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プロローグだなんて大げさなタイトルなのですれど、でも かれこれ12年 前ウメ婆ちゃんが家に来る事になった時、本当に‘さあ、大変だぁ‘って、 家中で身構えたものです。 だって それまで我が家は私が生まれてから約30年 私と両親の3人家 族だったのです。 そこに 家族が一人増える。 30年も3人だった所に。 それも 年を取って、少しボケちゃった婆ちゃんが・・・。 私としては、親以外の人間が同居するって事がまず不安でした。 たぶんそれは 私が一人っ子で家の中ではほとんど自分の好きに行動 できていて、とりわけ時間的な事に制約がなかったから それを かき回さ れるのが嫌だったのだと思うのです。 で、私の母 すじ子さんが‘どうしても、ウメ婆ちゃんを引き取る。‘と言い 出した時 もちろん私は大反対したわけです。 大変なのは絶対分かっているし だいたい買物だって通院だってすじ子 さん一人でどうするわけ?私も よし雄さんも 仕事してるんだよ!と まあ こんな感じでした。 だけど、すじ子さんは私の話なんてちっとも聞きませんでした。 「絶対 連れて来るから。お父さん、いいって言ったもの。あんたが、どう してもって言うんなら あたしがお婆ちゃんの所へ行くから。 この家の事は あんたが、やっといてちょうだい。」 なんでー・・・それは、こまるのです。 いろいろやってくれる人が居なくなるのは、困るのです・・・ そうです、私は自分の都合だけを 真っ先に考えたのです。 こんなやり取りが、何日か続きました。 この間 ウメ婆ちゃんは、病院に居ました。 ちょうど一ヶ月ほど前です、ウメ婆ちゃんの面倒を見ていた叔父さんから ウメ婆ちゃんの具合が良くないから来てほしいと すじ子さんに電話があっ たのでした。 すじ子さんは、すぐ出かけて行き風邪で少し熱っぽいウメ婆ちゃんを近く の病院へ連れて行きました。 そこは、ちっよとだけ大きな総合病院で多少の検査などできる病院でし た。 近くなので行きつけの病院にしていたのですが そこで老人性の痴呆症 になっているようだから家に一人で留守番などさせない方が良いと言われ たのです。 だけど どうして風邪で病院へ行ったのに痴呆症なのでしょう? もっと分からないのは‘この病院へ行ってと‘別の病院の紹介状を渡され た事でした。 実際にウメ婆ちゃんに付き添って病院へ行ったのは すじ子さんなので この人も結構いい加減で いまひとつよく分からないまま風邪薬と紹介状を もらって帰ったのでした。 で、数日後 風邪薬を飲んですっかり元気になったウメ婆ちゃんを すじ 子さんと叔父さんで紹介された病院へ連れて行くことになりました。 すじ子さんが言うには 「熱は下がったけど年寄りだから一度ちゃんと検査しといた方がいいか ら。せっかく紹介状もらったし 人間ドックのつもりで行って来るよ。」 でした。 ところが それから一週間ほど過ぎてもウメ婆ちゃんが退院するという連 絡が叔父さんからありません。 ????? ちょっと検査するだけで入院したのに変なのです・・・? 私はこの時点では まったくの第三者でいたので(後にも そのスタンス は崩さないようにしていたのですが 徐々に引きずり込まれてしまうのでし た。)結構 適当に言ったものでした。 「このままウメ婆ちゃん病院に置きっぱなしなの。検査で連れてったけど それはもう終わってるよね。あの人 元気だもの一週間なんてかかるわけ ないもん。あの病院は老人病棟みたいなのがあって 年寄りを預かってく れる病院なんだ。叔父ちゃん何も言ってこないの?」 もちろん すじ子さんは私より何日か前から気になっていたので 「何も言ってこないのよ。あたしも気になってたんだけどね・・・。あんたも 気にしてるんだったら明日病院に行って来るわ。」 えっ・・・? 私はべつに気にしていたわけじゃなくて ただその時思った事をぺロッと 口に出しただけだったのですけれど・・・。 翌日すじ子さんは ウメ婆ちゃんの居る病院へ行きました。 私は 仕事から帰って当然どうしたか聞くわけです。 「ウメ婆ちゃんどうだった? 具合悪くないんでしょう? 病院にまだ居る の? 叔父ちゃんに連絡とれたの?」 無責任にペラペラと聞いたのでした。 「それがね なんか変なのよ。」 と、すじ子さんが言います。 「あたしが 声かけても全然起きないのよ。病院に居る間ずっと寝たまま なの。看護婦さんに聞いたらね なんか夜うろうろ歩き回って困るから部屋 に鍵を掛けたんだって・・・そしたら 外に出せって暴れたんだってさ。それ で あんまり騒ぐから薬飲ませたら今度は薬が効きすぎて朝になっても昼 になっても起きないんだってさ。」 なんかちょとやな感じです・・・。 今から12年くらい前 たぶん平成3年くらいの時の事で 介護とか老人 医療とか 今ほど前面に出てきていなくて まして自分の家にはまだまだ 関係ないと思っていたから すじ子さんの話を聞いて なんとなく怖いみたい と感じたのでした。 でも こんな事は長く続きませんでした。 一ヶ月もたたないうちに病院の方から 暴れて手に負えなくなったので 精神科のある別の病院を紹介するから転院して欲しいと 言われたので した。 風邪で病院へ行って検査で入院して なんで精神科に行くんだろう。 それまで一人で留守番させられないから とりあえず病院に預けておこ うと連絡もよこさないでいた叔父さんが どうしたものかと相談してきたの でした。 叔父さんは連合いと死別していて家には女手がありません。 もしウメ婆ちゃんを連れて帰るとすると 自分が仕事を辞めるかホームな どに預ける事になるのです。 叔父さんは3人兄弟の男一人 自分がウメ婆ちゃんの面倒を見るつもり でいたので こんな展開になって かなり困っていました。 だけど年寄りが何にも無くて ある日突然ポックリなんてちょっと無い話で 大なり小なりどこか調子が悪くなったりするもんで そうすればやっぱり手が 掛かるに決まっている訳だから 80を過ぎた年寄りを抱えて何も考えてい なかった叔父さんは ????? なにをしていたのでしょうか・・・。 で、すじ子さんに どうしようかと話を持ちかけてきたのでした。 3人兄弟の一番上 シッカリ・チャッカリ・ウッカリ者の長女すじ子さんは この時すでに あちこち親戚に連絡を取って 妹(私の叔母)にも話を通して 私の父すじ子さんの連れ合い・よし雄さんにOKをもらって 反対する私を ねじふせて とにかくどんな状態でもウメ婆ちゃんを引き取る積もりでいまし た。 確かに私だって無責任にではありますが、 「悪い事した訳でもないのに閉じ込めちゃて 閉じ込められれば誰だって 暴れるよね・・・。全然知らない所に なんだか分からなくて一人で居るわけ だしさ。 それで 暴れたからって薬で眠らせて手に負えなくなって よそに やるってのもね・・・。」 と、言ったものです。 そして、 「なんかさ・・・老人ホームとかには入れないの?」 とも、聞きました。 でも 金銭的な事もさることながらホームに入れるのは なんでもない 元気なお年寄りで ウメ婆ちゃんの様な暴れたりウロウロする年寄りは入 れてもらえなかった様です。 だいたいウメ婆ちゃんは老人性の痴呆で 年を取ればたいてい物忘れ などというのは誰だってあるわけで 特別な病気とかではなかったのです。 今なら いろいろな選択肢があるのですが ほんの12年位前には病気だ ったわけです。 叔父さんは自分が最後まで面倒を見ると豪語していたので 会社を辞め ても自分で何とかすると頑張りました。 だけど実際はそんなに簡単ではなくて 叔父さんはすじ子さんにこう言わ れたのでした。 「あんたね仕事なんて辞められるわけないでしょ。辞めてどうやって食べ てくの。家のローンはどうするわけ。食べる物無い 住む所無い それで お婆ちゃんどうやって見るのよ。誰かずっと見てくれる人頼むわけ。それな らいいけど。お金何とかしてくれって言われても あたしにはどうにもならな いからね。だいたい あんたに下のセワできるわけ。」 そうなのです。 痴呆の年寄りと暮らすというのは 汚物にまみれる覚悟が無いとできない 事かもしれません。 私だってこの時そんな事は考えつきもしなかったわけで 後になって現実 を突きつけられて嫌でも認識させられたのでした。 付け足しておくと ケッコウ言いたい放題言いまくったすじ子さんも 似たり 寄ったりだったのでした。 病院でも ずいぶん言われたそうです。 大変だからやめた方がいいと。 引き取るまでわからなかったけれど目を離せないという事だけでも やっ ぱりすごく大変なのでした。 知らないから わからなかったから できたのかもしれません。 でも 言っちゃたので そうすることに決めちゃたので ウメ婆ちゃんは我 が家へ来ました。 |