何かが違うのです。 子供を産み育てる事があたりまえでは、‘やってられないよ!‘ と思う くらい体のダメージは大きいのでした。 それなので、私の場合現実的に仕事など無理なのでした。 私の場合は 辞めてよかった と言うことなのです。 世の中には いろいろな人がいます。 私のように仕事を辞める人、辞めてよかったと思う人、よくなかったと 思う人、辞めない人、辞めなくてよかったと思う人、辞めたいと思う人。 母親も子供も その数だけ状況が違います。 なのに、最近は ‘母親も仕事をしましょう。‘ ばかりが聞こえてきて その為の支援ばかりが目立ちます。 なんで母親を子供から引き離す事ばかりなのかしら・・・。 そのくせ、一度何か事故があったりすると 母親が悪いとなるのです。 せめて、子供が親を特に母親を必要とする十歳位までの間 母親が子供 に‘ベター‘っとくっ付いていても苦にならないような支援の仕方があったて いいんじゃないでしょうか。 母親が子供にベターであれば、その間 そのほか家事いっさいは父親が 受け持つとか・・・そんなのはだめでしょうか・・・。(笑) 少子化で子供の数が減っている中での支援であるなら、もっとその方法 もいろいろであって欲しいと思ったりするのでした。 子供を産めば自分がしんどい、経済的にも大変だ、どんなに頑張っても 辛くても それこそ寝食忘れてフルタイムで小さい命に係わっても、‘あたり まえ‘の一言しかない、そんな馬鹿らしい事したくないって思っても全然おか しくないですよね。 それより、キャリアで仕事して そこで手応えがあればその方がいいで しょうね。 今の時代、ハッキリ言って子育ては仕事のわりに報われない事なのです。 子供の数が減ったて ‘そりゃそうだ‘ って話かなーと思うのです。 子育ては 生きる事を伝える事であると思います。 何かを伝えるには、伝える側のエネルギーの方が伝えられる側のエネル ギーより大きくなければだめなのです。 ちょっと おおげさですが、‘後姿‘ってエネルギーがないと見えてこないか なーと思うのです。 私は仕事をしていませんが、知り合いには正社員で あるいはパートで 仕事をしている人もいます。 子育てをするのに、仕事を辞めるか続けるかの選択をしたつもりだった のに、今思うと 子供にどの様な自分を見せるのかを選択したように思いま す。 そして、子供と どのようにかかわりを持つか、 どのくらい距離を置くか。 子育て前には全然気づかない事ではあったのですが、仕事をするとか 辞めるとかは子供から見れば それは親の生きざまなので どの様な生き 方を子供に見せるか どの様な生き方で子供と付き合うか それを選んだ のではなかったかと思うのです。 親だって人間なのだから その生き方は十人十色 いろいろです。 いろいろの親が いろいろの生き方で 子供を育てる。 親になる側からすれば、辞める続けるは自分のスタンス、でも子供から 見ればそれが生きている世界になる。 おー・・・なんと影響力の大きい事か。 怖くなる・・・。 子供を産む前に 今思っている事に気付かなくてよかった・・・。 でなければ、もっと悩んだような気がする。 救いは、今の自分の生活を肯定できる事。 失敗したと思っていない事。 このことは、とにかく周りの全てに感謝したいかなーと思うのでした。 特に、あの時‘おこづかい少なくてもいいから。‘などと言ってしまった ばっかりに、九年たっても上がらない小遣いに毎月がんばってやり繰り するお父ちゃんには‘ごくろうさま‘と言いましょう! |